『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』 作:プリテンダー
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「(ジュジュジュっずよよよよ?) プハ!! 良く今日です!! ああ、またサボる!! 霊夢!? ブレーク中の私!! 今日は私はよく分からない残りの日です!! まあ、明日は!? クローズ神社の日!!」
『到着しました。パルクールめいた連続壁蹴り高層ビル登頂やら、ビルからたまたま飛んでた広告用大型飛行船を経由しての別のビルへの三角飛びやらを駆使して114514秒は短縮出来ましたね』
『ほもちゃんにお話(意味深)され、連邦生徒会の支配下で足長おじさん化を強いられた企業を主体とした学校へと変化した(運営に企業側の意向を反映出来るとは言っていない)アリウス新校です。これにはアプリ版で「このアビドスを 企業主体の学校にしてみよう」と金剛並の提案をしていた黒服くんも、草葉の陰でにっこりです。アビドスとアリウスって名前が似てますしね』
『さて、チャート通りアリウスの様子見がてら、ベアおばの赤ちゃんをお迎えにきたのですが、こいつら毎度毎度うるさいですね……(CN)Be quiet! お前の口からはもはや有益な情報も、カタルs……カタルシスに至る逸話も出てこない……タラタラ臭いだけだ!』
『矯正局に閉じ込めている奴らも、崇高がなんちゃらっていう中二病じみた詩、あるいは今喚いている再翻訳クッキー☆を始めとする東方ヴォイスドラマ企画関連の小噺を四六時中喚いているらしく、近くの居房に閉じ込めている透明でも少年でも探偵でもない方のアキラこと慈愛の怪盗が、寝不足でブチ切れて「うるさいなあ! ぶっころすよ!?」とか叫んでベアおばベイビー殺害の為だけに牢破りしようと暴れていたから仕方なく他の居房に移し、アキラは無事床に就いたという報告が上がってくるくらいです』
『それにしても、なんでこいつら再翻訳クッキー☆とか知ってるんですかね……外部人が淫夢ファミリーみたいなのだらけなのも含めてわけがわからねェ』
『まあそれはどうでも良いので、このウザいクソガキをさっさと運んでしまいましょう』
ベアトリーチェの死に連動したが如く機能不全を起こしたカタコンベ跡地。その奥から出現したというベアトリーチェの幼体が、肥大化した七面鳥そっくりの身を揺すりながら吠え囀る。
相変わらず雄でも雌でも喧しい小僧共だ。出荷直前の家畜の如く、脂肪でダルンダルンの全身も醜く見ていて不愉快になる。臭いも生臭いし据えた油のようでもあって、悪心が自然と湧き上がる程度の悪臭だ。控えめに言ってクソ野郎だと思う。ゲヘナで度々牛牧によって創造される、パンケーキのパンちゃんを始めとした食材生命体達の方がよっぽど無害で愛らしい。
別段何もされていない私ですらこう思うのだから、こいつらの母親に全ては虚しいなどと教え込まされながら、その実この子豚共の養育の為に人生を搾取され、命を擦り減らさせられていた旧アリウス生徒達の憎悪は計り知れない。
ただ、戦闘の時に間近にいた為に、奴が私と会長に向けて吐いた見苦しい命乞い、そして会長に断頭されて吐露した末期の言葉が聞こえてしまったスクワッドの者達は、その気持ちを持て余しているようだが。
それはそれとして、私と会長があの赤鶏を殺害したのは約一年半前。つい最近見つかったこいつらは、その間の餌やら何やらをカタコンベの中でどうやって賄っていたのだろう。
「煩いんで黙って下さい……」
「ココアは、バンホーテンのものを使用……ぴいいっ……ぴいいひょろろおっ……ふひひ……」
校外に連れ出された途端一気に喧しくなる糞鳥の姿に、引き渡しに来た錠前が眉を顰め、何故かいつも私の腕に抱きついてくる戒野が溜息を吐く。今回の世話役であるらしい槌永が嫌そうな顔をしながら後ろから抱き締めると、大人しくはなったが……なんだこいつの気持ちの悪いニヤけ面は。しかも後頭部を、槌永の胸に押し付け……。
