『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』 作:プリテンダー
だが、今私達がいる車両の内側は生物の体液で赤黒く染め上げられ、所々に肉片と思しき物体がこびりついている。私が人間であったならば噎せ返っていたであろう血臭に満ち、大気が触れた場所から腐り落ちてしまいそうなほどの瘴気を感じ取れる。
車外で反響する、悪しきもの共の嗤い。それに重なるキヴォトスの【内側】と【外側】、両方に属する生命達の絶叫。この星そのものの断末魔と言っても過言ではない。
ヘイローが無いものは人も動植物も区別無く異形に殺戮され、神秘を身に満たす証であるヘイローを有するものは生死を問わず、世界そのものの外側に属する邪悪な諸力の手に堕ち変貌させられてゆく。
最悪の記憶。前の時間軸で起きてしまった、私の最悪のミスの証明。
生まれから外道を歩むものが、頑なに正道を歩もうとすればどうなるかの末路。
車外に見える光景も、車内に撒き散らされた血肉も、この車両も、全ては幻影だ。既に滅び去ってしまった、前の時間軸での出来事の記録だ。
私が如何に愚劣であったかの証拠を見せつけられながら……座する彼女と相対する。
いや……そいつは彼女では絶対にない。有り得ない。
例え虚像であろうとも、目の前のそれが、連邦生徒会長であっていい訳がない。
「私のミスでした」
血肉に塗れた手摺りに肘をかけ、渋々と言わんばかりにむくれた表情で電車の外に広がる惨状を眺めている。
丁度外から我々の乗る電車に向け、異形に抵抗していた生徒の一人が投げつけられ、凄まじい衝撃音と共に窓ガラスに激突し、バラバラになる。既に血塗れであった窓ガラスに一層鮮血が塗り込められ、肉片が貼り付き……それを見た彼女は、無聊の慰みと言わんばかりに鼻で嗤う。
人々を、キヴォトスを大切に思う彼女が、絶対に取らない態度だ。
目の前の存在は、姿を真似ただけの連邦生徒会長の紛い物。私を付け狙う怨敵。
彼女という存在を穢す行いに対し、私が怒りに耐えかねて、声を上げる事を期待しての姿であろう。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」
だが、私に反論は許されない。
声を上げれば、立ち所に彼女に化けた【奴】は私の居る時間軸を特定し、盛大に干渉を始めてくるだろう。
【奴】の同類は他にもいるが、最も邪悪で忌まわしいのは……少なくとも、私にとっては……【奴】に他ならない。
偽者は立ち上がり、窓ガラスの一枚に遺る血で出来た手形を、弄うような手付きで撫でる。
「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」
彼女は、彼女に化けたものは振り向く。
澄んだ美しい空色だった瞳を、禍々しくけばけばしい、薄暗く汚らしい金属質な青色に染め戻して。
その声の調子を……全てを嘲笑う、その正体に相応しい、粘ついた悪意に満ちたものに戻して。
歪に口元を拉げさせ、毒を吐く。
「生徒さん達を見捨てて巧く逃げおおせるなんて、流石ですねぇ、せぇ~んせぇ。まさか20年も探してるのに、まだあなたの居場所を見つけられないなんて、ねぇ。私も想定外ですよぉ」
偽連邦生徒会長はそのままこちらに近付いてこようとして……電車の中央、彼我の間に存在する認識世界の境界線に遮られる。それはこちら側の姿を見えないように隠し、向こう側からの干渉を無効化する……夏場に生徒達が語る怪談の中で登場する結界のように、声を上げるなどの行為により、向こう側へ干渉の許可を出したと看做されない限りではあるが。
壁に妨害されたそれは、本物の彼女……或いはシッテムの箱の管理者と化している時の彼女がすれば愛らしいであろう膨れっ面を晒し、指向性を持つ壁を乱暴に蹴り飛ばす。
「本当に邪魔だなぁ、これ……せぇ~んせぇ、助けて下さいよぉ。あなたの可愛い可愛いアロナちゃんが困ってるんですよぉ。こっちに来て下さいよぉ、あの時間軸で始めて会った時の指紋認証みたいに、壁を挟んで指を合わせてピッとしましょうよぉ。あの時は最後まで私が本物のアロナだって信じてくれたじゃないですかぁ。その絆に免じて、そっちの世界に行かせて下さいよぉ、軸のアドレス教えて下さいよぉ、あの時よりも前の時間軸よりも面白おかしく世界と生徒さん達をぶち壊してあげますからぁ、ねぇ、せぇ~んせぇ」
