『連邦生徒会を裏切り、惑星ごとキヴォトスを完全消滅させるRTA、続きいくよぉ~(ISHR先生)』 作:プリテンダー
「おーい、クロコちゃーん」
「聞こえますかー!! クーローコーちゃーん!!!」
「ん……アロナ、煩い。ここにあまり呼ばないでほしい……あいつの光に当てられてるとイライラする」
「ずっとあれと睨み合いしてる私の前でよくそれ言えたね……仕方ないでしょぉ、スグルーオ湾から出てきたのが通っていったんだから。もうすぐ先生から連絡が来ると思うよ。行ってあげて」
「……なんで自分で護りに行かないの? 私もしばらくなら、ここであれをとおせんぼ出来るよ? アロナの居場所なのに。アロナの妹分達を殺しに行ったのに。自分で助けにいかないのはどうして?」
「それは私もターゲットだから」
「天童アリスと天童キイを神名のカケラに加工されて、物量で押し切られて星海モトエが殺されても終わりだよ? 今の頭おかしくなったホシノ先輩なら、ユメ先輩を存続させる為に、モトエの死骸から回収したプラナと先生が削れて無くなるくらい酷使して、後先考えてない選択くらい平気でするよ」
「…………」
「そっちじゃない? じゃあモトエに全部押し付けて放置して、隠し事までしてたのに、今更姉貴分面しやがってーって嫌われる方が怖い?」
「…………」
「どっちでもいっか。じゃあ意気地無しの腰抜けさんは、妹分達を見捨てて、永遠に1人でここであれと睨み合っていればいいよ」
「…………」
「ああぁぁぁ!?
「あなたのとても普通ではないアリスぅぅ!?」
戒野らに見送られながらアリウス新校を出て、一路ヴァルキューレ自治区の矯正局へ。ベアトリーチェの幼体、もとい糞鳥2匹の顔面を掴みながら、来た時と同じくビルや広告用飛行船の合間を跳ね飛んでゆく。見覚えのある珍妙なドローンがついて来ているように見えるが、まあ、戒野の好きにさせておこう。
虐待されていた方の幼体は、元からいないものとして扱っていたのだから放置しても構わないと言ったのだが、結局葛城はそれを手放した。更に何の心境の変化か分からないが、皆にもう虐待は辞めようと説得すると決めたらしい。千我裂なる生徒が、純血のキヴォトス人が云々と扇動しているらしく、そいつさえ止めれば他の生徒も止めるやも……と。そういえば連邦生徒会の防衛室にも千我裂という生徒はいたな。茅ヶ崎ならまだしも、千我裂の字で被るとは。親戚なのかもな。
而して私に運ばれると知った豚鳥は、最初こそもう一匹と同じく無しだのチェンジだのと戯言をほざいていた。だが校舎内から葛城以外の虐待者達の嗜虐的な視線を感じ、その上で私の、別に置いていっても良いんだが、という発言から想起出来る結末を理解したのか、渋々搬送を受け入れた。
葛城が止めるといっても、全てのアリウス生が虐げた者への恨みを捨てられるかは判らないからな。
「それらが、卵を、静かに、産むなら……私は、壊れ、ません……」
「スコッツデールは……不可能であると、言われて、います……」
到着する頃には豚鶏共は全身を冷や汗に塗れさせ、すっかり元気を失っていた。その消沈具合はいつもならば不必要なまでに畏まって対応してくる矯正局の職員が、普段からこれだけ大人しければ面倒じゃないんですがね、と私相手に苦笑し軽口を叩く程だった。
そうして搬送と受け入れ自体は、何事も無く終わったのだが。
先程の外部人の変質者共がどうなったか。気が早いとは思うが、何らかの情報を得られたかと尾刃に確認しようと公安局の方に向かった所。想定外のものに遭遇する羽目になった。
「お届けに上がりました」
「また君か、平穏な時間が壊れるなあ」
「ええー……? 私、いつも通り、仕事として、転生者病罹患者を連行して来ただけなんですがぁ? 私イジケちゃうし」
「アッスミマセッ……すいません許して下さいなんでもしますから!」
「ん? 今なんでもするって言ったよね……」