おい槌永……この鳥類もしかして、お前の胸を……いや、正しいか解らないし、今更伝えても不快さが増すだけだろう。
ヴァルキューレ自治区にある矯正局へ連行すべく私が手を伸ばすと、糞鳥はニヤけ面を正に不服であると言わんばかりに歪め、更に私に背を向けて槌永の胸へ顔を埋めた。
「うへえぇ、く、臭い……ヴォエッ……皮膚から染み出た油でじっとりしてて汚くて感触もキモい……姐さん、これ、出来たらさっさと持ってって貰えると助かります……」
「ハァ? グラートバッハの水鏡の共鳴者ぁ? 無し! 赤きシッテムの箱の管理者と同レベルで無し! チェンジ!」
私と彼女を比較してどちらが魅力的か……などと聞いたら、博愛精神に溢れ空気を読む能力に長けた者、或いはどうしても連邦生徒会に取り入る必要に迫られている者以外は私を選ぶ事などない。
それは確かだが、こんなものにまでそんな顔をされる謂れはないぞ。何がチェンジだ、ホステスじゃあるまいし。後お前らが私を呼称する時に使うグラートバッハのなんとやらとはなんなんだ。
それとこれが一番大事なんだが貴様みたいな薄汚い豚鳥が偉大で高貴で聡明で麗しく愛らしく神聖なアロナお姉ちゃんを事もあろうに無しとか巫山戯るなよ貴様の母親にした方法よりも凄惨なやり方で拷問した後八つ裂きにしてブッ殺すぞ。
引き離そうとする槌永にいやいやをする糞鳥……もう強引に引き剥がして叩き殺……じゃない、持っていくか。槌永の方も嫌がっている事だし。
そう考えた瞬間、校内から怒声と共にピシャリと激しく何かを叩く音が響き。
「動くと当たらないだろ!」
「ヒエーッ!?」
竹刀とバラ鞭を手にして怒鳴り付ける女子生徒と、彼女から逃げる別のベアトリーチェ幼体が姿を現した。なんだ、まだ生きている個体がいたのか。別にいなくて良かったのに。
しかし以前視察に入った時、旧アリウスには拷問用の乗馬鞭以外は見当たらなかったが、わざわざ買ったのか、それ。
「動くと当たらないだろ……アッ、会長っ!?」
スケバンじみた格好の女子生徒は、私を見つけた瞬間勇ましく糞鳥を叩いていた時とは一転し、恐怖に顔を歪ませ媚びる様に頭を垂れた。
私の腕に揺れが伝わる。抱きついたままの戒野が、怒気に身を震わせて今にも喚き散らさんばかりの様相でスケバン生徒を睨んでいる。
随分と元気になったものだ。初めて会った頃はソウシャが言っていた通り、ベアトリーチェの教えを最も実践しているような感情の読めない虚ろな表情をしていたというのに。
「葛城ぃ……! モトエが来るから、今日だけはそのアリウスの恥になる事やめろって言っておいたよね……! いくら見逃してくれてるからって、直接モトエに見せるなんて……!!」
「アッスイマセッ……阿野…エッ……」
本当に……感情が表に出るようになったな。怒りを向けられている葛城……確か、生徒会の一員の……レンだったかな。彼女だけじゃなく、錠前まで気圧されているじゃないか。槌永は糞鳥の相手が忙しいようだが。
だが私もここで奴らをどう扱っているか理解した上でここに来ているんだ、こちらの事は気にせず許してやったらどうだ……と言おうとした瞬間、葛城の方が歯を食い縛り、堪えていたであろう内心を吐き出していた。
「し、仕方ないじゃないっすか戒野さん! こいつらもマダムの被害者で、マダムも……親の、大人の被害者だったからって……マダムの八つ当たりで平野さんと日出が殺されたのは、今更、今更許せへんし、会長が来るからって我慢するのも、まるで外部人のマダムのガキのこいつらなんかの方が、純血キヴォトス人の私達の命より大事だって言ってるみたいで、だから!!」
「あんたね……!」
「ミサキ、やめろ。葛城もだ。代行の前だぞ」
『アッ、この子もあの場にいたんすね……モブはヘイロー似通ってるし、ガスマスク被ってると誰が誰か区別が付かなくて困る。エリート兵の葛城レン……虐待おじさんみたいな名前してんなお前な?』
