ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

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6 闇鍋パーティーへの道

「ますたぁ、私は今、人生で一番ショックを受けています。乙女心がずたずたです。ますたぁが、そんな酷いことをする人だとは思いませんでした。騙された」

 

「騙してない騙してない」

 

「上げて落とされた」

 

「落としてないし上げてもない」

 

「あっはははは」

 

「アークみたいな笑い方になってるよ、アルト」

 

「っが入ってるから違うぞ」

 

「急に落ち着かないでよ……」

 

「……そういう事じゃないと思います、アルトお兄さま、ますたぁ」

 

 

 ティノはテーブルに突っ伏し、ますたぁことクライの方を向きながら恨み言を言っていた。そんな中でもツッコミをする辺り、彼女は間違いなくそっち側だろう。そういう方向にされたとも言える。

 

 クライに異議を申し立てているが、それが叶うことはない。なんなら身に余るような難易度が更に追加される。諦めるんだ、ティノ。

 

 

「……ちょっと用事を思い出しました」

 

 

 ティノが弾かれたように席を立ち、身を翻して駆け出した。外へ。動きに1秒もかかっていないのは、流石盗賊と言ったところだ。こんな所にも成長を感じる。

 ボーッとティノが去っていった方を見ていたクライが、無言でベルトに束ねて下げていた鎖を取り出した。常人よりも長いそれは、宝具である。

 

 クライが手にしているのは鎖型宝具のドッグス・チェーン(『狗の鎖』)

 

 記録すら殆ど残っていないほど太古の時代。その時代にいたある一族は特殊な術を使い、鎖を使っていたと言われている。生活の中の一部だったのだ。

 今となっては伝説であるが、『鎖型』(チェーンタイプ)の宝具は一般的。それらはかの文明の名残だと言われている。

 

 鎖が小型の狗の形を取る。名前の通り、狗だ。それに対しクライが顎で指示すると形を崩し、蛇のようにラウンジから出ていった。ティノを捕らえに行ったのだ。

 狗なのに走っていかないのか、という期待には応えられない。だって、どこまでいっても鎖だし。

 

 クライは満足げにしているが、あれをあそこまで躾けたのはクライではない。実は俺……ともう1人。嘆霊のメンバーだが、紹介はまた今度にしよう。当分会うことが無いからな。早く会いたいもんだ。

 

 

 

§§§

 

 

 

 鎖でぐるぐる巻きにされているティノが戻ってきた。とても不服そうな顔をしていたが、クライの前に来る頃には真面目な顔になっていた。

 

 

「一応言い訳しておきますと、ますたぁ。私は別に逃げることもできましたよ」

 

「うんうん、そうだね」

 

「ますたぁの鎖は確かにちょっと執念深くて疲れ知らずで厄介ですが、私なら壊すことは簡単です」

 

「ふふっ……」

 

 

 抑えきれず少し笑ってしまったが、気付かれずに済んだ。だってめっちゃ早口なんだよ、ティノ。表情と口が合ってない。

 

 ティノが言っていることは大体当たっている。あの宝具はマナ・マテリアルを吸収していない一般人なら間違いなく拘束でき、マナ・マテリアルを吸収している者でもある程度までなら拘束出来る優れものだ。

 これが宝具なのである。ただの銀の鎖とは違い、マナ・マテリアルからなる謎物質だ。

 しかし、それと同様にハンターは一般人と違う。とんでもない力を秘めているのがハンター。そのレベル4ともなれば、この鎖を壊すことが出来る奴も出てくる。ティノはそれに当てはまるのだ。

 

 ちなみに、 レベル3ぐらいまでならイーブンだと思われる。実際の所は分からないが。そんな実験してないし……その内やってみるか? でも個人差強いしなぁ。こういう実験は俺ではなく、うちのパーティメンバーの中の1人の領分だ。

 

 

「それでも私が壊さずにいたのは、ますたぁの大事な鎖を壊してしまえばますたぁに嫌われてしまうからです。そのあたり情状酌量の余地ありだと思うのですが、いかがでしょうか?」

 

 

 あざと可愛い仕草でクライに訴えるティノ。可愛い。可愛いんだが、ちらちら師匠が後ろに見えて素直に可愛がれない。

 しかし、あの鎖を壊せる、か。随分と成長したものだが、師匠の影響だろうか。盗賊なのに火力高くない? 盗賊の役割は戦闘より、索敵や罠看破、解錠などの特殊なものだ。

 だがまあ、ソロだし。全体的な能力が高くないとソロなんて出来ないからな。

 

 

