真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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リベンジマッチ?のようです

 独特な足さばきを利用して、薙ぎ払いからの斬り返しを行う。

 稲妻のような槍捌きから、その先端の刃の残影が三日月のように残る。

 

 ただひたすら同じような型の鍛錬。

 何も特別な技は利用していない。

 

 必要なのは、ひたすら基礎訓練。

 その基礎の攻撃は、時として技をも凌駕する。

 

 深夜、学長に許可を得て鍛錬の場として利用しているこの山にある滝に向かって、ただひたすらに自分の理想の軌道を描いていく。

 水流にあらがうことなく、自然に身を任せながら描く。

 

「おー、すげーな」

「史進か」

 

 滝によって濡れたのか、それとも体の火照りを冷やすためにかいた汗なのかわからないが、ずぶ濡れの衣服を脱ぎタオルで残った水滴をぬぐいとる。

 ブドウ糖と塩とレモン果汁を使って作ったオリジナルの飲料水を、乾ききった体を癒すために、少しずつ浸透させていく。

 

「だめじゃないか。こんな時間に男と二人きりなんて」

「こいつ、何言ってんだか」

 

 冗談を交えて会話をするも、どうやら彼女はそれどころじゃないらしい。

 むき出しの闘気を見るに、あの時の再選というわけか。

 

「まぁまてって。ちょっと疲れてるんだよ」

「どんくらい時間は必要か?」

「できれば来年くらいまで」

「いやいや、そんなに待てねぇって」

 

 この冗談は通用するのかと考えながら、自分の疲労の度合いを考える。

 

「息が整うのに10分ってところか」

「じゃあそれが終わり次第ってことで、大丈夫か?」

「だめっていってもやるんだろうがよ。でもいいのか? 曹一族の警戒をしなくても」

 

 予想通り、大和は林冲の盧俊義。つまりは恋人となった。

 だが、それではいおしまいというわけではない。

 曹一族が諦めるまでは護衛を続けなければいけないし、一番襲撃が多いこの時間に一つの星が護衛を放棄するのはどうだろうかと考える。

 

「そこんところは大丈夫。今日は林冲の泊っているホテルで一晩過ごすってよ」

「あれまぁ、結構アダルトなシーンじゃないか」

「ま。わっちとしては、リンが直江大和とくっついてもどうでもいいって感じだ」

 

 なるほど

 

「……で、お前は俺に何を求めてるんだ?」

 

 彼女から出ている闘気を囲うように、俺も自身の気を解放した。

 

「あの時助けてもらったってのもあるけど、勝負に引き分けってのは、やっぱ違う。だから首領に許可を得て、わっちはお前と戦う機会を待ってたわけさ」

「損な性格してるな」

「よく言われるぜ。でもさ、これがわっちなのさ」

 

 引き分けというものは、悪いイメージはある。

 前回全力だった彼女に対して、俺は龍眼すら使っていない。

 つまり格上相手に引き分けというのは、物凄いアドバンテージなのだ。

 それを捨ててまで、俺に勝負を挑んでくるか。

 

「龍眼はお前の異能では消せないぞ?」

「上等!」

「では、かかってこい」

 

 釈迦堂のおっさんと勝負したときと同じように、龍眼を発動させる。

 史進は、初手に全力を乗せるつもりなのだろう。彼女の棒を持っている手に、地面についている足に、すべての気が練りこまれている。

 

「いくぞーーー!」

 

 怒涛の如く振りかぶられた彼女の棒に、俺は

 

「せいやっ!」

 

 その棒が振られる前に、史進の胴体へと全力の横薙ぎを入れた。

 人間が横へと一直線に飛ぶのを、人生初めて拝めた俺は急いで史進の元へと駆け寄る。

 

「おーい、生きてるか―……って、気絶してるな」

 

 満足そうな笑みを浮かべ気絶している史進の額に、冷やしたタオルを乗せる。

 まだ基礎の鍛錬は足りないのだが、気絶している彼女を放っておけないので、彼女の横に座って月を眺めた。

 都会では見ることのできない鮮明に見えるそれは、梁山泊の頃を思い出す。

 

「いつつ……気絶しちまってたか?」

「ばっちりとカウンター入ったからな」

「あー、やっぱり負けたわ」

 

 負けたにもかかわらず、史進は笑う。その笑みは先程とは違って、憑き物が落ちたかのようだ。

 

「だから言っただろうが」

「それで、何が悪かったと思う?」

「何がか……」

 

 俺は、史進の敗因を考える。

 龍眼があったからとか、腕前の差とかではない。純粋に負けるであろう原因を。

 

「お前さ、気性が荒すぎるんだよ。資質自体はまだ伸びしろがあるって釈迦堂のおっさんも言ってたし」

「やっぱか」

「やっぱかじゃねぇよ。それがわかってるなら治せ。敗北は九紋竜、しいては梁山泊の名が廃るだろうが」

 

 俺が薙いだ部分を持っている棒でツンツンと突いてやる。

 痛いと言ってはいるが、敗北は世界最強と言われている傭兵集団の梁山泊では許されないことだ。

 

「ったく、毎週この時間なら俺はここで鍛錬してるから見てやるよ」

「まじか。サンキュー!」

 

 一子の鍛錬の過程が終わったことで、彼女は俺と釈迦堂のおっさんの手から離れて川神院へと戻った。

 第六感も身に付き始めたので、後は川神院での修行をするだけだ。

 そのために、この時間は暇になったのでこの山で鍛錬を行っている。

 

「しかし! お前たちの首領から許可を得てからだぞ」

「わかってるって」

 

 口を尖らせている史進は、欲しい玩具を買ってもらえていない子供のようだ。

 なんでこうも俺は損な性格をしているんだろうな。

 

「まぁ今日は外出の許可を得てるんだろ? ほら、座ってないで一緒に鍛錬をするぞ」

「応!」

「約束組手からだ」

 

 そういうと、俺は史進と組手を始める。

 薄暗く月明りのみで照らされる山中の、二つの棒がゆっくりと交差をするのだった。

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