ホムラの日とホムラの未来とホムラを振り返る過去   作:早起き三文

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「2023/1/13[転校初日]」

 

 少し、彼は似ていた。

 

「……よろしくね?」

 

 死んだ、弟と。

 

「……小田切君、だっけ?」

「う、うん……」

「新宮神楽です、よろしく」

「こ、こちらこそ……」

 

 その、席が隣になった、彼は。

 

……キィーン、コォーン

 

 少し、頼りない気がする人、男子だけど。

 

「……あの、新、宮さん?」

「……えっ!?」

「消しゴム、落としたよ?」

「あっ……」

 

 その彼の声、それを聴いて、慌てて私はシャープペンから手を離し。

 

 スゥ……

 

 椅子をずらし、床に落ちた、消しゴムを拾い上げる。

 

「ありがとう、小田切君」

 

 その時の、私がお礼を言った時の。

 

「あっ、いや……」

 

 彼の、はにかんだ、笑みは。

 

――……ちょっと――

 

 私の、荒んだ心にも。

 

――彼、良いかも……――

 

 潤いを、与えてくれた気がする。

 

「……」

 

 ワタシは、本当の意味で。

 

――プロトタイプ-02-FEMALE型――

 

 もはや、普通の女では。

 

――怪異の大門、出現まで、計算上ではあと、一月あたりだ――

――はい――

――バトルフィールドとなる、このエリアの地理を、身に付けよ――

――了解――

 

 生きている、人間ではない。

 

――P02-Fの動力は不安定です――

 

 私の家、研究所での。

 

――死んだ人間素体に、その彼女の弟の心臓を無理矢理入れたからな、仕方が無い――

――所詮は、試作品ですよ――

 

 そう言った「デリケート」話は。

 

――……――

 

 よりにもよって、本人の前で、するべき物ではないと思ったが。

 

――だが、この素体は、元々は私の姪であるからな――

――……私の記憶は、残っているのですが、上官?――

――だから言うのだよ、プロトタイプ――

 

 叔父さん、そして私の上官でもある、この人は。

 

「……昔から、バカ誠実というか」

 

 私を作り上げる為に犠牲とした、幾多のモルモットにも。

 

――なあ、神楽ちゃん――

――何、叔父さん?――

――このモルモット達の、お墓の塔婆が、アイスの棒じゃあ――

――でも、仕方がないんじゃない、モルモットだもん、無縁仏にしなくちゃいけない……――

――浮かばれ、ねぇよなあ……――

 

 情を、棄てきれない人。

 

「……だったら、何でこんな」

 

 その私の、人間であった時の疑問、それは。

 

「因業な、仕事をしているんだろ……?」

 

 彼に尋ねようと、思っては、いたのだが。

 

――まあ、いいや――

 

 キィン、コォーン……

 

「……はい、今日の授業は、ここまで!!」

 

 少なくとも、今は。

 

「……さっきは、ありがとう、小田切君」

「あっ、いや……」

 

 私は、今を「生きている」事、それを満喫しよう。

 

 

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