『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』   作:プリテンダー

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⑯ 人でなし共(わたしたち)人道探求(クエスト)(A&Kside)

「さああんた達! あいつらをズタズタに切り刻んで、トゥールスチャ様の玩具の育成用資材にして差し上げるのよ!」

 

「くるしい」

 

「だれかたすけて」

 

「さむいかゆいさむいかゆい」

 

 

 

 闇に堕ちた生徒の御霊の集積体がマエストロの生首を通じて放つバリトン声に含まれる命令信号、それに強いられた疾走の過剰負荷で、膝や足首から腐汁を弾けさせる屍鬼達。口から吐き出される呪詛はごぼごぼという水音が混じり、ドス黒い粘液も共に溢れ出す。

 モブ顔と呼称される蠢く死者らは、自分達が何をしているか、何を言っているかの一切を理解していないから、自壊の道を辿りながらもその行動を躊躇しない。真ん前にいるゾンビの足が崩落して転び、真後ろを走っていたゾンビが転んだ個体の顔を踏み潰す惨劇も所々で繰り広げられているが、葬列は止まらない。その腐敗した脳は機能しておらず、何一つ理解していないはずだ。

 特に強いられたり、顔面には衝撃を受けていないのに、まるで悲しみ悶えているかの如く勝手に緑色の液体が涙状に溢れ出しているのも、使い捨ての道具故のなんらかの不具合に過ぎないはず。

 静かな激情を満たし、クロコの瞳が葬者を射貫く。死者を冒涜し、同時に自身も外なる神により踏み躙られている、被害者でありながらそれ以上に加害者である元ゲマトリアの死体と元モブ生徒達の怨霊の融合物を。

 

 

 

「下衆野郎、性懲りもなくまた……先生。ちょっと力貰うね」

 

 

 

 自身の先生への宣言と共に、胸の谷間から取り出したカードを敵に突き付ける……外形がわからないほど焦げてはいるが、外側を薄い何かで被膜されており、ICチップが虹色の謎めく結晶板に置き換わっている大人のカード。

 引き継がれたカードを地に向け、ラインを引くかのように横一閃。結晶板が光を放ち、路上から光条が立ち上る。

 光は見た目通りの壁、結界であるらしく、モブ生徒ゾンビ達は獲物を前にしながらも光の壁にぶつかって止まった。

 そのまま後から後から押し寄せ、全力で特攻するゾンビ達。前に同類達が居ても関係ない。突撃をしかけた後ろの死体達に押され、最前線でバラバラに弾け飛んでも躊躇わない。

 

 

 

「しなせてしなせべっ」

 

「ぐびゅぶぶ」

 

「もうねむだびぇげっ」

 

 

 

 無理な疾走による自壊の分も含めて、クロコは何もしていないにも関わらず、敵雑兵は続々と数を減らしてゆく。

 実際以前にもこの対処方法で何度も退けられているのだが、合成ゾンビは覚えていない。脳が腐っているからだ。

 

 

 

「あっ!? なんでアヌビスがプレナパテスの大人のカード使ってんのよ!? それって詐欺罪になるんじゃ……あら? なんかアタシ、前にもこんな事言った覚えあるわね?」

 

「これで7度目、覚えておけホンオフェ野郎」

 

「このマネキン頭に詰まってる脳味噌が、マネキンのくせに腐んのが悪いのよねぇ! ちょっと瘴気と呪詛漬けになるだけで腐るような虚弱貧弱無能だから嫌なのよ大人共ってぇ!」

 

 

 

 自身を棚に上げた戯言と共に無数の炎蝿が飛び回る。ファンネルミサイルめいて隊列を描くそれらはばにたす、ばにたぁたむと薄気味悪い羽音に緑火を散らして突撃し、サージョン側の大人のカードに似た力で六文銭を消費しつつ飛来する。

 透き通った壁をすり抜けてくる穢らわしき蝿共を撃ち落としつつ、生きている方のゲーム開発部へと近付きつつあったゾンビの方のゲーム開発部3体を蹴散らす死の神だが、やはりこの世ならざる法則に守られている上位屍鬼達はまるで時間を巻き戻しているかのような挙動で折れた骨や潰れた肉を再生させ、しつこく異世界同位体を喰らうべく這いずってゆく。生きている方の開発部3名は白ハゲドローン達に引き摺られて退避させられているが、その速度は遅く、放置していればあっという間に追いつかれ、3人は異世界の自分に食い殺される。