『死ぬ直前、首だけになったベアおばが幼児退行しながら放った、両親への懺悔と懇願の言葉……「ベア頑張って崇高になるから、ベアを捨てないで、お父様、お母様」……聞こえちゃったんですねぇ』
『実はゲマトリア連中のバックグラウンドもランダムに変わるのですが、最も不愉快なパターンを引きました。なんで私に気持ちよくプレイさせねぇんだ! 私は徹頭徹尾自業自得のクソなベアおばが苦しむ姿を見ていたいんだよ!』
『黒服、マエストロ、ゴルコンダ&デカルコマニーは木の股から勝手に産まれるのですが、ベアおばだけはたまに普通に親から産まれ、兄弟姉妹共々道具となるべく虐待されて育ちます。アリウス分校生の様に。いや、流石のアリウス生徒も、親に役者不足と看做され殺された兄弟姉妹の肉を戯れに食わされた事は無いか?』
『この場合、ベアおばが崇高に至った時の目的も、親の言い付け通りこの星の救世主となる……要約すると「役に立って親に認められたい、皆に愛されたい」というものになります』
『そしてベアおばの母親ですが……RTAでキヴォトス外部にわざわざ確認しに行く必要が無いので可能性の話になってしまいますが、現行の幼少期ベアおば虐待児童ルートではまず間違いなく、キヴォトスの外へ自分から出て行ったアリウス生徒会長の血筋を引く者の一人です。簡単に言うとアツコの祖先の分家ですね』
『外と内の法則の違いを理解しないままベアおば父に唆されて、本家と分家の誓約故に自分が
『その変異が精神にまで及んだのか元々性悪だったのか。強引に止めてくれなかったお友達、ひいてはキヴォトス全土を逆恨みし、拵えた子供達を《色彩》に、そしてその子供が産むであろう孫達をあの忌まわしき最悪の……』
『………………』
『……まあ、既にベアおばはアロナ(仮)前連邦生徒会長とほもちゃんの手で始末されていますし、終わった舞台の装置についてこれ以上語っても意味は無いでしょう』
『そもそもこの例外パターン以外ではアプリ版、コンシューマー版別ルート、他メディア版含めて全てのベアおばはマジで単なる身勝手クソババアでしかないので、過去とかいちいち探ろうとなんてしないで存分にぶち殺してさしあげろ下さい』
『好奇心は猫を殺すって人間の慣用句でよく言いますよね。詮索は本当に何の得もしませんよ。このクソガキ共の父親が誰なのかとかみたいにね』
例えあの雌鶏もまた被害者であったとしても、やらかした事の始末は付けなければならない。
操られての事だとしても、《色彩》を呼ぶ仕組みを作らされている私が先生の手で裁かれる必要があるのと同じくな。
葛城も隠し事が私にバレてしまったというやらかしがあるが、お互い承知の上であるし、何より復讐相手の子供を虐げただけ。平野、日出という生徒は分からないが、大切な友であったのだろう。
外部では、友の仇を理由に掲げて平然と殺人を犯し、あまつさえ世論がそれを正義と擁護する。中には動画サイトでその殺人の模様が配信されて、しかも人気コンテンツであるという。それを鑑みれば、そんな赤ん坊の玩具よりも脆いもので殴る程度、ものの数にも入らん。
旧アリウス生が、密かに確保したベアトリーチェの仔を殺しているというのに思う所がないでもない。葛城が普段こいつらをどうしているのかも知らん。だがこの場の事は、ただでさえ暴力沙汰が日常茶飯事のキヴォトスにおいて、目くじらを立てるような事柄ではあるまい……全てを救済する者たる先生でもないのだから。
「か、会長……申し訳ナイス……」
「あなたが良いなら、別に良いんだけど」
感情が昂ぶっていた為か、戒野の両腕はまだなんらかの中毒のように震えている。過去に一度、両腕を切断された後遺症だ。
会長がその役職に就任なさる前に起きた、外部との約定絡みの騒乱の中で、カタコンベを踏破した外部人に誘拐された秤を連れ戻そうとしての事だった。
その時私が下手人である政府高官に偽装した特殊部隊の兵士共を別件の証拠を掴んで追っていた為、ロイヤルブラッドとやらの関係で実験動物として外部に輸出の名目で連れ去られそうになっていた秤、嬲りものにされていた錠前達共々ぎりぎりで救出が成ったものの、もう少し遅れていたら戒野は出血多量で死んでいただろう。
