護衛という名の居候が増えた我が家だが、彼女達の目的は直江大和の資質の調査とその護衛だ。
そのことから、武松は現在パトロールをしている。
そして俺はというと……
「ルオ、ごはん作って」
「お前が作れよ」
「お願い。明日から作るからさ。真剣で本気出すから」
「いっつもそれだな。動かないと太るぞ」
「そうしたら二人に飼ってもらう予定」
明日から真剣という、くそやる気が見受けられないTシャツを着ている公孫勝と、お留守番をしている。
俺のお気に入りのカウチソファで寝転がりながら、クリハンの素材集めをしているのだろう。
それにしても、飼ってもらうってペットかよ。
「俺の名前はルオじゃねぇって何度も言ってるだろ」
「いいじゃん。私達からしたら、「らく」っていうよりも「ルオ」のほうが呼びやすいんだから」
「厳密には違うだろ」
「気にしたら禿げるよ」
「ふさふさだっつーの」
LuóとLuòは結構違うと考えながら、俺はキッチンへと向かう。冷蔵庫の中を見ると、絹ごし豆腐が余っていることから、麻婆豆腐にするか。デザートに杏仁豆腐を作ることも忘れない。
今のご時世では珍しい、ガスを利用したコンロを使って晩飯を作っていく。
「それで、大和の資質はどうなんだ?」
「リンは資質ありとみてるみたいだよ」
「まぁあの表情を見ていると、資質うんぬんよりもホの字の方が大きいんじゃないか」
「ようやく素材ゲット」
「マイペースな奴だな、お前は」
一人で黙って料理を作るというものは、ある意味寂しいものだ。だから、話し相手がいる今はこれまでよりも充実している生活を送っているのではないか。
まぁ家事関連はすべて俺がやっているのだが。
「でもルオはそれでいいの?」
「何がだよ」
「ほら、大和とリンがアダルトな関係になっちゃうよ」
「双方同意の元ならいいんじゃないか?」
えのきとわかめを使った生姜のスープを作りながら、公孫勝の質問に答える。
「俺のDNAの一部に注がれるーとか言わないの?」
「ああ、そういうことか。ちなみにシークレット情報だが、目は移植してないぞ」
「マジ?」
「マジ。林冲に異能を継承させるために移植を行ったことになっているが、それなら瞳の色が変わってないのはおかしいだろ」
「そういえば、ルオの瞳の色は深紅だもんね」
公孫勝の言う通り俺の瞳の色は深紅だ。一方で林冲は小紫色である。移植を行って瞳の色が変わることはない。
沸騰したスープの仕上げに溶き卵を入れる。薄い絹のようにスープの中を漂うそれは、見ていると食欲がわいてくる。
最後に春雨に野菜を和えた中華サラダを作って晩飯の出来上がりだ。
「ほら飯出来たからゲームはやめて食べろ」
「机の上に置いておいて。後で食べるから」
「食器洗うのは俺なんだから、一緒に食べろよ」
「水につけておくからさ。明日の朝洗えばいいじゃん」
「それ以上ふざけてると、ネットが出来ないように回線ぶち抜くぞ」
「わかったってば。すぐに行くから回線は抜かないでよ」
回線を切られるのが困るのか、電源を切ったゲーム機をソファの上に置いてから椅子に座る。
それを確認した俺も、冷蔵庫からプーアル茶の入ってある各自のウォーターボトルを取り出して、椅子へと座った。
「それで、他のメンバーの意見はどうなんだ?」
「資質はあると思うよ。でもまだわかんない」
「そうか」
「ブショーは可もなく不可もなくってさ。よっちゃんとパッドは……」
「変態が男を観察するはずもないし、史進は決闘に忙しいってか」
「そういうこと」
もぐもぐと食事を勧めながら、梁山泊の近況報告を聞く。
「俺はあいつは向いてるとは思うけどな」
「男色に目覚めたの?」
「ちげぇよ! なんでお前らはすぐにそっちに結び付けようとするんだよ」
女性はそういうのが好きなのかと疑問に思いつつも、俺は大和に関する情報を整理していく。
「川神百代や椎名京。松永燕に武蔵坊弁慶や那須与一と言った才能あふれる人材に好かれているだろ」
口には出さないが、板垣三姉妹の一人である辰子も彼を好いているようだ。
しかも彼女は、リミッターを開放出来る異能のようなものを持っている。
弁慶も黙ってはいるが、何かしらの異能のような技を持っているような気もする。
また椎名京に関してだが、もしも彼が盧俊義になった場合は持ち前の弓の腕と愛のようなもので、異能を開花させるのではないだろうか。
「そういうわけで、資質ありと俺は見ている」
「ふーん」
「興味なさそうにするな」
「だって興味ないもん……ふぎゃ!」
人が真剣に答えているというのに、なんていうやつだ。デコピンを入れておこう。
「ちなみに井上準も持ってるぞ」
「あのハゲが?」
「例えばここでお前が「井上準お兄ちゃん助けてー」っていうと、一瞬の速度で乗り込んでくる」
「やってみる?」
「やらんでいいわ」
冗談でもそれを実行したら、決死の覚悟で俺に挑んできそうだ。それほどまでに、あの
「本当にやったらガチで回線ぶち抜くからな」
「ふーふーふー」
「音が鳴らない口笛やってんじゃねぇよ」
「ごちそうさま。次からは麻婆豆腐はもう少し甘くしろ」
「うるせぇ。辛いからいいんだよ」
「食べれるからいいけどね。じゃ、食器洗いよろしく」
「冷蔵庫にプリンと杏仁があるから、好きなときに食べとけよ」
「はーい」
そう言うと、公孫勝はネットの海へと沈んでいく。俺は二人分の食器を洗うために、洗面台に皿を持っていく。
赤くこびりついたものを洗剤で軽く洗いつつ、乾燥機能が付いている食器洗い機の中に皿を並べて、スイッチを押した。
後方から機械の駆動音を聞きながら、帰ってくる武松のために、机の上にある晩飯を保温機能の弁当箱へと、味が混ざらないように一個一個丁寧に入れていく。
「何見てんだよ」
「文句を言いながらも、ちゃんとするんだ」
「うるせぇ」
「ルオって実はツンデレ?」
「黙ってネットの海に沈んでろ」
「辛いの食べたから甘い飲み物が欲しいな」
コーラを催促する公孫勝のこめかみに、ウメボシの刑を決めながらも、彼女の前に350mLのコーラを置く。キャップは置く前に目の前で開けている。
「やっぱりツンデレじゃん。あ、お風呂は11時に入るからよろしく」
「もう一度ウメボシ決めてやろうか? まぁ、10時55分にタイマーセットしといてやるよ」
面倒くさいと感じながらも、俺は風呂掃除をするのだった。