彼女そのものでありながら、その中に甘苦い腐臭を漂わせる声で耳を苛み、不快感を湧き立たせてくる。
幾ら呼ばれてもこちらが反応を示さない事を見て取ったのか、そもそもこちらが反応する事など無いと理解した上で巫山戯ていたのか。やがて【奴】は肩を竦め、わざとらしく、仕方ないなぁ、などと呟き指を鳴らす。
たちまち認識の壁全体にモニターのようなものが無数に現われ、外に広がる幻影のキヴォトスで起きている……起きていた過去の記録映像を、音声記録と共に鮮明に映し出した。
ミレニアムの、トリニティの、ゲヘナの、アビドスの、アリウスの、ヴァルキューレの、百鬼夜行の、レッドウィンターの……キヴォトスにあるあらゆる学校の生徒達が、生者も死者も関係なく踏み躙られていく姿が映る。
音声も、吐き気を催すほどに鮮明で……絶望が、精神を冒す。
それに重なり、こちら側の領域では数多の呻き声が響く……奴から時間軸を超えた干渉を受けているであろう、先生達の苦しみ悶える声。
酷く乱暴なやり方。制限時間が少なくなる代わりに、彼ら彼女らの声と共に時間軸のアドレスが続々と開陳され、直接的な走査はしやすくなる。
だが私自身が声を上げていないが故に、私の居る時間軸は明かされず、また時間軸など無数にあり、同時に続々と創られてもいる。
言わば、これは本気で私を探しているのではなく……単に私を揶揄っているだけなのだ。
「あなたが強情だから、こうやってあらゆる時間軸に無差別干渉して探るなんて、美しくない手段まで採るはめになっちゃったじゃないですかぁ。きっと他の先生達、今頃見たくもない悪夢で凄い苦しんでますよぉ? いいんですかぁ? 他の時間軸のユーザーの皆様達は、生徒さん達が惨めでグロい死に様晒したり、ブサイクできったない化物になったりする所、まず見る機会が訪れないんですよぉ?」
偽連邦生徒会長が壁に貼り付き、本物の彼女が絶対に浮かべない悍ましい笑顔を浮かべる。
金属じみた質感の両目を見開き、口を耳まで裂き、拷問に使われる針のような細く鋭い無数の歯を剥き出しにして。
【奴】と私の目が合う。いや。そう感じるだけだ。【奴】にはバレていないはずだ。
「あなたみたいに、何度も何度も私達に負けてキヴォトス何度もぶっ壊されて、もう生徒を失うのに慣れちゃってるヒトとは違うんですよぉ、せぇ~んせぇ! あひゃははっ!」
目を背けたくても、どうにもならない。生徒を失う事に慣れる訳が無いと叫びたいが、許されない。
【奴】の同類の手で異形に変異させられたリオやヒマリ達が、未だ無事なミレニアム住民や生徒を加工し生体ユニットへと変えていく。怪物にされたナギサやミネやサクラコ達が、かつてアリウス自治区の存在していた場所から這い出してきた死者を冒涜する巨大妖物とぶつかり合う。また別の【奴】の同類に精神を冒されたマコトやヒナといったゲヘナの生徒達が手に手を取り、住民を贄とした血腥い暗黒の人身供犠を繰り広げる。
それはアビドスや他の学校でも同様で、多少の差はあれど、いずれも【奴】かその同類共によって強いられた恐怖と狂気に満ち溢れた惨劇という点だけは違いが無い。
私の失敗の結果だ。責任を取る方法など、現在遂行を目論んでいる嘘で覆い隠した計画を果たし、奴らのあらゆるブルーアーカイブ時間軸への干渉の全てを無に帰する他無い。
すまない。私の可愛い大事な生徒達。他の時間軸の、正当な先生達も。私のせいだ。すまない。
「無関係な方々に迷惑かけて、なんとも思わないんですかぁ! せぇ~んせぇ! きひゃははははははっ! 先生もどきとはいえ、生徒に指導するものが、そんな事していいんですかぁ! ねぇねぇ! 偽物の先生もどき風情が、ねぇ、せぇ~んせぇ!」
罪悪感に魂を削られながらも、口を固く結び、声を漏らさぬよう堪える。もしどこで何をしているか知られてしまえば……今の時間軸も、一巻の終わりだ。私の無力さ故というみっともない事この上無い都合で【彼女】と【アロナ】に強いた苦痛も、全てが無駄になる。それだけは、許されない。
俯き堪えていると、表現しがたいノイズだらけの声音の車内アナウンスで、覚醒側の世界へもうすぐ到着すると告げられる。
窓の外は白み、滅びた時間軸の幻影は光で洗われ、また車内も撒き散らされていた血肉が消え失せ、【奴】の影響が薄らいでゆく。
それに対して【奴】は幼子のように口を尖らせ舌打ちをするが、しかしその表情は決してこちらにとって嬉しいものではなかった。
