ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

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10 エヴァへの問題

「そうだアルト。これチャージしてくれない?」

 

 

 突然そんな事を言い出したクライの手には、ティノに使っていた狗の鎖(ドックス・チェーン)がうんともすんとも言わずに存在していた。どうやら魔力(マナ)が切れたみたいだ。

 

 普段、クライの宝具の魔力チャージは俺ではなくパーティー内の魔法使い(マギ)がやっているが、他のパーティーメンバーは宝物殿に出向いていて留守。だから俺に頼んだのだろう。

 俺もここにいなかったら、ラウンジとかで適当なクランメンバーに頼んでただろうな。

 

 ちなみに。魔力というものは回復するが、消耗すると負担が激しく、回復するといっても使って直ぐに回復する訳では無い。そのため、宝物殿に潜る予定があるパーティーには断られる事が多い。万が一を無くし、万全を期すためだ。この世界で生きるなら使うこともあるから、覚えておいて損は無い知識だぞ。

 

 

「しょうがないな……そうだ、エヴァ」

 

「っ、はい?」

 

 

 とりあえずクライから狗の鎖(ドックス・チェーン)を受け取り、チャージし始める。しかしこのままだとクライが手助けに行かなくなってしまうかもしれない。

 イベントが無くても急に心配になったとかありそうだが、ここは芝居を……ところでエヴァさん。なんで身構えるの? まだちょっと話しかけただけじゃん。そんな警戒しなくても……クライじゃないんだし……。

 

 

「最近北の街道で何かあったらしいけど、知ってるか?」

 

「最近、北の街道……でしたら、先日小規模の商隊が全滅した件でしょうか」

 

「え、そんな事あったの? 物騒だなあ」

 

 

 ゼブルディア程の大都市であれば、付近の商隊が通るような道は十分に整備されている。魔物避けと呼ばれるものも完備されており、滅多な事で襲われることは無い。

 しかし、そんな場所で襲撃があって、さらに全滅してしまったという事件だ。

 

 

「そうそうそれそれ。なんでもハンターが護衛についていたのに全滅したんだとか。いくら『はぐれ』とはいえ、中々の事だよな?」

 

「はい。ハンターたちはレベル3。決して弱くはありませんし、三人ついていたらしいのですが……。これに関して、騎士団が注意喚起だけでなく、討伐隊の募集もかけていますね」

 

「帝国騎士団が動いてるんだ。じゃあ近いうちになんとかなりそうじゃない?」

 

「なんでクライはそんなに興味無さそうなんだよ」

 

 

 あまりにも淡白な反応に思わずツッこんでしまった。知らない内に指にいつも着けてる宝具を磨いてるし。いつから磨いてたんだコイツ。

 

 街道にまで出てくる『はぐれ』。今回の場合は、情報から推測すると魔物ではなく幻影(ファントム)だ。それも相当な強さの。

 山や森が付近にあるため、そこから魔物が降りてくる可能性はあるが、魔物達の縄張りや魔物避けのこともあり、わざわざ降りてくるというのは早々ありえない。となれば残る択は幻影、という訳だ。

 

 確かに帝国騎士団が対処するとなれば、一安心出来るだろう。近いうちに解決するのが確定したようなものではある……が、今すぐに解決するものではない。

 街に被害は出ないのかという質問については、幻影は宝物殿の外ではその体を長時間維持できないという答えを返そう。肉体を持たないから、マナ・マテリアルが薄い宝物殿の外では生きていけないのだ。

 

 

「……で、狼の幻影(ファントム)だったそうじゃないか。あの辺で狼なんて……当てはまる宝物殿はどこだったか」

 

「あの辺りですと、白狼の森しか……まさか」

 

「え? えーと……」

 

 

 エヴァは先にある可能性に気付いたようで、とんでもなく目を見開いてクライを見ている。俺もニヤニヤしながらクライを見る。

 当のクライはエヴァを見て何か思ったのか、顔色を悪くしながら汗をダラダラと流している。俺とエヴァの前ではヤバいと思った時、顔に出やすくなった気がする。気の所為かもしれないが。

 

 

「い、いやいや、ほらあそこってレベル3の宝物殿だし? ティノだけじゃないし、4人だし……」

 

「クライさん。その依頼書、見せて貰えませんか?」

 

「え……はい」

 

「……この行方不明のハンター、レベル5のロドルフ・ダヴーさんですよね。いくらあの宝物殿の幻影が比較的強いと言われていても、レベル5が苦労する相手じゃありません」

 

 

 素直にクライが依頼書を渡すと、エヴァが隅から隅まで速読し、脳内の情報と照らし合わせ、推測する。

 その速度は相当なもので、さすがうちのクランの副リーダー兼実質的クラン内全業務まとめ役だと感嘆してしまう。エヴァがいなかったら俺がやる羽目になってたのかな……流石に嫌だな……エヴァ、ありがとう。

 

 みるみるうちに表情が険しくなっていくエヴァと、それを見てソワソワが強くなっていくクライの対比が起こっている。見てて面白い。やっぱこのコンビもいいよな。エヴァに20サークポイントをあげよう。

 10サークポイントは100ジンバブエドルポイントだ。多分これでエヴァの持ちポイントは30サークポイントになったと思う。100サークポイントになったらなんでも言うことを聞いてしまうかもしれない。エヴァだけだよ? いや、ティノもかなぁ。

 

 

「なあエヴァ。これ、どう思う?」

 

「……普段ソロの子に寄せ集めパーティーを組ませて行かせる、ですか。もっと段階というものがありそうですが」

 

「ま、それもこれも指示したのはクライ。つまり、そういうこった」

 

「……え?」

 

 

 なにやらクライが混乱を通り越している気がするが、とりあえず放っておく。エヴァは相変わらずいつものクライと思っているようで、少し呆れながらも真剣な表情でクライに進言する。

 

 

「なるほど……クライさん。流石にフォローに行った方が良いのでは? というか行って下さい。今ならまだ間に合います」

 

「だ、大丈夫、大丈夫。煉獄剣があるし……」

 

「……さーて、今頃ティノたちはどの辺かな」

 

 

 クライが言い聞かせるようにそんな事を宣っているが、おそらく魔力のチャージをしていないので、ただの剣となっているだろう。クライが調子に乗って残り魔力使い切るから……。

 とりあえず、クライを行動させる所まで誘導出来たな、多分。あとは適当にフォローに入れるようにすれば問題無いだろう。……そういや、ティノに作ったあの指輪、渡したっけ?

 

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