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色々と独自設定が入っております。
休みの昼頃に、俺は許可をもらって川神院が所有している一つの山の中にいた。
川に面しているそこで、俺は
俺の方が間合いが長いためか、何合も打ち合いを行いつつ詰めようとしてくる彼女だが、巧みな足さばきによってそれを許さない。
「やあっ!」
「動きがオーバー」
振り上げて大振りで振ってくる薙刀の刃の部分に、青龍偃月刀の刃でクッションを加えながら滑らせてから弾く。一子は弾かれたそれを踏ん張って止めるが、俺は手を滑らせながら柄の部分の握り手を反対にして薙ぎ払って彼女の胴に寸止めした。
「はい、試合終了っと。一子、お前は焦ると大振りする癖が抜けないな」
その組手を見守っていた釈迦堂のおっさんは、何が悪かったのかを教える。
週に1度ほど組み入れているこの鍛錬におっさんがいるのは、一子との鍛錬の際に師事するというという条件で、あの時の貸しを利用した。
元だが、川神院の師範代をしていたおっさんなら、手ほどきが可能だ。たまにルー先生も来るのだが、基本的には彼の指導の元鍛錬を行っている。
従来なら川神院を破門された彼に師事を受けることはダメなのだが、梁山泊の武松に負けたことで、一部の武人を集中的に鍛錬を行うことになったらしく、一子は長柄を得意とする俺に任せるとのことだ。
「ウギギギ……。なんで毎回そうやって返すことが出来るのよ!」
「鍛錬の賜物」
「見てなさい。アタシもそれが出来るように」
「ハンッ!」
「ウキーッ! そうやってすぐ煽ってくる!」
彼女の言う通り、俺はこうやって毎回組手で勝利を得ている。
それをする理由だが、彼女は敵の攻撃を弾く際に大きく弾く癖があるからだ。
先ほどのように滑らせて弾いてから持ち手を反対にして、足を前や後ろにスライドさせながらの攻撃は、長柄の基本の動作の一つである。
彼女の場合は頭がよくないということで、やられて覚えろというスタンスの方がいいだろうということから、出来る限りこうして決着をつけるようにしている。
その甲斐あってか、最近の彼女の戦い方はコンパクトになってきている印象はあるが、長年の癖というのは抜けないようで焦りなどで昔のスタイルに戻ってきている。
ちなみに打ち合いは技を禁止しているのだが、それは基礎をしっかりするためだ。
基礎があるからこそ技は光る。技だけでは同格の相手には勝つことはできない。
また、この後に行う秘密の特訓も行っている。
ちなみに一子の腕前はメキメキと上達している。もしこの基礎が固まった状態で第六感を習得することさえできれば、壁を超えることは出来ないだろうが、目の前に立つことは出来ると読んでいる。
「よし、じゃあ次は技の訓練だ」
「最初は嫌がってたくせに最近はノリノリだな」
「うるせぇなぁ。シバくぞ」
「釈迦堂さん。お願いします!」
「一子を見てみろ。純粋無垢じゃねぇか」
「ルー先生に似たんだろ。俺はおっさん似……あぶねぇな!」
リングが飛んでくるが、事前に龍眼を使っているので予測してからそれを弾いて壊す。
このやり取りをずっと見ているためか、一子は乾いた笑みを浮かべながらも、川神流薙刀の技を使う。
それの悪い点をおっさんが指摘をしながら、技の鍛練が終わったらまた俺との組手をするというのが、この山の中での鍛錬のスケジュールだ。
「本来なら新しい技を教えるんだがな、教えたら教えたでルーのやつがうるせぇからなぁ」
「新しい技! ……あいたっ!」
おっさんの言葉に反応した一子に近寄ってげんこつを振り下ろす。
「基礎が固まってないお前に技なんてもったいない」
「いいじゃない!」
「技ってのはな、一つの基礎の完成形なんだよ。はぁ……しょうがない。俺の攻撃をさばいてみろ」
「押忍!」
ワン子やら犬と呼ばれている理由がなんとなくわかってきた気がする。
いつも通りに構えて青龍偃月刀を右上から左下へと振り下ろす。それを防ごうとした一子の薙刀を強引に弾いてから、すぐに持ち手を反転して横に薙ぎ払う。
弾き飛ばされたために、防御がおろそかになったその胴に刃が当たった。
「お前、その技は……」
「川神流にも似たような技があるんだろうが、要は基礎の組み立てだろ。洗練された攻撃は技へと昇華する。技を練習する際も、なぜそのような技に至ったのかを理解するように」
「わかったわよ」
俺の言葉を理解したのだろう。
川神流の技を磨くために何度も素振りをする彼女をよそに、俺も基礎訓練を行っていく。
「さて、後は仕上げだな」
「あれってこそばゆいのよね」
「それを理解できるってことはつかめては来てるってことだ」
一子は覚悟を決めたように仰向けに寝転がると、俺はお腹に両手を当てる。
「その技術は大したもんだな」
「おっさんみたいな破壊が好きな奴には無理だろ」
「いや、そもそも人の気ってのを操ることは誰にも出来ねぇだろ」
「自然に身を任せてとかわけのわからない方が理解できないわ……って喘いでるんじゃねぇよ!」
「しょうがないでしょ!」
彼女の体の中にある気を操って全身へと巡らせる。
その巡りがこそばゆいのかはわからないが、卑猥な喘ぎ声を出している一子の頭をはたくと、彼女は涙目になりながらも噛みついて来ようとする。
しかしその行為は、循環を素早くすることによって回避に成功した。
武術で気を練ったりするのには、その気を自身でコントロールしないといけない。
これをやった当初は、何をしているのかを理解できていなかった彼女なのだが、最近は少しずつ理解出来てきたようで、組手の際中にもコントロールしながら戦っている節も見受けられていることから成長しているようだ。
「ほら、お前も動かしてみろ」
「むむむ……」
「なにが、むむむ……だ」
「集中してるんだから静かにしてよ!」
そう言いながら気を巡らせる一子。そろそろ卒業も近いと感じながらも、彼女の循環の手助けをする。
「うし、本日の鍛錬も終了っと」
「ありがとうございました!」
一通りのことが終わったので、一子を帰らせる。
俺とおっさんはというと
「梅屋な」
「はいはい……」
梅屋へと足を運ぶのであった。