『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』 作:プリテンダー
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「ですから、アリスはなにも知りません!」
「右に同じです。キイもこの我が魔王マニアの悪趣味ド変態アカウントとは無関係であると再度主張します」
ミレニアムサイエンススクールの支配層たるセミナーメンバーの前、スクール初等部の天童姉妹は困惑と不服を露わに反論する。二人の感情に呼応し、実体を持たない精霊めいたゆるキャラ的疑似ドローン存在が宙を舞う。モモフレンズともまた違う、珍奇なゆるキャラだ。
会長の椅子に瞑目して座するミレニアム会長調月リオ、自身の隣で微笑みを湛えるばかりの書紀生塩ノアをチラチラ見ながら、会計担当の早瀬ユウカが宥め賺すべく口を開いた。
活動実績や素行の問題から呼び出されがちな、二人の所属するゲーム開発部ごとではなく……二人だけがここに呼び出された理由。キイの言う所の魔王、星海モトエ連邦生徒会長代行の姿を盗撮し、その映像をSNS上にアップロードしている変質者の痕跡が、アリスとキイのスマホから見つかってしまったのだと。
「でもね、二人の通信端末からわざわざ交互のログイン履歴が見つかって、加えてマルウェアの類がインストールや削除された痕跡も無かったの。そうなると二人が自分からやった可能性が」
「うわーん! そんな事言われても困ります!」
「そもそもですね。なんでキイ達が我が魔王の痴態を公開する必要があるんですか。そんなものはキイだけが楽しめば良いのです」
「そうですよ! 傷だらけ筋肉モリモリマッチョゴリラ大魔王モトエの裸体なんかに興味を持つような、常軌を逸した奇異な変態はうちの妹以外にキヴォトスにはいません! なのでそんな需要のないアカウントを作る理由もありません!」
そういう問題でもないし、自分達の命を救ってくれた相手と実妹相手にとんでもない言い草である。
だが反駁の余地など無い計算通り完璧な理屈と信じ成長中の胸を張るアリス及び彼女の従えるゆるキャラに、ノアがどこかわざとらしく驚いた表情を浮かべて自身のスマホを取り出し、そこに映る最新の投稿を見せた。
「あら、でもアリスちゃん? 少なくとも先程更新されたばかりの動画で、連邦生徒会長代行の腕にしがみついているアリウス新校の方にも需要がありそうですよ」
画面を隔てても陰鬱な気配を放つ巨躯にしな垂れかかるボブカット女、戒野ミサキの姿に、童女の片方は呆れたように顔を顰め、もう片方はむくれた様子で眼を細める。
「うげっ……本当です。困りました……キイ以外にもまさかのド変態が現われてしまうなんて想定外です」
「うわあ……これは色欲界に堕ちて発情しきった雌豚の顔をしていますね。私は姫抱きをされても顔に出ないよう我慢したというのに、卑しい……」
「二人共、いくら初等部だからって普段から他校の人にそういう事を言っていると、ゲヘナの生徒会長みたいにいざという時に外交的な問題になる失言をしかねないからやめましょうね」
「うーん、私にはどちらかと言えば、キイちゃんが偶にしている魔王様を称える時の狂気じみた顔に似ているように思えますけど」
「ノアもやめて」
ひどい言われようね、まあ事実だからしょうがないけど。と現状のキヴォトス全土の首魁に関連する事物の散々な有様に内心嘆息しつつ、ユウカ自身アリスとキイは無罪と信じていた。
というか、動画の中には間近で撮影した連邦生徒会長代行のシャワーシーン等、どう考えても自作自演と判断した方が合理的に思えるものまであった。シャワーシーン動画だけはつい先程削除されたが。
