Princess between princes 作:よしだひろ
(仮)第三話
今日もまた山田の奴がエントランスで待ち構えていた。しかし今日はいつもと違っていた。
「おいおい。聞いたぞ、ミッキー。俺以外の奴と飲みに行ってるそうじゃないか」
「別にあんたと飲みに行かないって言ってないわよ。二人きっきりでは行かないって言ってるの。てかそのミッキーての辞めてよ」
「じゃあさ、その人事の飯田さんも連れて飲みに行こうぜ」
「それは今はちょっと……」
「結局ダメなのかよー」
(いや、飯田さんとはちょっと今はいけないだけ)
「じゃあさ、経理の野村先輩を呼んだらどうだ?」
「美里さん? それなら別に構わないけど……」
「オッケー。じゃあ細かい事はまた連絡するわ。野村先輩に都合聞いといて」
そう言って山田は行ってしまった。
山田は同期だし別に山田の事が嫌いなわけでもない。だから別に飲みに行くのは全然構わない。ただ、二人きりと言うのは何だか抵抗がある。
(美里さんが一緒なら安心よね)
「おはようございます! 美里さんいます?」
意気揚々とオフィスに入って行くと美里さんが総務の畠山さんと話していた。
「よう、おはよう伊藤君。いつも元気があって良いね!」
「畠山さん、何でまだ始業前なのに?」
それには美里さんが答えた。
「今流行りのユーフォーパンが手に入ったからってわざわざ買って来てくれたのよ」
「同期の頼みとあらば、ね」
「頼みって言うか、ボソッと食べたいなって呟いただけなのに」
「ユーフォーパン……いいなあ」
ユーフォーパンは今世間で流行っていて、最初は小さなパン屋さんが売り出したのだがネットで話題になると途端に色んなお店が真似するようになった菓子パンだ。
「また売ってたら買ってきてあげるよ。それより何か用があるんじゃなかったの?」
「あ、そうそう。私の同期の山田が飲みに行きたいって言うんですよ。二人きりは嫌だと言ったら美里さんを誘ってみようってなって……」
畠山先輩が思い出すように腕を顎に当てながら言った。
「山田って営業の山田の事か?」
「はい、どうですか? 美里さん」
「うーん、別に構わないけど何か乗らないわね。そうだ畠山。あんたも一緒にどう?」
「俺? 別に構わないけど良いのか?」
「いいのいいの。同期同士の飲み会って事で」
畠山先輩は好感度がとても良い先輩だ。社内の女子社員にも評判だ。何で独身なのか分からない。そんな先輩と飲みに行けるなんてラッキー。
早速社内メールで山田に事の成り行きを伝えた。
*
金曜の夜。みんなでエントランスに集まって例のお店に行く事になった。