ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

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 ティノ可愛い。


2 完璧な隠密

 いつもは酒場を経営している建物を借りて行うことになっている今回のメンバー募集。既に多くのハンターが入っており、その熱気で湯気が出そうな程。

 ここを貸し切ることが出来たのは、ここのマスターとクライが仲良かったことや、それ相応の契約を結んであるからである。ちなみに、ここのマスターはいい人だ。

 

 

「すごい……これ全員ハンター?」

 

 

 店内に点在するテーブルには、クラン『始まりの足跡(ファースト・ステップ)』に属するパーティの面々が座っている。

 入団希望者のハンターはそれぞれ希望するパーティの元へ行き、テストを受けることになる。面接や実技が主だが、中にはフィーリングやインスピレーション、心理テストなんてものもあったりする。

 俺も占いとかやってみようかな。でも変な事したら当ててしまうからやめとくか。

 たまに新人のフリをしてテストに参加して頭おかしい結果を出すと面白い。もちろん怒られるけどな。

 

 

「クライ、もしよかったら色々教えてくれない? こういうの、全然詳しくなくて」

 

「……いいよ。腕のいいハンターに恩を売っておくのも悪くない」

 

 

 喧騒の中、中心から少し離れた場所。クライが外で出会った盗賊(シーフ)のハンター、ルーダにこの場所について話し始める。この世界の人はハンターに限らずコミュ力が高い。ここを目指している奴らには悪いが、陰キャコミュ障には辛い世界が待っている。

 

 さて。何となく存在するこの場所のルール。それは奥のパーティ程レベルが高いという事。一番奥に2つあるある大きなテーブルの片方に居るパーティの名は聖霊の御子(アーク・ブレイブ)。今回募集をかけているパーティの中で最強。だが、ハーレムパーティだ。

 たった6人でレベル7の宝物殿を攻略した精鋭の中の精鋭。平均年齢が21歳というのもその凄さに拍車をかけている。だがハーレムパーティだ。言うほど気にしてないけど。

 

 また、ソロのハンターもそこそこの数がこの場に来ており、大半は向こうのカウンター席に座っている。

 

 他にも沢山いるパーティについて情報を伝えていくクライ。今回はいつもよりパーティ数が多い分、その情報量も多くなる。ルーダは呆れたように言葉を返す。

 

 

「……クライ、詳しいのね。聞いただけで疲れちゃったわ」

 

「このくらい当然だよ」

 

「……聞いていいのかわからないけど、貴方はどこ志望なの?」

 

「志望……特にないかな。……僕には……何も出来ない、から」

 

 

 どことなくシリアスな雰囲気が漂う中、俺は存在感をある程度消してずっと盗み聞きしている。今の所気付いているのはアークだけだ。なんならアークのパーティメンバーは気づいていない。

 これはアークのパーティの弱点でもあるが……皆理解しているからな。

 クライ? 気づくわけがない。もちろん、()()()()が出れば気づかれるけど。

 

 

「あ、あれ? ねぇ、そう言えば、あそこの空っぽのテーブル、何で片付けてないのかしら?」

 

「おいおい、お前ら、本当に何も知らずに来たんだな」

 

「!?」

 

 

 ここで、外で乱闘寸前までいった原因でもある大男、グレッグがまた絡みに来た。ルーダは眉根を寄せているが、クライは少し逃げ腰になっている。

 そのままグレッグが誰も座っていないテーブルについて話し始める。

 

 このグレッグという大男は俺達からみたら間違いなく先輩ハンターである。実力こそそこそこであるものの、割と優しく面倒見がある……と思っている。少なくとも、クライの言う話の通じないタイプではないハンターだ。

 困ったらグレッグに話しかけてみるのも良いかもしれない。転生者にオススメだ。おすすめ度は10点中9点。

 

 

「あそこのテーブルは、『聖霊の御子』と共にこの『足跡』を創始したあるパーティのテーブルだ。といっても、今日も結局来てねえみてえだがな」

 

「創始した……パーティ?」

 

「足跡は何度もメンバーを募集しているが、今日はいつもよりも人が多い。ついこの間レベル7の宝物殿を誰一人欠かずに攻略してみせた『聖霊』も来てるし、普段は募集をかけねえ『黒金』や『聖雷』も来てる。それに……ほら、パーティ以外にもあちこちに足跡のマークした奴らが立ってるだろ?」

 

 

 壁に寄りかかって不機嫌そうに目を瞑っているハンターの男や、いくつかのパーティに話し歩いているハンター、空きテーブルの近くでつまらなさそうにふらふらしている……女ハンターもいる。

 

 

「本来、既に足跡所属のメンバーが募集目的でもなしにここに来る意味は薄い。それだけの理由があるんだ」

 

 

 彼らもクランに所属しているパーティである。1パーティは1人から。制度上、相応の実力があればソロでパーティ登録をして所属出来る。

 クランにはパーティ単位でしか入れないが、パーティが1人からでも成立する以上、ソロでも所属出来る。ある種裏技のようなものかもしれない。

 クライが向こうでふらふらしていた女ハンターを指す。

 

 

「ティノ・シェイドだ。レベル4で、ソロで足跡に所属してる。有名なメンバーだ」

 

「あんな小さな女の子が……」

 

「……余計なことは言わないほうがいい。年齢・見た目と気の短さは無関係だから」

 

 

