真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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一人称と三人称が入っています。
また技の名前はあとがきに擁護として記載しております。
戦闘描写難しいですね。

【【【【【注意】】】】】】
またここから独自設定などが入っていきますので、苦手な方は閲覧を中止することをお勧めします


マジで勝負

 川神市から少し離れた山の中。

 普段のお茶らけているような表情から一変して、殺気じみた気を放出している釈迦堂のおっさんを、俺は自分の獲物を構えて対峙している。

 

 それを見届けるように、川神院総代の川神鉄心とその師範代であるルー先生。そして彼らの後ろには川神一子がいる。

 マスタークラスしかいないこの場に、彼女がいるのは俺の希望だ。

 

「これより模擬戦を開始する」

 

 立会人である鉄心の一言で、俺とおっさんの真剣(まじ)な勝負が始まる。

 

 

 土曜日の朝。

 いつもの組手をしている場所に、洛は釈迦堂によって呼び出された。

 

「おお、来たな」

「おっさん。何の用だよ」

 

 用事を聞かされていない洛は釈迦堂に問いかける。

 

「そういえばお前とガチな勝負したことなかったよな」

「組手はいつもガチだぞ?」

「組手はな。でもあれはお前の獲物じゃないだろ」

 

 その一言で洛は黙る。

 二人がよく行っている組手は、拳や脚のみを使用した拳法の組手だ。

 洛は蹴りを主流とする拳法を使ってはいるものの、組手で釈迦堂よりは劣るがそれなりの腕前を持っているが、彼の本来の獲物は──

 

「制空を見たらわかんだよ。長物……とりわけ槍って感じか」

「いつから気づいてた?」

「最初からだよ。元師範代なめんなよ」

 

 さすがは武の総本山の元師範代だと、洛は感服する。釈迦堂も自身の読みが当たっていたのか、少しうれしそうな表情をしている。

 

「ヒュームって野郎と戦った後から、体がうずいてしょうがねぇんだよ」

戦闘狂(バトルジャンキー)が……俺はバレたくないんだが」

「そういうと思ってよ。先にジジイに連絡入れておいた」

「頼み込んでおいて何を言っておるんじゃ」

「おう、頼むわ」

「それで、対戦相手は2-F組の目次洛か」

 

 鉄心が釈迦堂にまるで世話の焼ける子供を見るように話しかけている。釈迦堂も悪びれた様子もない。

 ため息をついた鉄心は洛の瞳を覗き込む。

 

 すべてを見通すようなその眼差しに後ずさりそうになった洛だが、何らかの目的があってやっているのだろうと感じた彼は、鉄心の視線からずらすことをやめた。

 

「なるほどの。次世を見守るのも役目というわけか。よかろう」

「へへ、そうじゃねぇとな」

 

 邪な心がないことを見抜いた鉄心は、釈迦堂の提案に乗る。対戦が確約されたことで釈迦堂のテンションも上がっているようだ。

 

「模擬戦をするにあたって条件が3つほどあります」

「その条件とは?」

「自分の力の秘匿。レプリカの貸し出し。そして、立会人にもう一人川神一子をいれることです」

 

 洛の条件に鉄心は眉をひそめた。

 

「2つ目までは理解は出来るが、何故一子を立会人として選ぶんじゃ?」

「私は努力をする人間は好きです。彼女には夢を叶えてほしい」

「しかし一子には──」

「私には彼女には眠っている才能があると感じてます」

 

 その言葉に場の雰囲気が変わる。鉄心や釈迦堂は一子には武の才能がないと感じていたからだ。

 

「それでその才能とは?」

「異能というものはご存じですか?」

「うむ」

「彼女には野生の感。第六感の所持の可能性があります」

 

 学園でよく決闘をしている一子を見てきた洛は、彼女のごくまれに視覚外からの反応を目にしてきた。直感と呼ばれているものだが、一芸を極めると異能となる。

 

 数多くの弟子を取っていた鉄心だが、一子のその才能を見抜けなかったのは川神院の内なる心に熱を燃やせという指導方針のせいではないかと、洛は感じていた。

 

 常に闘志を燃やしながらも心は冷静に。

 第六感とは、その方針とは真逆の性質を持つ。

 

 よく似た性質の者は引き寄せ合う。

 釈迦堂は才能がないにもかかわらず一子を気に入っていた理由は、彼の性質と同じようなものを秘めていたからだ。

 

 また一方で、鉄心は洛の発言に納得がいった。

 才能がないと感じながらも、開花するかもしれないというものを感じていたからだ。

 だからこそ今でも一子に対して修行を行っている。

 しかし

 

「その性質は修羅に落ちる可能性があるんじゃぞ」

「この釈迦堂みたいに……ですね」

「おいおい、当人を前にして言うことか?」

「事実じゃろ」

「事実でしょ」

「そうだがよ」

「ドイツの猟犬部隊の隊長であるマルギッテ・エーベルバッハも同じ性質ですよね?」

 

