ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

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 お久しぶりです。
 最後に投稿してからそれなりに経ちますが、最近感想が来ていてびっくりしました。というか、今の今まで気付いていなかったのですが……とにかくありがとうございます。
 そして最新刊の発売もあったので、書きました。


8 腕試しとは

「見て下さい、ますたぁ。この柔軟性、お姉さま直伝です。どんな体位でもいけてしまいます」

 

「うんうん。何言ってるのかわからないけど凄いね」

 

「……あいつ、マジでなんて言って教えてるんだ?」

 

 

 百八十度開脚し、ぺたりと身体を床に倒してみせるティノ。昔は前屈しても地面に手がつくぐらいだったのに、随分と身体が柔らかくなったものだ。

 

 この柔軟性はハンターにとって必須と言ってもいいものだが、特にシーフ(盗賊)にとって重要な能力だ。

 戦闘の際だけでなく、怪しい場所や小道への偵察、その他シーフ(盗賊)ならではの行動に柔軟性はよく使われる。うちの盗賊担当なんかはタコやら猫やらを連想するぐらいぐにゃやれるが、あれはある種の例外ではなかろうか。人体の構造無視してるだろ……液体だった?

 

 さて、やってきたのはクラン本部地下一階にある訓練室の1つ。障害物などは何も無い、400メートル四方のただの広い空間だ。天井も5メートルあり、収容という形で使えばかなりの人数が入る。

 他にも訓練室はあるが、ここの特徴はさっきの通り何も無い空間だということ。まさにタイマンにうってつけという訳だ。

 

 

「舐めやがってッ……」

 

「一応、彼女レベル4だから」

 

「ッ!?」

 

「ますたぁ、私の情報を相手に与えるのはやめてください」

 

 

 ギルベルトがクライのその言葉に目を見開く。確かに、装備でハンターだとわかるが、それ以外の見た目だけならば、そこら辺にいる一般人と言って差し支えない。しかし、見た目で判断してはいけないのがハンターというもの。

 それに、華奢で身軽そうという事は、それだけ素早いともとれる。少なくとも一般的なシーフ(盗賊)はその例に漏れない。

 

 

「私なんて、ますたぁと比べたら塵芥……」

 

「僕はティノの中で一体何なんだ」

 

「そりゃあ……ねぇ?」

 

「え、アルト?」

 

 

 尋常じゃない持ち上げ方をされたクライが誰にも気づかれないレベルで震えていると、ティノが武器やアイテムポーチを端の方に置く。徒手空拳でいくらしい。

 

 

「殺さないように、手加減してあげる」

 

「あぁ……ッ!?」

 

「……彼女、大丈夫なの?」

 

「うーん……? 多分ね」

 

「大丈夫だ。ティノは結構強いぞ?」

 

 

 ティノの煽りにギルベルトが見事にキレて、それを心配するルーダにかなり雑に返すクライ。俺も便乗しておく。

 四者四葉の空気の中、ギルベルトも武器を遠くに投げ捨てた。いくら宝具とはいえ、もっと大切に扱えよ。いくら頑丈な宝具だとしても壊れるんだぞ。ついこの間、クライはぶっ壊されたばっかだし。

 

 

「ッ……素手の女相手に、武器なんていらねえッ!」 

 

 

 ギルベルトがまたキレてるが、それを気にかける者は誰もいない。強いて言うならルーダがチラチラ見ているぐらいだ。

 

 

「ますたぁと、アイス食べに行くー」

 

「そんな約束してない……」

 

「もう行ってやれよ。どうせ相手居ないんだろ?」

 

 

 皆に振られたら最後には俺のとこ来るんだし、たまにはティノを本当の意味で甘やかしてやれって。

 

 

「それはそうなんだけどさ」

 

「……あなたたち、緊張感無さすぎじゃない?」

 

「うーん、まぁでも、いいよ。依頼が無事終わったらね」

 

「! やったぁ」

 

 

 またもやバラバラの反応が起きた上にルーダはガン無視されたが、ようやく始まる。

 ティノがクライの言葉に喜び軽くステップを踏んでいたが、今まで纏っていた雰囲気と共に一転してギルベルトへ距離を詰める。

 

 流石のスピードと褒めたいんだが、その首元への貫手はもう殺しにかかってない?