「知っています。ますたぁが私達の成長を考えて死ぬ限界ぎりぎりを見定めて依頼を振っているのは重々承知ですが、スパルタは大概にして下さい。アルトお兄さまを見習って下さい」

 

「……うん? 僕は結構アルトをリスペクトしてると思うんだけど」

 

「……リスペクトする部分が違うと思います、ますたぁ」

 

 

 ティノが言っている今回の依頼は、普通にやばい依頼である。行方不明者の捜索。場所は宝物殿。今回の依頼を端的に言えばそれなのだが、まあやばい。

 行方不明者ということは、こちらに帰ってくる事が出来ない状態にあるということ。運が良くても対象者は大怪我をしているし、大抵は既に死んでしまっている。

 それ故に『骨拾い』とまで言われるが、極稀に生きている場合、運が良かった場合がある。しかしそうであれ、困難を極める。まともに戦うことの出来ない人を連れて行けるほど宝物殿は甘くない。

 

 この依頼での捜索する対象者は5人。3日前から不明で、普通ならラインは越えてしまっていると言えるが、可能性がない訳では無い。半々ぐらいだろう。

 報酬は最大で三十万ギール。ハンターとしてはゴミみたいな報酬金だが、それなりの金額。ここは大した問題じゃない。『罰ゲーム』になる要因ではあるが。

 

 ではその最大の問題とは何か。それは彼らの中にレベル5がいるという事だ。

 レベル5と言えば、ハンターの中では上位の仲間入りといったところだ。全体の七割程のハンターがレベル3で止まり、中堅と言われることを考えれば、十分才能のある怪物の1人だろう。

 そんなレベル5のハンターが帰ってきていないなど、有り得ない。まず間違いなくレベル6以上の事態が起こっているのだ。中途半端な実力のハンターを行かせても犠牲者を増やすだけだろう。

 

 

「うんうん。確かにティノの言いたいこともわかる」

 

「!!」

 

「アルトお兄さま……!」

 

 

 期待している様子のティノだが、残念な事にティノが望んでいるようにはならないだろう。そんな、今回こそはいけますよ! みたいにこっちを見られても、俺は何もしてあげられないんだ。

 

 

「一人では行きたくないと、そういうことだね?」

 

 

 少し訝しみながらも、その通りだと伝えるティノ。キョロキョロと辺りを見渡してクライの方を向く。

 

 

「ますたぁかアルトお兄さまが一緒に来てくれるなら――」

 

「あれだ。この間メンバー募集に来たハンターで、『白狼の巣』に行きたがってた人いたから、その人誘って連れていきなよ。ルーダって言ってたかなぁ?」

 

「……え?」

 

 

 

§§§

 

 

 

 ティノはマスターの采配通り、ルーダを含めたメンバーを探しに来た。後ろには俺がいた。まるで保護者のように立っている。ティノはうちの子です。

 探しに来たのは、探索者協会の帝都支部。目的の人物は直ぐに見つかった。その人物は近づいてくるティノに気づくと、浮かない表情を変え、驚いたような表情になった。

 

 

「な、何? 何なの? あ……昨日、クライと一緒にいた……」

 

「あー……ルーダだったか? ちょいと用事があるからここで待っててくれるか? 何か用事があったんなら多少融通するが」

 

 

 ティノはルーダを一瞥すると、さっさと次の人物を探しに行ってしまった。それだけじゃ伝わらないと思うんだが、本当に俺がいなくても集められたんだろうか。

 一応、知らないフリをしておく。昨日は直接話していないからな。いきなり馴れ馴れしくするのはあまり得意でないのだ。変な目で見られたくないし。

 

 

「え、ええ。特に早急の用事はないけれど……」

 

「なら良かった」

 

「あの、失礼かもしれないんですけど……貴方ってあのアルト・パレッド? 『変幻自在』の……」

 

 

 おそるおそる聞いてくるルーダ。恐れられるような噂は無いはずだが、昨日の事があったからか慎重になっているようだ。そしてその予想は正解している。

 

 

「そうだ。そんな二つ名を持ってたりするな」

 

「嘘……」

 

「まあその辺は全員集まってから質問してくれ。聞かせるなら全員一緒の方が楽だ」

 

 

 『変幻自在』とは、俺につけられた二つ名である。他のメンバーやハンター達の二つ名に比べてなんかダサい感じというか、ありきたり感は出ているが、俺は割と気に入っている。

 

 その後、淡々とメンバーを探し出して事情を話し、なんとかクランハウスまで連れていったはいいものの、ティノが挫折するまでそう時間はかからなかった。

 




 先日、久しぶりにスピンオフというか、外伝のあれ読んだんですが……ティノってほんとに不憫だなと思いました。
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