放課後。帰宅している途中に、携帯から着信音が流れた。
『隣にブショーいる?』
「いるが?」
『じゃあ川神ゲームセンターに来てね』
「おま……、切れやがった」
出た瞬間の呼び出しだ。呼び出し主は公孫勝で、ゲームセンターに呼び出しということは、人員補充だろう。人の発言を聞かずに通話を切るあたり、彼女らしい。
行かなかったら自宅で面倒なことになると思った俺は、隣を歩いている武松を見る。
「どうかしたのか」
「公孫勝からゲーセンの呼び出し」
「というと、人員補充だろう」
普段から呼び出されているのだろう。武松は彼女の目的を言い当てた。
二人は指定されたゲーセンへと向かう。
到着したゲーセンには、九鬼紋白を連れた公孫勝が俺たちを待っていた。
「遅いぞ」
「人様を呼んでおいて上からの発言とはいい度胸だな」
腕を組んでいる公孫勝に、いつも通りのデコピンを叩きこんでやる。
そして俺は九鬼紋白を見る。彼女がゲーセンに通うとは、シュールな光景だ。
とりあえず挨拶をせねばと考えた俺は、一歩前に行こうとした瞬間。目の前に金髪の老執事が現れた。瞬間的にだ。
その老執事は表と裏の両世界で有名な人物、ヒューム・ヘルシングだ。
世界最強の一角に位置する彼は、九鬼財閥の従者部隊零番という永久欠番の番号を持っており、現在は川神学園1-S所属の九鬼紋白の護衛として同じクラスに通っている。
武松がいるということで、すぐに対応できるように現れたのだろう。
周囲を見渡すと、遠くには万能執事のクラウディオ・ネエロも待機している。
「貴様、面白い眼を持ってるな」
「何のことでしょう」
「まあいい。紋白様に手は出すなよ。出した場合は串刺しの刑だ」
龍眼を使って周囲を警戒したことに気付いたヒュームが、くぎを刺してきた。
彼女に害をなそうとするならば、すぐに倒すと言わんばかりだ。
「初めまして、九鬼紋白様。2-F所属の目次洛と申します」
「そう固くなるな。これより一緒にゲームをする仲なのだぞ」
「そうか。んで、横にいるのが知っているとは思うが武松」
「よろしく」
「フハハハ。では遊ぶとしよう」
しかし、周囲にこの二人がいるのに何故俺たちが呼ばれたのか。
もしかしたら、老人ということでゲームが……
「赤子。俺はすべてのジャンルに精通しているぞ。ゲームも余裕で出来るが、友人と遊ぶとのことで、出しゃばっていないだけだ」
「さいですか」
「本来ならば、紋白様に敬語を使わない赤子は串刺しにするのだが、紋白様からの申し出だからだ」
「わかってますよ。不敬は取りませんって」
「ならばいい」
耳元で囁くように瞬間移動してきたヒュームに対して、冷や汗をかきながらも答えていく。
公孫勝に連れられて到着した筐体には、タイムザクライサーというロゴがでかでかと書かれている。
「お前、ゲーセン初心者にこれをやらせるのか?」
「お、これを知ってるなんて通じゃん。いつもはブショーとゲーセンの野良二人とやってるせいか、途中で詰んだけど今日は最後まで行けそうだ」
タイムザクライサーは、ニャムコが出している4人用のリアル志向のガンシューティングゲームだ。
目の前に現れる敵を銃で倒していくという、シンプルなゲームシステムなのだが、足元にある二つのペダルを操作することで体勢を変化させなければならない。
さらに、発砲した際には反動がハンドガンをモチーフとしているリモコンにかかることから、その場の状況判断の能力と筋力が問われる。
筐体にある説明書を読んでいる、ゲーセン初心者の九鬼紋白にとっては難しいものではないかと考えるのだが、2年の九鬼英雄やその姉である九鬼揚羽を見るに、どうにかなると考えた俺は、横に並んだ4つの筐体のうちの1つの前に立つ。
武松も俺の隣の筐体でスタンバイをしており、説明書を読み終えた紋白も筐体の前に立つと、ヒュームはすかさず料金の小銭を入れている。
俺が最後だったのだろう。小銭を入れるとゲームが開始される。
銃声が鳴り響き、ステージがどんどん進んでいく。
九鬼紋白は予想通り、何発か発砲するとゲームの感覚を覚えたのだろう。
4人は次々と現れる敵兵を掃討していき、無事ゲームをクリアすることが出来た。
「いい汗をかいたな」
ヒュームから渡されたタオルで顔を拭きながらも、満足気にしている九鬼紋白。
公孫勝は武松が汗を拭いている。
俺と武松は普段から鍛錬をしているので、この程度はなんてことはない。
「武松はよいとして、お前は汗をかかぬのだな」
「普段から運動はしているので」
「ゲーセンの締めと言ったらプリクラだな」
何か言いたげな九鬼紋白。
公孫勝はそれに気づいていないのか、プリクラへと誘導するように、俺と九鬼紋白の手を取る。
「って、俺もか?」
「何言ってんの? 当たり前じゃん」
「いや梁山泊は写真NGなんじゃないのか?」
「安心しろ。紋白様はそういうのに一切使うつもりはない」
俺の疑問に、九鬼紋白ではなくヒュームが答えてくる。彼が言うのならば大丈夫だろうと思った俺は、彼女に導かれるままプリクラへと入っていく。
そしてプリクラを撮って、それを各員に配布したのちに解散となった。