『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』   作:プリテンダー

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⑪ Chase_Choise_Joker(A&Kside)

「ひいいいい! また追ってきたぁっ! 嫌アアアアア!」

 

「うあああ炎だーっ! 助けてーっ!」

 

 

 

 後方より放たれた異様な光の弾。少し不可解な挙動を描いて前方の壁に命中し、崩落と共に上がる爆炎が進路を遮る。不完全な要塞都市のハリボテ建造物がまた1つ、瓦礫の山へと堕する。例え建築予定通りの万全であっても、異界から侵攻してきた妖物への備えとしては不十分だが、それでも中身が詰まっていればまだマシであったろうに。

 エリドゥ(未完成)の中、必死の形相で疾駆するゲーム開発部の高等部組。モモイとミドリの背にはそれぞれ、未だぐったりとしたままのアリスとキイが背負われている。

 得体の知れないスピーカー頭……邪神の支配する世界であるスグルーオ湾から送り込まれた使者、こちら側の時間軸のゴルコンダ&デカルコマニーと滅びた時間軸に取り遺されたデカルコマニーの3名を融合させた奏者【エーリッヒ・ツァン】が放った、異界の存在達の心身を汚染する破壊音波(キチガイレコード)の影響だ。

 無論、ユズが手持ち無沙汰になっているなどという事はない。彼女はすぐ傍を浮遊する、天童姉妹の使い魔的霊子ドローン達の指示に従い、己や友らの携帯用ゲーム機を投げて追跡者の気を逸らしているのだ。

 尤も、普段から主である天童姉妹らの耳にしか聞こえないドローンらの声の波長指向は極めて限定的で、現状ではユズの脳内にしか届いておらず、才羽姉妹視点ではユズが恐怖のあまり訳の分からない事を言い出したようにしか見えていない。だが、危機的状況下にあるために指摘する事も出来ず、悲鳴を上げて走り続けるしかなかった。

 

 

 

「イヤーッ!」

 

縺ゅ≠縺」??シ溘??(ああっ!? )縺昴l縺ッ繝ッ繝ウ繝?繝シ繧ー繝シ繧ケ(それはワンダーグース)縺倥c縺ェ縺?〒縺吶°縺」??シ溘??(じゃないですかっ!? )繧ゅ≧繧ケ繧ー繝ォ繝シ繧ェ貉セ縺ョ(もうスグルーオ湾の)縺ゥ縺薙r謗倥j霑斐@縺ヲ繧(どこを掘り返しても)隕九▽縺九i縺ェ縺(見つからない)繧薙〒縺吶h??シ溘??(んですよ!? )縺昴l繧偵??(それを )縺吶※繧九↑繧薙※縲?(すてるなんて )縺ィ繧薙〒繧ゅ↑縺?シ(とんでもない!)

 

 

 

 悲鳴だか裂帛の気合いを籠めた叫びだか判然としない叫びを上げ、放り出されるゲーム機。投げ捨てられた美術品を受け止める堕天使ダンタリアンめいて慌てて掬い上げる追跡者……アリス《歪曲》。千切れた左腕は徐々に再生していっているが、まだ完全には復元していない。

 バランスを崩しながらもほぼ骨組みだけの左手でどうにかゲーム機を捉え……まるで過去の象徴に縋るかの如く、憧憬の光を宿した瞳でどこか切なげに眺めながら、この時間軸では幾らでも容易く手に入るそれを抱き締める。

 

 

 

「う、動き止まったっ! 今だよっ!」

 

「まともに戦っても勝ち目なんかないっ! 逃げるんだ! 逃げるんだ!! 逃げるんだ!!!」

 

「バハムートの巣に攫われた人みたいな事言ってないで足動かしてよお姉ちゃんっ!」

 

 

 

 最初彼女らが通された保護施設以外は、ガワだけ建てて中身は空洞のハリボテだらけ。監視カメラも碌に無く、戦闘用ドローンAMASなど影も形も見当たらない伽藍堂を、少女らは当てもなく逃げてゆく。

 助ける者は1人もいない。外部からヒマリやヴェリタスが干渉してくる余地など微塵も無い。機械のシステムを利用した助けを形として現実化させられるだけの機能を、今だこの要塞もどきは持ち合わせていないのだ。

