それにしてもお気に入りがえげつないほど増えてびっくりしてます。
ダウンしている今何が起こってるの!?
期末考査の終わりの夜、相も変わらず自宅でごろごろと時間を過ごしていた。
昨日は大和の資質の最終確認を取るとのことで、静かになっていた我が家だったのだが、帰ってきた二人のおかげで賑やかさを取り戻した。
「それで、大和の資質はどうだったんだよ」
「ん-……正直なところ微妙なところって感じだね」
「ふーん」
腹の上でごろごろしている公孫勝の口に、ポテチを運ぶ。
それをぼりぼりと頬張るのだが、ポテチのカスが服の上に落ちてきたが気にしない。
「リンはありで、他は様子見っていう見解なんだよね」
「反対意見がないってことは、首領が判断を下すって感じか」
「そーゆーこと」
「でも意外だな。お前と武松はありと思えたんだが」
だらけ部での大和との距離感や、プールでの武松の餌付けなどを見るに、二人は資質ありとみていると思っていた。
「そこはルオのせいじゃない?」
「俺のか?」
「正体知ってからか、ブショーはべったりだし」
「それは同意する」
ルオだということがバレた翌日から、武松にパトロールや鍛錬以外は護衛と言われて四六時中付きまとわれている。
梁山泊の時もこういう風にべったりとされてはいたが、今はもういい年齢をした二人だ。
間違いを犯さないように気を付けないといけない。
「武松はわかるが、お前はどうなんだよ」
「私? どっちでもいいよ。同じ感覚ならブショーと一緒のほうがいいし」
「流されるままって良くないぞ」
「いいよいいよ。だって私は愛玩動物だし」
「あほなこというな」
ぐでーっと体重を乗せてくる公孫勝に軽いデコピンを放った。
最初は目を瞑っていたのだが、今では威力が軽いことからかそれを受け入れているようで、デコピンを食らっても笑顔なのは納得いかない。
「まぁ盧俊義になるかどうかは、結局は本人の希望だからね」
「俺は林冲だけの盧俊義になるに一票」
星を継ぐ者を強制はしないのは梁山泊のいい所だ。
一時期、催眠などによって強制したことがあったらしいが、その特異性を失った星たちがいたことから、このような条件になったらしい。
大和の性格上、盧俊義として認められなければ直江家の枯渇に関わるとかほざいて頑張っているだけで、盧俊義という役職に興味があるのかと言われるとノーと答えるだろう。
「だよね。なんていうか、リンと大和っていい雰囲気になってきてるし」
「おやおや、おこちゃまな公孫勝さんにそんな雰囲気がわかるとでも?」
「は? わかるし。めっちゃわかるし。ギャルゲーの女王と言われた、この天才をなめるなよ」
「ハハハ。ゲームと現実は違うのだよ。天才の公孫勝くん」
ちなみに武松が今自宅にいないのは、翌日に首領を交えた会議があるとのことで、その周辺のパトロールを行っているかららしい。
「それでルオはどうするの?」
「俺か? どうすっかなぁ」
梁山泊に所属するかどうかを聞かれるが、どう答えたものやら。
「五分五分……ってとこか?」
「梁山泊に所属したらハーレムだよ?」
「出ていったのに戻るって格好悪くないか?」
「確かに。追放物なのに戻ってくるなんてダサいね」
公孫勝が言っていることはよくわからないが、世界一安全と言われている国籍を捨ててまで、古巣へと戻るというのは覚悟がいる。
そもそも買われる前も日本住だったんだが。
「パッドから聞いたんだけどさ。ルオってどのくらいの戦闘力あるの?」
「戦闘力……なぁ」
自身の戦闘力について、比較対象が今までいなかったから考えたなかった。
「俺の目測通りなら、壁の上くらいか……?」
「すげーじゃん」
「龍眼使えば壁は超えるんじゃないか?」
「私は後二回戦闘力を上げることが出来るって感じでかっけーじゃん」
「いや、龍眼超える力なんてないだろ」
「私、龍眼、気になります」
「んだよ、その片言はよ」
彼女のノリに突っ込みを入れる。どうやら何かのリスペクトなのだろうが、残念ながら俺はそれを知らない。
とりあえず公孫勝の希望通りに龍眼を発動させる。
「うわ、なにそのぎょろぎょろと動いてる目。気持ち悪い」
「潰すぞこら」
「暴力はいけないんだぞ!」
公孫勝はアイアンクローから逃げようとするが、龍眼で動きを予測している俺からは逃げることが出来ない。
「とまぁ、こんな感じで林冲の予知と同じようなものだな」
「予知を失くして龍眼を手に入れるって面白いね」
「失くしたものを補おうとする。人体の神秘ってやつだろうな」
最初から持っていた予知は1秒先の動きを知ることが出来たのだが、龍眼も同様な能力を持っているようだ。
何度も死と隣り合わせの経験をした俺は、気づいたらこの能力を得たのだから、面白いものだ。
「差はあるけどな。予知は世界そのものに干渉できるが、龍眼は人の手が加わったものなら理解できる」
「難しい話をするね」
「簡単に言えば、罠を設置されてるとすると、予知は人が踏む未来を視て回避出来るが、龍眼は人為的な違和感を視て回避が出来る」
「ふーん、どっちがいいの?」
「ぶっちゃけ変わらない。が、史進みたいな異能殺しなら龍眼じゃねぇか? しかし、予知ってのは成長した場合、龍眼を超える可能性もある。ケースバイケースだと思う」
龍眼とは、はっきりと言えばただ目がいいだけだ。
異能とは違って、これを彼女の異能殺しで消すことは出来ない。
逆に成長する可能性を秘めている予知は、もしかしたら龍眼を超えるかもしれない。
そのことから、優劣をつけろと言われても無理な話といえる。
「まぁどうでもいいや。もしも明日大和が盧俊義になるってことを言ったら、私たちはすぐに梁山泊に戻るからよろしく」
「はいはい。それまでに答えは出しときますよ」
腹の上に体重をかけてきた公孫勝の頭をポンポンと撫でる。
彼女の言葉を頭の隅に置いて、俺は思考を放棄するのだった。