 実の所を言えば、クロコにもこれらゾンビ共を打倒する手段があった。彼女は本来のプレナパテス時間軸ではなく、成功した側の時間軸……つまり【アビドス高等学校の生徒が誰一人犠牲にならず、その上で借金を返済し終えた時間軸】の出身なのだ。絶望の影など、微塵も無い。先生も平穏無事に暮らしていた。ずっと幸せが続くはずだったのだ。

 変数として数えられる特異点《恐怖》、砂狼クロコ、シロコテラーif条件個体へと変貌したこのif時間軸クロコには、《色彩》の断片が他の《恐怖》よりも直接的に、深層まで溶け合っている。本来他時間軸の破壊者として到来する完全なアヌビスと比較すれば相対的に弱体化しているが、神秘を喰らい破壊、浸食する能力を、その手で振るう事が出来る。

 ただし、彼女は《色彩》そのものではないので、効果範囲は調節出来ない。ここでやろうものなら多分、アリス《歪曲》はまだしも、ゾンビではない方のゲーム開発部の面々……高等部と初等部の全員まで巻き込み、殺害してしまうだろう。邪神の血縁者ならば、先程初等部達に生じたような軽度のコラテラルダメージは有りだが殺害はNGであるし、血縁者ではないゲーム開発部達を巻き込み傷害を加える事は信念に反する。

 その為にクロコは歯噛みしつつ、まず開発部の面々を持ち上げてこの場から離脱させ、然る後に浸食能力を行使せんとしていたが。

 

 

 

「あっ!? トゥールスチャ様ちょっと待ってっ!? アザトース様の子っていきなり何の事、あ゛だだだだだ!! カードの反動来てるから、衝動的な石課金とガチャはおよしになってぇんっ!?」

 

 

 

 最中、合成ゾンビが恐慌を起こし身悶えしだす。支配者の名を呼び、全身から骨の砕ける音と咀嚼音に似たノイズを放ちつつ、直立姿勢のまま飛び跳ね痙攣する。

 運の悪い事に、人間が動画サイトを閲覧するように数多の世界の死と退廃を覗いて愉しんでいた宇宙の墓場の主が、この時間軸に存在するとあるものを感知してしまったが故に、下僕共の戦を祝砲を上げる為の場として使うべく割り込んで来たのだ。

 下僕共からしても傍迷惑な輩の干渉により、空間に穴が空き、紫の穢れた靄を噴き出す石が大量に放り出される。石の山は勝手に動き出し、ぶつかりあい、砕け、1枚の紫と緑のグラデーションがかった封筒を造り出す。さながら、アリス《歪曲》がこの世界に侵入してきた時の再現の如く。

 そうして同じく封筒が膨れ、破け、内側から飛び出したのは、現在SRTで使われている最新式のヘリコプター。

 明らかに違うのは、機体前面に眼鏡を掛けた緑の眼のシャークノーズが描かれている点。プロペラが起爆ボタンめいた誰かのヘイローを想起させるものに変色・変形している点。緑色の靄を吐き出す鉄パイプのようなものが突き刺さったコックピットには得体の知れない緑色の粘泥が詰まり、機体の下に轢死体じみた人間の下半身が生えている点。それと極めて拙い自律稼働機能を持っている点だ。

 

 

 

「バクハツ! バクハツサセテ! ミサイル! バクダン! エスアァルティィ! ラビットショォタイ! センセェ! ゼンブ! ゼンブ、ダイナシ、ワタシノセイデ、ミンナシンデ、ダイナシニ……クヒ、クヒ、クヒヒ……ゼンブバクハァァァツ!」

 

 

 

 到底ヘリコプターを支えられるとは思えない細足で平然と全重量を受け止めつつ、がくがくと全身を震わせながらも訳の分からない事を叫ぶプロペラヘッドもどき。

 無責任に戦場只中へ放り出されたそれは、火災現場じみた焦げと酸味の混ざる悪臭を放ちつつ、直立姿勢から上下左右無く滅茶苦茶に回転しながら垂直に飛翔し、哄笑しながら無差別にマイクロミサイルに似たなにかをばら撒いた。

