マミさんになったからには強キャラムーブがしたい! 作:オリーブオイル
上手く言語化できず筆が止まっておりました。
最近評価バーに色がつきました、評価してくださった方ありがとうございます。
――私がやったの、私が殺したのっ......!!
「なっ......」
そう言ったコイツの顔は酷く歪んで恐怖と悲しみを浮かべながら涙していた。
啞然とした。こんな過去があったなんて普段は大人ぶって余裕そうな振る舞いをしてるコイツからは想像もできなかった。いつも澄ましている姿はなく、今ここにいるのは絶望を浮かべたマミという少女だった......でもその姿にどこか既視感を覚えた。
思えば最初はコイツからクエストに誘われたのが始まりだった。もちろん存在自体は知っていたしギルドで何度か見かけたことはあった。
初めは爺さんから歳が近いと聞いたから声を掛けようとした。でもここに来たばかりのアイツは何か焦ってるのか、追い詰められたように毎日依頼を受けていて、昔の俺はとてもじゃないが声を掛けられなかった。
一年が経ったころには来た時の鬼気迫る様な雰囲気は鳴りを潜め、随分と社交的に振る舞っていた気がする。しかし今更わざわざ声を掛ける理由もないかと言い訳をして関わることはなかった。
あるときアイツから一緒に討伐クエストにいかないかと誘われた。何でも攻撃手段はあるが攻撃魔法を使えないから手伝ってほしいということだった。サポートは得意らしいからお試しでバルカン一頭の討伐依頼を受けた。
依頼のバルカンを見つけ戦闘が始まるとアイツは身体や空中から黄色のリボンを出して、俺の攻撃に合わせてバルカンに目隠ししたり、足を引っ掛けて転ばせたりと本当にサポートが上手く簡単に依頼をこなせた。それから討伐依頼を受けるときはなるべく組む様になった。そしていつしか自分の中では相棒の様な存在になっていった。
目まぐるしい日々に次第に昔の記憶は薄れ、アイツが来た時のことは頭に浮かぶことはなかった。今思えば早く自分から声を掛けていれば、アイツの変化に疑問を抱いていれば、もう少しコイツをよく見ていたらと後悔するがそんなこと言ってもしょうがない。今できることをしろ俺。
魔法を隠していたなんてどうでもいい。
人を殺したことがあるなんて関係ない、どうせ生きる価値のない人間だ。そんな奴らの亡霊に負けるな。
悔しいがお前の悲しみや後悔、絶望は全てはわかってやれない。でも今から、これからは背負っていける。もうこの小さな身体に溜めさせやしない。
「お前は悪くねえじゃねえか......安心しろ、これからは俺がいる。いつでも助けてやるからよ、相棒」
相棒を助けるのは相棒の仕事だろ?
だからもうそんな顔するな。
♢♢♢
あぁ......涙が止まらない。今まで抱えていたものが涙となって溶けていく......勝手に喋って無理やり背負わせて、それでも......助けてやる、その一言で救われた。安心した。話したのがこの人でよかった。
こうして誰かに心を打ち明けたのは前世も含めて初めて。誰かに抱きしめられるのはいつぶりだろう......こんなにも誰かの温もりを感じたのはいつぶりだろう。
「っ、ごめ、んなさい......ありがとう......」
嗚咽交じりで上手く言葉にできたかわからない。
私はなんて嫌な人間なんだろう、いつからこんな面倒な女になったのだろう。彼の優しさに漬け込んでしまった後悔よりも、助けてやると言われた嬉しさの方が大きい。
これからはいつでも傍にいてくれるって言ってくれた。いつでも助けてくれるって言ってくれた。何より私を認めてくれた、相棒と呼んでくれた。
私はもう一人じゃない。彼がいてくれる、一緒に背負ってくれる。一緒に向き合ってくれる......立ち向かえる......だからもう何も怖くない、だって一人じゃないんだもの。
「おい。おいマミ、いい加減離せよ」
「......もうちょっと」
「いやもう離せって! もう何十分も引っ付いてんじゃねーか!?」
もう涙は止まっていたけど、おっきくて包まれていると安心するからずっと抱きついていたら怒られてしまった。まだ14歳のくせに170を超えてるのだこの男。こちとら154もあるし歳のわりに高い方なのに小さく見えるからちょっと悔しい。
......うん。そう、まだ14歳なんだよね......離れよ。
「その、ありがと......あっ、服」
「あ? 服? ......あー」
もう大分乾いてるみたいだけど、グレーのシャツに涙の跡がくっきりと残ってる。
え、まって普通に恥ずかしい。ど、どうしよう、そうだ洗濯、私のせいだし洗って返そう!
「ほんっとに色々ごめんなさいね?! 洗濯っ、洗って返すから脱いで! このっ脱ぎなさいっ」
「まてまてまて! 落ち着けって! 裸で帰らす気か?!」
「......それもそうね」
そうだった、危うくラクサスをグレイにする所だった。
もう色々恥ずかしすぎてどうにかなりそう。ちょっと暫く顔見ないようにしましょう、精神安定のためにも。
「なんかもう、色々ごめんなさい......今日は話聞いてくれてありがとう」
「あぁ......ん?里帰り云々の件は?」
「......」
「......」
え、あっ。
「そうでした」
「......はぁ。大丈夫かよ、今日は帰った方がいいか?」
「だ、だいじょうぶです。はい」
うぅ、ほんとになにやってんのよぉ......まだ里帰りについて何も言ってないじゃないの......はぁ。
「そ、それじゃあ里帰りの話に戻るんだけど」
「随分と長かったなぁ?」
「うるさいわね!」
意地の悪い顔でこちらを揶揄してきた。
しょうがないでしょ!?一杯一杯だったんだから!!
