月影の魔法使い〜The magic seeker of the moonlight shadow〜   作:よしだひろ

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何とかバオホを追い返す事が出来たが、バオホは次どの様に攻めて来るのか。
早急な対応が必要と思われた。


次の一手

 ミルファージの屋敷内の応接間で、シュタインとネーエンとミカが町長のミルファージを待っていた。ミルファージは直ぐに姿を現した。

 まずネーエンが戦況について説明した。

「残党を蹴散らした後我が班の兵士も採掘場に向かわせました。じきに採掘場からも勝利の連絡が入るでしょう」

「大丈夫なのか?」

「ご心配なさらずに。それよりもバオホの行方が気になります……シュタイン殿、バオホは採掘場に行ったのではないのか? バオホが採掘場に行ったのならば我らも直ぐに向かわないと……」

「バオホは自分の住処、エングランドの槍に帰ったと思います」

 ミルファージが聞いた。

「何故そう言える?」

「奴は僕のシュネーバルを見て慌てて身を引いた。だからテレポート先の座標を指定している暇はなかったんです」

「?」

 テレポートの呪文を使う時は、通常何処へテレポートするのかその座標を指定しなければならない。

「奴は事前に予備魔法をかけておいたと思われます。緊急時にテレポートを座標の指定なく使うために、予め座標を特定しておいたのです」

 予備魔法でテレポートの座標を指定しておいた場合、テレポートの呪文の詠唱を短くすることができる。この場合、予め指定しておいた座標にテレポートされる。

「恐らく奴は町長の首を持って帰る算段だった為、テレポート先の座標は自らの住処と考えるのが妥当です」

「なるほど?」

 ネーエンやミルファージはさっぱり分からなかった。

「で、エングラントの槍からここまではどのくらいの日数で来れるのだ?」

「今それは問題ではないでしょう」

「何故だ? 奴が次攻め込んでくるまでの時間が分からなければ体勢を整えられない」

 その時ドアを叩く音がした。

「伝令! 採掘場にて敵を打ち破りました」

「おお、でかしたぞ」

「魔法の軍団など我が軍にかかれば簡単なものだ」

 ネーエンは誇らしげに言うのだが、こちらの損失も大きかった。

「戦いにより戦死した者は概算でも千二百、負傷者は二千と見られます」

「何⁉︎ それ程の損失があったのか……」

「魔法の軍団を甘くみてはいけない」

 シュタインは呟くように言った。暫く沈黙が包んだ。

「なれば次の攻防の事を考えなければなるまい。次の布陣はどう敷く?」

 ミルファージはシュタインの方を向いた。

「次の布陣は不要です」

「何? どう言う事だ?」

「守りの戦いをするつもりではないと言う事です」

「攻め込むと言うのか?」

「はい」

「しかしバオホが本当にエングラントの槍にいるのか分からないだろう」

「可能性から言えば百パーセントではないです。しかしエングラントの槍にいる確率が一番高い」

「しかし再び直ぐに攻め込んでくるかも知れんぞ」

「それは有り得ない」

「何故そう言える?」

「いかなバオホと言えども再び千近い軍勢を編成する事は出来ないでしょう。それを魔法により強化させるとなれば時間も必要になる」

「良かろう。今回のバオホの動きを読んだのもシュタイン殿だ。その言葉を信じよう。で、侵攻する軍勢の数は?」

 魔法探究者、特にバオホほどの使い手となると一個師団は必要だろう。彼らは魔法の事を知らな過ぎる。

 シュタインは考えた。エングラントの槍を攻略するには正攻法で攻めるしかないだろう。バオホの事だ、塔の中には何か仕掛けがしてあるに違いない。そしてオークを中心にした亜人を配してるかもしれない。

 対バオホの為と言うよりは、これらの仕掛けや敵対する生物との戦いとして兵隊がいた方が良いのかもしれない。

「塔の攻略は大人数ではかえって不利です。そして山道を抜ける事になるでしょう。兵糧を運ぶ為の輸送隊が十五と塔の攻略に十、合わせて二十五名と僕の弟子ミカで行きましょう。人選はネーエン殿に一任します。なるべく早く発ちたい」

「二十五だと⁉︎ しかも戦闘要員は十名?」

「雪割り山脈を登ります。山の向こうへはドワーフコリドーを抜ければいい。そしてエングラントの槍は大人数では不利です」

「ドワーフコリドーとは何なのだ? それに雪割り山脈を超えたらそこはエングラントだぞ。敵が待ち構えていたら、或いは遭遇したらその人数でどうする?」

「確かに敵国の兵士と遭遇する可能性もありましょう。なればこちらは偽装するしかありませんな」

 シュタインはその事については楽観視していた。国境警備の兵士などシュタインに取って敵ではないからだ。ただ、敵兵に対して無駄に魔力を使って消費したくはなかった。

「旅の賞金稼ぎにでも扮しましょうか」

 シュタインは細かい道のりなどを説明した。会議は数時間続いた。その結果、出発は二日後と言う事になった。




バオホは自分の住処であるエングラントの槍に逃げ込んだと思われる。
シュタインは少数精鋭で攻め込む事を提案する。
少人数で敵地に攻め込む事など可能なのか?

【主な登場人物】
●ミカ
シュタインの弟子。魔法の勉強をする為にシュタインに付いてきたが、何故かバオホとの戦いに巻き込まれてしまった。まだ魔法は使えない。

●シュタイン
魔法探究者(魔法使い)。旧友であるバオホと対峙する事になる。戦いに負ければポーレシアはエングラントに攻め込まれて敗れる事になる。

●ネーエン
フェネッケンの防衛部隊の部隊長。魔法を目の当たりにしてその凄さ力強さを知る。

●バオホ
シュタインの旧友。魔法探究者。エングラントの手の者に依頼されてフェネッケンを奪取しに来ている。その報酬は伝説の魔剣ローエ・ロートである。

●ミルファージ
フェネッケンの町長。軍事的な事はほぼネーエンに任せている。
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