 大人のカードの障壁を粉砕しつつ、その向かう先は、敵も味方も、区別無し。

 

 

 

「ん゛っ!?」

 

 

 

 闖入者の暴挙に驚愕しつつ、咄嗟にクロコは開発部の少女らを背に庇い、先達より引き継いだ盾を翳す。鋼板は展開され、神秘に満たされ目に見えぬ反発領域を生成し、殺意溢れた破壊兵器を拒む。

 一方、一応はヘリの味方側である屍鬼達の群れは守る者などおらず、ただでさえ自壊していっていたモブ屍鬼達はこの世ならざる法則に従い殺戮兵器で木っ端微塵になり、それは葬者であるサージョン・ハーバル・モーアランドであっても関係無い。脳味噌の腐った融合ゾンビも爆風で吹き飛ばされて悲鳴を上げ、あまりにも攻撃的で雑な祝砲による陳腐な崩壊の光景に破滅と退廃の邪神が異界の根城でゲラゲラと笑い転げる。

 紫穢石への課金により、自身の居城たる墓場及び既に息絶えて久しい主君の宮殿の一部が反動を受けて派手に崩落し、引き揚げてきたばかりのヒフミ《虚無》や墓場に屯するアズサ《虚無》らが瓦礫の豪雨を浴びてペロロペロロばにたすばにたすと頓狂な鳴き声を上げているが、狂った神はそれすら歓喜の種としていた。

 現世においても要塞都市が崩れてゆく。妖物の吐き出すマイクロミサイルに似たなにかが緑色の劫火を瓦礫の山に放ち、何周も前の時間軸でミレニアム自治区が迎えた最期の地獄絵図を再現してゆく。

 その中を、知能を奪われた死後のゲーム開発部達は無防備に歩む。定められた指令に律儀に従い、仲間の放った緑焔に炙られながら。同じ異界の法則に護られた者の同士討ち故、その加護を透過して害を齎される。

 敵陣営に持っていかれた友らに向け新たに投擲された破壊兵器を、アリス《歪曲》は思わず不完全なチャージでどうにか射撃して撃墜を試みる。だが無理だ。それは破壊兵器を形だけ模倣した、屍鬼共が活動する為のエネルギーを固定化したもの。物質化した破壊衝動、殺戮衝動の塊なのだから。

 

 

 

「ありぃすぅちゃぁ」

 

ユズっ!(繝ヲ繧コ縺」?)

 

 

 

 弾けたミサイルもどきの断片がユズ《虚無》の足元に落着、巻き上がる瘴気の起こした物理効果で四散させる。

 

 

 

「ありすちゃん」

 

ミドリぃっ!(繝溘ラ繝ェ縺?▲?)

 

 

 

 爆風に吹き飛ばされたミドリ《虚無》が、その字と重なる緑の業火に包まれて崩れ落ちる。

 

 

 

「あぁぁぁりすぅ」

 

モモイぃぃぃぃぃ!(繝「繝「繧、縺?<縺?<縺?シ)

 

 

 

 最後のモモイ《虚無》にはマイクロミサイルが複数直撃し、襤褸切れ同然に変じさせられた。

 彼女らは仲間同士のはずだ。味方のはずだ。同じ陣営の、手を取り合うべき存在のはずだ。

 なんでこんな、前の時間軸で、騙され人間同士で殺し合わさせられた時のような地獄を、死体になっても演じさせられている?

 

 

 

あ、あ、ああああああああっ!(縺ゅ?√≠縲√≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ▲?)