泣いたせいか喉が渇いた。もう遅いけど出来るだけ澄ました顔で冷めた紅茶を飲む。
ちらっと見たラクサスの愉快そうな顔はちょっと癪に障るけど、言い返せないので泣き寝入りするしかない。
「その、私が撃てないのはきっとあの時のトラウマだと思うの。このトラウマを克服できたらもしかしたら撃てるようになるかもしれない......でも」
「一人じゃ無理ってわけか」
銃を構えるとあの時を思い出してどうしても撃てない。
「......ええ、これでも何回か一人で行こうとしたのよ? 私の問題だから一人で解決するべきだって。本当はあなたを巻き込むつもりなんてなくて......だけど考えれば考えるほどに体が震えて倒れそうになって、結局村には行けなかった。でもどうしても向き合わないといけないから、だからその、あなたに......」
「そうか......」
本当に帰ろうとしたけどやっぱり無理だった。一回目はマグノリアを出ることもできずに帰ってしまった。
二回目は降りなきゃいけない駅を降りれず終点まで行ってしまった。結局列車の中で固まっていたら車掌さんに保護されてマグノリアまで帰ってきた。
三回目は御者のおじさんに心配されながらも、何とか山と森挟んで手前の村まで行けた......でもそこで恐怖に耐えきれなくて倒れた。それでもう心が折れてしまった。情けないけど結局三回ともたどり着けなくて、私一人じゃ無理だなって思ってしまった。
でも事情を知ってるのはマスターかギルダーツのおじさんしかいない。マスターにはこんな事言いづらいし、おじさんはきっと来てくれない。だからラクサスに頼るしかなかった、もう私には他に頼れる人なんていなかったから。
「一応聞くが、なんで今そこまでするんだ?別に今までも依頼受けれてるじゃねえか、時間が解決するとは言えねえが、もう少しくらい空けてもいいんじゃねえか?」
「そうかもしれないわね、でも今以上のクエストはそろそろ限界なのよ。忘れたの? 基本的にソロなのよ? 私も先に進まないと.........」
依頼は戦闘を伴うものが多い。これまでは何とかリボンで戦ってきたけどこの魔法は決定打がなさすぎる。相手がただ硬い、それだけで脅威になってしまう弱点の多い魔法なのだ。 それに私が使えるもう一つの魔法、
これからどんどん強い魔道士が私達の前に立ち塞がってくる。たしかに生活するだけなら今のままでも十分。それに大抵の相手ならリボンでどうにかなる......それくらいには研究しているし鍛えてる。
でも目指している場所はそこじゃない。あの人のいる高みだ、過去に囚われて全力を出せないようじゃ到底たどり着けない。だから今じゃないといけない。
「俺と組めばいいだろうが」
「......ぇ?」
「だから、俺とチーム組めば問題ないだろって。組んで強くなりゃいいだろ? 一緒にな」
......?!?!
何でそんな優しい顔してるのよ?! え、そんな話だった?! もしかして私ソロです一人です誘ってくださいアピールしてた!? あーもうっ、どこまで嫌な女なのよ私は!!
ちーむ、ラクサスと......ほんとに?いいの?
「いいの......?」
「いいも何も半分組んでた様なもんだしな。別にお前ならいいだろ」
「えっと、じゃあ......その、よろしくね」
「おう」
嬉しい......チームだ、ラクサスと一緒の。密かにいつか組みたいとは思ってはいたけど、こんなに早く組めるとは思ってもみなかった。
「んで? その村は遠いのか?」
「え? 三、四日かかるわね」
「じゃあ二日後だな。じゃ俺は帰るわ、準備しとけよ」
「え、ちょっと!」
そう言うなり席を立って玄関まで歩いていくラクサスを急いで追いかける。
ちょっとまって、一緒に行ってくれるってことでいいのよね?
「まってラクサス」
せっせと靴を履いて今にも出ていきそうなラクサスに声を掛ける。そんな急いで帰らなくてもいいのに。
「もうチームだろ? じゃあな」
「っ!! ええ、色々ありがとう......帰り気を付けて」
「おう」
動悸がする胸が治まるまで静かになったドアをしばらく見つめる。
最後の言葉で何も言えなくなってしまうくらい強烈な一言だった。じわじわとチームになった事実が染み込み温かく広がっていく。
熱をもった顔を手で扇ぎながらリビングに戻る。
彼がいなくなった部屋とテーブルに残ったカップ達を見て、こんなに静かだったかしら......と思う自分に茶器を片付けながら呆れる。いくらなんでも淋しく感じるの早すぎでしょう、今まで一人暮らしだったくせに。
まあそれはさておき、さっさと洗い物済ませなくちゃね。面倒だけど後に回すといいことないもの。
洗い物をしているとさっきまでのことが頭に浮かぶ。
――いつでも助けてやるからよ、相棒。
――強くなりゃいいだろ? 一緒にな。
――もうチームだろ?
っ!......本当にずるいんだから。
二話丸々使ってもまだマグノリアですね。
若いからか何だかラクサスただのイケメンですね。その反面この主人公どんどん面倒くさくなってますね。
一応補足として、この主人公は産まれた頃から女の子として9歳まで育てられました。前世の記憶が鮮明になったのは7~8歳くらいです。
何が言いたいかもうわかりますよね?そういうことです。