ストグリ世界を全力で楽しむ 作:ストグリメンバーその0
「こわっ! こんなの絶対怨念じゃん……あー、こういうの僕ダメなんだよ」
「そうだったか?」
「そうだよ。なんかこう、我が身に降り掛かってきそうな気がして……」
手渡された『白狼の巣』についての資料をぶん投げたクライ。顔が青ざめている。
白狼の森とここ、帝都ゼブルディアには因縁がある。かつてまだ帝都がここまで発展していなかった時代、この周辺は大規模な森林地帯だった。
そこに生息する魔物の固有種である『シルバームーン』という名の白銀の狼達は、多くのハンターによって徐々に数を減らしていき、そして絶滅した。
しかし、それから十余年。帝都の北西に残る森林地帯にある宝物殿に、血に塗れたその姿が出現するようになった……と、そんな内容の資料である。
「そんなに怯えなくても……」
件の資料をこの短時間で用意してきたエヴァは、軽く怯えるクライに半笑いで返す。
「よりにもよって歴史反映のタイプかよ。業が深いからなあ」
「弱肉強食と言えば多少は耳触りが良いが、ひとつの種を絶滅させてるわけだからな。こんな速さで宝物殿に反映されるなんて、フシギナモンダナー」
「宝物殿の出現法則なんて、まだまだ研究途中だからね……」
いくら宝物殿がマナ・マテリアルの溢れる地に出現するとはいえ、こんな歴史の浅いものを再現するのかと疑問に思ってしまう事もある。あれが影響してるのかもしれないが、そんなものは誰にも分からない。
ちなみに、宝物殿には今の所3種類あると考えられていて、1つ目はその場所とは全く無関係に出現するもの。
2つ目は、その場所の環境や特色を濃くもって出現するもの。
3つ目は、その場所に残された歴史を反映するもの。これらが現代において考えられているもので、『白狼の巣』の場合は2と3の複合タイプだろう。
「かつてのシルバームーンとの戦闘経験があるハンターの証言では、本物よりもだいぶ強化されてるみたいですね」
「今のあれは『シルバームーン』というより、ブラッディなんちゃらって感じだけどな」
「ははは……それで毛皮も残らないんじゃ、やってらんないね」
宝物殿に出現する敵、『
倒された『
ちなみに、元々いたシルバームーンの毛皮は現在とても貴重なものであり、かなりの値がついている。新たに手に入れる手段がこの辺りにはもう無いからな。
エヴァがクライの放り投げた資料を拾い、速読する。そんな事をしなくても内容は頭に入ってそうだが、思案する表情は結構真面目だ。
「しかし、この情報だとレベル3は地形や
「うーん。まぁ、大丈夫じゃないかなぁ。ティノも大概だし……いざとなればアルトもいるし」
「俺じゃなくてお前もいるだろ?」
「嫌だよ」
擦り付けられそうだったから擦り付け返したらマジトーンで嫌と言われてしまった。相変わらず宝物殿には潜りたくないらしい。まあ今回の場所は敵の強さって言われてるしな。
「よく、ギルベルトが大人しく了承しましたね」
「さぁ。ティノにぼこぼこにされて思うところがあったんじゃないかな。もしかしたら、エヴァが調べてくれた情報でかまをかけたのが良かったのかもしれないけど……」
クライはあの3人についての情報を集めるよう、知らない内に頼んで、その情報を聞いていたようだった。そうでなければギルベルトの事情なんて知らないだろう。特にクライだし。
「いやー、いい表情してたよ。才能がありすぎるのも困りもんだな」
「それ、あんま他で言わない方がいいぞ。死にたくなければ」
「え、何? なんで褒めたのに死ぬの?!」
クライは、自分の言ったことが一般的にはとんでもない煽りになり得ることに全く気づいていない。椅子から転げ落ちる姿が幻視出来るほどの、見事な狼狽えっぷりだ。
エヴァが呆れた目でクライを見た後、何も無かったかのように口を開く。
「更生させたんですか」