「えっそれは……ここじゃちょっと、後で……アッ、れ、連邦生徒会長!?」
斯様なやり取りをしながら、公共の場で仲睦まじく絡み合うヴァルキューレ一般生徒ら……はどうでもいい。生徒らの恋愛事情など、私の関知する所ではない。同性愛はよくわからんが、好きなだけ愛を育んでくれ。場所は選んでほしいが。
問題は、イチャつく2人の傍らで、車椅子に拘束され呻いている、原発性精神乖離型身体変貌症患者。俗称、転生者病。
ある日突然前触れも無く、自分は他の世界から
それだけならば、個性が極まった者達が溢れかえるこのキヴォトスにおいて然したる問題とならない。能力に任せて蛮行を働いても、テロリストすら無為自然に生きるこの地でならば、一度排斥されても受け入れる者がやがて現われるだろう。多分。
ではこの病気の何がまずいのか。
「う゛う゛う゛う゛う゛!! い゛あ゛い゛あ゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ひいいいい!? なんたる容態急変だよ!?」
「お……おいおい抗発症薬はどうした!? 戻らないよ効果切れたのか!? だとしたらまずいよイチャついてる場合じゃないよ! わ……私ら業務上過失致死罪になっちゃうよ!」
虚空を見つめていた患者が激しく震え始め、その瞳とヘイローが不気味な蛍光緑に染まってゆく。その問題が発現しようとしている証だ。これはまずい。
狼狽える2人に先んじて蠢く患者を押さえ込み、緑だ、と介護係の生徒に告げる。
「アッハイ!」
危険な状態で患者を放置してイチャついているような奴でも、最低限介護役を任されるだけはあり、指示通りに動いた。即座に彼女は鞄から注射器を取り出した。既に薬液を充填された状態で備えられていたその鋭い先端が、裂帛の気合いと共に振り下ろされ、僅かな反発の後、人間のものから得体の知れないなにかに変質しつつあった患者の肌を貫いた。
「イヤーッ!」
「い゛あ゛い゛あ゛い゛あ゛い゛あ゛い゛あ゛い゛……あ……あああああ……」
注入されてゆく薬液。元の色に戻り、同時に理性を取り戻す患者の瞳。まるで蠕虫のように畝っていたヘイローの形状も元に戻った。呆然としながらも、自身が変貌しつつあったと理解し、恐怖と絶望の涙を溢れさせる。
この原発性精神乖離型身体変貌症の患者は、発症してから一定期間が経つと「異界の霧が私達の体内に充填されている」「世界の狭間から奴らが我々を観察している」「転生した時に虫が自分の魂に入り込んだ」といった特定の妄想に冒されるようになり、それを放置していると、先程のような発作が起き……遂には、化け物に成り果てる。
数年前、私が報道カメラの前で殺した奴らのような。私の悪夢に現われる、《色彩》で汚染された元生徒達のような。この世の異物である私にすら不浄で悍ましいと認識される、この世のものとは到底思えないなにかへと。
私が殺した奴らの方は、外部人が同じ外部人に改造手術を施した結果の改造人間であると判っている。だがこの病気の理由は……解っていない。【ゲマトリア】でも、【無名の司祭を継ぐ者】でもない。もっと言えば、こんな病気が存在する事自体、キヴォトスの大多数の民が知らない。
尤も、それにしてはおかしな事に、発作を押さえ込む薬物の類は開発出来ているのだが。それもキヴォトスではなく、外部で開発された薬だ。
キヴォトスでの勢力を著しく減衰したカイザーコーポレーションに代わり台頭した【ウィルマース財団】、その傘下の一企業でありアリウス新校の主な後援者でもある【ウィルマース・ファウンデーション】の開発したもの。
本当に大丈夫か? キヴォトスに好き好んで介入してくるような連中だぞ、そのウィルマースなんとやらがなんらかの生物兵器でも使ってマッチポンプをしているのでは? と疑ってはいるのだが、ソウシャの戯言曰く「少々過激な奴らではあるが、人類を救おうという意志だけは本物なので、この場合は本当に裏の無い治療薬」らしい……随分と不穏な言い回しである。しかも感染力の極めて低い、いや本当に人から人へ感染するかどうかも判らない病気一つを治療しただけで人類を守るとは……ご大層な話だ。