 

 

「ッ!?」

 

 

 だが腐ってもレベル4。当たれば致命傷となるそれをなんとか回避する。完全に反応が遅れていたのに、よく回避出来たものだ。やはり最低限の実力はあるのだろう。

 しかし、その後の追撃は防御すら間に合わず、重い膝の攻撃を腹に受けて吹き飛ばされる。ティノの動きが滑らかになってきたというのもあるが、虚をつかれたのが後を引いていそうな感じはする。宝物殿だったら、残念ながら死んでるね。

 

 影の薄いルーダと、存在すら消えかかっていたグレッグが呆然と吹き飛ばされたギルベルトの方を見ている中、ティノはクライの方を向き、褒めてほしそうに微笑んだ。

 

 

「ますたぁ、見ましたか? 天誅です」

 

「ほらクライ、ティノの天使みたいな笑顔だぞ」

 

「これはむしろ悪魔なんじゃ……」

 

「ッ……まだ、まだぁ……」

 

 

 ルーダから的外れな指摘が俺に飛んできたが、クライは固まったままだ。おそらく何も考えていないだろう。もしくは現実逃避。

 

 吹き飛ばされたギルベルトが少しよろめきながら立ち上がる。流石にレベル4ともなるとそれなりの頑丈さがあるな。

 マナ・マテリアルを取り込んだ人間は通常の人間より強化されるが、ここまでいくと常人では全く叶わないほどに強くなる。骨肉や血液も変わってしまっているようだが、あくまでも人間ではある。

 

 また、マナ・マテリアルを利用した肉体の強化には方向性がつくことが一部において知られており、前衛職であろうギルベルトは攻撃力だけでなく、耐久力もある程度に鍛えられているのだろう。

 そう、やりようによっては攻撃面だけでなく、色んな耐性を付けられるのである。毒とか雷とか。

 

 

「わかってると思うけど、手加減した。首を折ることも出来た。これに懲りたらマスターに生意気な口を利かないこと。マスターを神と崇め、一日に三回クラン本部の方を向いて祈りを捧げること。私に定期的に貢ぎ物を持ってくること。私からマスターに渡す」

 

「ッ!!」

 

「……ふふっ」

 

「アルト今、笑った?」

 

 

 思わず笑ってツッコまれたが、無視する。ティノが煽るように発したとんでも内容を無視し、突進するギルベルト。ただ突進するだけでなく、その勢いで攻撃せずにティノの腕を掴みにいく。

 しかしその行動は読まれ、腕を軽く払われた後、側頭部に強烈な掌底を食らう。一般人なら間違いなく頭が物理的に吹っ飛んでいる。

 

 ギルベルトは数歩ふらつくとそのまま倒れ、立ち上がれない状態までもっていかれた。目の焦点も合っていないようだし、きっちり脳を揺らされたようだった。脳震盪でダウン、決着はついた。

 

 

「見て下さい、ますたぁ。私の成長を! ますたぁのおかげで、こんなに成長できました」

 

「ほらクライ。ティノがあんなにニッコニコなんだ、なんか言ってあげろよな」

 

「……」

 

 

 ティノはまたクライに報告しているが、グレッグとルーダは戦慄しながらも、それぞれ自分なりの分析をしていた。俺はクライに煽って圧を掛けているが、クライはまだ固まったままだ。

 

 

「強いな。ギルベルトも素手とはいえ、正面から剣士を圧倒……何より戦いに慣れてる。まだ十代でこれとは、恐ろしいというかなんというか……これが『足跡』の力なのか」

 

「素手での戦闘……経験ないわね。……後で教えてもらえないかしら」

 

「まだ、まだだ……まだ俺は、戦えるッ……」

 

 

 どう譲歩しても負けたというのに、諦めの悪いギルベルト。ティノはめんどくさそうにしているが、そこでようやく起動した適当なクライから適当な言葉が飛んでくる。

 

 

「ティノ、相手してあげなよ。勝利条件を決めてなかった。禍根がなくなるまでぼこぼこにしてやるといい。いい勉強になる」

 

「……あーあ」

 

 

 さすが、ハンターは殴り合えば友達になるとか本気で思ってるやつは格が違うな。大丈夫だとは思うが、死なないようにしといてくれ。回復めんどくさいから。

 

 

 

§§§

 

 

 

「ようやく、エンジンがかかってきました。これならば、依頼もうまくいくでしょう。さすがはますたぁ、惚れ惚れするような判断力……」

 

「相変わらずクライのこと好きだな……半分くらいあいつのせいだよな、これ」

 

 