 どうにも納得いかない釈迦堂だが、二人からしてはどう見ても修羅側に落ちてはいるが、Sクラスのマルギッテは同じ性質であるが落ちてはいない。

 要は指導者の問題だと、洛は思っている。

 

「3つ目の条件は、川神一子がそれを承知したらでどうでしょうか。強制はなしってことで」

「それならよかろう。だが、それを承知して修羅に落ちたらどう責任を取ってくれるんじゃ」

「それは指導者の責任ですよ。川神院総代の川神鉄心殿」

「面倒なことを押し付けてくるのぉ」

 

 

 一子は戸惑っていた。

 朝にいきなり鉄心に呼ばれた彼女は、マスター同士の戦いを見ないかと提案されたからだ。

 さらに自分の教育方針が間違っていた可能性があり、もしも違う方針でやる場合はそれ相応の覚悟が必要ということも含めて。

 

 川神院の師範代を目指している一子からすれば、自身の能力が向上するというのはとても喜ばしいものだ。

 いつもならば即答をする彼女だが、鉄心の真剣な面持ちから出された発言にどうこたえればよいのかと躊躇した。

 

 一方で一子を可愛がっているルーは、鉄心からの提案は受け入れがたいことだった。

 しかし、彼も師範代になるために人並外れた努力をしてきた。

 一子には師範代になってほしいが、百代や釈迦堂のようになってほしくない。

 その葛藤はあったが、彼女の意思を尊重しようと決めた。

 

「じーちゃんが言っている意味はよくわからないけど……」

 

 頭があまりよくない一子は、鉄心が言っている修羅に落ちるという意味を理解することはできない。

 だが、彼女には夢がある。姉の百代を支えるという大きな夢が。

 

「アタシはその可能性にかけてみたい」

 

 

蛇矛(だぼう)とは珍しい武器を使うのぉ」

「蛇矛ってあの薙刀みたいな武器の名前?」

「そうだネ。ワタシの国の武器だヨ」

「炎のようにうねる刃は、斬撃や刺突と言った攻撃をも可能にする。まぁ薙刀と同じ特性を持っておる武器じゃな」

 

 釈迦堂とにらみ合っている洛が持っている物は、2メートル70センチを超える大型の武器だ。

 突き刺した際に傷口を広げて相手に大きなダメージを与えると言われているそのうねった矛先は、刺突の他にも斬撃にも秀でている。

 

「へぇ、それがお前さんの本当の実力ってわけか」

「お手合わせ願う」

「そうかよ! じゃあ行くぜ。リング!」

 

 自身が思っていた以上の気を目の前に、釈迦堂は気を練る。

 間合いが負けているのならば、それを超えるものを出せばいい。

 両手に気を収縮したエネルギーをリング状にして飛ばす。

 

 複雑な軌道を描きながら襲い掛かってくるエネルギー波を洛は

 

「ハッ!」

 

 刃に込めた気でそれの一つを切り飛ばした。

 リングを飛ばしたと同時に距離を詰めてくる釈迦堂に対し、洛は残り一つのリングの中心部分に蛇矛の尖端を差し込むと、遠心力を使って釈迦堂へとそれを投げ返す。

 

「滅茶苦茶なことをしてくれるじゃねぇか!」

「忘れ物は持ち主にってな!」

 

 飼い主に牙をむいてくるリングを見ることもなく拳で叩き割りながらも、追撃の刺突を反対の手で横へとそらす。

 間合いを詰めさせないように後方へ下がりながらも薙ぐが、釈迦堂は最低限体を後ろにそらせながらそれを回避する。

 それに追い打ちをかけるように、釈迦堂に半月状の石突を利用した鋭利な叩きつけの攻撃を行う。

 

 その攻撃を釈迦堂は目を閉じたまま掴んだ。

 

「無明白刃取り」

 

 相手の殺気だけを感じ取ることで攻撃を掴む川神流の技だ。

 従来ならば両手を使って斬撃を止める技だが、今回は柄ということもあってか左手のみを使って受け止める。

 

「今度はこっちの番だぜ!」

 

 蛇矛をがっちりと掴んで逃さないように引っ張りながらも、釈迦堂は一気に距離を詰める。

 びくりとも動かない蛇矛から右手を離した洛は、右腕を独特な揺らし方でうねりを作り出す。

 

「食らいな! 大蠍撃ち!」

「フッ!」

 

 洛の左のボディに目掛けて飛んでくる渾身の打撃を、作り出したすべてのうねりを乗せた左足の踵で受け止めた。

 

蹬脚(とうきゃく)で止めやがったか」

「蛇矛を返してもらうぞ」

 

 左足で地面が揺れるほどの震脚(しんきゃく)を行いながらも、そのエネルギーを使って蛇矛の柄を回転させる。

 その回転によって腕が持っていかれることを危惧した釈迦堂は、蛇矛を掴んでいた手を放す。

 