しかしあの悪い意味で名高い連邦生徒会長代行であるからして、自身の痴態を撮影したりその映像を公開するような性格とは到底思えない。よしんばそんな事をしてみようと提案されでもしたら、トリニティの正義実現委員会の副委員長を上回る身長から相手をあの生気を感じない悍ましい目で冷たく見下し、踏み躙るだろう。
各々の学園がそれぞれの区域を自治している事実を閑却し――その傾向はアロナ連邦生徒会長にもあったものの、あちらは関係各所への通達やSRTを現在より気持ち多めに運用していたりとまだ配慮していたけれど――キヴォトス全土を一人で四六時中走り回り、独善的に裁いて回る。キヴォトス外部から侵入してくる害悪や時折発生するテロリストを駆除して個々の生徒を救ったりはするが、全体で見れば反感を覚えている者の方がよっぽど多く、しかし誰もが何故かとてつもない恐怖を抱いてしまうから当たり障りない名ばかりの抗議しか出来ない、独裁的な暴君なのだから。
あんな映像が出回っているのに平然としているし、羞恥心が無いのか、それとも皆藪蛇は嫌だから誰も伝えていないのか。
いずれにせよ、二人の事が連邦生徒会にバレたらミレニアムにとっての厄介に繋がりそうな現状に溜息を吐きながら、不完全ながらもヴェリタスがどうにか解析した文字化けの一部を思い返す。
ーープラナって、何かしら。先生って呼びかけられている相手も見当たらないし。
ーー度々行方を訊かれているアロナは、連邦生徒会長よね。希望峰アロナ連邦生徒会長。
ーーそういえば、アロナ会長とモトエ代行、それと七神リン主席行政官も、アリスちゃん達と同じ孤児院出身だったようなーー。
「実の所、貴女達がこのアカウントの犯人ではないのはもう判っているの」
「会長?」
ユウカの巡る思考は、置物めいて鎮座するばかりであったリオの言葉で留められた。
しかしそこから飛び出したのは、この場における被告と検察全員が困惑する言葉。
では何故、こんな茶番じみた詰問をしているのか。
「ではアリス達はもう帰っていいのではありませんか!? 発売されたばかりのゼルナの伝説をしたいんですが!」
「そうです。キイ達が無罪放免と判っているなら不当拘束される謂れはありません。一刻も早く帰宅し我が魔王のシャワ……ゲフン、動画について考察を深めねばなりません」
「いいえ。帰す訳にはいかない。貴女達はしばらく、専用の施設に入っていてもらうわ。ゲーム機なりなんなりは用意するからそこで遊んでいて頂戴」
「えっ……」
「何、それは……」
当然の権利として頬を膨らませる二人に、しかしこの地の支配者は否を突き付ける。ユウカもノアも、その謎の行為に戸惑わざるを得ない。ゲーム機等も用意するとまで言われた天童姉妹もだ。
動揺の為か、飛び回るドローン達は首をかしげ、真っ逆さまに地面に落ちる。
「リオ会長、意味が解りません。何の為にそんな真似を。あの連邦生徒会長代行じゃあるまいし」
「そうですよ。いくらセミナーだからといって、横暴が許される訳では」
「程度はともかく、無理を通そうとする時には、相応の理由があるものよ」
その疑問に答えようとばかりに、リオが手元の端末を弄る。と共に、宙にホログラムが映し出された。
なんの変哲もない、ミレニアム自治区の路地。うらぶれた様子からして、中心街からは離れた、他の自治区との境目辺りだろうか。
平穏な日常の光景に、しかし突如異物が混ざる。真紅の宝石……数にして百を超えるであろうそれが、何もない宙空から、一気にどさりと落ちたのだ。
呆気に取られる乙女らの前、画面の中の宝石は更なる異常を示す。各々が勝手に跳ね飛び始め、ぶつかり合い、砕き合い、粉微塵と化して……やがて、圧縮されて一枚の赤黒い封筒を造り出した。
ターゲットスコープの上に輪を乗せたようなマークの描かれた紙。血に染まったような表面には他にも謎めく「S.C.H.A.L.E」の文字があり、そして、ぼこぼこと音が聞こえてきそうな有様で、内側からの膨張と収縮を繰り返していた。
端が、びり、と破ける。誰かが、あっ、と呟く。