とはいえ、戦闘後に駆けつけて下さった会長が、その日の運試しガチャと称してクラフトチェンバーで偶然お造りになられていた謎めいた傷薬が助命に不可欠だったが。切断された腕まで繋がるとは実に素晴らしい。やはり会長は至高の御方と呼ぶ他無い。
私も戦闘の最中で内臓を抉られていたので、あれが無ければ普通に死んでいた。その場合はソウシャがリセットで時間を巻き戻しただろうが、巻き戻した後で全てが同じ道筋を辿る訳ではないから、最悪分校内での接敵時点で戒野達が首を落とされる時間軸になる可能性も十分ある。当時はカタコンベも万全であったから、介入する事も不可能だった。
会長が齎して下さった神佑にもっと感謝しなければなるまい。そしてしたくもない大量殺人をさせた糞ソウシャ、及び馬鹿げた蛮行に及んでくれやがった糞外部人共には最大級の侮蔑を送りたい。
胸の内で会長への感謝を捧げ敬仰しつつ、いい加減糞鳥の体臭と皮脂でげんなりとしている哀れな槌永から受け取ろうと腕を伸ばしかけた所、あっそうだ、と戒野が声を上げる。
「これ、このアカウント。モトエは知らないよね」
そう言って見せてきた彼女のスマホには、モモトーク……ではないな、なんという名だったか。まあとにかくSNSのアカウントが写っているが……なんだこれは。
意識を失ったヴァルキューレの生徒達を担いだまま、奴隷商が一般企業と偽って建てていたビルを蹴り崩している私。瓦礫の山の中で美食研究会の二人の顔面を握りながら持ち上げ、赤司に弁明を受けている私。ビルや飛行船の間を飛び移っている最中の私。そして今、戒野に抱きつかれたまま、酷い表情でスマホを覗いている最中の私。
勿論昨日より前の私の動向も、逐一動画として撮影されている。
『な…なんですかあこれはァ! え……SNSから変な奴が出てきたですゥ! 文字化けと盗撮だ……文字化けしてるアカウントがほもちゃんの盗撮映像を投稿してるですゥ!』
『ちょ……っとこんなイベントは……分からないっすね……えぇ……? そもそもあったかな……?』
「繧ア繧、」と名乗るそいつは「繝励Λ繝翫?√>縺?刈貂帶ー嶺サ倥>縺ヲ縺上l縺セ縺帙s縺九??」だの「蜈育函縲?♀繧薙〒縺?k蝣エ蜷医〒縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s繧茨シ√い繝ェ繧ケ驕斐′縺薙■繧牙?縺ォ豌嶺サ倥>縺溘°繧ゅ@繧後∪縺帙s?」だの「繧「繝ュ繝翫?縺ゥ縺薙r縺サ縺」縺、縺肴ュゥ縺?※縺?k繧薙〒縺吶°?」と意味不明な文字を羅列しながら私の動画ばかりアップロードしている。
リンが見たのはこいつか。余計な真似をしてくれる変態だ。しかしこう言ってはなんだが、こういう視線にはそこそこ鋭いつもりであったのだが、全く気付けていなかった。迂闊。
「気を付けてよね。こいつ、どこから撮ってるのか分からないけど、ここ数週間ずっとあなたの後をつけ回してる。しかもヴェリタス曰く、文字に解析不能ななんらかの加工がされてて、どうやっても元の文字列に戻せないみたい。数ヶ月前までは、ミレニアム郊外にある廃墟の内部画像ばかり上げてたらしいけど、それは削除されたんだって」
ミレニアムからそんな連絡は来ていないが……なんでヴェリタスの奴らは私に内緒でそんな事をしているんだ?
何か妙な秘密でも掴んで、ミレニアムに便宜を図るよう私を脅そうとしているのか?
それとも……実は解析出来ているが、犯人がミレニアムの関係者だから庇っている……とか?
「私も、ずっとミレニアムに依頼して作って貰ったドローンで見てるけど、近くに反応が無いから……もしかしたら、SRTで使ってるっていうような特別仕様かも」
「ん? 待て、ミサキ」
戒野の言葉に引っかかるものがあったらしく、錠前が眉根を寄せて声を上げた。
確かに、今の見てるの所の目的語が分からん……何を見てるんだ? 文脈的にまさか私か?