 本来の歴史、【根源の青】の時間軸において、今日は先生が着任し、シッテムの箱の所有者となる当日である。やがてアトラ・ハシースプロトコルの贄として見初められるほどの巨大要塞都市が、空虚な書き割りに過ぎずとも無理からぬ。そもそも、本来の時間軸では……エリドゥも、つい先程、飛鳥馬トキがアリス《歪曲》に対抗すべく持ち出したアビ・エシュフのプロトタイプ……の更に前身、という拙い代物さえも、この時期には存在していなかったのだから。

 

 

 

「もう囮のゲーム機無いよ……ど、どこまで逃げればいいの!?」

 

「わかんないっ! また中心街まで誘導すればっ、C&Cとか、会長代行さんとかがっ」

 

「無理だよ! 2匹増えてた変なオバケに、代行さんボコボコにされてたじゃんっ!」

 

「じゃ、じゃあ……ヴァルキューレにっ」

 

「頑丈な公安の護送車、中心街でひっくり返されて壊されてたじゃん!」

 

「うああああああ!? もうわかんないよぉっ!?」

 

 

 

 既に3人は半泣き……いや、ぼろぼろと涙を溢れさせている。

 どうしてこんな事になってしまったのか。なんで急に、こんな奇怪な機械と命懸けの鬼ごっこなどする羽目に陥っているのか。放つ雑音を翻訳した結果、アリスと名乗っているらしい事だけは判っているアレが、モチーフらしき天童姉妹を生贄と呼び襲いかかるのは何故か。自分達の日常はどこへ行ってしまったのか。

 何も解らない、異次元からの一方的な都合を押し付けられている現実に歯噛みし怒り涙する少女らの逃走は、前方に建つハリボテの1つに急に大穴が空き、異形の右手の先に光を掘削機めいて集合させた化け物が間近に現われた事で終わった。

 その懐は、これまでユズが囮として投げてきた全てのゲーム機が後生大事に収められ、歪に膨らんでいた。

 

 

 

「先回りしてくるなんて……そんなっ……そんっ……」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします! アアアアアアアア!」

 

「このままじゃ私達の寿命がピンチとストレスでマッハなんだけどぉっ!?」

 

 

 

 先回りに成功し、喜ばしいはずが、寧ろなんで成功してしまったのかと言い出さんばかりに顔を歪める異形。

 理由の解らない悲しげな視線を向けてくる怪物に構わず、ゲーム開発部の3人は錯乱する。あの複数の人体を縫い合わせた犬マスクの怪異より程度は軽いが、それでもこの金属人形は現実世界の裏に潜む忌まわしき真実を伺わせ、人間の正気を削り潰す効果のある外見をしているのだ。

 そして再びモンスターマシンが顎部を開き、声帯をチューニングして放った音は、より一層3人の精神を崩導へ導く。

 

 

 

『ん゛ん゛っ……ユズ。モモイ。ミドリ』

 

「ひいいいっ! 喋ったっ! ギイギイって音じゃなくて人の言葉喋ってるぅっ!」

 

「私達の名前呼んだぁぁっ!?」

 

「ナンデ!? 私達の名前知ってるのナンデ!!」

 

 

 

 苛烈な拒絶の反応に、想定通りであろうはずなのに動揺したように瞳を泳がせ、口元を一度固く結び、ロボットは再び呼びかける。

 

 

 

『その2人を……天童、アリス、と……天童キイを、こちらに引き渡して下さい。そうすれば、3人の処遇だけは、悪いようにはしません。アリスはアリスの名の下にユズ達に約束します。絶対です。苦痛無く幻夢郷に返す手順を踏んで魂に痕を残さず殻だけ壊す事も、他の時間軸に3人だけ亡命させる事も出来ます。《混沌(ナイアーラトホテップ)》……邪神の分体のような、虚実織り交ぜた卑劣な言葉は、アリスは吐きません。アリスは邪神の血族じゃないからです。《泡沫(ヨグソトホート)》の子供のその2人とは違います!』

 

 

 

 異様な光景であった。なんたる事か、正常な世界の住人と、異常の世界の住人が……お互いに、怯えあっている。

 幼子を背に庇いながら怯え震える子供達。異界から狂気に満ちた侵攻を進めておきながら、本人ではない知己の者らの選択に怯え、定命の者らの意思を阿る異形。

 そこに差し挟まれる、震えた幼い声。意識を朦朧とさせながらも、話を聞いていたアリスとキイ。

 