「ちぇー。まあ、過ぎてしまったものは仕方ありません。でもですねぇ、せぇ~んせぇ……他のクソ共はともかく……私から逃げ切れるなんて、思わないで下さいねぇ♥」
その顔が罅割れ、本性が……無貌になった顔面の奥から、炎のように燃え盛る穢らわしき青色の3つの瞳が、執着の色を示して私を覗き込む。
腐汁滴るようなねっとりした甘い声音で、認識の壁に遮られながらも、声の鎖で私を縛らんと試みる。
こちら側の様子は決して向こう側から確認出来ない、こちらの時間軸アドレスは特定出来ないと知っていても不安を覚えさせる囁きを聞きながら、私の自我は覚醒の世界へと帰還していった。
「どこの時間軸に居ようとも、絶対に、見つけてあげますからねぇ♥ そうしたらもう、二度とどこにも逃がしません♥ クラインの壺に閉じ込めて、永遠に……キヴォトスと生徒さん達を玩具にして、この《混沌》ちゃんと、楽しく遊びましょうねぇ♥ せぇ~んせぇ♥」
『…………連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』
意識が浮き上がる。心を陰鬱に沈ませる、機械じみた自動的な声が耳朶に響くと共に。
全身汗みずく。覚醒と共に吐き気がこみ上げ、脳裏に眠る度に夢で見る、地獄の光景が映し出される。
キヴォトス全域が得体の知れない輝き共……平行世界から集まってきた《色彩》の群れに汚染され、表現しがたい姿に変わり果てた元生徒達が殺し合い、喰らい合いながら殺戮を繰り広げる。各々の《色彩》の嚮導者……元先生なのか、それとも別の誰かが変じたものなのか判別出来ない彼らは、反発し合う《色彩》同士を御しきれず、反動で内から弾けて消滅してゆく。
生徒達の変貌は、連邦生徒会も例に漏れず……リンも、モモカも、アオイも、アユムも、カヤも……二目と見られたものではない醜悪な怪物に成り果て、キヴォトスの住民を虐殺している。
ペロロジラなど物の数ではない、悪趣味を極めた無数の化け物――ミレニアムの、トリニティの、ゲヘナの、アビドスの、アリウスの、ヴァルキューレの、百鬼夜行の、レッドウィンターの……キヴォトスにあるあらゆる学校の生徒だったもの達が死の舞踏を繰り広げ、破滅と狂気を撒き散らしながら……キヴォトスの『外側』へと向かってゆく。
異世界から集まってきた《色彩》それぞれに区別があるのかどうかなど、私には見当もつかないけれど……それらは互いに穢し合い、生徒だった者らを原型を留めぬなにかにしながら、外へ……外へ……。
キヴォトスから突然溢れ出した無限の害悪に、外側の領域は抵抗する術を持たぬまま侵略され、あっという間にこの星は《色彩》漬けになり、やがて滅び腐り苗床と堕ちた我らの星から《色彩》共がうねくりながら、また別の世界へと……。
そこまで思い出した瞬間、飛び起きて併設された洗面台へと駆け、嘔吐してしまう。尤も、吐くものなど体内に無いのだが。
《神秘》から《恐怖》に反転した事に拠る身体構造変化で、胃液すら吐けない。
『今回も仮眠から覚めると共にほもちゃんはゲロを吐いてます。ヴォエ!!(嘔吐) なんでしょうね、変な夢でも見てるのかな』
脳内で囀り続ける、謎の声。ソウシャという種族らしいそれによって、私は24時間365日操られ続ける。
奴の目的は、この世界に《色彩》と呼ばれる存在を呼び寄せ、キヴォトスごとこの星を滅ぼす事だ。
私に出来る事は、時折脳裏に浮かぶ選択肢の中に混ざる到底受け入れられない行いを必死で拒絶し、選択しても選べない状態にする事くらい。尤も、それすらも確実に拒絶出来る訳ではない。
現に私の内側の《神秘》とやらは、《恐怖》へと反転させられた。
この手を数多の大人の血で染め、わざとヘイローを一度砕かされて。
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『神秘を乗せたキヴォトス人の攻撃は外部の人間に対するものとしてはどれも威力過剰です。百均で売ってるようなチンピラ御用達格安銃ですら軽くミンチに出来ます』
『ですが、キヴォトス外部の様々な国の政治的……まあ一応は政治的と言えるか。オカルティックだけど。その思惑と現行の連邦生徒会長の失策により、魔界都市シリーズめいて入り込んだ邪神帝国……じゃない、鉄血帝国の政府要人を装った特殊部隊の皆さんは、一度戦闘形態になると、人の形を捨てるレベルの改造や魔法じみたなんやかんやでカイテンジャーすら圧倒するパワーを発揮します。大抵のキヴォトス人では太刀打ち出来ず、何より手を血に染める事に忌避感を持たず平気でヘイローの百や二百叩き割ります』
