仮面ライダーになるために。   作:パナヤマ

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第六話 蝙蝠男、それは研究者。

 

 

ーーーー

 

その「施設」に入るのは簡単だった。

そもそも一般公開されている、研究施設だ。

世間の認知度が高くないだけだった。

 

とはいえ、二人だけの潜入はやはり緊張が伴う。

 

そんなルリ子と本郷を出迎えたのは柔らかなエントランスだった。

白い内装と、簡素な観葉植物とテーブル、イス。

このエントランスの壁にこれまでの研究成果、そしてショッカーを称えるパネルが展示されている。

 

本郷はその研究に、思わず立ち止まり内容の精査に集中力を割いた。

 

 

 

 

ルリ子がゆっくりと受付にアポを伝えると、

まるで人間のようなAI受付嬢が、人間に気に入られる笑顔で応対した。

「すみません、所長はいま、こちらには不在なんです。

 じきに戻るのですが。。。」

 

タカハシから指示された時間にはちょっと早かったのか?

もう一度時間を確認するルリ子。

 

現地のトラブルの場合、どれだけ本部、つまりタカハシとの信頼があるかによって

判断が変わってくる。

 

蝙蝠男の行動が予定より遅れていると連絡を受け取ったルリ子は

不安を拭い去ることにした。

 

 

「特にトラブルでもなさそうね。

 もし良ければ、待たせてもらってもいいかしら?」

 

「かしこまりました。

 所長の了承も得ました。

 会場にてお待ちいただけますでしょうか?

 ご案内いたします。」

 

 

この、ルリ子が受付嬢とやり取りする間、本郷はジっと壁の研究パネルに集中していた。

 

 

 

ーーーー

案内された場所。

そこは待合室ではなく、開かれた、いわば劇場。

VR案内嬢の音声と、二人の足音だけが冷たく会場内に反響する。

 

「こちらが所長室となります。

 お飲み物などは、こちらのサーバーをお使いください。

 セルフでお願いいたします♪

 他になにかお入り用のものがございましたら、お呼びください」

 

 

VR嬢はルリ子と本郷の表情を解析し、了承の意図を確認すると

スッと消えてしまった。

 

ーーーー

 

「実は、あのアンプル、打ってないの。」

 

ルリ子の発言に、本郷はやはり、とうなづいた。

 

「ううん、、まったく打ってないってことではなくって、

 ちょっと調合を改良したの」

 

「改良?」

 

「先日私が投与された薬品。

 おそらく催眠剤、しかも持続効果の高いもの。

 ショッカーはそれを使ったんだわ。

 アンプルはをその効果を薄め、抵抗を強めるもの」

 

「なら、問題ないじゃないか。

 なぜ改良する?」

 

「それはね・・・」

 

 

そのとき、天空から、所長である蝙蝠男が飛び込んできた。

劇場のステージに、すっと降り立ち、観客席側のルリ子と本郷にうやうやしくお辞儀する。

 

「ようこそ、いらっしゃいませ。我が研究所に。

 ご用件は、下名(かめい)の想像と一致しますかな?」

 

・・・・

・・・・

 

ルリ子はタキに、直通(ダイレクト・リンク)にて開始の合図を伝え、立ち上がり、

蝙蝠男に対して深々と頭を下げた後、グッと睨むように見つめた。

 

それが交渉戦の開始(スタート・ネゴシエィション)だった。

 

「はじめまして。所長。

 お会いできて光栄です。

 ・・・

 こちらからは、ご提案が1つと強制が1つ。

 予想通りかしら?」

 

 

「ほぼ一致しとるね。

 ただし想定では強要が2つ。

 この認識が違うなら、そもそも合意しかねるがね?

 君たちの結果も、想定どおりだろう。

 念のため、詳細を聞かせたまえ」

 

「言うまでもなく、こちらからの提案は、好条件だわ。

 あなたが政府へ要求した単年度助成金は、要望通り。

 つまり、本研究所への科学研究費は、要求通り満額。

 また研究の成果である"催眠薬"も民間事業展開を承認し、軍民転換(スピンオフ)委員会を通じて販売する。

 代わりに、あなたの研究機関とその研究成果を政府直轄とし、こちらから監査委員を立てる。

 これが強制ね。

 どう?、あなたは生活も、研究も実質全く変わらない。

 逆にこのままなら、いずれ政府ではなくショッカー直轄になるわよ」

 

そう。

蝙蝠男はその改造手術により、研究能力が拡大したのだ。

常人の倍はある大脳新皮質。そこに様々な分野の知識を内蔵し、天才的なアイデアがあふれるのである。

またその商才も秀でており、資金的にショッカーから独立した地位を確保しつつある。

 

しかし反面、

ネックとなるのがショッカーに支払う莫大な研究ロイヤリティ、これはすでにタカハシ達が調査済だ。

蝙蝠男の発明は、ショッカーの施設の使用料、闇に抵触する研究内容の隠蔽、

すべてショッカーの庇護の下で研究が進められており、発明・研究のたびに、資金が枯渇するのだ。

 

 

「!?

 そこまで調査されていたとは・・

 しかし、我が研究の成果である、健やかな睡眠、そしてたちどころに相手を意のままにする催眠作用をもつ、

 この薬の販売と特許料に匹敵するご提案とは、とても思えん。」

 

 

「国内の活動は、まだまだこれからよ。

 私たちは今後10年以降の将来を見据えている。

 ・・・

 国際活動において、私たちはすでにショッカーの国家間分断に成功してる。

 よって海外資金を通じた連携活動は停止、しているわよ。

 ・・・

 つまりあなたのそのグローバルな研究。ショッカーは国内販売するしかない。

 ・・・

 今日あなたが出席した組織の予算会議、あなたは潤沢な資金提供されるそうだけど。。

 その資金は催眠の世界販売が元手になってるわよね。

 日本で独占されたら、、、どう?想像つく?きっと想定金額の1%にもならないわ。

 きっとあなたは会議でそこを追求したが、うまくはぐらかされたようね」

 

 

「我が研究は、多くの人の安全と健康のためにある。

 しかし、その事業化はあなたのご指摘の通り、苦心しているところだ。

 

 つまり、ご提案の主旨は、

 『どちらに転んでも同じ。ならば枷はあるものの、将来性のある日本政府と組め。』

 そういう理解でよろしいかな?」

 

「もう少し柔軟にとらえてもらってもいいわ。

 研究テーマと研究員の選定。そして研究所内の予算配分について、

 あなたの一存で決定していいの。

 つまり、財務権と人事権、すべてあなたが掌握する、

 肩書も事実上もトップとなるのよ。」

 

 

現在、蝙蝠男はショッカー上位の頭脳を持ちながら、役職的にはただの雇われ研究員にすぎない。

蝙蝠男のプライドを突くこの提案、まさに政府による情報活動の成果であった。

 

「うぬ。。。

 その提案。予想外だ。

 ・・・」

 

 

蝙蝠男は一言、二人が聞き取れるほど微かにつぶやくと、思案した。

 

「・・・

 こちらの内情を勘案したご提案、痛み入る。

 しかし、ショッカーを裏切ることはできない。

 組織に恩義は感じていない。

 研究はすべて私の発案だ。

 ・・

 ・・

 しかし、ショッカー以上に君たちを信頼できない。

 私は、すでに長く組織に居すぎたのだ。」

 

 

交渉決裂(エクスペクテッド・ラプチャー) 。心の中でルリ子はタキへ報告する。

同時にタキからの回答は「想定通り(エクスペクテッド)」だった。

 

ルリ子は本郷へリンクを張った。

(戦いになるわよ♪)

 

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