残り3話くらいで終わる予定です。
今回は洛のみの推理パートですので、苦手な方はスルーしても大丈夫です
大和が林冲に攫われて数日経った。
武松、史進、楊志、公孫勝はてんてこ舞いな状況らしい。
頭脳派でもある楊志によって、上へと報告を偽装しつつも武松と史進は曹一族の警戒に当たっている。
公孫勝は、多分だが鳥か何かに憑依をして林冲の捜索をしているのだろう。
一方俺はというと、自宅で久方ぶりの独り身というわけだ。
せっかく告白が成功したのに、そのお相手に会えないというこの状態は一種の遠距離恋愛のようなものなのだろうか。
「面倒くさいことになったな」
やることがない俺は、ぼーっとしながらも思考を巡らせる。
林冲のあの守りたい衝動は、多分俺のせいだろう。ぶっちゃけあんなに拗らせるのはどうなのかと思うが。
それで絶対に死なせたくない恋人が出来た彼女は、大和を守るべく犯行に至ったわけか。
「いやでも手綱を握れなかった大和のせいだな」
そうだ、そうに違いない。
大和に責任転嫁をしつつも、寝返りを打ってテレビの方に顔を向ける。
夏季休暇となったので、この時間も学生向けの番組が入れられており、今は浜辺が映されているそれを、BGMの代わりにしながらも思考を続けることにした。
「あの信念だ。無理やり拉致はしないとしよう」
頭の中に周辺の地図を思い浮かべながら、拉致した先を予測していく。
殺人ではないが、プロファイル分析と呼ばれているもので分析を始めるとしよう。
準備
これは至ってシンプルだ。
ずっと守ると言われた大和がそれを拒絶した。それからどうやって彼を守ろうかと考えに考え抜いた結果、自分のみ知っている隠れ家へと大和を運んだ。
他の日ではなくその日にしたのは、星達が少なかったからだろう。
犯行方法
曹一族の警戒がある中、バスや電車や飛行機といった交通機関は使用は無理だとしよう。
梁山泊にもバレていないということは、移動手段として車のみの利用だろう。
また、守りたいものに対しての過剰な暴行などは行われていないだろうから、数時間のみの気絶での移動というわけだ。
処理。いや、この場合はその後ということにしよう。
曹一族と梁山泊の警戒網があることから、高速を利用しない移動。安全運転を想定して、ホテル周辺から約4時間と過程しよう。信号などを考慮すると大体60~80の範囲だろう。
生活するためには、野菜や肉や水と言った多くの栄養が必要になるだろうが、そこは梁山泊での修行から山を選べば余裕だろう。
しかし周辺には集落のようなものが一切ないような、外界から隔絶されたような場所が好ましいと考えられる。
また、大和の戦闘能力の有無を考えるに、危険生物がいないような場所を選ぶだろう。
つまりは
「ここと、ここと、ここ……か」
頭の中にある地図にマッピングを行う。多分この三つのうちのどれかに、林冲や大和が隠れている。
名探偵目次洛の爆誕だ。
「でもまぁ、俺は口は出さないがな」
武松との甘い一時を過ごしたいのだが、それとこれは別問題だ。
彼女が林冲のように病んでいなくて助かった。
もしも武松が何らかの方法でいきなり俺を攫って、秘境の山奥へと連れて行ったらどうなるのか。
山菜を取りに行って、狩りを行って肉を確保しつつも、鍛錬を行ってから、会話を弾ませながら食事をとって……
「あれ、意外と悪くないのでは?」
火に関しても武松の異能があるし、俺と彼女ならば害獣なんて言うものはすべて肉に様変わりだ。
それで幸せな新婚生活を……いや、まだ付き合ってる段階で結婚なんて早すぎるな。
まぁ話は大和と林冲に戻そう。
盧俊義の資質がありと言われたあいつのことだ。川神百代や松永燕に板垣辰子のように、どうにかしてくれるだろう。
下手したらSっ気のある彼のことだ。人が入ってこない解放された土地で、あんなことやこんなことをして、林冲が調教済みになっていたら笑うに笑えない。
友だった俺からしたら、その姿を見てどう思うのだろうか。
「いや、どうも思わねぇな」
衣食住を共にした友だが、恋愛感情はない。そこにあったのは、ただの友情だ。
そう思っていると、ふとバレたときの武松の言葉を思い出した。
「林冲に正体を教えるべきかどうか……ねぇ」
異能というものは、底が知れない。
もし彼女の異能の【異能の継承】が、俺の生存を知って【予知】の返却が行われるかもしれない。
だからこそ、俺は自分の正体がばれないように彼女から距離を取っているのだ。
「まぁなるようになるか」
そう投げやりな答えを出して、思考を放棄しようとしたときだった。
知らない携帯からの着信が来た。
「新聞は間に合ってます」
『俺だよ俺』
「詐欺か」
『ちげぇよ。直江大和だよ』
絶賛捜索中の大和からだ。
「ああ、新婚旅行をしてる直江大和か」
『なんでそうなるんだよ』
「で、林冲が電話をさせるくらいになったわけではないだろ。どうしたんだよ」
『お前、どうしてそれを』
「さあな。時間がないんだろ? ぱぱっと要件を済ませろって」
『あ……ああ。なんかわかっているみたいだから端折るけど、俺は元気だから』
「そうかい。……で、どのくらいかかりそうよ」
『わからない』
「そうか。まぁ世間話だが、詩文が好きな
そういうと、俺は一方的に通話を切った。
一度彼女と会合したことがあるのだが、注意するべきところは武力よりもあの圧倒的知略だろう。
自分が色々と契約を交わしていることに気付いた彼女は、俺の発言や目線から梁山泊の情報を一切持っていないというのを理解したことで、曹一族から追われることは無くなったくらいに。
「どうなるものかな」
恐らく、【予知】と【龍眼】はぶつかるだろう。
そうなった場合は、二人がどうなるか。俺でもわからない。
「ったく、面倒くさいことをしやがるなぁ……」
自分自身のお人よしに嫌気がさす。
俺は来る日のために、準備をするのだった。