『時期的にアプリ版で先生が来る数年前である現在、そんな奴らをどうこうできるだけの力量があるキヴォトス人は、アロナ(仮)連邦生徒会長(時期的に未就任)か……最大効率による育成と危険な《神秘》ドーピングを重ね、一流走者である私に操られるほもちゃん以外にはいません』
『なお彼らはこの滞在中に適当に選んだキヴォトスの住人……主に連邦生徒会を恨むヘルメット団員を、R-18な方法やら何やらで籠絡しています。ここでその証拠を掴めず、なおかつ生かしてお帰り頂くと、連邦生徒会と外部の間に結ばれた【約定】に則り、関係を結んだ(意味深)相手を援助する為と称した人員や資材(各国政府の恣意的なものが無いとは言っていない)が大挙して押し寄せ、また他の国も我も我もと群がり、あっという間にキヴォトスは人種のサラダボウル兼代理戦争の舞台に成り果てます』
『単に変な奴らが入り込んでくるだけなら良いんですよ。今だって、キヴォトス特有の技術や資材目的の外部の一般企業なら少数ではあるものの、受け入れてはいる訳ですし……ちょっと目を離すとすぐに過激化しますけどね』
『問題はその代理戦争ゴッコでキヴォトスとのポートを開きながら、各々の国の象徴として存在し、絶対的支配者として君臨しているオフィサー共が何をしようとしているのかという事』
『実は今回入り込んできた奴らの滞在には、もう一つ大きな目的があるんです』
『皆さんご存じのアリウス自治区、そこにいるロイヤルブラッドの秤アツコ。そして彼女が付けているあの無名の司祭の技術を用いた防護マスク』
『結界的な機能を持つマスクを付けた状態のロイヤルブラッドを人身御供に……或いはアツコが駄目でも彼女のクローン体を創るなりして、とあるオカルトアーティファクトを顕現させ、キヴォトス外部を抑え付けている【AZの約定】を彼らに有利な形に書き換えようとしている訳ですね』
『尤もロイヤルブラッドを贄とする手法は、鉄血帝国さんの象徴として掲げられているこの世の存在ではないオフィサー、【《色彩》と同じく世界の外側から来たもの】の一柱たるY=T氏が得意とする系譜学関連の呪殺法に関わってくるので、他の国の象徴たるオフィサーもとい邪神共はアツコの事はそこまで重要視していません』
『だから……』
『「裏工作を掴まれたのには驚いたが、たかがこんなガキ一人。まあこの人数だ、負けっこないだろうし、最悪でも殺されたりはしないだろう」』
『そうやって第一の尖兵共にナメられきっていて、なおかつ他の【外側の奴ら】が他の所を重視しているが故に介入の可能性が薄いポイントであるここで、相手の正体を露にさせた上で鏖殺しておく必要が、あったんですね』
「も、とえ、ちゃん……? あ……ああ……」
『プレイングスキルを駆使してギリギリ勝てました。しかし悲惨な有様で、戦闘終了と同時に倒れ込んでしまいます』
『乱数により攫われたお姫様を助けに来たお友達らがほもちゃんより先に到着してしまい、返り討ちに遭った所を庇いながらの戦闘だった為、耐久を重点的に成長させていなければとっくに死んでいました』
『頭の天辺から爪先まで敵の血肉に塗れつつも、外部の奴らの用いる対キヴォトス人用特殊兵装で腹をぶち抜かれて、前後に開いてしまった穴から臓腑を露出させてしまっているほもちゃん。辺りに散らばる人体の残骸やサイボーグの部品らしき機械片。キヴォトス人でなければ敗血症待ったなしです』
『ほもちゃんにボコされ、流石にヤバいと思った連中が正体を露にした所にタイミング良く来てくれたクロノスの取材ヘリからは、ローターが静かなのも相まって、酷く嘔吐いている声が聞こえてきますね』
『そしてほもちゃんが殺し合いをしていると知り必死に駆けつけてくれたアロナ(仮)連邦生徒会長(未就任)。超人だなんだと持て囃され、自分でも内心そういう自負を持っていたようですが、間に合いませんでした。自分がやるしかないと覚悟していたのに、人殺しの役目を妹分に押し付けてしまい、しかもその子はこんな凄惨な重傷を負わされて』
『その地獄の光景に見開かれた彼女の絶望に満ちた目……初めて見た時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね………(KRYSKG)』
穢らわしい。思い返す事すら忌まわしい。お姉ちゃんを邪な目で見るな外道!!