 仕切り直しと言わんばかりに距離を取った洛に対して、釈迦堂はその場で構える。

 

「その目は使わねぇのか?」

「あまり使いたくはなかったんだけどなぁ」

 

 釈迦堂の問いかけに答えるかのように、洛は右目に神経を集中させた。

 

 

龍眼(りゅうがん)とは珍しいものを持っておるの」

「龍眼って?」

「簡単に言えばとてもいい眼ってことヨ」

「でもそれってこういう戦闘では変わらないんじゃ」

 

 釈迦堂の攻撃を予知しているかのように避け始めた洛に、鉄心は感心をする。

 その眼の効果を知っている二人からしたら厄介なものだが、一子にとってそれは理解することができない。

 

「一芸を極めるっていうのは厄介なものでな。筋肉の機微を読み取り攻撃の動作を読み取ったり、並外れた動体視力は攻撃を見切る」

「つまりハ、攻撃のすべてを予測することが出来るって意味だネ」

「一子の眠っている才能はこれに近いものじゃな。眼ではなく肌で感じる。釈迦堂の攻撃を見るのではなく感じるように読み取ってごらん」

「はい!」

「いい返事ダ」

 

 鉄心の言葉を理解するのには長い時間がかかる。

 二人の動きに集中を始めた一子をよそに、鉄心はルーに向かってアイコンタンクトを送った。

 

(ルーよ。危ないと思ったら)

(わかってまス)

 

 野生の本能に飲み込まれる前に、現実へと引き戻すようにと。

 

(それにしても末恐ろしい才能じゃ。あの年で壁を越えておるとは)

 

 

「いつから気づいていたんだ?」

「最初からだよ!」

 

 何合も撃ち合いながらも、洛は自身の異能である龍眼に気付いた時期について釈迦堂へと聞く。

 

 釈迦堂は最初から気付いていたと言ったが、それは嘘で気づいたのは偶然だった。

 板垣姉妹の組手をさせている際に、冗談で気絶する程度のリングを死角から飛ばしたことがあった。

 

 それが発動のトリガーだったのだろう。

 当時の練度が甘くすぐに解除することが出来ない龍眼を使った洛は、その組手の攻撃をすべて見切ったかのように動き始めた。

 一方的に蹂躙するその姿に釈迦堂は、油断するであろうタイミングに攻撃を行ったのだが、それも見えているかのように受け流したのだ。

 以降、組手の際中にも注目してみると、修練がてら発動していることに気付き、今に至る。

 

「でもよぉ。これ以上の速度には着いてこれねぇだろ!」

「ちぃ!」

 

 洛の目で追えるよりも素早い攻撃が釈迦堂から繰り出される。

 それをぎりぎりとさばききっていくが、基礎訓練を積み重ねてきたその攻撃に追いつかなくなっていく。

 

「眼がいいってのはなぁ。こういうのも弱点なんだよ!」

「しまっ!」

 

 それに焦りを見せていた洛に、今まで以上の速度を乗せたフェイントを仕掛ける。

 龍眼の予測の力を超える速度で行われたそのフェイントにひっかかった。

 

「これでで終わりだ!」

 

 強烈な正拳突きが洛のみぞおちへと突き刺さる。

 それを予測した洛は、気を練ることで全身を硬化させる。

 

 しかしその硬化は一瞬だ。

 再度繰り出される攻撃に反応することが出来なかった洛は、体をくのじに曲げてその場で倒れこんだ。

 

「勝負あり! 勝者、釈迦堂!」

「予想以上に手ごわかったぜ」

 

 勝敗を知らせる鉄心は急いで洛の元へと駆け寄る。

 最後のあの一撃は人を殺すことのできるほどの威力だったからだ。

 

「釈迦堂! 手加減をしなさイ!」

「うるせぇなぁルー。ああでもしねぇとこいつは倒れねぇんだよ」

「しかシ……」

「大丈夫だよ。気絶してるだけだっての。そいつの世話は任せたぜ」

 

 そういうと釈迦堂は山を一人で下っていく。

 鉄心はというと、気絶している洛に安堵をすると彼を背負う。

 

「一子よ。ここであったことは誰にもいうでないぞ?」

「なんでですか?」

「流派によっては秘匿せねばならぬ時もあるからじゃ。目次洛もそれが理由じゃろうて」

「わかりました」

「では、川神院へと戻るとしよう」

 

 一子の返事を聞いた鉄心は二人を連れて山から下りるのだった。




一子の強化フラグ!?
彼女に救いの手を!

【用語】
蹬脚(とうきゃく):踵を使っての前蹴り
震脚(しんきゃく):足で地面を強く踏み付ける動作。踏鳴の中国版
龍眼(りゅうがん):とてもいい眼。あるきっかけで後発的に獲得することが出来た
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