 ティノ・シェイド。先にネタバレすると、幼馴染の1人の弟子。役割はシーフ。黒髪のショートカットで、中々健気で可愛い。良いよね、ティノ……。

 幼馴染の弟子ではあるが、たまに俺も教えている。戦闘技能や盗賊、ハンターの仕事を少し理論的に。師匠は実践派というか、感覚派だからね……。

 で、座学メインでたまに実践。娘か妹に教えてるみたいで楽しかったりする。うちのパーティメンバーは皆自立していってるから、今じゃ教えることもあんまり無い。

 

 

「……あまりハンターのように見えなかったが、なかなか調べてあるな」

 

「情報収集は大事だからね。それに実は彼女……知り合いの弟子でね」

 

「知り合い?」

 

「何でソロなのにここにいるのかわからないけど……」

 

 

 一応、メンバー募集はクラン内のパーティの移動の側面もある。ソロで厳しくなってきたから他のパーティに入る、ということはままある話だ。だからカウンター席辺りにソロハンターが集まっている。今回は事情が違うけれど。

 

 

「そこだ。そこだよ。何故連中が集まっているのか……噂があったのさ。今日この日、長らくパーティメンバーの追加募集をしてなかった、ファースト・ステップの創始パーティの一つ――『嘆霊』が数年ぶりにメンバーの募集をするってな」

 

 

 グレッグがそう言った瞬間、クライが完全に固まった。知らない話が噂として出ているうえに、それが自分のパーティだというのだから、その衝撃は中々のものだろう。

 

 

「『嘆霊』は少数精鋭だからな。こんな機会でもなければお目にかかれねえ上に、パーティ参加のチャンスなんてまずねぇ。連中もあわよくば顔を見せようって魂胆だろうよ」

 

 

 正式名称──嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)

 

 俺とクライ達6人が帝都に出てきた時に作ったパーティの名前である。瞬く間に頭角を表し、今では帝都において『聖霊の御子』と双璧を成す若手パーティと言われている。

 

 身を縮めて身体をガタガタ震わせるクライ。ルーダは心配そうに声をかけている。草を生やしてもいいだろうか。草原を創り出すのも乙かもしれない。

 

 クライにとってこのパーティは負担だろう。ある時、幼馴染の足を引っ張っていると悟った時から、彼にとってこのパーティに居ることは重荷なのだ。

 しかし、かつて英雄を目指したのは本当の事で、あの頃の思い出を否定している訳では無い。現在、当時者でもある俺は、そう信じている。

 

 

「おいッ、どういうことだ! 『嘆霊』はどこだッ!」

 

 

 またも入りかけたシリアスを壊してくれたのは、勇気と無謀を兼ね備えた赤髪の少年だ。どうみても生意気である。

 

 

「雑魚に用はねえ。トップが出るって聞いたからわざわざこんなとこまで来てやったんだッ!」

 

 

 相当自信があるのか、その口は留まることを知らない。その後何度か喚きヒートアップしていく最中、1人の足跡所属のハンターが向かっていった。何を隠そう、うちのティノである。

 ティノは冷たい目で見下ろしながら、底冷えするような低い声で切り捨てる。

 

 

「あぁ? なんだてめえ!?」

 

「あなたみたいな身の程知らず。うちにはいらない」

 

「ちょ、ティノ。今日の目的はメンバーの募集だ、騒ぎを起こすんじゃないッ!」

 

 

 今まで適当にあしらい平然としていた足跡のメンバーが慌てて声をかける。しかしティノは止まる気配がない。

 他のメンバーも宥める中、まるでチンピラのような応酬から騒ぎが広がっていく。火は既に燃え広がってしまった。

 

 

「おう! やれやれッ! 『足跡』の力、見せてくれッ!」

 

 

 クライ曰く、トレジャーハンター同士の喧嘩とは災害。武器を抜けば致命傷を負うか気が済むまで喧嘩は終わらないし、『宝具』を使い始めれば家の一軒や二軒簡単に吹っ飛ぶ。

 実際それだけの力はある。良くも悪くも、ハンターの力は強大なのだ。

 

 部屋の温度が更に上がっていき、いよいよ始まりそうな熱気が漂う中、クライはルーダを連れて出口へこそこそ向かう。

 即席の開けた空間が作られ、その場にティノとギルベルトが向かい合う。一触即発といった空気の中、その時が来る。

 クライ達が出口へ辿り着く直前。誰かが囃し立て開始の合図をしたその瞬間。部屋の中に一陣の風が吹いた。その風は熱の篭った空気を動かし、原因はある人物の前で止まる。

 無視されたギルベルトはカウンター席に突っ込んでいった。

 

 その人物はさっきまでとは打って変わって、呆けたような表情をしている。

 

 

「あ、あの……なにか……?」

 

 

 ルーダが少し怯えながら恐る恐る尋ねる。しかしティノはそれに答えず、同じく震えるような声でクライに尋ねた。

 

 

「…………あの……な、何、してるんですか? ますたぁ? いつから、いたんですか?」

 

 

 クライがゲロ吐きそうな顔をする最中、俺はこの光景を見て深く感動していた。あの時読んだ光景は、夢想した光景はこうだったのかと。

 そしてこうも思っていた。ティノはポカンとしてても可愛いなと。

 




 キャラの解像度が上がりそうになくて逃げる今日。1番好きなキャラが出てくるまで長いし……。
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