真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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部活動

 放課後の学園内。

 一人暮らしの帰宅部ということで、何もする予定のない俺は、第2茶道室へと足を運んだ。

 

 本来ならばこの部屋は予備の茶道室という位置づけなのだが、基本は空き室であったためか、S組の担当である宇佐美──もとい、ヒゲ先生と同じFクラスの直江大和が私物化をしていたところを見つけた俺は、定期的にそこに入り浸るようになっていた。

 

 また全員がだらだらとしていることからか、非公認の部活【だらけ部】として放課後に自主的に利用している。

 そして部室へと到着すると、そこには大和が畳の上で携帯をいじっていた。

 

 彼は人脈は力なりという感じの趣味をしているためか、このようによく携帯でいろんな人達の悩みや願い事を叶えている。

 

「よお。今日もだらけるつもり?」

「そうだな、放課後って一人暮らしの俺にとっては結構暇なんだよな。買い物しようにも人が多いし」

「そりゃ面倒だ」

「面倒だろ?」

 

 たわいのない話をしながら、定位置である畳の上へと向かってごろんと寝転がる。

 正直なところ、見つけた当初はこのような関係がこんなにも長続きするとは思わなかった。だがこの空間はなぜか心地よい。

 

「おやおや、男二人で一体ナニをしているんだい?」

 

 寝転がってすぐにここの部員の一人である武蔵坊弁慶が入室してくる。

 武士道プランの一人である彼女だが、主である源義経とは違いダラけることが好きなようだ。この部屋を見つけて以来、決闘から逃げるためにこの教室へと足を運んでいる。

 

 左腕には、なぜか酔う不思議な水の川神水が入っている瓢箪をぶら下げており、反対の手には朱色の平盃を持っているが、そこにはもう川神水がなみなみと注がれている。

 

「冗談でもやめてくれ。最近、京の視線がきついことになってるんだから」

「だな、俺はノーマルなのにあっち系にジャンルを振られそうで怖い」

 

 自称? 大和の嫁の椎名京は男同士の絡み合いもいけるらしく、大和と仲良くなってからかよくカップリングの対象にされている。

 嫁なのにいいのかと思ったのだが、男同士のお突き合いは別腹のようだ。

 冗談でもそれに乗ってしまうと危ないような気がするので、大和の発言に同意をする。

 

「でもさ、二人とも中性的な顔つきをしてるからね。こんな誰も来ない部屋で二人でいるなんて危ないよ?」

「その思考の方が危ないわ」

 

 弁慶の言う通り、俺と大和は中性的……いや、そっち系が好きな人にとっては好まれている顔をしている。

 俺は孤児ということがあって両親の顔は知らないが、大和のほうはどうやら母親似らしく、おっさんが武術の手ほどきをしている板垣家の長男であるいい男(竜兵)が、公園のベンチでよく待ち伏せをしているらしい。

 ツナギを着ていないのが残念でならない。

 

 ちなみに俺も最初は狙われたが、実力行使で黙らせてやった。

 

「ん-……川神水が美味い」

「今日は青椒肉絲(チンジャオロース)を作ってきてやったぞ」

「それでは遠慮なく」

 

 そういうと弁慶は嬉々として、青椒肉絲の入っているタッパーと割り箸を俺のカバンから取り出した。

 幸せそうにそれを口に入れながら川神水をぐいっと飲み干す。

 餌付けしている感じだ。

 

「意外と洛って料理出来るんだな」

「一人暮らしが長いってのもあるんだが、元から料理をしていたってのもあるな」

 

 それを傍目に俺も部屋の隅にある段ボールの前に行くと、中からポテチとコーラを取り出した。

 この段ボールの中身は俺の備蓄だが、ここの部員や顧問によく食われているのが難点だ。

 

 ポテチの入っているビニールを開けて中身を口の中に放り込みながら、ペットボトルの側面を軽くとんとんと人差し指を使って叩く。

 こうするとペットボトル内部に付着している気泡が取れるので吹き出ることがない。

 プシュッと炭酸が抜ける音を流して、その喉を刺激する液体を体の中に入れる。

 

「よし、送信終わり。あー疲れた」

「お疲れ様。仕事終わりに川神水でも」

 

 今日の用事が済んだのか、大和は携帯をポケットの中に仕舞うと弁慶によって注がれた川神水を飲み干している。

 俺は下戸ということもあって、川神水を飲むことが出来ないのだが、コーラで十分だ。

 

 各自自由な時間を過ごしている最中、大和のポケットから着信の音が鳴る。

 一言断りを入れて出ていく大和を見送り、俺はあくびをしながら左肩に手を当てながら凝り固まった首をほぐしていく。

 

「大和がいないからちょうどいい」

「何がだ?」

 

 (いぶか)しめながら俺を見てくる弁慶。

 

「右に40度。左に35度。最後に左肩部にこの(はり)を刺す」

「……鋭いな。さすが英雄ってところか?」

「まぁ出来たのは1回だけだけどね。それで、なんで力隠してるの?」

 

 弁慶の言った行為は、対象の気を6時間ほど抑える秘術だ。

 

 カバンの中に入れておいたはずの鍼が一本減っていたと思っていたが、弁慶が盗んでいたのか。

 悪びれる様子もなく返却してきた鍼を受け取った俺は、それをズボンのポケットの中に入れる。

 

「弁慶は学力テストで3位になる変わりに川神水を飲む権利をもらっただろ?」

「そうだね」

「そういう感じ」

「なら仕方がない。青椒肉絲ご馳走様」

「お粗末さまでした」

 

 俺の発言に納得がいったのか、はたまた興味が失せたのか。タッパーを返してきた弁慶は、川神水を再度飲み始める。

 俺もポテチを食べ終わったので、袋を畳んでカバンの中のゴミ箱専用の袋へと入れて、帰ってきたタッパーも一緒に投げ込んだ。

 

 そこからはダラダラと適当に雑談をして、日が落ちそうになったことから部活動は解散となった。

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