ホムラの日とホムラの未来とホムラを振り返る過去 作:早起き三文
シャ、ア……
強い夕陽の中、彼がじっと見つめる、この隠れ家。
――やれやれ――
いや、隠れ家というと、何だかのどかな印象を与えるが、実際の所は。
――……俺は、な――
スラム街、怪異との聖戦を生き延びた後に、その約十年後に。
――言い訳を、していたのかもな――
かなりの規模である氷隕石が落下し、それによる地球規模での、季候変動が二度目の「聖戦」の開始。
――ここは、忌むべき場所――
それの、終末を呼ぶ「ラッパの音」であったのが、この場所だ。
――人類にも、そして――
そして、この場所は。
――私の、私的な事にも――
彼、獅子王が。
――そう、私的な事、妻になるかもしれなかった、彼女の墓――
全てを、失った場所でもある。
――……あれは、果たして――
細かい年月など、すでに忘れている。
――彼女の死は、果たして現実だったのだろうか?――
もはや、彼には恋人を殺した記憶すら、夢現である。
「……あの、王?」
「なんだ?」
しかし。
「いつから、そんな懐古主義に?」
「……フフ」
と、この部下が茶化すのも無理はない事を。
「……ユーモアだよ、君」
獅子王は、行っている。
――カグツチ・コピー、私の過去――
まさに、今現代の戦いにおいては無用の長物。
「たまには、馬鹿をやらないと部下はついてこないってな?」
「……はあ」
それを鞘に納めたまま、王は愛銃とは別に、腰から下げている。
「……失礼ながら、王」
「言うなよ?」
「何も言ってませんが?」
「解るさ」
「……」
彼、獅子王の腹心は、全てとは言わないが、彼が「オダギリ」であった時の事を、ほとんど知っている。
――無論、な――
そう、当然「新宮神楽」の最期の事も。
サァ、ア……
――珍しいな――
ここまで、夕陽が、その橙色の光がハッキリと、見れる日は。
――普段は、死の雲に覆われている季節なのに、な――
その光に当てられたか、どうか、この独裁者の顔、彼の老いた顔に。
――しかし、な?――
僅かな、感傷の色が顕れる。
「この夕陽の光、どこかで……?」
「獅子王」
「……ン、おお何だ?」
だが、おずおずと声を掛けてきた側近へ向けた、その顔は。
「……御気を、つけて」
「……何だよ?」
常の、獅子王の顔。
「柄にもないぞ、君?」
「連中のリーダーを務める位の能力者です、その力をあなどるのは……」
「……ム」
確かに異能者「救世主達」に対しては、ほぼ無敵の獅子王の能力、ではある。
――……まあ、しかし――
この側近、片腕の彼のように、通用しない相手も僅かには、いる。
――それに、してもな――
獅子王、彼の頭脳をもってしても。
――この、チャラは――
なぜ、この彼が自分にここまで、忠実に仕えてくれるか、その理由は解らない。
――私のやり方を、知らない訳ではあるまいに――
今まで、何度身内の「粛清」を行ったか、それを彼が知らないはずは。
――ないのに、な――
そう思うと、この昔からの「友人」である、彼の老いた、この。
「……」
シワに、満ちた。
「……王、何か?」
「……いや、しかし」
皺だらけの、老人の顔を見つめる内に。
「しかし、な」
「何か、王?」
「……お前と私、お互いに」
そこまで言って、獅子王は自分の乾いた唇に、すっと。
ジュ……
タバコの、安煙草の吸い先を付けて、軽く。
「長く、生きれたもんだな?」
「……そうですね」
微笑を浮かべた、浮かべてみせたその時、この腹心の顔にも、僅かに。
「長い、人生でッス、王」
昔の「チャラ」い、雰囲気が少しだけ、戻った。
「……ああ、そうだな」
気がした。