アジトに入ると、グレーのスーツが2人。
すでに彼らは待っていた。
「我々は政府のものだ。
よって、余計な詮索は不要だ、
と伝えておこう。」。
ルリ子と本郷は無言で警戒する。
「だが
信頼してもらうために
説明は必要だろう。
私は、タカハシ。
こちらの彼は・・・タキだ。」
タキが顔をこちらに見せる。
彼なりの挨拶なのだ。
視線をタカハシに戻した本郷。
その発言そぶりを察したルリ子が前に出て遮る。
「そして質問も必要ね。
博士は生きているんでしょう?
私の深層意識、間違いないわ。」
「さよう。
おっしゃる通り。
博士は生きてはいるが・・・
今この場にいない理由も考察すべきだ。
・・・
つまり、彼の意識は生きている。
ただ、肉体は取り込まれた。
これも実験の一環らしい。」
その言い終わり際に、タカハシは
ようやく姿勢を変え、
ルリ子に対し正面を向いた。
そして、少し低めの
「我々は、対応を決定した。
伝えに来たんだ、
君たちに。
協力の意思を。」
「"協力"?
"従属の強制"ではなくて?」
「解釈の相違について、
議論するのは時間の無駄だね。
・・・
とはいえ個人の見解は尊重する。
当然、
我々の認識も尊重されたい」
タキと本郷は二人の成り行きを見守っている。
「どちらでもいいわ。
情報を共有してくれる?
それのほうが重要だわ」
「おっしゃる通り、そのつもりだ。
話が早くて助かる。
まずは概要を共有しよう。
・・・
標的はクモ男。
改造人間だ。
・・・
我々はその生息施設を特定済みで、
施設の自主解放も、強制解放も可能だ。
ただし、改造人間の殲滅手段が乏しい。
・・・
単に施設を"解放"すると
せっかく特定した改造人間と、
その部下を拡散させてしまう。」
タカハシはちらりと本郷に視線を移し、つづけた。
「最適解は、第一に改造人間の
しかる後に施設を、
「"
政治的発言がお上手なのね?
・・・
いいわ。お互い尊重しましょう。
同意するわ。
情報リンクできる?」
タカハシはタキに顔を向ける。
皆の視線が集まったタキは一言、告げた。
「
瞬時にルリ子に意識が流れ込む。
ルリ子とタキの間で、
・・・
リンク完了。
タカハシは本郷に、次は君だと横目で促す。
「リンクは一瞬だ・・・
本郷君、
君は合意しないのかい?」
その視線を、ルリ子の手が遮る。
「本郷くんのセキュリティは特別なの。
合意形成に必要なもの、それが
あなたたちには、まだまだ不足のようね」
「ほーう。
緑川博士の
その詳細は我々の情報にないものだ。
ご教授願おう」
彼らの情報に"ない"。。。
ルリ子は少し自慢気に伝えた。
「シンプル イズ ベスト。
単純だわ。
"時間"よ」
ーーーーー
夜。
アジトの周囲に人影が見える。
タキだった。
逃亡の疲れから、
ルリ子と本郷は砂のように休んでいる。
タキも先ほどまでアジト内にいたが
不穏な気配を感じたのだ。
「
それでも警戒すべきだ。
タキにわかるのはそこまでだった。
・・・
・・・
・・・
突如、
地面が盛り上がる!
現れる戦闘員!
目標はタキだった!
緊急リンクを要請するタキ!
「敵だ!!」
囲まれたその隙間から、
クモ男が糸を放つのが見えた。。。。
深層意識下で独り、
本郷は記憶野を探索していた。
「
思い出す。
バイクに初めて乗ったときを。
夏のアスファルトを。
湿った空気の密度を。
そして
緑川博士との共同研究を。
被験体に申し出たことを。
未だ見つからない幸せを。
・・・
・・・
幸せ?それは何だ?
途端に、"思い出"が"懐疑"に遷移する。
・・・
博士がすでに被験体であることは知っていた。
なぜ危険な被験体に申し出たのか
・
・・・
そこは未だ、わからなかった。
・・・
・・
・
「お父さんのこと、考えてるんでしょ」
ふと気が付くと、ルリ子の顔が目の前にあった。
ルリ子の行動は予測不可能だ。
しかしもう慣れた。
「緑川博士のこと。
俺は博士に対し
どう恩返しすべきだろうか?」
本郷の自問自答に
ルリ子はいつものようにさらりと諭す。
「人は考えすぎると、
選択を見誤るわよ。
あなたのように、
結論出ないこと考えてちゃ、
人生の時間がもったいないわ」
そのとき、
みるみるルリ子の顔がこわばっていく
タキからの緊急リンクだ。
瞬く間に本郷の意識下にも色が広がる。
「
タキとルリ子の緊急リンクは、
本郷にも
(きっと君を守れる)
本郷は心の中でそう願った。。。。
続く!