 ボソッと言ってしまったが、割と確信を突いているのでは無いだろうか。

 というか、しばらくの間ボコし続けた結果出てきた言葉がこれとか、心折れるだろ。ほれ見ろ、ギルベルトの睨みつけが凄い。睨みつけ? まだ諦めてないのか。こうして見るととんでもない根性だな。

 ティノはティノでゴミとか虫けら以下を見るような目だけど。……これ、腕試しって名目だったような。

 

 その後もギルベルトは諦めずに立ち向かうが、その度にボコされる。剣を使えばと情けをかけられれば、強い反抗心を見せて無手のまま立ち上がる。剣を放棄しているとはいえ、なにがなんでも勝とうとする根性はやはり本物といったところか。

 とはいえ大勢が決してしばらく経った今、クライからありがたいお言葉が入る。

 

 

「もうその辺にしておいたら? 今回の目的は力量の確認だし、それはわかっただろう」

 

「……」

 

「君さ、今までのパーティ、自分から脱退したんでしょ?」

 

「ッ!?」

 

 

 そう話すクライは薄らと笑みを浮かべる。覇気を一切感じない、根っから脱力しているようないつもの雰囲気。まあ文字通りなんだが。

 そういう言い方するからどんどん勘違い? されるんだぞ。絶対に本人には言わないけど。でも安心してくれ。最低限、助けはするから。

 

 

「な、ぜ」

 

「僕にも覚えがあるからさ……実力に差がありすぎたんだよね。わかるよ。『嘆きの亡霊』の場合はーー見捨てたりしなかったけどね」

 

 

 ギルベルトは衝撃を受けた表情でクライの方を見たまま、微動だにしない。しかし、クライの言葉をどう解釈したのか、脚は震え始め、頬も引き攣っている。顔色すら悪くなってきた。

 

 

「今回のパーティはきっと君にとってもいい経験になると思うよ。思う所はあるだろうけど、若手同士仲良くやろうじゃないか」

 

 

 俺たちは互いに誰も見捨てなかった。誰かがどこかでミスしようが、何かやらかそうが、辞めたいなんて言い出そうが、見捨てず、共に戦ってきた。

 だからクライはずっと辞めたいって言ってるんだけど。まあ辞めさせるわけないよね。それぐらい、俺達には絶対的信頼と絆がある……と思っている。

 

 俺が勝手にしみじみとしていると、クライがカッコつけたようにギルベルトが投げた自身の剣……煉獄剣に近づいていく。そしてそのまま足で軽く触れると、剣から炎が渦巻いて出る。その光景は、様々な意味でまさに常識外のものだろう。

 

 

「へぇ……属性付与と攻撃範囲の拡張、か。単純だけどいい剣だ。大切にするといい」

 

「ば、ばか、な……使えるわけが、ないッ! 煉獄剣は……宝具だッ! 宝具なんだッ!」

 

 

 ギルベルトの狼狽え方はボコされていた時からは想像もできない光景。だがそれも致し方ないだろう。

 

 宝具とは様々な力を持つが、使ってみなければその効果は分からない。さらに言えば、どう使うのかも完全に不明。その道の専門家でさえ鑑定出来ないものは多く、こういった武器型宝具においてもそれは適用される。

 また、強力であればあるほどに繊細な操作が要求されるとも言われており、使い方が分からない上に操作も難しいとなれば、使いこなすにはかなりの月日がかかる。

 

 そんな宝具を足で触れただけで見事に操っているクライは、さぞかし化け物に見えるだろう。クライ本人にしてみれば、炎を弄って腕に纏わせたり、自分の背に翼みたいにして遊んでいるだけなのだがな。

 

 

「柄すら、握らずに……ッ、馬鹿なッ! そんなこと、できる……わけがッ……」

 

 

 機嫌が良さそうに笑うクライと、平然とギルベルトを見下ろすティノ。グレッグとルーダ、そして何よりもギルベルトは、その姿にどんな感情を覚えたのか。

 

 

「ばけ……もの……」

 

 

 クライの背に見える炎の影。それはさながら、亡霊が嘆き叫ぶようだったと、誰かが語った。




 久しぶりすぎて書き方忘れたので、なんとなくで書いてます。

原作の部分の、〜〜←の間のサブタイみたいなやつ       (正直少し見ずらい気もするんですが、正式なタイトルなので一応入れてるんです。でも無くても分かるからカットした方が見栄えも良いのではと思ったので聞いてみようと思います)

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