「私の記憶違いでなければ、お前の購入したという特別製ドローンは、確か一年程前の……自治区の警邏の為のものだった筈……だよな」
「一台はね。二台目はモトエを監視する為のものだよ」
「えっ」
「そっちはちゃんと私の給金で買ったから学校へは請求行ってないよ」
「いや……あの……そ、そういう話じゃないんだが……?」
……なに? 確かに時折、妙なドローンが私の後を追跡しているのを認識した事はある。別段武装もしていなかったから、攻撃などはしなかったが、戒野だったのか。
しかし戒野に監視される必要性? そんなもの生じる行動をした覚えが無いぞ。
理由が分からん。別に私を監視するのは構わんが、何か行き違いや勘違いでの理由であれば、戒野の時間を無駄遣いさせてしまう事になる。それは忍びない。どうしてか教えてくれ。
私の問いに何故か錠前らは私にまで異様なものを見る目を向けてくる……何かおかしな事でも言っただろうか。
そして肝心の戒野の答えは。
「だってモトエは私の救世主様なんだから、ずっと見ているのは当然でしょ」
「えっ、何、それは」
「ミサキさん? 頭大丈夫ですか?」
「ひいいいいわけがわからねェ! なんだこの人危ねェぞ!!」
……こいつの言っている事は良く解らんな。話半分で聞くべきか?
『デレデレを通り越してなんか病んでるミサキ……一体何がどうなってんの?(CNTN亭)と思う方も多いでしょう。俺もソーナノ。ソーナノ…』
『また好感度ガバか(チャートが)壊れるなあとか言わないで下さい。こんな意味不明な妄想なんて本当に好感度の影響かわからないじゃないですか……まあ好感度の影響と仮定しますと、ほもちゃん《恐怖》化テロイベント後、なんか唐突にほもちゃんの腕に抱きつかれるようになった時にも説明しましたが、想定外が過ぎるんです』
『ベアおばの薫陶を受けた後のミサキには、一つ大きな特徴があります。彼女が死ぬのを邪魔すると、好感度がガクッと下がるのです。それこそ生徒からの好感度絶対稼ぐマンのアプリ版先生か、縁を長く結んできたアリウススクワッドメンバーでもない限り。仲の良かった友達から、下水に繋がるマンホールの隙間から這い出したゴキブリと同等の嫌悪の対象へ一瞬で変わるレベルの激減具合』
『それは彼女自身の意思による自害か、敵の攻撃による死かを問いません。クラフトチェンバーのバグでのエラー生成物、もしくは外部からブラックマーケット経由でキヴォトスに入り込む胡乱極まるアイテム群で病弱体質や閉所恐怖症を克服しても、既に自分の身体が邪魔なものと認識しているミサキの希死念慮を薄める事は不可能です』
『つまり他のキャラ達は庇ってくれた相手に対して「大好き! 抱いて!」と好意を抱くのですが、彼女だけは「こいつがいなくなるまでの辛抱」と反感を抱いてくれるわけですね』
『彼女をヒロインとして求めオリ生徒プレイをした際、それを知らず敵の攻撃から庇って気付かぬ間にヘイトを稼ぎ、途中で盛大に拒絶を食らってブチギレ魔女モードのミカの前に囮として置き去りにされてミンチになり死んだプレイヤー兄貴も多いでしょう』
『アプリ版でサオリがやったような自死を阻害する為の楔も、スクワッド以外は役者不足で逆に無理心中を試みる理由付けにされかねません……それを考慮すると、ほもちゃんとミサキのファーストコンタクトは最悪の部類に入ります。なんせ両腕を切り落とされ、今にも安寧に満ちた魂の世界に旅立たんとしている瞬間に割り込んできて、肉の檻に監禁される生き地獄を長引かせてしまったのですから』
『無論彼女とて無情ではない為、あのままでは順次殺されていたであろうサオリ達を救ってくれた事に関してはほもちゃんへ感謝しているとは思う……のですが、コンシューマー版攻略Wikiに報告されている好感度増減の類推値から鑑みると、確実にかなりのマイナスになっている筈なのです』
『ミサキの両腕を切断したのは、皆様ご存じ外部人の特殊部隊がしばしば持ち込む対キヴォトス人用チェーンソー型特殊兵装【ミスティルティン】ですが、別にこれが発生させるバッドステータスの呪殺、そして腐敗を受けたキャラの心境が大きく変化したなんて報告は見られませんし』
『これもうわかんねえな?』
ああ、また嫌なものを思い出させる。外部人の使う
