真剣で洛に恋しなさい!【完結】   作:Re:CODER

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仕事が忙しく、誤字脱字などを確認せずに投稿しているため、それらが多いかもしれません。


独り言は気を付けないといけない

 水上体育祭という行事が終わり、残る行事は再来週の期末考査のみとなった。

 弁慶は4位以下を取ると退学になるということで勉学を、大和はというと林冲というSPがおり、公孫勝は九鬼紋白と友人となったためか、ここ最近の放課後での部室は俺だけが独り占めをしている場面が多くなってきた。

 畳の上で寝転がりながら、英語の単語をぺらぺらとめくっていく。

 

 それにしても、梁山泊のやつらはいつまでここにいるんだよ。

 

「大和の盧俊義の資質をさっさと見極めて……」

 

 一人になっていたためか、独り言が出始めた瞬間に部室の扉が開いた。

 目をぱちくりしながらこちらを見ている公孫勝の右手には、防犯ブサーが収められており、そのスイッチが力いっぱい押されていた。

 あの形と色は、緊急用じゃねぇか。

 

「……聞いてた?」

「ばっちり。そこから動くな! すぐにブショーたちが来るんだから」

「どうした入雲龍!」

 

 すぐにとは言ったが、本当にすぐだった。

 ごにょごにょと微妙に聞き取れる言葉のやり取りをしている二人。武松は公孫勝の言葉を聞きながらだが、こちらの方を警戒している。

 史進と楊史も俺が逃げれないように窓から侵入してきた。林冲がこの場にいないのは大和を守るためだろう。

 

「貴様、なぜ私達の目的を知っている!」

 

 公孫勝の言葉を代弁するように、武松が今までにない形相で構えると、それを聞いた史進と楊史は一瞬で距離を詰めてくる。

 

「おーっし、動くなよ」

「動いたらどうなるかわかるよね」

 

 楊史の吹毛剣が首の頸動脈に、史進の棒は頸椎を捕らえる。一歩でも動いたら殺すと言わんばかりだ。

 

「おーけー。動かないから武器とか仕舞おうな。じゃないと怖いおじさんたちが来るぞ」

 

 そう言いながら両手を上に上げると、殺気は収まったが武器を収める気配はない。当然と言えば当然だろう。

 

「単刀直入に聞く。曹一族の者で間違いないな」

「まったく」

「嘘はよくないよ。このことを知っているのは、曹一族以外には直江大和以外いないからね」

「ほら、さっさと吐いちまえって」

「少し待てって。喋れる範囲が決まってるから」

 

 梁山泊の連中に問答をされるが、さてさてどうするか。

 俺の誓約は大きく分けで3つだ。

 

 一、自身の出自や名前についての黙秘

 二、道場への入門の禁止

 三、出自への立ち入りの禁止

 

 条件が曖昧なのは、【誓約】の異能の関係である。縛りを強くすればするほど【誓約】の上限が埋まってしまうからだ。

 さてさてどうするかと考えると釈迦堂のおっさんの話を思い出した。

 

「なあ史進。俺にかかってる異能ってあるか?」

「何言ってんだ? そんなのあるわけ──」

「九紋龍!」

「っと、危ない危ない」

 

 武松の言葉によって止められたが、その続きは安易に想像できる。

 俺には異能がかかっていないのだろう。

 

「そうか、聖手書生(せいしゅしょせい)蕭譲(しょうじょう)が亡くなったか」

 

 今思うと独り言とはいえ、梁山泊の内情を喋れるということはそれを意味すると納得した。

 四十六星で、【誓約】の異能を持つ彼女の年齢を考えると仕方のないことか。

 

「よし、じゃあ全部喋るから適当に座ってくれ。あ、林冲は絶対に呼ぶなよ」

 

 

 梁山泊は代々世襲制であり、世襲のタイミングに合わせて世界中から子供達を買い付ける。

 そしてその素養をもとに割り振って各自が切磋琢磨をさせて星を継がせる。

 

「しかし、原則としてその星たちは女性である必要がある。その下につく部下たちは別だが」

「そうだね」

「もし曹一族のスパイによって買い付けが操作されたら? 男を入れることによって混乱を招くように仕組まれていたら? そしてその人物が異能を持っていて、さらに星を継ぐであろうと言われたら、どうなったと思う」

 

 そう、俺はそれの被害者だった。

 厄介なことに俺にも異能が備わっていた。しかも対人で無類の強さを持った異能を。

 

「認められるわけないわな」

「そう、本来ならば処分するしかない。でもな、もしも【友の異能を受け継ぐ】異能というものがあったらどうする」

 

