ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

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4 次の日の朝

「クライさん、すっぱ抜かれてます」

 

「あー……マジか」

 

「当たり前だな……ねみぃ」

 

「さっきまで寝てなかった?」

 

 

 見事な日向ぼっこ日和である今日。クランマスター室は陽の光が元気よく入り込んでいる。正直半分ほど寝ていたが、エヴァが入ってきた事で少し目が覚めた。ここのソファー、いいヤツだから寝心地も良い。

 クライも同じようにうとうとしていたが、エヴァが来たことに気付き、深いため息をついていた。

 

 エヴァ。フルネームをエヴァ・レンフィードと言う。クライがクラン運営のために商会から引き抜いてきた逸材。

 このクランはハンター達とは別に、普通の職員が在籍している。純粋にクラン運営の為だ。彼ら彼女らのおかげで成り立っている物事は多く、特に副クランマスターでもあるエヴァは凄い。

 そもそも何もしないクライに変わってあらゆる仕事をこなしている上、他の商会や探協、貴族ともやり取りをしている。

 

 また彼女が作り上げた情報網は凄まじく、帝都であればほぼ全ての情報が手に入る。シトリーと組めば手に入らない情報は、世界規模でも殆ど無いのではと思える程だ。彼女の能力をハンターで表せば6は固いだろう。

 

 エヴァがクライに差し出したのは、帝国でナンバーワンのシェアを誇るゼブルディア・デイズの新聞。この前俺が読んだふりをしていた自作自演の虚構新聞ではない、本物の新聞だ。

 紙面のタイトルは『大手クラン、『聖霊の御子』メンバー募集で乱闘発生』というもの。真偽はともかく見事にすっぱ抜かれている。一面には荒れに荒らされボロボロになった店が写っていた。なんならハンター達が大乱闘中である。

 

 

「一般人の被害者は、幸いなことに出てないみたいですね」

 

「ならセーフ。市民に被害が出たらやばいからなぁ」

 

「そうだな」

 

 

 うちのクランのモットーにあるというのもあるが、ハンターは一般人に手を出してはならないのだ。そういうルールである。

 ハンターと一般人の差は、象と蟻ぐらいあると言っても過言では無い。多分。そのため、ハンターが少し手を出せば一般人は再起不能になっても何らおかしくない。

 そういった事実から、ハンターは一般人に手を出してはならないというルールが出来上がったのだ。

 

 クライは軽い弁明の後、アークが気にしていないことと酒場の弁償をどうするかを確認しながら宝具を磨き始めた。

 宝具マニアであるクライは毎日宝具を磨いている。身につけているものはもちろん、数百ある保管されているものも定期的に綺麗にしている。

 

 なんならいつでも使えるよう魔力(マナ)も定期的に補充している。基本的にメンバーの1人がやらされているが、たまに俺もやっている。正直彼女一人でやる量ではない。常人どころか、他のレベル8でもマナポーション無しでは無理だろう。如何せん数が多すぎる。

 

 

「崩壊した酒場はどうすんだ?」

 

「請求書はアークに。しっかり機会損失も計算して補填させる。そういう約束であそこ借りたんだから」

 

「そんな約束してたのかよ……アークが優しすぎる。聖人か?」

 

「本当に懐が深いよね。アークなら何でも許してくれるよ」

 

 

 いや、流石にそれは無いだろう。そう思う気持ちはわかるが。一線超えるのもそう遠くないな。

 

 

「それと、探協から苦情が来ています」

 

「適当に処理しといて」

 

 

 そういえば、『嘆霊』の他のメンバーが宝物殿に出てから結構経つ。ということは、宝具の魔力も大部分が無くなってきていると思うが、クライは気づいているのか? 宝具だし気づいてるか。

 最悪、必須の物は俺がやるとしよう。あまり甘やかさないでと言われてなければ全部適当に補充してもいいんだがな……。

 

 

「面倒臭がらず、こっちに来てちゃんと説明しろと」

 

「あー、呼び出しか……ゲロ吐きそう」

 

 

 話は進み、クライがまた探協に呼び出された所まで来た。いつも通りゲロ吐きそうになっている。

 

 探協とは、探索者協会のことである。大部分のハンター達が属するこの組織は、トレジャーハンターたちを管理している、世界中に存在する一大組織である。特に、この帝都では大きな権力を持っている。伊達にトレジャーハンターの街と呼ばれてないのだ。