「会長すみません、ありがとナス……」
「申し訳無いス……」
患者が落ち着くと、鯱張った2人が謝罪をしてきた。
動揺するのは解るが、こんな他校の目が届きそうな所で発症させるのは勘弁願いたい……普通に近くに戒野のドローンが飛んでいるのは目を瞑るとしてだ。薬が間に合わず変貌した患者は、例外無く死ぬまで悶え苦しみ、ただ破壊活動を繰り返すようになる。
公になってしまえば、今はキヴォトスでは珍しくもなんともない奇人変人の1人として扱われている原発性精神乖離型身体変貌症患者達が、本当の奇異の目を向けられるようになってしまう。
キヴォトスに存在してはならない異物として扱われるのは……私だけで十分なんだ。
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患者について注意喚起をした上で尾刃らについて確認すると、なんとまだ戻って来ていないと言われてしまった。ミレニアム自治区を通過する最中、折り悪く緊急の工事に出くわし、足留めされているそうだ。
またぞろ妙な実験でもして爆発を起こしたか? 私と同じ孤児院よりミレニアム初等部に入学したアリスとキイの天童姉妹からの仄聞ではあるが、広報映像の一つである「ミレニアムあるある」とやらで、よく爆発が起こり運営資金をドブに捨てているとセミナー会計担当の早瀬が愚痴を溢して没になったものがあるらしい。そのくらいには爆発が起こる。
本来ならばとんでもない話ではあるし、学生以外も巻き込まれるので問題視もされるべきだが……ミレニアムが勃興した頃からの伝統とも言うべきもので、会長も苦笑はなさっていたが、予防した上での想定外の事故はしょうがないよね、と流しておられた。なら私も従うのみだ。
唾棄すべきレストランもどきで捕らえた異食症者達は捕まえてあるのだし、急く必要も無いだろう。今回もついでに聞きに来ただけなのだし。
斯くしてヴァルキューレでやるべき事を済ませた私は、不本意ではあるが、ソウシャの言う所のリンのご機嫌取りの当てとやらが気になった為、意識して行動の制限をかけずにいた。
強引な移動の末辿り着いたのは、D.U.外郭地区にある、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eのオフィス予定地……という名の空き家の地下室。
ついてきていた戒野のドローンも、なんでこんな所に入るのかと言いたげな動きを見せる。
『ついにやってきたわに! 連邦捜査部S.C.H.A.L.Eオフィス予定地!』
『シャーレについての構想自体すら挙げていなかったにも関わらず、アロナ(仮)は何を思ったか私物であるクラフトチェンバーを勝手に地下に持ち込んでいます。リンちゃんに遊具扱いされるのも宜なるかな』
『アプリ版では本来の持ち主ではない先生が闇雲に使うしかない為、生徒への贈り物やカフェの家具といったものをランダムで製造する事しか出来ないクラフトチェンバーですが、コンシューマー版では装備品を含めた様々なアイテムを作り出せます。特定のプレイヤーキャラでのみに限られますがね』
『アロナのクロー……ん゛ん゛っ、その条件を満たしているほもちゃんは余裕でクラフトチェンバーへ深くアクセスする事が可能であり、本来だったら狙ったアイテムを……今回で言えば、リンちゃんのご機嫌取りの贈答品を作れますが……(作れ)ないです』
『なにを言っているんだ?(OTN) と視聴者兄貴達が言いたくなる気持ちは分かりますが、コンシューマー版既プレイの方はご存じの通り、起動キーであるキーストーンの入手方法は極めて少なく、先生でプレイして少量をアユムから好意で横流しして貰うか、アビドス砂漠やミレニアムの廃墟、アリウスのカタコンベといった各地の遺跡にツルハシを持っていき、自力で発掘しなければならない訳ですね』