 

 

 

 憤怒、殺意、憎悪、悲哀が湧き上がる。敵性存在であったものが同士討ちで損壊したのだから、クリムゾンエフェクトの《歪曲》としては喜び嗤うべきなのに。

 いや、確かに捏造された憎悪の感情が、喜びを謳ってはいるのだ……ただ単純に、それ以上に大元の人格が生む絶望や悲哀が、強すぎるだけで。

 

 

 

「ひいいいい! あーもう滅茶苦茶よ! なによアザトース様の跡取り娘って! とっくの昔に自爆したマジキチヘドロ塊にそんな御大層なもんいるわけねぇでしょうが! んもうあの変態糞焚火オヤジ全くわっけわかんねえんだからもう!」

 

 

 

 自陣の大損害というまさかの暴挙の結果にサージョンが上げた怒声を聞きつつ、アリス《歪曲》もまた近くに落ちてきた別のミサイル型物質化破壊衝動の巻き上げた破滅の風に煽られ、地を這わされた。

 未だ身体機能は完全回復していないが、それでも大切なお友達の為と立ち上がる。

 無我夢中で這い寄ってみれば、何たる事か。プレナパテスになる直前の先生よりも酷い……まともな生命体であればとっくに動かなくなっているであろう、言葉にするのも憚られる惨憺たる姿になりながらも、ゲーム開発部の《虚無》達はいずれもまだ動いていた。

 3人を掻き集め、妖火を払い除けつつ、ああ良かった、と狂気に冒された心に基いて安堵を浮かばせたアリス《歪曲》に、ではここからどうするべきか、と思考回路が指針を求めてくる。

 ……そんなのは決まっています。今回の突発的ミッションの勝利条件は、アリスのユズとモモイとミドリを確保して逃げる事です。あんな武器人間や邪神ハンターとの戦闘は端から慮外です。

 胸中で呟き、触手状人工毛髪をカバーのようにして、芋虫の如く蠢く3人を庇いつつ……次いで思考回路が湧かせた疑問に、行動の継続を阻まれた。

 逃げる。ここから、敵勢力である3人を連れて、逃げる。まさかブルーアーカイブの時間軸の中を逃げ続けると? プラナや先生、クロコがいるし、《波紋》も確実に追手を差し向けるだろう。他の陣営とて珍奇な組み合わせの逃亡者を知れば、面白がってちょっかいをかけてくるであろうに、どうやって逃げ続けると?

 それともこの敵だらけの時間軸から、別の時間軸へ? スグルーオ湾を経由して? もっての外。他の邪神の眷属が入り込んだら、即座にホシノ《歪曲》が感知して【難破船】全土から殺気立った《歪曲》が集まってくるし、無力な人間ならともかく《虚無》なんて例えアリスや生前のゲーム開発部にだだ甘だったユウカ《歪曲》でさえ存在を許さない。そんな所からどうやって別の時間軸へ?

 

 

 

どこ……どこへ(縺ゥ縺凪?ヲ窶ヲ縺ゥ縺薙∈)、逃げれば……(縲???£繧後?窶ヲ窶ヲ)

 

 

 

 いや、それ以前に……3人を、こんな惨めな姿を晒して蠢くものとして貶めたままで良いのだろうか。友であるならば、辱めている呪縛から解放するべきなのではないだろうか。

 元より3人の魂は、幻夢郷に還っている。この3つの死骸は、生前の記憶と本能をごちゃまぜにして動くだけの肉のからくり人形、哲学的ゾンビ未満のからっぽの残滓に過ぎないのだから。

 仮にクロコの後ろで倒れている3人をわざと喰わせて神秘解放させたとしても、つい先程次元の壁の先で暴れていたあの黴だらけの腐った着ぐるみ怪獣、眼前の腐肉詰めヘリコプターのような悍ましい高位アンデッド化するだけ。他の高位アンデッド共はアリス自身の目では見た事がないが、着ぐるみ怪獣に匹敵する巨躯の超巨大ばにたす餓者髑髏、アリウス生徒達の遺体を集めて作った巨大死肉蚯蚓を玉座とする人皮礼装の姫、腐血スライムの泣き女といった碌でもないラインナップが揃っている。そして自我は戻らない。

 そんな猟奇残酷人形劇団のキャストのままでいさせるくらいなら、友情の下に渇きも餓えもしない無へと還すべきでは。

 邪神に押し付けられた憎悪に冒され歪んだアリスの思想が、生きている別時間軸の友……そして一度失われ異形として帰ってきた友との再会により湧いた一時の善意で、激しく揺らぐ。

 

 

 