 また、様々な依頼も探協を通すことが多く、行政区と同等な程に重要な組織でもある。ハンターが大きい存在だからこそでもあるが。

 

 

「もう慣れてるでしょう。何回目ですか」

 

「何回きても呼び出しだけは慣れないんだよ。帝都支部長のガークさん、あの人めっちゃ怖いんだよね。絶対何人か殺してる」

 

「またまたそんなこと……」

 

 

 エヴァが半ば呆れたように言っている。いつも通りである。

 

 ガークさんとは、この帝都の探協を取り仕切っている人物。つまり、現帝都探協索者協会支部長である。

 ガーク・ヴェルダー。現役時代はその力を存分に発揮し『戦鬼』の二つ名を与えられていた。認定レベルは7で、その中でも上位だったとされる。

 引退後、探協からのスカウトを受けて支部長をやっているが、今でも十分な実力がある。レベル5ぐらいであれば割と余裕なんじゃないだろうか。少なくともその辺のハンターなら手も足も出ない。そう考えるとトンデモな気がしてくるのだから不思議なものだ。

 

 

「……仕方ない、本当は行きたくないけど行ってくるか。本当は外に出たくないんだよ。事件に巻き込まれるかもしれないし、命狙われるかもしれないし。この間変装用の宝具も壊れちゃったしさ」

 

 

 過去に探協からの要請を無視してクランに乗り込まれた経験がある。だからクライは行かざるを得なくなってしまった。可哀想かもしれないが、自業自得である。

 外に出たら何かと狙われ巻き込まれるのは運が良くて悪いからである。

 

 変装用の宝具とは転換する人面(リバース・フェイス)。簡潔に言えば、顔を変えられる肉面だ。

 ちなみに、幼馴染の1人がぶっ壊してしまったが、とても貴重かつ、ゼブルディアの法で禁止されていたりする。

 悪用し放題だから仕方ないが、そんなものを持ち歩くどころか使用していたクライもクライである。

 

 

「大丈夫ですって。帝都ですよ?」

 

「街中で襲われたことがないからそんなこと言えるんだよ。まぁ、全部潰したから最近はないけど」

 

 

 『嘆霊』のクライ以外がやった。流石に襲われることが多すぎてうざいということで、片っ端から盗賊やらなんやらを潰しまくったのである。俺も参加して幾つか潰した。リィズやルーク程突っ込んではないけどな。おかげでちょっとした臨時収入になった。

 

 

「そうだ、アルトが行けばいいじゃん。もしくは着いてきてよ。それなら安全だし。ねえ、アルト……」

 

「……寝てますね。ついさっきまで起きてたと思うんですが」

 

 

 そう。俺は今寝たフリをしている。流石に探協にまで着いていく元気はない。面倒だし。決してガークさんの顔が怖いとか、めちゃくちゃ眠いという訳ではない。ないったらない。

 

 

「あー、アルトって昔からよく寝てるんだよね。さっきまで起きてたのにいつの間にか寝てるんだ。でもアルトが寝てる時は基本、変なことは起こらない」

 

 

 正直運が良いだけだが、何かある時は寝ていないだけだ。決してあまりにも眠くて寝ている訳では無い。ないったらないのだ。

 

 

「その話、聞いた事があるような気がします」

 

「一回寝たら誰が起こしても起きないし……ルシアがいれば話は変わるけど。まあとにかく行ってくるよ」

 

 

 磨いていた指輪や鎖型の宝具は全て持って、クライは出ていった。いつものやる気が見えない背中で、どこかトボトボとしているようにも見えた。

 

 

 

 

 

 ……このまま寝てしまってもいいが、エヴァに渡すものがある。クライの代わりにエヴァを労らわなければ。

 

 

「……やあエヴァ」

 

「!? アルトさん、起きてたんですか?」

 

 

 エヴァが少し体をビクッとさせる。クライが行って油断してたんだろう。エヴァは割と完璧超人なところがあるから、驚いた表情はレアである。

 

 

「いや、今起きたところだ。クライは?」

 

 

 本当はガッツリ起きてたけど。

 

 

「……クライさんなら呼び出しで探協に行きましたよ」

 

「ガークさんか……昨日の件と見せかけてなにかしらやらせてくると思うから、エヴァも少し気にかけておくといいかもな」

 