到底正気とは思えない製造方法で作られるあれは、痛みも相当なものだが、腹を貫通された時は内臓が片端から崩れてゆく錯覚がして、吐いた血は異様に粘ついてどす黒く、刃が抜けてもしばらくは五感どころか全身なにもかもが狂っていた。ヘイローによる保護を無視して身体を損壊させる防御無視武器というだけでも厄介なのに。
あの時だけは自我に依らぬ身体操作で良かったと思ってやらなくもない。そうでなければ十全に戦えず、戒野達を守れなかっただろうからな。
だが、そのバッドステータスの呪殺とやら? 何か後遺症でもあるんじゃないのか。明らかにおかしいだろう。精神面が。
戒野の言葉に困惑し激しく瞳を揺らす錠前と動揺を通り越して素で罵倒してしまう槌永、狂人を見る目を向ける葛城。無関係に再び喧しく喚き始めた糞鳥共。
それら一切を気にする事無く、戒野は異様な熱が籠もり、どことなく濁り曇っているように見える瞳で私の顔を覗き込み、可憐な花の如く顔を綻ばせた。
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全て虚しい。
憎悪と殺意を持つから人殺しと同じという暴論の下、
欠陥だらけのこの身体。どうせ土に還るだけの無意味な器。
死んだらその時はその時。怖くも惜しくもない。
本物の死に触れてしまうまでは、ずっとそう思っていた。
あの日……
装備だけはご大層なのに大した練度でもなくて、ただ喚く言葉だけは居丈高。正に私達の知る大人そのものの連中。訓練中の新入生達でも対応出来る雑魚達。瞬きする間に皆殺しにされる程度の案山子達。
誰もがそう思っていた。事後の様子からして……あの女すらも。
はっきり言ってしまえば、外部人という存在を見くびっていた。
キヴォトスよりも低い科学力、ヘイローもなく大人になっても脆弱で非力な無能達。そう思い込んでいた。
まさか、あの無様な案山子達が……猟犬であるアリウス生達を引き付ける為だけの、ガラクタから作られた
奴らの本隊は、キヴォトスより劣っている筈の科学技術で私達全員の眼を欺いて、300近い偽の入り口を持つ上一定周期で構造が変わるカタコンベを完全に把握して、密かに踏破していたなんて。
皆がそれに気付いたのは、外部人そのものの姿をしていた奴らが実は自爆装置を備えたロボットだったと判明し、同時に分校内で無数の爆弾が炸裂した瞬間。
バシリカ含めて崩落した校舎。残骸として散らばった無数の大人の死体。生徒達は誰も彼もが酷く負傷し、無傷だったのは私達スクワッドだけで。
それも奴らの攻撃に気付いたから逃れられた訳じゃなくて、奴らの目的が、私達と共にいる姫の身柄だったからで。
信じられない程の惨敗。とても戦える装備とは思えない、格好を付ける為の礼服の奴らに、瞬きの間に蹴散らされた。
私達にだって、それなりの力量があるという客観的な自負はあった。外部人は惰弱という知識があった。だから、私達は、姫を目の前で攫われながらも、受け容れ難い現実と全身を襲う痛みにしばらく呆然とするしかなかった。
その時間の無駄遣いが、命を繋いでくれた。
すぐに追いかけていたら、悠々と凱旋気分でいたあいつらに、あの場所に着く前に追いついてしまっていたから。
事態を把握したあの女が来て、癇癪を起こしながら私達を殴りつけた事で、やっと私達は正気を取り戻した。
姫を取り戻せなければ生かさず殺さず苦しみ抜かせた末に処刑する。そう宣告されながら追いかけた私達だったけれど、相手側には別働隊らしき連中まで合流していて、そんな状況でたった数十分後のリベンジマッチを仕掛けたらどんな無様な結末になるかなど分かりきっていた。
だから、他に方法は無いとリーダー達の反対を押し切り、最初から死ぬつもりで、姫を取り戻せれば万々歳と特攻を仕掛けた。
別働隊連中が持っていたあの異常な武器の事を思うと、最初から私達の追撃を待っていたのかもしれない。
爆弾を抱えて突っ込み、途中で後ろから首に衝撃が走って意識が途切れて。
気付いた時には爆弾は手に無く……それどころか、無数の赤ん坊の泣き声を重ね合わせたような駆動音を放つ奇怪なチェーンソーで、私の両腕は既に切り落とされていた。
痛い。痛い。痛い。寒い。痒い。けれど、やっと永遠の安らぎが近付いて……。
……違う。死に近付いているのは本当だけれど、腕が無くなっただけじゃない。
なにか、どこかわからない所と傷口が繋がって、異常ななにかが、流れ出す私の血と命の代わりに、流れ込んでくる。
「ミサキ!!」
両腕が無くなって、代わりに私の身体に繋がったこれは、何?