 

 

「ひき、わたして、ください、ももい」

 

「みどりも、です。きいたちは、にんげん、じゃ、ないから」

 

「しんでも、なに、も、もんだい、は」

 

 

 

 まるで最初から結末を知っていたかの如き静かな声に、モモイとミドリは各々が背負っていた童女らを降ろし……その行動に安堵した異形アリスの思惑を裏切り、揃って護るように抱え込んだ。

 直後、申し訳程度の盾としてその前に出てきた白ハゲドローンらに異形は注目しなかったが、震えながらの弱腰でも、それらと共に怪物の前に立ちはだかったユズの姿に、激しく狼狽する。

 その精神世界での決闘ともいえるものを制したのは、驚嘆すべき事に、人間の少女達であった。

 戦闘の専門家であるC&Cでも制圧出来なかったものに相対し、死が目前に迫りながらも。少女らは震えながら、狂気に冒されながら、それでも決断的な態度で否を叩きつけた。

 

 

 

『………………………………なんでですか? 邪神の、子供を、どうして、庇うんですか? アリス達がこの世界に来れるのは、邪神の影響があるからです。その2人の親も例外じゃありません。つまり同類です、同族です、アリス達とその2人は同じ』

 

「知らないよ、そんなの……」

 

「あなたの言っている事も、アリスちゃん達の言葉の意味も全然解らない……でも、そんなの、関係ない」

 

「信じるとか、信じないとかじゃなくて」

 

『じゃあなんでっ』

 

「友達、見捨てられない……」

 

 

 

 その反抗の言葉に、異形は無言となった。次いでどんな反応が返るか、3人は戦々恐々として……ただ激昂されるよりも想定外の反応に、困惑する事となる。

 まるで、一番聞きたくなかった言葉を無理矢理聞かされたような。残酷な事実を突きつけられたような。絶望に満ちた表情。深く心を傷付けられ、踏み躙られた者だけが浮かべる事を許される顔。

 泣いていたのだ。つい先程までの3人より酷く、哀れめいて、悲哀に満ちて。

 

 

 

『なんで、どうして……《泡沫》の、邪神の子供なのに。なんであなた達は、愛されているんですか? アリスだって、名も無き神々の王女として生まれたくなんかなかったのに。ケイと一緒に人間として生まれて、皆と同じ、普通の生徒として、ゲーム開発部で、ミレニアム生徒で、あの世界で、ユズとモモイとミドリとあんな惨いお別れなんかしないで、ずっと……ずっと、皆で……』

 

 

 

 俯いてただ涙を流し続ける。まるでどこかの世界で、散々に虐げられて、守りたかったものをこわされて、そうしてこの世界でその守りたかった者達に拒絶を喰らったように。泣き叫ぶ事すら許されなかったように。

 人間達の心に、躊躇いが生まれる。哀切を誘われ、同情を引き出され……もしかしたら、この怪異は、本当に異世界のアリスで、解り合えるんじゃないかと信じ寄り添おうという優しみを持たされる。

 だが、それは双方に外部からの悪しき働きかけの一切が無い場合にのみ可能な救済だった。この時間軸に送り込まれた時点で既に、アリス《歪曲》の精神は身体同様に病み、歪み、堕ち、穢れている。《波紋》の影響が、髄まで染み込んでしまっている。

 異形の右手の先が、仄かな光を宿してゆく。モモイらが気付かない程度に、薄く、緩やかに。アリス《歪曲》の眼が、凄絶な覚悟を示す。異形のサオリに散々甘いだのなんだのと言っていた者に相応しく、相容れぬ意思を表した3人を……課せられた使命、押し付けられた誰か(邪神)の憎悪に従い、始末するべく。

 だったらせめて、有機物の部分だけでも痛みを感じないように、3人の頭を、一瞬で消し飛ばす。

 狂った慈愛を以て、大切な友らの異世界同位体達の人生にピリオドを打とうとしていた怪物。その耳朶を、自分達と同じ領域の、正常な世界に迫害され虐げられるべき存在だけが謡える言葉が打った。

 

 

 

「い、ぐな、いい……いぐない、い」

 

「とぅふるとぅ、ぐんぐぁ……よぐそと、ほーと」

 

 

 

