正直なところ、こんなにもお気に入り登録や閲覧、評価をしてもらえるとは思ってはいませんでした。
次でラストとなりますが、お付き合いのほうよろしくお願いします。
あれから大体一月過ぎた。
武松とは最低限の接触を過ごした俺だが、今日で終わることに歓喜をする。
「曹一族が大和達の位置を見つけたか」
なぜ曹一族が気づいたかというのは、至って簡単で場の雰囲気だ。
組織の狙いは大和の拉致だ。
つまり、梁山泊の傭兵集団の護衛がいない今が、その計画を実行するのに一番よいタイミングということだ。
ならば全兵力を持っての速攻の作戦が使われるだろう。
俺はすぐに準備に取り掛かるべく電話をかける。
その相手は、板垣竜兵だ。
『よお。ようやく気付いたのか、お前は俺の──』
「それ以上冗談を言うと食事すべてに
『冗談に決まってんだろ! お前の言う通り、ヘルモーズっていうやつらか? あいつらも動き始めたぞ』
「なるほどな」
梁山泊の情報を仕入れるために、俺に仕掛けていたヘルモーズだが、梁山泊と曹一族がこの地にきてからその回数が減ってきた。
ここ一ヶ月は一切手を出してこなくなったことを不審に思った俺は、一つ仮説を立てた。
それは、双方の主力がぶつかって潰れ合ったときに、それらを仕留める。というものだ。
そのことから林冲が消えた後に、俺は歓楽街で不良たちを纏め上げている、この板垣竜兵にヘルモーズの拠点を調べさせた。
そこから監視をさせて今に至る。
『それで、報酬の件はどうなったんだ』
「安心しろよ。暴れさせてもやるしそっちも好き放題やらせてやるよ」
『九鬼の連中のせいで、世知辛い世の中になっちまったからな』
「俺の家に集合だ。後一人連れてくるから待ってな」
そう言って電話を切る。
報酬というのは、好き勝手暴れさせて尚且つ野郎のケツを差し出すというものだ。
俺はもう一人の協力者を得るために気を探る。
「見つけた」
その協力者を見つけた俺は、急いで彼女の元へと駆けていく。
「何か用? こっちは忙しいんだけど」
「曹一族が消えたからだろ? で、お前って運転できる?」
「普通の車なら出来るよ。それで要件は何?」
協力者にする予定の楊史は、飄々としているが内心焦っているのだろう。
少しピリついている。
「林冲の隠れ家に曹一族が向かってる」
「へぇ、場所知ってるんだ。なんで教えてくれなかったのかな」
「聞かれてないからな。まぁそれはいいとして、ヘルモーズって連中知ってるか?」
「知ってるよ。梁山泊と曹一族に続いて第三位の傭兵部隊でしょ」
「豹と龍がぶつかっておこぼれを狙ってる。数減らさないとヤバそうだから手伝え」
「どうしようかな」
何やら悩んでいる素振りを見せる楊史だが、彼女の答えは決まってる。
「情報が欲しいんだろ? 上を黙らせるやつを。ヘルモーズをうまく使えば面白いことになるぞ」
「なるほどなるほど。それで、なんで私なんでしょう」
「お前が一番トリッキーだからだよ。俺の技を【模倣】しながら戦えば、どの場面でも活躍できる」
武松の方が戦力としては上だろうが、彼女は梁山泊の最高戦力だ。そう簡単に動かすことは出来ない。そういう点では楊史は普段からふらふらと昼行灯な素行ということ。【模倣】という異能を発揮すれば人数負けをしている現状を打破することが出来る。
また、報告を偽装しているのは彼女だからこそ、現状を知れば今後有利に働くことが出来る。
「俺の家の前に車出来てくれ。林冲の隠れ家はその時に教える」
「はいな。では準備するから先に帰ってて」
楊史の返事を聞いて俺は自宅へと戻る。
自宅の前には、竜兵が待っていた。その後にすぐに楊史の車が到着して、助手席に俺が、後ろ座席に竜兵が乗り込むと、すぐに場所を示した地図を楊史へと渡した。
「それで、後ろの板垣竜平はなんでいるの?」
「刃物相手にビビらない。女性は無理だが、男性一般兵の相手ならあいつはうってつけだ」
「つまり私と目次洛は銃火器と女性を優先すればいいんだね」
「それで俺は野郎相手をすればいいってわけだな」
「だな、相手は傭兵だから引き締まってるぞ」
男性のお尻が好物な竜兵は、女性相手に力が出ない。銃火器の相手もできないだろうから、そこは俺と楊史が補うということだ。
引き締まっているという言葉を聞いた竜兵は歓喜する。
「私はパンツの楽園というわけだね」
「そういうこと……っと、そろそろ目的地周辺だ。やっぱりビンゴだな」
