真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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評価ありがとうございます。
精進してまいります。


部活動2

 6月24日の放課後。

 俺はいつも通り部活動をすべく部室へ向かっているのだが、その足取りは少しばかり重い。今朝紹介された転入生が原因だろう。

 

 中国最強の傭兵集団のひとつである梁山泊。

 彼女達の目的は何となくだが読めてはいる。しかしそれを口に出すほど俺は無粋ではない。

 憂鬱な気持ちになりながらも廊下を歩いていると、見知った人物を発見した。

 その人物も俺に気付いたのか、部室の扉の前でこちらを向いている。

 

「弁慶じゃん」

「ちーかま!」

「こんカルパス」

「通ってよし」

 

 挨拶と同時につまみを要求するという行為は彼女らしいと感じながらも、カバンの中からカルパスを取り出して渡す。

 なんやかんや彼女のせいで俺のカバンの中にはつまみが常備されているのは、今考えるとシュールだな。

 もしもつまみがなかったらどうなるんだろうか。

 

「そうなったら部屋にあるポテチをすべて全力でシェイクするよ」

「心を読むな。しかも一番厄介なことをしやがるな」

 

 彼女につっこみをいれながらも、開けた扉を潜り抜ける。

 薄いタイプのポテチなので、全力でシェイクされると粉々になって悲しくなるからやめてくれ。

 

「大和は今日こないぞ」

「なに故」

「転入生に告白された」

「ほーほーほー」

「フクロウか」

 

 定位置にいる弁慶をよそに、いつも通りポテチとコーラを取り出すために立ち上がろうとする。

 

「これ使ってもいいよ」

「助かるわ」

 

 弁慶から差し出された錫杖を受け取って、その先端を器用に使ってダンボールを引き寄せる。

 中身を取り出した後はそのまま押し出すだけだ。

 

「ほい、ありがとさん」

「それで、誰から告白受けたの?」

「林冲だな。あの黒髪ロングの」

「あの主の雰囲気に似てる人か」

「残りのメンバーにいじられてたからそっくりだな」

 

 弁慶にいじられている義経にそっくりだと感じていた俺は、その言葉に同意した。

 

「決闘も見たよ。それで吹き飛ばされた二人はどうなったの?」

「1ヶ月は入院だとよ」

「そりゃ大変だ」

「ちなみにそちらに入った武松さんはどうですかね」

「クールだね。真面目ではあるけど、超クール。炎タイプだから近寄りづらい感じだね。でもまぁSクラス自体がそういう感じだから」

「可もなく不可もなくってか。ちなみに川神水と桶を用意すれば熱燗に出来るぞ?」

「それは考えつかなかった」

 

 ハッとした表情を浮かべる弁慶。冗談で言ったつもりだが、本当にやりかねない。

 

「それにしても梁山泊ねぇ……。どういう集団か知ってる?」

「一般的に流通している情報なら」

「カルパス食べさせてあげよう」

「いらねぇよ」

 

 なんで自分の渡したものを情報代としてもらわなければならないのかと考えながらも、胡坐を組みながらボトルキャップをひねる。

 

「朝礼で言ってたように、中国にある傭兵集団だな。本拠点は隠匿されているからわからないし、世襲制を取っているからあれらが何代目かはわからない」

 

 口休めのために、コーラをグイッと飲んでポテチを口へ運ぶ。

 弁慶もおいしそうに川神水を飲んでいるのだが、こちらの言葉を聞いているみたいなので、続けるとするか。

 

「世襲されているのは合計で108人だ。噂ではその星たち全員、異能を持っていると言われている。先ほど弁慶が言った武松の炎も、異能の一つだろう」

「つまり氷タイプもいるわけか……。できればそっちが来てほしかった」

「夏になるから部屋が涼しくなるからってか?」

「その通り。正解者にはカルパスをあげよう」

 

 口に運ばれたカルパスをもぐもぐと食べる。塩気があるからか、少し体が火照ってくるし、喉も乾くので再度コーラを飲む。

 

「邪魔しない限りはこっちに手を出さないらしいので、関わらないに限る」

「面倒なことは避けるに限る」

 

 その言葉で彼女達に興味が失せたのか、弁慶はいつも通りにだらけ始める。俺もそれに対抗して、袋の残ったポテチを食べるため開けた袋の口を尖らせて、ガサガサと振るいながらも口の中に一斉に放り込んだ。

 

「噂をすれば、ちっこい転入生だ」

「校舎裏に連れていくってどこの不良だよ」

 

 1階でなおかつ校舎裏に面しているためか、騒いでいるそれを遠巻きに見る。

 眠たそうにしながらも引っ張られてる公孫勝と、もう一人は誰だあいつは。

 傍から見ると三下のような風貌を醸し出している彼女は、何やら注意をしているようだ。それが余計に三下の風貌を際立たせる。

 