そんな、いや、(縺昴s縺ェ縲√>繧??)嫌です、だって、(雖後〒縺吶?√□縺」縺ヲ縲)だってまた(縺?縺」縺ヲ縺セ縺)会えたのに……(莨壹∴縺溘?縺ォ窶ヲ窶ヲ)

 

 

 

 変貌する前よりアリスの身体の再生機構は強壮であり、怪物となった後は緑の獄炎に巻かれようとも表層を炙られた程度に抑え込む。

 流石にミサイルもどきをまともに喰らえば多少は辛い所であるが、頑丈な右腕……勇者の証たる光の剣から血に飢えた魔剣に堕ちたスーパーノヴァを盾に、無軌道な回旋を繰り返すものから友の残骸を背に隠す。

 歯噛みし、焦燥を滾らせる金属人形の耳朶を、狂的な馬鹿笑いと絶叫が打つ。

 

 

 

「クヒヒヒヒヒヒヒ! ミヤコォ! サキィィ! ミユゥゥゥ! セェンセェェェェェェ! ワタシ! マニアッタヨォ! ドコ! クヒヒヒヒヒヒヒ! ミンナドコォォォォォォ!」

 

 

 

 武器人間めいたヘリコプターゾンビの上げている言葉や爆笑には意味など無い。欠損してゆく記憶から引用し、過去の発言を真似ているだけに過ぎない。万が一状況と噛み合っていたとしても、それは全て偶然なのだ。

 だからこそこんな、過去の遺志を自分で踏み躙るような、無差別攻撃を繰り返している。

 ……もしゲーム開発部の3人が、こんな怪異共の仲間入りをしたら……どんな事を始めるだろう?

 ……決まっている。ゲームを開発するのだ。屍に染み込んだ邪神の狂気に基づき、この世の外側の技術を用いて勝手に配信され、生者の魂をプレイ代として強制徴収するイース人さながらの外法のゲームを。

 それはそれは悍ましい、プレイしようがしまいが理不尽な死を撒き散らす、万人から恐れ忌み嫌われる最低最悪のホラーゲームとなるだろう。

 あらゆる時間軸の中で、最もゲーム開発部の看板に泥を塗る行い……それを、お友達の身体を奪って動くだけの自我無きエネルギー塊達にやらせて良いのか。

 胸の奥から這い出た、光の勇者だった頃の己が残滓の囁きに動揺したその一瞬……隙を突いたように、マイクロミサイルが、アリス《歪曲》の右腕を、捥ぎ取った。

 

 

 

ア、アリスの剣がっ! (繧「縲√い繝ェ繧ケ縺ョ蜑」縺後▲?√??)勇者の証がぁっ!(蜍????險シ縺後=縺」?)

 

 

 

 転がってゆく光の剣:スーパーノヴァ。

 それはまるで、今のお前にはこれを手にする資格は無い、と宣告されたかのようで。

 ……無理からぬ事である。友らを無惨に殺害されたとはいえ、憎悪に駆られ、殺戮勇者なる戯けた号を掲げて無辜の民を殺傷した者が真の勇者の証を持てる訳がない。

 手を伸ばしても届かず、思わず駆け寄ろうとして毛髪のカバーの下で蠢く友人の残骸に気を取られ、追撃してきたミサイルもどきで余計に両者の間は開く。

 右腕と一体化していた武器にまで突き放され、悲嘆に暮れつつ……奇妙なまでに思考が冷静になり、神秘歪曲体となった後、或いはその前の人道に悖る行いが頭を過ぎる。未だ活性化している良心に従い、アリス《歪曲》は項垂れ、自嘲した。

 これまでの所業を恥じ、絶望し。生きている方の友人らと一緒にいる資格の無い外道に成り果てた以上、このままあの撒き散らされる破壊衝動の雨の中で、友の亡骸達と共に朽ちてしまえれば。それだけが、結局魔王同然のものになってしまったアリスにとっての唯一の救いと諦めて。

 諦念に濁る視界の隅に、蹌踉めく影が映った。

 

 

 

あなた達……(縺ゅ↑縺滄#窶ヲ窶ヲ)

 

 

 