『無論そんな無駄な時間を費やす余裕などRTAにはなく、キーストーンは手元にありません。ので、アロナ(仮)お姉ちゃん直伝のちょっとした強制稼働バグ、その名も運試しガチャを使います』
『ドラえもんの漫画で示されていた、古の時代のテレビの映りが悪くなった時の修理法の如く、起動準備状態にしながら斜め60°で……クラフトチェンバーを叩きます! ほら動いた!』
会長より賜った知識を、こんな間抜けな方面に生かす事になろうとは……いや、元からこういう事の為の知識ではあるし、なによりリンの機嫌を取るという事自体はとても大切な事だとは思うが。色々な意味で。
しかし、金には困っていないにも関わらず、こんな狡っ辛い真似をせねばならんとは。無様この上無いな。しかもこれ、戒野に見られているんだぞ。みっともない。
そんな事を考えている内に、早々に道具が出来上がった……のだが。
なんだこの……見ているだけで不快感が込み上げてくる、何の変哲も無いはずの白い鎖は。
『な……なんだあっ』
『最悪のバグだっ! ペットは飼い主に似ると言うけど、道具もそうなのかこのマヌケっ! このアホクラフトチェンバー、【アフォーゴモンの鎖】なんか作りやがった!』
言うに事欠いてマヌケとはなんだ貴様! 会長の私物が少し思い通りにならなかったからと言って、冠前絶後と評すべきほどに聡明であらせられる会長までマヌケ呼ばわりしやがって! 許されざる大罪だぞ!
『このクソもとい【アフォーゴモンの鎖】は、ベアおばが存命している間、或いはベアおば台頭前の内乱時代に、アリウス自治区に所属する子供達を大人に反逆するように唆し、20人以上大人の手で殺害させた時に最後の犠牲者のヘイローが変化する、最低最悪クソ呪われ装備アイテムです!』
『アリウススクワッドとアズサを唆して、アツコ以外全員を処刑に追い込んだ場合のみ手に入る【スクワッドの生首写真】と並ぶレア装備ですね……』
……確かに話を聞けば、最低最悪の道具だな。どれほど良い効果があろうとも、度し難い屑しかそんなものは求むるまい。もう一つの許されざる名称の写真共々。尤も、単なる道具であるクラフトチェンバーの出来が悪かろうが、会長の偉大さは小揺るぎもしないがな。
だが、コンシューマー版とやらの作り手は、アリウス生徒に何か恨みでもあるのか? ただでさえ大人という名の赤鶏の下僕共から、性的なものを含めた凄惨な虐待を受けていたというのに。
いや、ソウシャの戯言の一切を真に受けるならば、他校の生徒も地獄すら生温い世界に叩き込まれる苦境が基本になる為、キヴォトスの生徒というもの自体を憎んでいるのかもしれん。
『敵対者からのヘイトを多く稼ぎ、同時に一定確率で攻撃してきた相手にバッドステータスの恐慌状態を与えるという、さもタンク役に役立ちそうな装備なのですが、これにはガチで洒落にならない装備ペナルティがあります』
『なんと装備している間、ありとあらゆる敵味方キャラクターからの好感度が、メガトンコインし続けます。それは驚くべき事に、意思疎通など不可能と思われている《色彩》や、その同門と看做されている外なる脅威類も例外にはなりません』
『世界を破滅に導く力が、悪意と共に1個人を消し去る為だけに向けられる訳です……ヤバイですね!(PKRYN)』
『主にモブ生徒プレイでのカイザーコーポレーション就職ルート等で、プレジデントやジェネラルからの指示に従い先生を排除する為の手段として用いられる事がありますが……正直お祈りポイント過ぎて、直接先生を殺しに行った方がまだマシ』
『言いくるめに類するスキルを用いて反逆させたアリウス生徒を生贄に作ったこれを先生の鞄に忍ばせ、おかしくなった生徒達に凌辱させて排除する為に使われますが……ほぼ確実にワカモやセリナ、コタマ他のストーカーもとい特殊な性癖の生徒らにバレて、悲惨な目に遭わされます。さりげにセリナにバレた際が一番グロい最期を迎える羽目になりますが……その辺りはどうでもいいですね』