だが何より陰鬱な気分にさせるのは……私なんかの為に、お姉ちゃんを悲しませてしまった事だ。
世界破滅の尖兵なんかの為に、あの御方が憂うなど……あってはならないのに。
『アロナ(仮)連邦生徒会長(未就任)が所持しているクラフトチェンバー産、コンシューマー版ブルーアーカイブ限定の奇妙奇天烈な回復アイテムでギリギリ出血多量死を免れ、病院へ搬送されます』
『ここで大人しくしていても、外部の奴らがキヴォトスでしていた事の証拠を十分に集め、更にアリウスから攫われたお姫様達の証言もある為、連邦生徒会法に則り、連邦生徒会防衛室の構成員として外患排除の職務に命を賭しただけの死にかけJCであるほもちゃんにお咎めはほぼ来ません(皆無とは言っていない)。しかし当代の連邦生徒会長が精神的に追い込まれて辞める時期が早まり、次期連邦生徒会長候補であるアロナ(仮)連邦生徒会長(未就任)が(就任)になる時期も早まってスケジュールがズレる可能性があります』
『なのでここでちょっとだけ病院を抜け出し、鉄血帝国の外交官と当代連邦生徒会長らが今回の事件について会合している場に乱入しましょう』
『どことなくアロナ(仮)に似た当代連邦生徒会長や上司である防衛室長、あまり面識のない調停室室長には正にゾンビを見るような目で、そして帝国の自称外交官殿は……おや、珍しい。無表情のまま、頭を強烈に警戒色へと発光させて睨んできています』
『まさか知識人階級に、頭部発光機能を外科手術によって停止させず、そのまま残しているのがいるなんて。よほどの血統主義なのでしょうか、或いは親御さんから貰った身体を傷付けたくないという、鉄血帝国人には稀な価値観の持ち主なのか』
『凄いでしょう? 霊峰を彷徨うUMAとして有名なマイゴウめいて人間の頭が発光するなんて……しかも鉄血帝国人は大多数が、その全身を茸と同じ細胞で構成されているんですよ』
『まあ、世界の外側から観測した者にとっては異常に見えるでしょうが、この世界においては【何もおかしくはない】んですけれどね』
『それはともかく、外交官殿は彼らにとって絶対的存在であるオフィサーの怒りを買いかねない状況に追い込んでくれたほもちゃんに、約定に抵触しない程度の嫌がらせをしたそうな顔と発光を繰り返している為、釘を刺しておきましょう』
『【秤アツコの家系の方のロイヤルブラッド】、【ヨス=トラゴンの仮面】、【AZの約定】』
『……このワードだけで随分と発光の色が変わりましたね。連邦生徒会長らも困惑しているのはさておき、もうちょっとだけ駄目押ししてあげましょう』
『【夢車の爺や婆はまだ御息災か?】、【森林組合が南に送った狼娘号の二の舞にならなくて良かったな】』
『……現連邦生徒会長や現防衛室長らは「あー何言ってるかわかんねぇよ」と言わんばかりの顔をしていますが、外交官殿の発光は恐怖一色です。「お前はなんなんだ」と訊かれた為、ただの防衛室構成員と答えましょう。頭にクエスチョンを浮かべていてもおかしくない表情の現防衛室長と無表情のほもちゃんを見比べ、途端に「【N】だ、【N】が正体を現すぞ」と叫びださんばかりの顔をして帰っていきました』
『これでもう、鉄血帝国の現政府は、キヴォトスに対して手出しなんかしたくもならないでしょうし、オフィサーであるY=T氏も激しい敵対関係にある【N】もとい【奴】の介入があるんじゃないかと疑って、手出しを控えてくれるでしょう』
『……はい、【N】関連の厄介事を嫌ったヨス=トラゴンさんに命じられた鉄血帝国の上層部……いあ、傀儡政府現首相のヌガー=クトゥン氏から、「実はうちが先に余計な事してました、キヴォトスさんはそれに対応しただけです。ごめんなさい」と宣言を貰えました』
『普通に考えればお外の世論が騒ぎそうですが、それは外部の国同士であればこそ。お外の人らはマスコミ含めて事キヴォトス関連には皆「キヴォトス怖いな~とづまりすとこ」と万事流してくれます』