 アリスとケイの異世界同位体である、こちらの時間軸の天童アリスと、天童キイ。

 2人ともお互いに支え合い、亀よりも尚足取り重く、しかし着実に盾を構えるクロコ、そしてその背後で庇われている友らへ近付いていっていた。

 

 

 

そんなに(縺昴s縺ェ縺ォ)フラフラしている癖に(繝輔Λ繝輔Λ縺励※縺?k逋悶↓)どうするんですか? (縺ゥ縺?☆繧九s縺ァ縺吶°?溘??)銃を持った事もない(驫?r謖√▲縺滉コ九b縺ェ縺)あなた達に(縺ゅ↑縺滄#縺ォ)何が出来るって(菴輔′蜃コ譚・繧九▲縺ヲ)

 

「でも……何もしないでいるなんて、アリスは嫌です。きっと、皆の為に出来る事は、あります」

 

「3人は、キイ達の事情をほとんど知りませんけど、それでも庇ってくれました。あのおばさんも、初対面ですけど、助けに来てくれたみたいですし……今度は、こっちの番です」

 

 

 

 どうにか立ち上がったというレベルのふらつき具合。実際数歩進んでは片方が膝を付き、片割れに支えられる有様。アリス《歪曲》ほどの異形ではないが故に影響は遙かに軽い……だがまだ初等部なのだ。未成熟の身体にその負担は重い。

 異なる世界の異母兄弟達……ウェイトリー兄弟や鳥居兄弟、マスターテリオンといった者らであるならば、今の彼女らの年齢であっても成人以上の体躯であったろう。或いは25才になってもあの体躯であった網浜家の義娘達と同じ身体構造であったならば、下等な神話生物程度なら片手で引き裂く膂力を発揮したに相違ない。しかし2人は母親の意向により、その魂以外は人間のものとして生まれている。どちらの方面も期待出来ない。そもそも異母兄弟達と同じ種族であったならば、未だ薬の効果は抜けていなかったであろう。

 どんな道筋を辿ろうとも、今の天童姉妹が自身らのみで戦う為の力を得られないのは確実であった。

 だが、それでも……這いずってでも、未来を切り開く手はあるだろうと、例え無駄であっても年上の友らを護ろうと志す。

 実に愚かしい、魅力だけはカンストしている先生未満の愚劣さ……と思いつつ、異形アリスは違和感に気付く。

 何故この娘達は、声帯を調節していない状態の自分の言語を聞き取れているのだろうと。

 そうして横目を向け……見えたものに、目を疑った。

 二人の瞳の色が、片方ずつ変色し、アロナめいたオッドアイに変じていた。異形アリスの異世界同位体であるアリスの瞳は青く、ケイの異世界同位体であるキイは紫色の瞳をしている。それがアリスの方は左目が、キイは右目が金色に縁取られた橙色へと。

 正確に表現すれば、元の色に戻っていっていると言うべきであろう。ケイにまともな人間の形をして生まれられるよう、調整される前の。

 そして触手じみた動きを治めつつあった髪は再び畝り、虫の節足の如く2人が立ち上がるのを補助する。1本1本が細すぎて力が弱く、補助には貢献出来ていなかったが。

 更に四肢の先を見れば、姉であるアリスは片手が爬虫類か何かのように鱗に包まれた鉤爪に、もう片手は指が軟体動物を思わせる黒と橙の斑の触腕になり。妹であるキイの足は様々な獣の脚を絡み合わせたゼンマイ仕掛けの玩具じみたなにかになっていた。

 それは何を意味するか? すなわち、全体像すら定まらぬ化け物と、単なるイメージで人型の虚像を見せているだけのAIの間の子……人の形を保っていられる可能性さえ低い、この世のものならざる異物に成ろうとしている事を意味する。普段ならば大掛かりな手順やら儀式やらが必要となるが、対神話生物用の薬剤を吸引し、多数の神話的存在に囲まれて邪神の血族の因子が励起している今ならば、強く望めば自ずと怪異へと変じていくだろう。

 そうなってしまえば確かに、この争いに割り込めなくもない。だが、純粋な人間の遺伝子が混ざっていても、母親似ですら表現しがたい怪人となり、父親似となれば正しく怪獣になるのだ。名もなき神々の王女のボディやらなにやらを最大限活用した末に産まれた2人であるが……どんな悍ましいものに成り果てるやら。