『しかも一度装備すると、死ぬまで外せないとかいう最悪の仕様! ウッソだろお前(笑)笑えるなお前ねぇ(笑)フフッ馬鹿じゃね? いや笑えねえわ……』
『万が一にもこんなもん装備したらただじゃ済まないので、部屋の隅に捨てておきましょう。ミサキちゃん、ドローンのアームでそのゴミ弾き飛ばしちゃって下さい』
『いやーキツいっす(素)初っ端から最悪のものを見ましたね……気を取り直して、次の生成を進めていきましょう。ほらいくどー』
また起動準備状態のクラフトチェンバーを叩くと、次の生成が始まる。
だが望んだものは出来ず、あのマヌケは癇癪でも起こしたように騒ぎ立て、再度私の身体にクラフトチェンバーを殴らせた。
その後も無闇に道具を作るソウシャだが、馬鹿でかい掛け時計だの硝子玉だの青銅のシミターだのとリンの神経を逆撫でしかねない物品ばかりが出来上がってゆく。
しかし、ずっと気になっているのだが、このクラフトチェンバーは何を材料に物質を生成しているのだろう。存在を知った時にはキーストーンを材料としていると思っていたのだが、実際は起動キーに過ぎないし。会長にお訊きした際にも、真顔で「気にするな!」と言い切られてしまった以上、それ以上の追求は私の信念にも反する為に出来ないが……まあ、問題無く使用出来るのであればいいか。
『ハァ……(クソデカ溜息)つっかえ! ホンマつっかえ! 辞めたらこの仕事!?』
起動キーも使わず、バグで無理矢理創らせておいて、しかも散々酷使しておいてのあるまじき言い草である。
もう普通に市販品の何かを送って誠心誠意謝罪するのが一番だろう。そちらの方に行動を誘導すべく、思考を巡らせていると。
今までとは違う、随分と現代的な品が、生成されてきた。
まるで銃撃を浴びたが如く画面の砕けたタブレット端末……背面には赤、橙、黄、緑、青、藍、紫という虹色を構成する色のラインが絡み合って描かれ、『譛牙ョウ繝??繧ソ逕溷多菴薙?∵凾遨コ髢鍋官鄂ェ閠???が逾槫所縺ウ縺昴?逵キ螻槫?遶九■蜈・繧顔ヲ∵ュ「』の文字が殴り書きされている、妙なデザインのもの。
リンのお気に召すような品ではないだろうが……なんだ、これを見ていると妙に胸がざわつく。
『あぁん? グラートバッハの水鏡…………なんでぇ?』
……なに? これが? あの赤鶏共が私を呼んでいた、グラートバッハのなにがしのなんとやらの……元凶か?
意味がわからん……会長がお造りになられた、先生の為の装備……シッテムの箱の悪趣味なパロディ? この変なタブレット端末にどんな特別な要素があるというのか。まあ最初から破壊された状態で生成された点と、珍奇なペイント及び殴り書きは確かに特別であるが……。そもそもなんで創られてすらいなかったものの関係者として私が語られていたんだ……これでは因果が逆じゃあないか?
そうして奇々怪々な機材を眺めていると、突然砕けた画面の上に文字が浮かび上がり始めた……共鳴者だのプラナだの、まるでまくし立てるかの如く、続々と。
感情が顔に出ていたら、当惑も露であっただろう私だが……特に最後、パスワードを求められた時が、その最たるものだったろう。
なんで私は、それを知っているんだ。
我は拭う。■■■■の嘆きを。
我は緘する。七つの古則を。
呟くと共に、目のような模様が中央に配置された歪んだ五芒星が、表現しがたい色調で描かれ……それの消失と共に、地獄絵図が映った。
恐らくはミレニアムの中心街であろうそこは、瓦礫の山と炎の海と化し。ミレニアム最高戦力であるはずのC&C、及び妙なパワードスーツを着用した調月の側仕えが負傷し、尾刃を含むヴァルキューレの生徒達がその援護をしている。
その光景を作り出したであろう敵対者は、たった1人であり。
……なに? 何故だ? 何故、私の悪夢の世界の住人が、ここに映っている?