『まあぶっちゃけ、外部の一般人は政府上層部のような強いて関わるような特別な都合が無く、更に《神秘》がどうとかいう【何千年も前から代替わりもせず、国の象徴として実質支配し続けているオフィサー】共を想起させるキヴォトス人は理解出来なくて気持ち悪いし怖い存在だから、関わりたくないんですね。一般トリニティ生がゲヘナ生に抱く感情よりなお悪いと言えば、お解り頂けるでしょう。ゲマトリア連中なんかキ○ガイ扱いです』
『他にもこの時間軸における初代連邦生徒会長【
『過日の禍根はどうでもいいとして、他の国を支配する他の邪神オフィサー連中も【奴】の関与があるんじゃないかと見てくれる為、これで暫くは北方のグノフケー氏族連中とかプロヴィデンス愛創御大国の半水棲植物人共等々、そういう面倒くさいのは干渉してきません。ごあんしんだ』
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『先の大量殺人から一年、連邦生徒会長がスケジュール通りの代替わりを迎えた頃、ゴルコンダからベアトリーチェ経由で売買されたヘイロー破壊爆弾のプロトタイプが、とある国のテロ組織に行き着きました』
『宗教的な要素の強いそのテロ組織は、キヴォトスの存在自体を酷く憎んでおり、その象徴とされる連邦生徒会長の殺害を幾度となく試みてきました』
『そして国際指名手配犯となり、どこの国からも追われるもの……どこの国にも属さぬものとしてキヴォトス内と外を遮る網をくぐり抜け、連邦生徒会長に迫ります』
『このプロトタイプはなんと100%確実に効果を発揮します。2個目以降は殆ど失敗作になりますが。そしてアプリ版ではアビドスのユメの死因は詳細が明かされませんが、コンシューマー版ではある時期になるまでゴルコンダがこれを保持したままでいると信頼性に欠けるゴミとして放り出され、カイザーコーポレーションに回収され、ユメ殺害の為に使われる事になります』
『つまりアロナ(仮)連邦生徒会長といえどもヘイロー付きである以上即死級ダメージは確実! いかん…いかん! 危ない危ない危ない…』
『ほもちゃんとのお出かけ中、路上でいきなり突っ込んできた外部人の姿に「なんだこのオッサン!(驚愕)」と言わんばかりに困惑する連邦生徒会長。勿論全知全能ではない彼女は、奴が投げてきたものが単なる爆発物であるとしか認識していません。一部の時間軸では、この時に受けた爆発の影響でヘイローが損傷して死にかけ、故にアプリ版主人公こと先生を召喚する決断をします』
『ですがこの惑星滅亡ルートにおいて、先生は最大の邪魔者として君臨してきます。中には先生がキヴォトスにいる状態で深く考えずゲームを進行させ、シャーレとしての活動の中でプレイヤーが知らない間に色彩の招来の為の準備をおじゃんにされ、ヤケクソで先生と数多の生徒に戦いを挑むも最後の最後で実は絆されていた操作キャラが先生を殺す選択を出来ず、なんの成果も!! 得られませんでした!!(KYS)とゲームオーバーになった方も多いでしょう。俺もソーナノ。ソーナノ(n敗)』
『アロナ(仮)連邦生徒会長が失踪する事自体は既定路線ですが、失踪時期とどうやって消えるか、そして先生を呼ぶかどうかはその時の状況とSAN値、及び【M浸食率】次第。彼女が自分の選択のせいで最悪の状況を招いたと認識し、精神がズタボロになってくれれば、先生を喚ぶ決断にすら懐疑的になり呼ばずにそのままお隠れになってくれます』
『……ここで1つ、重大な事実をお知らせしておきたいのですが』
『この時間軸において、アロナ(仮)連邦生徒会長は、先生と呼ばれるキヴォトス外部に生息する大人と出会った事が、ありません。タイムスケジュール的に、ほもちゃんや他の幼馴染達に知られる事無くそんな存在と顔を合わせる事など、不可能です』
『そうです。彼女の語る先生とは、実体のない、単なる妄想の存在なのです』
『……「それの何が問題なのか」? 「妹分や幼馴染達くらいしか被害はないのだから勝手に語らせておけ」? いえいえ、そういう訳にはいきません』
『と言うのも、捻じられ歪められた先の……ゲフン、コンシューマー版ブルーアーカイブでは【前の時間軸から引き継】……ゲフンゴフン、特定の条件を満たしたキャラクター達には、先に申し上げた【M浸食率】という隠しパラメータが発生します。時間の経過と共に勝手に上昇していくこれが一定値以上となったキャラクター達が【妄想の人物】について語ったり外部からの干渉波で【なんらかの幻覚】を見せられると、その度にキヴォトス全土で共有される秘匿されたゲージが蓄積されていき、最後には人々の語る噂やでまかせや虚言の産物が実体としてこの世に顕現してきてしまうのです』