 

 

 

な、何を……(縺ェ縲∽ス輔r窶ヲ窶ヲ)何考えてるんですか!? (菴戊??∴縺ヲ繧九s縺ァ縺吶°??シ溘??)ケイの、あなた達の(繧ア繧、縺ョ縲√≠縺ェ縺滄#縺ョ)母親の頑張りを、(豈崎ヲェ縺ョ鬆大シオ繧翫r縲)無駄にするつもり(辟。鬧?↓縺吶k縺、繧ゅj)ですかっ!?(縺ァ縺吶°縺」??シ)

 

 

 

 あまりの動揺に、つい口を出してしまう。つい数刻前まで自分達の群れの為の資材にするはずだった、受け入れ難くも一応の肉親達の暴挙に。

 童女達は詰問に対し、片方は唇を尖らせ、もう片方は確かにと言わんばかりの苦笑を浮かべる。

 

 

 

「育児放棄するようなやらかし失敗ママから文句言われる筋合いはありません」

 

「酷い言い草ですね、まあ事実だからしょうがないですけど……でも、アリスだって譲れませんよ、叔母さん」

 

おばっ(縺翫?縺」)

 

「なんとなく分かります。人を辞めていっているからでしょうか。目に見えませんが、なにか繋がりのようなものが感じ取れます」

 

 

 

 どうという事もなさそうに放たれた言葉は異形アリスを十分に動揺させる効果があった……おばさん呼びの方ではなく。こんな幼い子が、人を辞めていると、平気な顔をして言うのだ。

 根底にはこれまでの生で植え付けられた諦念もあるのかもしれないが……それだけでは選び難い、何かを守る為に、自分の未来を捨てるという決断。

 

 

 

なんでっ! (縺ェ繧薙〒縺」?√??)そんな真似をしたら、(縺昴s縺ェ逵滉シシ繧偵@縺溘i縲)あなた達は(縺ゅ↑縺滄#縺ッ)アリス達と同じ、(繧「繝ェ繧ケ驕斐→蜷後§縲)モンスターに(繝「繝ウ繧ケ繧ソ繝シ縺ォ)なってしまいます! (縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺?∪縺呻シ√??)ミレニアムの皆と、(繝溘Ξ繝九い繝?縺ョ逧?→縲)ゲーム開発部の皆と、(繧イ繝シ繝?髢狗匱驛ィ縺ョ逧?→縲)一緒に居られなく(荳?邱偵↓螻?i繧後↑縺)なるんですよ!(縺ェ繧九s縺ァ縺吶h?)

 

「……それで皆を守れるなら、お釣りが来ますよ」

 

「皆に嫌われるのは、怖いですけど。一度大切に思っちゃったものを亡くす事の方が……怖いですから」

 

 

 

 その言葉は全くもって希望に溢れてなどいなかった。

 前の時間軸で、アリス共々群衆に追い立てられたゲーム開発部達が、アリスを見捨てれば死を免れ得たにも関わらず、最期まで共に行くと覚悟してくれた時のような。邪神に誘導され、破滅へと転がり堕ちてゆく前の時間軸を支えるべく、プレナパテス時間軸から権限諸共引き揚げてきた物質化アトラ・ハシースへと義体から移った時のケイのような。悲壮なもの。

 だが、己の過去の言葉……「ファイナルファンタジア」、「ドラゴンテスト」、「トールズ・オブ・フェイト」、「竜騎伝統」、「英雄神話」、「アイズエターナル」……そして「テイルズ・サガ・クロニクル」の主人公達は、決して、仲間のことを諦めたりしなかった……遙か過去の、友に出会った頃の、自分自身の言葉を思い起こさせる、決然たる意志を伝えていた。

 つい先程自分達《歪曲》と同じ化け物だと断言した相手に射貫かれ固まった異形アリスの前、2人は友らへ近付こうと踏み出し、揃って再び激しく蹌踉めいて、顔から倒れ込んだ。

 まるで酩酊でもしているかのように、顔が赤らんでいた。

 

 

 