直後、引き裂けた赤黒い封筒からは、引き裂けた動脈から噴き上がる鮮血を思わせる液体が噴き上がり、同時に何かが地面に投げ出される。
四肢の長さに始まり様々な部位が歪極まる、人もどき。ワイルドハント芸術学院の大型展示室を見渡せば簡単に見つけられる類のオブジェ……シュールレアリズムを主義と掲げながらも内面を出力しきれず、ただ外見の露悪さだけを極めた異形の像。斬新さとただ奇を衒っているだけを履き違えた愚かな三下デザイナーの雑な仕事。
芸術家気取りの馬鹿が造ったとしか思えぬガラクタは、しかし滑らかに蠢いて、音を発していた。
その頭上に、大量の正方形と長方形を滅茶苦茶に組み合わせた、ヘイローを浮かばせて。
『縺ア繧薙?縺九?繝シ繧難シ√??驕ゅ↓繧「繝ェ繧ケ縺ッ縺薙■繧牙?縺ョ譎る俣霆ク縺ョ繧ュ繝エ繧ゥ繝医せ縺ク縺ョ髯崎?縺ォ謌仙粥縺励∪縺励◆?√??縺ッ縺?シ√??莠?ァ」縺ァ縺吶Θ繧ヲ繧ォ?√??蜈育函縺ョ谿九@縺溘メ繝」繝シ繝医↓蠕薙>縲√∪縺壹Α繝ャ繝九い繝?縺ョ逧?′縺薙■繧牙?縺ォ譚・繧九◆繧√?逕溯エ?「コ菫昴Α繝?す繝ァ繝ウ繧帝≠陦鯉シ縲?縺昴≧縺励※蜷域オ√@縺溷セ後?騾溘d縺九↓縲√い繝ュ繝翫→繝励Λ繝翫r蜿弱a縺溯i縺ョ蝎ィ縺ョ遐エ螢雁所縺ウ蜈育函螂ェ驍??隍?粋繝溘ャ繧キ繝ァ繝ウ縺ク縺ィ遘サ陦後@縺セ縺呻シ√??繧ッ繝ェ繝?繧セ繝ウ繧ィ繝輔ぉ繧ッ繝医?谿コ謌ョ蜍???い繝ェ繧ケ縲√ヶ繝ォ繝シ繧「繝シ繧ォ繧、繝匁凾髢楢サク遐エ螢翫Α繝?す繝ァ繝ウRTA繧ケ繧ソ繝シ繝医〒縺呻シ』
小柄な異貌の化け物は、エンジニア部の作ったあの重くて誰も使えないレールガンを想起させる馬鹿でかい異形の片腕や触手の如きケーブルの頭髪を振り回しつつ、顔と思しき部位から金属を擦り合わせるような音を吐いている。アリスとキイに瓜二つの、しかし金属の塊以外の何者でもない頭部から。
唐突な異物との対面に少女らが面食らう中、リオが更に端末を操作すると早戻しが行われ。
予期せぬ単語が含まれた人語が耳朶を震わせ、アリスとユウカの顔が怖気で凍り、ノアとキイが目を見開いた。
『ぱんぱかぱーん! 遂にアリスはこちら側の時間軸のキヴォトスへの降臨に成功しました! はい! 了解ですユウカ! 先生の残したチャートに従い、まずミレニアムの皆がこちら側に来るための生贄確保ミッションを遂行! そうして合流した後は速やかに、アロナとプラナを収めた肉の器の破壊及び先生奪還の複合ミッションへと移行します! クリムゾンエフェクトの殺戮勇者アリス、ブルーアーカイブ時間軸破壊ミッションRTAスタートです!』
動画が止まる。そして代わりに新たな画面が開かれ、ライブ映像である事を示す言葉を隅に置きつつ満面に地獄絵図を描いた。やっぱり無理か、というリオの強ばった呟きが妙に大きく響く。
一目でどこか分かるミレニアム自治区の中心街……つい朝方まで平和であり、今となっては炎の海と瓦礫の山に成り果てたそこで、朗らかに笑う金属の化け物が、満身創痍のC&C、全身に纏う奇妙なパワードスーツを半壊させられた金髪の少女、D.U.からの犯罪者の護送中に巻き込まれたヴァルキューレの生徒達と交戦している。この区画を守る警備ロボットの類は、既に一機残らず残骸と化していた。
画面の隅、逃げ遅れた一般生徒の腹を、化け物の放った輝く流れ弾が貫き……ヘイローの加護を無視して、大きな風穴を胴体に開けて、瞬きの間に死の国へと旅立たせた。
「ケイと名乗るあのアカウントからミレニアムに「プラナと先生がいつまでも気付かないから仕方無い」と送られてきたメッセージには、あれの出現が予言されていた。信憑性はともかく、その言を信じるなら……
何が何だか解らず戸惑う初等部二人を弄うように、アリスと名乗る彼岸の異物は異様な声で活動の自由を謳い、歓喜を露にし、放った光の奔流で新たな犠牲者を足首だけ遺して消し飛ばした。