「偉人の弁慶先輩や。あれどっからどうみても殴られるけど大丈夫でしょうかね」

「バトルから始まる友情ってあるらしいじゃない?」

「それにしてもなんていうか……。小学生をカツアゲする高校生みたいな感じになってるな」

「いい例えだね」

 

 ツボったのかアハハと笑い飛ばしている弁慶だが、三下彼女は何やら攻撃を開始しそうな雰囲気だ。

 

「おいおい、真剣で殴りに行くのかよ」

「もしも殴ったら警察行きになりそうじゃん」

「それはよくないな」

 

 さすがに見逃せないと思った俺は、右手に持っていたコーラを一気飲みをする。ゲップが出そうになるが、それを我慢しながらもしっかりとキャップをひねろうとする。しかし少し考えて、キャップだけを取ってコイントスの要領でそれを飛ばした。

 

「ウヴェ!」

「ふぎゃ!」

 

 狙い通り三下彼女の額にヒットしたのだが、そのキャップは綺麗に反射をして公孫勝の額にも飛んで行った。威力が高い方が当たった三下彼女は気絶をしてはいるが、公孫勝の方は涙目になりながらも、両手を額に当てている。

 

「両成敗ってやるねぇ」

「さすがに狙ってないわ」

「しかも公孫勝のほうは涙目になるように調整するとか、洛って実はロリコン?」

「風評被害だ。やべっ、こっち見てる。って笑顔で手を振るな、手を!」

「ぷんぷんしながらこっち歩いてきてるよ。小動物みたいでかわいいじゃん」

「誰のせいだよ」

「洛のせいでしょ」

 

 その通りだが、笑顔で手を振る必要はなかったのではないか。

 

「おい。これ飛ばしたのはお前か?」

「お姉さんじゃないよ」

「じゃあお前か」

「どうだろうね……って、左手を上げさせるんじゃない」

 

 しらを切ろうとするが、左手に持っているコーラの空のボトルを見せつけるように、弁慶はその左腕を持ち上げてくる。本気で抵抗を試みるが、あちらも本気なようで力で負けている俺の腕は、窓から見える位置へと持ち上げられた。

 

「お詫びとしてコーラを要求する」

「好きなだけ持って行っていいよ。よいしょっと」

 

 そう言って弁慶は、公孫勝を持ち上げて部室へと上げる。畳が汚れることを危惧した俺は、持ち上げられた彼女の靴を脱がすと、窓際にある棚の上に置いた。

 とてとてと可愛らしい音を鳴らしながら、段ボールへと近づいていく公孫勝は、そのまま段ボールを開けた。

 

「ポテチもあるじゃん」

「こらこら、服にしわが出来るぞ」

「じゃあ直して」

 

 鼻歌を鳴らしながら、中から取り出したポテチとコーラをもって、畳の上に転がる公孫勝だが、服がよれよれになっている。

 しょうがないなと思いながら、そのよれを直す。

 

「……あ。ブショーに知らない人にはついていくなって言われてたんだった」

「ついては来てないでしょ」

「そういえばそうだった」

 

 言葉遊びのような感じだが、何やら納得したように公孫勝はポテチの袋を開けてもぐもぐと食べている。

 俺も悟りを開くと、定位置の畳を占拠している公孫勝の横に座った。

 

「なんだよ。あっちいけよ」

「ここが俺の()なんだよ」

「そういえばここって何する部屋なの」

 

 いやそうな顔をしている公孫勝だが、ここの席だけは譲れない。なぜなら段ボールから一番近いからだ。

 そう考えながらも彼女の質問に答えると、キラキラとした表情をしている。

 

「桃源郷じゃん。私今日から入部する」

「まぁいいんじゃないのかな」

 

 ぐでーっとしながらコーラを飲んでいる公孫勝を見た弁慶は、素質があると見たのか勝手に入部の許可を出した。ちなみに彼女もポテチを取り出している。

 俺の所有物のはずなんだけどな。

 

「私塩味が好みだから。明日からちゃんと用意しててね」

「はぁ……わかったよ」

「コーラは500だと大きいから350にしておいてね」

「お金は?」

「慰謝料ってことでよろしく」

 

 末っ子がいるとこういう感じなのかと感じながらも、携帯を利用して塩味のポテチとコーラをポチる。お急ぎ便で到着するのは明日だったので、今日の帰り道に買って帰るとするか。

 

 こうして我がだらけ部に新入部員が増えるのだった。




梁山泊の台詞って難しい……。違和感がある場所は出来れば自分の中で補填しておいてください。
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