真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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面倒ごとの成果

 史進と手合わせをした夜のこと。

 自宅のインターホンのスイッチが押されたことで、部屋にあるモニターが点灯する。

 

「はいはい誰ですかいな」

 

 カウチソファで気持ちよく寝転がっていた俺は、腰をとんとんと叩きながらモニターの前へと気怠い足取りで寄っていく。

 宅配なんて頼んでいたっけと記憶を探りながら、モニターに映っている人物を見る。

 

「こんばんは。梁山泊支部からお届け物です」

「新聞は間に合ってます」

「まぁそういわずに、中に入れてくださいな」

 

 独特は雰囲気を醸し出す楊志に向かって即答をするが、帰る様子がない。

 モニターの下にあるボタンを押して鍵を開けると、楊志と公孫勝が遠慮なく入ってきた。

 

「この度はうちの胸パッドを助けていただきありがとうございました」

「何を言っているのか理解出来ないな」

「お心遣い感謝で」

「んで……あれは何しに来たんだ?」

 

 勝手に冷蔵庫を開けて、コーラを取り出しながらカウチソファに寝転がっている奴に向けて、親指を指す。

 さらには横にあったテーブルの上にある電子タブレットを見れるように楽な姿勢をしている。

 

「コーラんまっ」

「いや、なにしに来てんだよお前は」

「漫画とコーラがあるし、回線もいいの使ってる。ここを第二の拠点とする」

「勝手に拠点にすな」

「あ、パソコンもあるじゃん。有線ってわかってるね」

「もういいわ。勝手にしろ」

 

 好き勝手動き回っているロリを放っておいて楊志の方を向くが、彼女も彼女で部屋を見渡している。

 

「おっと、本題忘れてた。こちら引っ越し挨拶です」

「あ、はい。ご丁寧にありがとうございます」

 

 楊志から手渡された品物を、反射的に受け取る。

 布ということでハンカチ関連かと思いながらも生ぬるい布を広げると、畳まれていたその布の全貌が明らかとなった。

 

「パン……ツ?」

「史進の脱ぎたてのパンツです」

「これで何をすれと?」

「嗅ぐと向こう側にたどり着けるよ?」

「俺は変態じゃねぇから、クーリングオフで」

「それを返すなんてもったいない。私が預かっておくよ」

 

 もう好きにしろと呆れながら、公孫勝が何をしているのかが気になった俺は、そちらに目を向ける。視線の先にはパソコンの前の椅子に座ってヘッドホンを装着しながらアニメを見ている姿があった。

 これだからニートって呼ばれているのか。

 弁慶よりも自由な二人に頭を悩ませる。

 

「史進との手合わせで大事な武器が壊れたとのことで、お詫びの品です」

「そっちが本題なのね」

「パンツに勝る品物はない!」

「知らんがな……」

 

 突っ込むことに疲れてきた俺は、差し出された一本の棒を受け取る。風魔の棒よりも頑丈そうなそれは、いわゆる暗器のようなものなのだろう。

 あれと同じように、どこかにスイッチのようなものがあるのだろうと予測しそれを探す。

 

「スイッチは取っ手の部分。結構硬いから注意してね」

「ああ、ここか」

 

 楊志に言われた場所を触診する。一部へっこみを見つけてスイッチを押し込んでみると、下の部分が延長した。

 

「ご不明な点または不都合な点が御座いますか?」

「庭で振ってみても?」

「どうぞどうぞ」

 

 居間に備え付けられている大きな窓を開けて、庭へとぴょんと降りる。どうせもう自分の能力はバレていると察して、いつも通りの型を取り素振りをする。

 振り下ろすとまるでクラッカーを鳴らしたかのような音が鳴り響く。

 

「観察して楽しいか?」

「気にしないでいいよ」

「そうかい」

 

 右手に持っている例のブツを鼻に持って行ってはいるもの、一挙手一投足に注意を払っている楊志。とても幸せそうで何よりだと考えながらも、棒術の基本技である上段打ち、回し打ち、中段打ち、払い受け、下段払い、上段受けの6つの動作を行う。

 

「風魔よりも頑丈で重みがあるんだな」

「軽い方が好みだったりして?」

「弘法筆を選ばず。かっこよく決めてはみたが、昔使った棒にそっくりだから大丈夫だ」

 

 スイッチを押しこみながら、伸びきった棒を元の長さに戻す。

 

「っと、ちょっと用事が出来たのでこれにて失礼」

「あのニートはどうすんだよ」

「用事が終わり次第回収しに──」

「ならよし。さっさと行ってこい」

 

 言葉を遮る。

 着信から見て楊志は急ぎの用なのだろう。素早く道路へと出ていくと全速力で走っていった。

 

「……で、ニートのまさる君や」

「今アニメを見るのに忙しいんだけど」

「お前はマジで何しに来たんだよ」

 

 それを見送った俺は居間に戻るのだが、未だにパソコンにかじりついてアニメを見ている公孫勝から、まるで当然かのような答えが返ってきた。

 自宅にいるのに、なんで保護者のようなことをしないといけないのかと自問自答しそうになるが、多分こいつにはそういうものは通用しないのだろう。

 悟りを開きながら、カウチソファで仰向けになる。

 

「何観察してんだよ?」

「自意識過剰すぎるでしょ」

「再生を止めてこっち見てるじゃねぇか」

 

 ため息を吐きながらも、横に手を伸ばして読書を開始する。

 

「おい、俺はお前の椅子じゃねぇぞ」

「そういいながら、公孫勝たんに乗られて嬉しいおって思ってるんでしょ」

「んなわけあるか。暑いわ!」

「エアコンのスイッチオン」

「電気代払うの俺なんだが?」

「気にしない気にしない」

 

 ピッピッとリモコンを操作する公孫勝。こいつ、自分が払わないからって温度を下げやがったな。しかも、何処からか持ってきた毛布に包まっている。

 どれだけこいつが甘やかされいたのかがよくわかる。

 

「……で、満足したか?」

「何のことかわかんない」

「そうかよ」

 

 エアコンの空気を出す駆動の音をBGMに、俺はそのまま眠りに落ちるのだった。

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