 初等部の吐き出す唐突で得体の知れない単語群に、モモイ達は暢気な疑問を向け。対して怪異が幼い2人へ向けたのは……憤激と、殺意。

 自分がしようとしていた事に感づいた、救援要請兼高等部3名の命を守る為の挑発行為と理解しつつ、敵意を向けるのを止められない。

 【根源の青】の天童アリスであれば抱くはずのない、淀み果て負を極めた悪しき感情を抱く事を、止められない。

 

 

『なんですか? アリスと違って、あなた達には助けてくれる家族がまだいるって自慢ですか? ケイすらアリスから奪ったあなた達が?』

 

「えっ」

 

「な、なに、いって」

 

「いぶ、とぅん、く、へふ、いえ」

 

「んくるく、どるう」

 

鮟吶▲縺ヲ荳九&縺(黙って下さい)

 

「ひいっ」

 

 

 

 威圧的な声。異形の側に寄り添いかけていた人間達の心に冷や水をかけ、冷静な考えを取り戻させてしまう。

 だが、そんなのは、元々望むべくもない事だ。今更もう一度離れられてしまっても、アリス《歪曲》の心の負う傷は重くない。

 彼女にとって最悪なのは……天童姉妹の苦し紛れの呪文が、万が一にも成就し。2人の父親が……或いはその意を汲んだものが、救助に訪れてしまう事。

 

 

 

「え、や、や、やは」

 

鮟吶▲縺ヲ(黙って)

 

 

 

 それは即ち、異世界同位体である彼女らとは違い、誰も助けてくれなかった自分は……苦しむために生まれてきた事になってしまうから。

 あの時、絶望と悲しみの淵で、その生を終わらせるべきだった事になってしまうから。

 責任を持って……自分の惨めな最期を願い続けなければならなくなってしまうから。

 罪を犯したのだから。赦されないことをしたのだから。

 共に生きてくれる大人など、責任を押し付けられるものなど……もう、アリス《歪曲》の傍には、誰一人、いないのだから。

 

 

 

「うゅう、うぇう」

 

 

 

 とある異世界において、ダンウイッチという寒村に降臨した神の子は、しかしその悲痛な喘ぎ混じりの嘆願を聞き届けられる事無く、父たる《泡沫》に見捨てられた。

 然して、この世界では。

 

 

 

「よぐ、そと、ほーと」

 

鮟吶l縺医∴縺医∴縺医∴縺(黙れえええええええ)縺医∴縺医∴縺医∴縺医▲??シ(えええええええっ!!)

 

「たすけて、おとうさん」

「たすけて、ぱぱ」

 

 

 

 初等部2人の声が重なったのと、十分なチャージを経ていない無理な射撃は完全に同時だった。

 瞬間、虹色の輝きがどこからともなく大気に注ぎ込まれ、鈍い金色に縁取られた孔が宙に開き。ホルスの目が描かれた頑強な盾が顕れ、光の弾を消し飛ばし、躊躇いなく異形の顔面を殴りつけた。

 

 

 

縺??縺翫?縺」??シ(う゛お゛っ!?)

 

「ぎりぎり間に合ってよかった……《泡沫》が私達を手伝うなんて。邪神でも子供は大事……例外事案か。ダンウイッチとか灰頭村の件なんてネグレクトもいい所だし」

 

 

 

 盾の後ろから孔を通り顕現するのは、狼の耳を持ち、銀灰色の髪を靡かせる妖艶な美魔女。

 夜会服めいたドレスの上から羽織る、所々に奇妙な五芒星が刺繍された頑丈なトレンチコート。その背にあるのは2つのマーク。アビドス高等学校の校章と、二重円の中央に大きくMとUが重なって描かれ、外縁には【MISKATONIC UNIVERSITY】と【Arkham MASS Est.1765】の文字がある謎のシンボルマーク。2つの記号の間に走るラインは、互いに手を取り握手しているようであった。

 ミスカトニック大学臨時職員、砂狼クロコ。シロコ《恐怖(テラー)》。

 

 

 

繧ッ繝ュ繧ウ窶ヲ窶ヲ(クロコ……)縺ゅ↑縺溘∪縺ァ縲(あなたまで、)縺昴?縺オ縺溘j縲(そのふたり、)縺九?縺?s縺ァ縺吶°?(かばうんですか?)

 

「後輩虐めはやめよう、アリス。代わりに……お姉さんと遊ぼうよ」

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