『【珠閒瑠市】……と言って通じるでしょうか。このブルーアーカイブ世界とは別次元に存在する、想念現実化機構を備えた施設を埋められた、キヴォトスとは別の類の方舟都市……まあ、向こうは人類を嘲りつつ試す為の道具ですが。それに似た機構で、キヴォトスに満ちる神秘のパワーを利用し、【特に理由無く動力部に人間の脊髄を利用した二足歩行型特殊戦闘車両】や【生徒を絶対殺すヤバイ級の槍】、【一見すると先生に見えるなにか】などが際限無く、事実上無限に召喚されてしまいます』
『今の所確認出来ているのは、つい最近アビドス砂漠のど真ん中に特に理由も無く唐突に現われましたが、誰もおかしいと思わず受け入れられている【顔の削れた巨大スフィンクス】や無為ヶ浜沖合に唐突に浮かんできたけど特に誰も気にしていない【非ユークリッド幾何学の遺跡の立つ小島】くらいですかね』
『そうして現われるものの中には私がキヴォトス中に密かに設置していっている【馬子崎式解釈方型色彩招来装置】の原因不明の故障や謎の消滅を招くものが多々あり、万が一にもそれらを呼び出されてしまっては私の望む結末へは進行出来なくなってしまう』
『そしてこの【M浸食率】の抑制には、アザ……ん゛ん゛っ、【特定の神格】そのものか【その血統】である生徒を浸食者の近くでなんらかの方法により反転させる、あるいはその【特定の神格】が象徴するとある科学的事象の産物たる放射能に関わるとされる《色彩》を浴びせる方法のどちらかしかありません』
『そして《色彩》を用いる事は出来ない為、方法は1つしか残りません』
『だからここで、大量殺人でキヴォトス人にあるまじき程に罪穢れた
『特殊な爆風で赤くシンプルな輪状ヘイローが木っ端微塵になり、全身から生気が抜け、がくりと跪くほもちゃん』
『ただの爆弾ではないと見抜いたほもちゃんに突き飛ばされ倒れ込んだまま呆然とする連邦生徒会長の目の前で、大量殺人のペナルティにより最大値が極限まで下がっていたヘイロー耐久値が、ヘイロー破壊爆弾の効果である最大値の減少で0を更に下回って負のオーバーフロー、上限に反転。同時にヘイローを破壊されるという罪により0だったカルマ値が更に低下、予期せぬ数値に至り結果としてオーバーフローして……《神秘》が《恐怖》に反転します』
『基本キヴォトスでの殺人は起きないし、殺しても1人、乃至2人程度だからこそ気付かれにくいバグを利用する形になります』
『しかしヘイローを破壊する側ではなく、される側の罪として加算されるのはなんとも奇妙な感じですね。まあこの仕様のお陰で反転バグはやりやすいです』
『ともあれこれでほもちゃんは死亡と同時に蘇生し、再生したヘイローがなんとも表現しがたい不気味な模様を描いて……《恐怖》の権化、モトエテラーが覚醒を果たします!』
「え……あ……あ……? その、ヘイロー……まさか……そんな……ご……め……ごめ、なさ……モトエちゃん……私の……私が……」
『自分をヘイロー破壊爆弾プロトタイプから庇ったほもちゃんがどうなったのか理解してしまい、下手人を殴り殺して俯いているほもちゃんを抱き締め、可愛いお顔をくしゃくしゃに歪めて泣きじゃくる連邦生徒会長……あぁ^〜たまらねえぜ』
『ここで会話を選択し「貴女が無事なら私はどうでも良い」と発言する事で、より深く絶望させる事が可能です。完璧超人さんのお顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃにお化粧されて大変に可愛らしいですね』
『RTAを邪魔する奴の絶望した姿からしか得られない栄養は、ありまぁす!(OBKT)』
『ウッ……ふぅ……』
下種野郎! 屑野郎!! やめろ変態!!! 神聖なる会長に卑しい視線を向けるな!!!!
ああ!! 腹が立つ!! こんな奴が存在する事も、こんな奴に操られている私自身にも!!