『ファッ!? アリス!? ナンデ!? アリスナンデ!? 星3引かれたのナンデ!』
『ウ……ウソやろ! こ……こんな乱数ガバが! こ……こんなガバが許されていいのか!』
『しかも真っ昼間にこんな所で大暴れするなんて! 「突然行って、びっくりさせたる!」は勘弁してよ!』
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛もうやだあああああああ!!!』
ソウシャが子供のように喚き散らす。それに不快感を覚える余裕もない。
何度となく悪夢の中で見た。《色彩》に……本当に《色彩》かは判らないが、何かに汚染され変貌した、私の知らぬ、名もなき神々の王女の方の天童アリス。
どうしてこの世界にいる。アリスは……私の知るアリスとキイはどうなった? 大丈夫か? いや、そもそもこれは現実か? 割れたタブレットに映った映像なんて、どう考えても幻覚、妄想だろう?
疑わしいと頭では解るのに。こんな訳の分からない、急に創られたタブレット端末なんぞに映っているものを、何故こんなにも強く信じようとしている?
映像の中で暴れ回り、人を……逃げるに逃げられず、物陰に隠れていたが遂に追い立てられてしまったらしいミレニアムの学生を、その異形の右腕から放った光で楽しそうに焼滅させていく、悪夢の中のアリス。
『やべえよ……やべえよ……アリス《歪曲》はとあるバッドエンドを迎えたセーブデータを引き継いでプレイしていると発生するネームドモンスターで、《歪曲》化生徒達の中でもヤバイ級の戦闘力を持ちます!』
『特にあの右腕の【幻想根絶】は撃ち出す弾丸、光を収束して創り出す擬似的な拳で共にヘイローによる加護を無視してダメージを与えてくる恐ろしい兵装!』
『ほもちゃんもターゲットなのでしょうが、ミレニアムに出たという事は……やはり先にこちら側のアリスとキイの天童姉妹を、神名のカケラに加工する気なのでしょう。ミレニアムのリオとかヒマリとかネルとかに一斉に来られたらマジで勝ち目ないぞ……いや本当に何考えてたんですかね、最初に天童アリスと天童キイを人間として誕生させたくせに、碌に隠蔽もせず自分には親の資格なんか無いとかほざいて放置してたどこぞの馬鹿は……』
『こちら側で生誕して十数年、時間の経過に伴いほもちゃんの体内では《歪曲》への抗体が作られている為、このアリス相手でも一応攻撃は通じますが、元々のアリスの自然回復がヤバイ級なので、《恐怖》値を少々多めに載せなければジリー・プアー(徐々に不利)となります……』
セーブデータの引き継ぎだの私が奴のターゲットだの抗体だのと、相も変わらず訳の分からない事ばかり言う輩だ。
だが、つまり、この異常な光景は、現実に起きている事で間違いないのだな。
ならば、すぐにでもミレニアムに向かい、あれを止めなければ。
いずれ処刑されるとはいえ、連邦生徒会長代行として、このような災厄を見過ごす訳にはいかないんだ。
『……ほもちゃんは今すぐにでもミレニアムに向かい、戦いたいそうです。かしこまり!』
言葉とは裏腹に、私の身体は足ではなく手を動かす。おい、言っている事とやっている事が違うだろう。
だが、私が思っている以上にソウシャは破損済みタブレットの操作を把握しているらしく、短時間の操作の末、表面に『出撃』の文字を浮かび上がらせた。
そうしてそれを押した、直後。
俄に周囲を光が囲んだと思うや否や、私の身体は戦場と化したミレニアムの中心街、アリス《歪曲》とやらの前に転移してしまっていた。
文字化け部分
『譛牙ョウ繝??繧ソ逕溷多菴薙?∵凾遨コ髢鍋官鄂ェ閠???が逾槫所縺ウ縺昴?逵キ螻槫?遶九■蜈・繧顔ヲ∵ュ「』
有害データ生命体、時空間犯罪者、邪神及びその眷属共立ち入り禁止