林冲が隠れている森の入り口へと到着した。
そこに彼女がいるというのがわかったのは、木々が入り組んで地面のぬかるみがあるために、乗り捨てられている車の数の多さからだ。
「さて、楊史はともかく俺と竜兵はコールネームでも作っておくか」
「んなもん必要か?」
「安全の必要さ。まぁ、俺の予想が正しければ無意味に終わると思うが……、俺はフー。お前はロンな。あとこれもかぶっとけ」
そういうと、ロンにメッシュゴーグルつきのフェイスカバーを渡した。
これで顔を見られる心配もない。
俺もそれを装着して、森へと二人を先導する。
常に龍眼を発動させながら、罠を看破して進んでいくと、本隊と思わしきグループを見つける。
ぶつかり終わってから先遣隊の連絡の後に突入ってわけか。
「パワードスーツを優先的に潰すか。楊史、【模倣】の準備しとけよ。ロンはパワードスーツと銃火器兵団を潰してから出てこい」
小声で二人へと指示を出すと、腰に装着していた
放出系は苦手なのだが、我慢をしよう。
「烈風!」
逆手に持った環首刀の刀身から斬撃が飛ぶ。
「こんな感じかな? 烈風」
それを【模倣】した楊史の吹毛剣からも斬撃が飛んでいくと、パワードスーツの敵が倒れる。
突入タイミングを計るために、前方のみ集中するからそうなるんだよ。
「敵襲!」
「全員後方の敵を掃討する!」
アサルトライフルの照準を合わせるように、ヘルモーズの構成員は構える。
それを木々の隙間を縫いながら回避行動をとりつつも、敵の構成を把握していく。
楊史も俺に合わせて反対側へと散開しているようで、敵の弾幕は数に比べて薄い。
「シッ!」
敵のライフルの弾切れを確認した俺は、足に気を集中させてから木を使って前方へと跳躍をする。
へし折れる音を聞きながら接近に成功すると、銃火器の構成員をもらった伸縮性の棒を伸ばしながら倒していく。
それらを守るために振るわれる近接攻撃は、龍眼を使っているため予測が簡単だ。
マガジンを詰め込む前に、すべての銃火器構成員の制圧に完了した。
「ロン。出番だ」
「やっとかよ。あいつの顔は俺に好みだな。しずめや!」
女性を俺と楊史が、男性をロンが次々と倒していく。
コンバットナイフを持っている敵がいるにもかかわらず、果敢に攻めていくのはさすがと言える。
「これで、しまいだ!」
最後の一人を棒で叩いて気絶をさせる。
死体ではないが、周辺で伸びている数からして死屍累々とはこういうことを言うのではないだろうか。
「暴れられてすっきりしたぜ。それで、こいつらは貰ってもいいんだよな」
「遠くに捨てるなよ?」
「わかってるよ。こいつとこいつと……こいつがいいな」
そう言いながらロンは転がっている男性構成員三人を担いで脇へと消えていく。
楊史はというと、女性構成員のパンツを剝ぎまわっている。
「あっちのほうも終わったっぽいな。楊史、ちょっと怖いお姉さんに顔出してくるわ」
「はいな。私はどうすればいい?」
「しばらくしたら怖いお姉さんが来るから、それと打ち合わせしといてくれ」
林冲のほうに探りを入れると、あちらも同様に終わったのだろう。
最後の締めをするために怖いお姉さんがいる方へと向かっていく。
龍眼を発動させながらも、
二つの範囲が重なったとき、史文恭はこちらに気付いたようだ。笑顔で手を振りながら、誘導していく。
「確かルオだったか」
「久しぶりだな。今は目次洛って名前だから間違わないように」
「それで元梁山泊が私に何か用事だ。私はこれから忙しいのだが」
「ここから南東に行ったところに、ヘルモーズを倒してるから回収よろしく」
「なるほど、音に対して数が少なかったのはそういうことか。わかった」
「楊史もいるから、少しだけ打ち合わせしといてくれ」
一方的に報告を済ませて、そこから去ろうとしたとき
「少し待て」
「んだよ。一般人は忙しいんだよ」
「その眼と肉体で一般人は無理があるだろ。フリーなら曹一族に加わらないか」
「あいにくと先約があってな。他にないだろうから消えるぞ」
勧誘を断った俺は、木の上に飛び乗って森の中を移動していく。
そして入り口についた時、俺は一つ大きな問題にぶつかった。
「どうやって帰ろう」
交通費はなく、移動手段もない。
俺はため息をついて、走って帰路するのだった。
竜兵はどうするかって? そんなのは知らん。まぁお突き合いしてるやつらの財布の中からパクって帰るだろ。