 偶然なのか知らないが、友と呼べる人物がそれを持っていた。

 その言葉に梁山泊全員は驚愕な表情を浮かべる。

 

「目次。次は継。継は専門用語で維となる」

「……ルオ?」

「偽名は簡単には作ることは出来ないからな。(ルオ) (ルオ)。つまり、お前たちの知っているルオってのは、男だったんだよ」

 

 

 過去の話をしよう。

 

 梁山泊にいたルオという少年は、宋江によって二つの選択肢を提示された。

 

 一つは、死を選ぶこと。

 もう一つは、友人にその異能を譲渡して名前を変えてこの梁山泊から出ていくこと。

 死ぬのが嫌な俺は、後者を選んだ。

 

 そこで蕭譲によって誓約が行われた。

 名前に関しては、梁山泊が作っていた偽名をもらった。お金に関しては異能の売買と口止め料だ。

 

 その後は彼女達の知っている通りの流れだ。

 

 薬草採りのノルマをすべく森の奥へと踏み込んだ時に、【調教】された巨大な虎をけしかける。

 俺が友を守るように川へと突き落として、虎にくわれたというシナリオの完成だ。

 後は安道全が彼女の異能を発動させるためにカウンセリングを行い、譲渡の同意をさせるように誘導させた。

 

 体の無数の傷跡は、曹一族が梁山泊の情報を手に入れるために放った刺客達と戦ったからだ。

 そして龍眼は、もともと持っていた【予知】という能力を補うためだろう。

 その死闘の末に手に入れた偶然の産物というわけだ。

 

 

 「俺が梁山泊の技能を持っているのは当然だ。なぜなら梁山泊で修練を積んでいたから。盧俊義の資質については、彼を取り巻く武士娘の管理とお前たちが来たことからの導き出した答えってわけだ」

「本当にルオなのか……?」

「だからそうだって言ってるだろ。ペタペタ顔触るな、うっとうしい」

 

 顔を触ってくる武松の手を無視する。

 

「信じられないけど、つじつまがあうわな」

「宋江に確認してみろ。あっちは気づいてるから排除命令を出してないんだろ」

 

 もしもこの事実が露見したら梁山泊同士で対立するかもしれない。曹一族と事を構えつつも対立が始まったら、梁山泊は滅亡する。

 存続させるためには保身に走るのは仕方のないことだと言える。

 

「確認取ってきたよ。確かにルオ本人だって」

「まさるがいうんだったら本当だな。んじゃわっちはリンに問題がないって報告してくるわ」

「それじゃあ、私は周囲の警戒をしてくるよ」

 

 緊急連絡用の何かがあるのだろう。公孫勝の言葉で確信に変わったようだ。

 史進は林冲の様子を。楊史は周辺の警戒をするべく部屋から出ていった。

 残ったのは武松と公孫勝のみで、武松はいまだに信じられないように放心状態である。

 

「それでリンにはいつ話すつもり?」

「そうだ豹子頭にも知らせないと!」

「いや、言うつもりはないな」

 

 公孫勝の疑問にハッとした武松は、林冲の元へと行こうとしたのだろう。だが、俺はそれを止めた。

 

「なんでって顔してるけどな、あの守ることに執着してる林冲に報告してみろ。病んで『今度こそ守る』とかいって監禁されそうで怖いわ」

「確かにね。今のリンだったら樹海に連れて行って居を構えそうだね」

「しかし──」

「しかしもかかしもねぇよ。後俺の名前は目次洛な。ルオはもういねぇよ」

 

 武松の言葉を遮る。

 スンとファンとルオはこの世にはもういない。ここにいるのは武松と林冲と目次洛だ。

 

「まぁ大和に夢中になりつつあるみたいだし、後はあいつがなんとかしてくれるだろ」

 

 盧俊義候補で、武神川神百代を手懐けているし。

 最近の林冲の大和を見る視線からして、川神百代や松永燕のように落としてくれると俺は信じている。

 

「さてと、んじゃいい時間だから家に帰るわ」

 

 そう言って鞄を持って部屋を出るが、後ろから着いてくる2つの気配。

 

「……自宅で少し話すか?」

「ああ!」

「お前はどうすんだよ」

「今日の夜のパトロールはパッドとよっしーが担当だし、ポテト食べながらコーラを飲んで──」

「はいはい。んじゃ帰るぞ」

 

 俺を先頭に、武松と公孫勝を連れて自宅へと帰っていく。

 独り言は気を付けないといけないな。

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