「なにか? ……もしかして、『罰ゲーム』ですか?」

 

 

 エヴァが少し困ったように言う。彼女がこんな反応になるのには理由がある。

 

 『罰ゲーム』とは、探協で出されている依頼のうち、何らかの原因によってやる価値がほぼ無く、塩漬けにされているもののことを指す。とんでもない渾名だが、報酬や難易度が割に合わないのだ。

 それらは普段であれば、弱みがあったり不祥事を起こしたハンターがやらされるのだが、今回はそうではない。

 

 まず、うちのクランはここまで大きくなったにも関わらず、探協を脱退することなく属し続けている珍しいクランである。その中でもクライは探協へ気を使っている更に珍しいハンターなのだ。

 そんな探協からの信頼があるクライだからこそ、ガーク支部長も高難易度の依頼を任せることがある。過去にもあったことだが、その度1番難易度が高いものを取っていくので勘違いが加速していくのである。

 

 そしてそのことを表面からエヴァは知っている。つまり、そういう事だ。

 

 

「正解。今回の件はクライを呼び出すのに丁度いい機会だ。クライもなんだかんだ自分で行ったみたいだしな」

 

「確かに呼び出しがあったとはいえ、クライさんは基本探協には行きませんし、久しぶりの出来事ですね」

 

 

 エヴァも自分の中で納得がいったのか、憑き物が落ちたような表情になった。そんな真面目に考えなくても、頭の片隅に置いておくぐらいで良かったのに。

 

 

「これだけ知っておけばエヴァなら対応できるだろう……そうだ。いつも頑張って貰ってるし、これをプレゼントしようじゃないか」

 

 

 話を無理矢理変えたが、今日を狙って持ってきていた箱をエヴァに渡す。エヴァは目を丸くして箱を受け取った。中々見れない表情が沢山見れて私は満足です。

 

 

「ありがとう、ございます。これは……ペンダントですか?」

 

 

 箱の中身はペンダントだ。アメジストみたいなものが拵えてある、見た目は普通のペンダント。見た目は。

 

 

「そうそう。ちょっと細工はしてあるけどな」

 

「細工、ですか?」

 

「うむ。一回だけ命に関わるものをなんでも身代わりしてくれる優れものだ」

 

「!? それ、宝具と同等以上の効果じゃないですか!? そんな貴重なものをポンとプレゼントしないで下さい!」

 

 

 ポンとは渡してない。丁寧に渡した。だからそんなに大きな声を出さないでほしい。

 

 というのは置いておいて、このペンダントは俺の自作だ。名前は特に考えていない。宝具みたいなカッコイイ名前は中々思いつかないのだ。この際、試作品ナンバー8931バージョンアルファとかでもいい。いい名前募集してます。

 

 効果はさっき言った通り。文字通りなんでも一回身代わりになってくれる。物理、魔法、呪い、状態異常は事前に試験し、成功している。これを正面から突破できるとしたら、この世界の宝具と同等以上の何かが必要だ。もしくは神。ちなみに実験には幼馴染の1人が手伝ってくれた。

 仕組みは企業秘密だが、燃料は宝具と同じ魔力である。本体の耐久性は現代レベルだ。つまり、2回本気で叩きつければ壊れる。

 

 え、チートだって? 失礼だな、努力だよ。文句は実験協力者に言ってくれ。あっちの方がヤバいから。

 

 

「そんな大声出すなって。エヴァへの労いだよ、労い。機能は別としても、是非つけて欲しい」

 

「っ、そういう問題では、無いのですが……とりあえず、受け取っておきます」

 

 

 渋々という雰囲気でしまってくれた。エヴァって優しいよな。こんな怪しい代物を渡してもほぼ文句無しだ。もしかして嘆霊以外はうちのクラン皆優しい? 

 しかしこれでかなり強力な保険がついた。役に立つ時は、来ないといいが。

 

 

「ありがとな。それじゃ、ちょっとティノに用事あるから行ってくる」

 

 

 さて、ティノはどこだろうか。昨日場所について伝えてなかったからな。ふむ、ラウンジにいるか? ちょっと早い気もするが、まあ本でも読んでるはずだ。

 




 指摘されたこともあるので、この辺からセリフ周りの改変とかとかも含めて頑張ります。……難しい。
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