ストグリ世界を全力で楽しむ 作:ストグリメンバーその0
それはそうと、アニメ化、おめでとうございます。
『白狼の巣』は、中堅所の宝物殿だ。人気こそ無いものの、何度か攻略した事はある。その経験からすると……異常だと、ティノはそう認識した。
鬱蒼と茂る森の中。僅かにつけられた『白狼の巣』に向かう道を警戒しつつ歩く。隊列はティノが先頭に立ち、後ろにギルベルト、グレッグ、最後に後方の警戒を担当するルーダ。
即席ということと、クライの考えたパーティーだからか、広域殲滅が出来る
しかし、そのバランスの悪さでも、特徴はある。前衛2人は大剣での1体1が得意なギルベルトと、様々な武器を扱うグレッグ。
探索技術に長けた
そして戦わなければ行けない場面でも、少人数の敵を選ぶことが出来れば、前衛2人と
とはいえ。この取ってつけたような理由にも気づく者がいる訳もなく。
森に蔓延する得体の知れない空気と、遠吠えのような鳴き声に、パーティーの面々の表情は硬かった。
「おかしい……やばい匂いがぷんぷんするぞ。まだ宝物殿にもたどり着いてもいないってのに」
「だから遺書を書いた」
「正確に言えば、
ハンターの嫌な予感はよく当たる。マナ・マテリアルの供給により、脳で処理しきれないほどに強化されたハンターの感覚は、勘という形でそのハンターに警鐘を鳴らす。マナ・マテリアルの数ある不思議の一つ。
命が惜しければ、嫌な予感を感じたらすぐに引き返せ。トレジャーハンターをやる上で最も知れ渡っている掟。それを無視して破った者は、この時代に頭角を現すか、雑多なハンターの1人として消えていく。
だが、今回の件についてはその掟は当てはまらない。何故ならば、このような状態になることはとっくにわかっていて、それを遺書という形で許容した上でここにいるからだ。
そして、ティノはそのことを臨時パーティとはいえ、事前に話している。話した時点でそれが信用されていたかどうかは別として。
最後尾で後方を索敵しながら慎重に歩いていたルーダがふと動きを鈍らせる。
「そんな……クライはこの状況をわかっていて、それなのに私達を差し向けたって言うの?」
「追加で言うならば……このメンバー編成も恐らく偶然ではない」
「は? お、おいおい、それは流石に……」
間違いなく偶然である。しかし、ティノの脳内において、その可能性はこれっぽっちも存在していない。仮にそうだとすれば、自らが尊敬するマスターがただの馬鹿だということになる。
それ故に、全てを知っている数少ない一部からすればとんでもない勘違いとなっているが、当の本人が気付くことはない。
勘違いが勘違いを呼ぶ連鎖は、こうして徐々に、されど確実に広まっていったのだ。
結果。ティノは曇りなき眼でその事実(笑)をパーティーメンバーに伝えることとなる。
「マスターは宝物殿の異常とそこで発生している事象の全てを読み切り、必要な人員を誘導してこのメンバーを集めた。ギルベルト、貴方との腕試しとその結果も例外ではない」
「ま、待って!? 必要な、人員? いくらなんでも、私が足跡のメンバー募集に参加したのはただの偶然で……だ、大体、差し向けるなら貴女の所にはもっと優秀なハンターが沢山いるでしょ!? それこそ、アルトだって……!」
「そ、そうだ。そもそも、俺が千変万化と会ったのは、あれが初めてでーー」
「お、おい。それって、あの変幻自在も関わってる、のか……?」
そこに浮かぶは恐怖か畏怖か。各々悲を感じる表情を浮かべるパーティメンバーに、ティノは小さくため息をついて、言った。
まだ宝物殿ではないとはいえ、近場で騒げば幻影や魔物が襲ってくる可能性は高い。特に、この異常な状態の場所では。
もしかしたらそれすらもマスターの予想通りかもしれないが、ティノはさっさと終わらせて帰りたいのだ。もちろん死体としてではなく、生きて、である。
その為にはこれがアクシデントではないと知ってもらう必要があった。それが例え、さらなる不安を煽りかねなくとも。
「マスターは――帝都中のハンターと、宝物殿の情報を全て網羅している。たとえ会ったことがなくたって、その行動を読むのなんてマスターならば造作もない」
「そして、マスターの隣で同じものを見て、同じことを考えることが出来る唯一無二の人が、アルトお兄さま。だからますたぁはアルトお兄さまもあの場に連れてきた」
ティノのその発言は、この場を完全に沈黙させるのに充分過ぎるほど、重く芯のあるものだった。
この即席パーティーが組まれることとなった時のことを思い出したのか、各々不安げな三人。それを見て、ティノが軽い調子で言う。
「安心して。マスターは全てを把握してる。どうにもならない依頼を適当に振ったりはしない。私達が死ぬ気になれば攻略は可能ということ。だから、何が起きようと引き返したりはしない。遺書も書いた」
その発言の裏で、ふと。ティノの脳裏には、師匠から教わったとあるものが浮かんでいた。
それは、クライに何かがあった時にのみ使うことが許される、
ティノであってもその存在しか教えられておらず、ますたぁとアルトお兄さまが考え作り出したとだけ聞かされた。それと同時に、アルトお兄さまとますたぁの話も聞かされた。
なぜその事を聞かされたのか、ティノは今でも不思議に思っている。
「お、おう……そうだな」
グレッグの引きつった返事を横目に何故かふとよぎったそれについて思い返していると、その瞬間、視界に影が差した。
空から降ってくるそれに、思考しながらもいち早く気がついたティノがグレッグを突き飛ばす。
一秒前までその首があった所を、鈍い灰色の輝きが通り過ぎた。風を切るという表現が生易しい程の音が響き、衝撃が伝わる。
ティノは先の思考を1度やめ、グレッグを突き飛ばした勢いを利用して距離を取り、戦闘態勢に入る。
一拍遅れ、ギルベルトとルーダが距離を取り、戦闘体勢に入る。突き飛ばされて転がったグレッグが反射的に受け身を取り、こちらも同様に構える。
その目が、匂いも音も気配すらなく忍び寄ってきたそれを捉える。ルーダが目を見開き、蹲ったまま動く様子のない真紅の獣に、掠れた声をあげる。
「ぇ……ここの幻影って――狼じゃないの!?」
先制攻撃を躱された真紅の獣は緩慢とも言える緩やかな動作で、立ち上がった。
――二本足で。
針金のような真紅の毛皮に、ピンとたった犬科特有の耳。臀部からは同色の太い尾が伸び、その鼻はまるで状況を把握するかのように小さく動いている。
しかし、その獣ーー狼の大部分は、血のように赤い甲冑に覆われていた。
「こいつ……鎧着てるぞ!? 聞いていた話と違うッ!!」
「剣持ってる……ますたぁ……ますたぁはいつも私の予想の上を行くんですね……」
『白狼の巣』に出現する『幻影』は、巨大な狼だったはずだ。だが、今目の前に出てきた相手は色と顔を除けば知っているそれとも、想定しうるそれらとも何もかも違う。
どこか悲しげなティノの言葉を掻き消すかのように、狼の武者が咆哮をあげた。
本当は書籍版とコミックス版の新刊出るからそろそろ書こうって感じだったんです。そしたらアニメ化発表ですからね、驚きを通り越して呆然としてました。
凄く嬉しいんですけど、もうちょっとだけ、ストグリという作品を秘密にしたいというか。そんな風に思ってしまいました。ですが、なにより。おめでとうございます。