「うべぇ……? な、なんですかぁ……? 身体が自由になりませんよ……?」

 

「キ、キイ、もしかして……おばさんに近くなるという事は、抜けかけの薬のバステ効果も、強くなるのでは……?」

 

「あ……」

 

 

 

 子供らの言葉に怪物は唖然とする。その程度すら、想定していなかったのか。自分の同位体なのに、ステータス異常の把握を疎かにするなんて。

 しかし諦め悪く、童女達は体細胞に潜む悪しき因子を励起させ、神話生物としての覚醒を果たそうとしていた。

 

 

 

「で、ですが、キイ達はまだ変神を終えていません。第二形態になれば、大きさだけで脅威になる身体になれるはずですっ……う゛ぐっ」

 

「異世界の兄弟達のように、山のように大きくなったウルトラナイスバディを魅せてやりま……お゛え゛っ」

 

逆効果ですよ……(騾?柑譫懊〒縺吶h窶ヲ窶ヲ)

 

 

 

 忠告も聞かず、酔っ払いの戯言に等しい言葉を吐いて更に変貌を進め、余計に体調を崩して泣きそうな顔になる小学生達。吐き気を催したのかえづいてしまっている、だがまだ身体変貌を止めようとはしていない。例えどんな巨躯になろうとも、まともに動けなくばただの案山子に過ぎないのに。

 その情けなくも足掻く姿に、異形は呆れたような、根負けして相手を認めたような不承不承の色を表しながら溜息を吐き。

 

 

 

あなた達のやり方(縺ゅ↑縺滄#縺ョ繧?j譁ケ)では非効率です。(縺ァ縺ッ髱槫柑邇?〒縺吶?)もう一度、(繧ゅ≧荳?蠎ヲ縲)父親の名前を(辷カ隕ェ縺ョ蜷榊燕繧)呼んでみて下さい。(蜻シ繧薙〒縺ソ縺ヲ荳九&縺??)アリスの推測が(繧「繝ェ繧ケ縺ョ謗ィ貂ャ縺)正しければ、(豁」縺励¢繧後?縲)あなた達の父親から(縺ゅ↑縺滄#縺ョ辷カ隕ェ縺九i)何か届くはずです(菴輔°螻翫¥縺ッ縺壹〒縺)

 

「え……」

 

助けたいんでしょう? (蜉ゥ縺代◆縺?s縺ァ縺励g縺?シ溘??)さっさとやって下さい。(縺輔▲縺輔→繧?▲縺ヲ荳九&縺??)間に合わなくなっても(髢薙↓蜷医o縺ェ縺上↑縺」縺ヲ繧)アリスは知りませんよ(繧「繝ェ繧ケ縺ッ遏・繧翫∪縺帙s繧)

 

 

 

 放任主義の邪神にあるまじき面倒見の良さから当たりを付けた叔母の言葉に、姪達は困惑しながらも、短く父親の名を呼ぶ……よぐそとほーと、と。

 途端、宙空が裂け、2つの物品が喧しい音を立てて落ちてきた。

 1つは小さなレンズ……完全なニムルドレンズと似ているが違う、まるで何かに填め込めるような枠の付いた、水晶のレンズ。もう1つはバンパイアコフィンめいた形状をした、3針の他にもう1本の針を持つ、光の剣:スーパーノヴァと同程度の大きさの壁掛け時計。

 数刻前、D.U.郊外のS.C.H.A.L.E事務所予定地地下で、干渉されたクラフトチェンバーが造り出した、奇妙なアイテム群の内2つ。【レン高原の完全なるガラス】と【幻夢の時計】。

 

 

 

「おおっ! 本当に新アイテムを入手しました!」

 

「凄いです叔母さん! こういうのって、亀の甲より年の功って言うんですよね!」

 

 

 

 到底褒めているように思えない姪達の言葉に、天童アリスという存在としてあるまじき思考ではあるものの……小娘共め、と内心で舌打ちしてしまったのは、仕方が無い事だろう。

 以前、戦闘の最中にユウカ《歪曲》やノア《歪曲》が敵対勢力におばさん呼ばわりされた事に激昂していたが……その気持ちを初めて共有出来た気がしたアリスであった。

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