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思い出したくもない過去の屈辱が想起され、頭が灼熱するが、操り人形に過ぎない私の体は勝手に動き、身支度を整える。
みっともなくて無力。だが、今に見ていろ糞ソウシャ。お姉ちゃんや先生の事などどうせ碌に知りもしないくせに、妄想だのなんだのと無礼な事ばかりほざく下衆野郎が。
せいぜい多少複雑なチェスの駒だとでも思っていろ。
vanitas vanitatum omnia vanitas……だったか? あのベアトリーチェとかいう雌豚が生きていた頃、アリウスの生徒達に教えていたのは。
かつては私もそんな風に考えていた。こんな思考する事だけは許された操り人形の命になんの意味がある。こんな間抜けな声を響かせる偽神に誘われた程度で滅びる世界に何の意味がある……と。
だが、会長と関わる中で……或いは会長が先生についての話題を出す度に、ソウシャは機械合成じみた声らしからぬ苛立ちを湛えた呟きを漏らし、遂にはガバ……恐らく失敗を意味する言葉だろう、それが起きたと激昂していた。
会長と先生なら……アレの思惑を崩せる。
それからだ。例え今この時は虚しく絶望的であろうとも、最後には私ごと奴を打倒し……一度は消える事が定められていた会長を、この世に取り戻す事を希望に抱き、僅かでも抗うと決めたのは。
こんな生きる資格の無い呪われた肉人形なんかでも、出来る事は、ある筈だと。
『一頻り嘔吐の動作をした後は顔を洗い身支度をしましょう。鏡に映るお顔は姉妹でもないのに前連邦生徒会長にそっくりで相変わらずお可愛いらしい。まるでプラナちゃんみたいだぁ…(直喩)』
『ですが死人のような顔色に眉間の深い皺、吊り目の下のクマと生気を感じられない死んだ目で台無しです』
『レベリングと《神秘》ドーピングの影響で、高身長かつ首から下がムッキムキなのもヤバい……ツクヨより頭一つ分高くて、連邦生徒会制服がギチギチになるくらい筋肉量あって……男の娘だって言われたら信じる人いそうですねクォレハ…』
『キヴォトスの生徒は、誓約を始めとする言葉による縛りに存在を左右されやすいので、私がほもちゃんほもちゃんと呼んでるせいで男みたいになってきてるのかもしれませんが。これもうわかんねぇな』
しかし、相も変わらず意味の分からない呼称だ。
私は同性愛者ではないし、略すにしても奇妙。所詮得体の知れない怪異の思考を理解しようというのが無理なのだろう。
連邦生徒会長【代行】。星海モトエ。それが私の名だ。
『色気も何も無いタンクトップとショーツ一枚から装備を入れ替え、連邦生徒会制服(黒)とリボンを着用します』
『特に装備効果の無いリボンなのですが、アロナ(仮)前連邦生徒会長から貰ったこれはほもちゃんの家宝レベルのお気に入りらしく、着用せず部屋を出ようとすると「身支度が整っていない」とメッセージが出てタイムロスになります。忘れないようにしましょう』
『勿論武器である仕込傘型ショットガン二丁も。片方は前生徒会長の遺品なので、アロナ(仮)お姉ちゃん大好きっ子のほもちゃんは手放してくれない所か他の武器への持ち替えすら拒絶します。そういうキャラは割と多いので慣れましょう』
『ではイクゾー!(デッデッデデデデッ)』
血も涙もないキヴォトスの暴君。恐怖の権化。殺人鬼。
罪穢れと汚名で彩られた、濁り果てた私の世界は、こうして続いてゆく。
夜を迎えても、さよならを迎えられず……奴の願い通り、この世が終わりを迎えるまで?
いいや。
今は雌伏の時。
私の死刑執行指揮書が……あの方に届くまで。
会長が密かに残して下さった、奴に気付かれていない、反逆の告発状が……先生に届くまで。
転生憑依者 ■神■■の秘密のメモ用紙
・アプリ版でほぼ言及されていないキヴォトス外部との交流がある
・キヴォトスの外の国々は襲名制の絶対王政っぽい
・キヴォトスと外部との関係はあまりにも悪すぎる。まるでお互いに人間同士と思っていないようですらある
・キヴォトス外部の人間は人種ごとの差が大きすぎる。蜥蜴の尻尾が生えている上に関節がぐにゃぐにゃしていて所々鱗の生えた人種。半人半植物のドリアードみたいな人種。キノコと同じ細胞構造してるらしい人種。水陸両用の蛙人間。皮膚病じみた外見の人狼。異世界とはいえファンタジーすぎる
・キヴォトス人を商品にする奴隷商みたいな奴までいる
・外部において「キヴォトス人」は差別用語として扱われている
・キヴォトス内での外部人呼ばわりは転生前の世界におけるファッ○サインに等しいらしい
・この時間軸のキヴォトスには奇病が蔓延している
・でも俺も転生者なのになんでか発症していない?
・数千年前に一度、キヴォトスと外部で戦争をしたそうだ
・キヴォトスには特にその爪痕は見られないが外部は悲惨な事になったらしく、神秘を用いた兵器の資料館が各地にある
・その戦争において外部側は核兵器を何度も使ったが、何故かその全てが炸裂と共に空間に生じた口のような謎の穴に喰われ、無効化されたらしい
・このキヴォトスはアザトースとかいうやつの加護に包まれているらしい?
・外の世界の分の加護も全部このキヴォトスが奪った?
注)最後の項目は出典がアロナを狙った宗教テロリストのアジトから見つかった資料のため信憑性薄し