「ひいっ、血、血が、と、止まらないっ、凝固剤使っても止まらないぃっ、なんでぇぇっ」
なんで、こんなに、冷たいの? 怖いの? 気持ち悪いの?
「止まれっ、くそっ、止まれよぉっ!」
これが、死?
「ミ……っ! ぁ……ぅっ!」
……死ねば、永遠に安らいでいられると思っていた。魂の住処で、憩っていられると。
……こんなに寒くて恐ろしくて悍ましいものが死だなんて、考えた事もなかった。
いつの間にか、生涯で一度も上げた事が無いくらいの絶叫が、口から迸っていた。
……奴らが嗜虐心に満ちた声音で囀る。
「これで殺されたキヴォトス人は魂をこいつに喰われ、死んだ後も永遠に苦しみ続ける」
「引き裂かれた魂は装着されたこの専用のタンクに
「次の犠牲者の血が駆動の度に摩耗する魂を補填して、代わりに犠牲者へ保存されている間に味わった苦痛と絶望をお裾分けする」
全く科学的じゃないけれど、本能で分かった――ああそうなんだ、今私に流れ込んでいるのは、あれで殺された人達の、苦しみなんだ、と。
じゃあ、このまま死んでしまったら……永遠に安息の時は、訪れないのか。
あの狭くて暗い箱の中に閉じ込められて、ずっともがき苦しみ続ける羽目になるのか。
生きている時の、あの苦しみの方が、よっぽどマシだなんて。
「やめっ、が、ぎゃあ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛っ!?」
「リーダ、あ゛あ゛あ゛あ゛! い゛だい゛い゛だい゛いだい゛ぃぃぃ!?」
「よくも……ひっ、い゛っ、ぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」
あれで斬られた皆が泣き叫び、のたうち回る。まるで貧民街でゴミ漁りをしていた頃、大人に虐げられた時に戻ってしまったように蹲って泣きじゃくっているリーダーとヒヨリ。反骨心に溢れた彼女に相応しくなく、這い蹲って瞳に怯えを満たし震えるアズサ。
意識が遠くなりかけながらもはっきり聴こえる駆動音は、まるで私達の苦しむ姿を嘲笑う怨霊達の歓声のよう。
姫が奴らに向け、手話と身振りで投降と私達の助命嘆願をしているが、外部人達はそんな彼女まで弄うつもりのようで。
「こいつらを‘いかしてほしい’のか。おう、考えてやるよ。しっかりと首を刎ねて魂を回収して、こいつの中で他のキヴォトス人共を苦しめる為の燃料として‘活かしてやる’よ」
凍り付く姫。外部人達の放つ下品な哄笑。
平然と欺瞞を言い放った奴がニヤつきながら、早くしないとこいつ死んじまうな、と私に向けてチェーンソーを回しながら近付いてきて……。
やめて……お願い……。
そんな所に閉じ込められるなんて、苦しみ続けるなんて嫌だよ……。
誰か……誰でもいいから、助けて……。
こんな死に方で……。
「死ぬのは、嫌……」
「好き勝手するのはここまでにしてもらうぞ、外部人共」
そうして私は。
流星の如く舞い降り、自らが切り刻まれても、その手を血に塗れさせても尚絶望の前に立ち塞がってくれた、私の救世主に出会った。