「え、んんっ……いや。言いたいことを言ってやりたいようにやっただけだよ。多少、鼻は明かしたと思うけど、正直こっちも更生とか言えた口じゃないしね」
さっきのが尾を引いているせいで声が震えて、いまいち決めきれてない。
「ふふっ……」
「アルト、今笑った?」
「わかりました。そういうことにしておきましょう」
「…………」
まあ確かに、更生なんて言うにはあまりにイカれた奴が多すぎるし、クライなんて不真面目の化身……とか自分で思ってるんだろうな。
でもたまに受けてるクランメンバーの相談とか、残っているハンターとしての実績とか、周りから見たら好印象だろう。適当なこと言って何故か上手くいくからさらに評価が上がるんだけど。
「そういえば、ギルベルト少年の持ってた宝具。あれ結構いい宝具だったよ」
「煉獄剣、ですか」
「使い勝手も良さそうだしな」
流石エヴァ。宝具の名前もすぐに出てくるな。1ジンバブエドルポイントを付与してあげよう。この世界じゃ俺にしか通じないかもしれないけど。
「いいなぁ、煉獄剣。売ってくれないかな……炎の属性付与と範囲拡張、もしかしたらちゃんと調べたら他にも効果があるかもしれないけど」
ここまで見ればわかる通り、クライは無類の宝具好きで、宝具コレクターだ。一つ一つとんでもない値段のする宝具を買っては集めている。
元々は自分でも自由に使えるってことから始まったそれだが、今ではかなりの執着を見せる。
莫大なお金と時間の代わりに身に付いたのが、ギルベルトの腕試しで見せた宝具の使用。宝具を遊びに遊び尽くすが故に、その宝具の仕組みや効果を限界まで知る。
結果として、初見の宝具でもわかりやすいものであれば簡単すぎるほど簡単に使えるのだ。そしてそれは、一般的な人間が見れば驚愕に値する、という訳だ。
「無駄遣いはよろしくないかと」
「いやいや、無駄じゃないって……」
「属性付与と範囲拡張でしたか? クライさん、そんな宝具何本も持ってるでしょう」
「……まぁ、属性付与と範囲拡張は、武器型の宝具としてはありふれたものだからね……」
クラン運営の要たるエヴァが無駄遣いを止めようとする。あの煉獄剣を本当に買おうとしたらかなりの値がつく。
そりゃあエヴァも止めるだろう。仮にそうでなくても止めるべきだろうな。俺は止めないけど。
ちなみに、宝具の購入の為クランの資金からちょろまかしていたりいなかったりするクライは、なんとか方向転換しようと無理やり話題を変えた。……穴埋めしようが何しようが、ちょろまかしている時点でアウトだ。早く借金返済しろよな……。
「……そ、それはともかく、もしよかったら……そうだな、今度甘いものでも食べにいかない? アルトもついてくるよ?」
「……それ、クライさんが食べたいだけですよね? あとアルトさんも忙しいでしょうからあんまり連れ回さないであげてください」
エヴァが核心をついたことを言い放ち、クライに完璧にぶっ刺さった。クライはしどろもどろになりかけながら、なんとか否定する。
……発言通りの理由だよな? 俺と出かけて食事するのが嫌とかそういう話じゃないよな? おかしいな、なんでクライを貫通して俺にまでダメージが。
「…………いや、そんなことないよ」
「……エヴァはなんて優しいんだ……今度新しいもの作るから受け取ってね」
「?! や、やめてください、シャレにならないですよそれ……」
この厳しさと優しさと激しさと楽しさの混ざった世界でエヴァの優しさ(と思われるもの)に心打たれた俺は、無償で新たな道具を作ってあげることにした。
エヴァは引き気味だが、喜んでくれるだろう。流石に今回はヤバいものにするつもりないし。なので嫌わないで下さい。あなたに嫌われたらこのクランで生きて行けません。
アンケートへの協力、ありがとうございました。決めるには早いですが、正直『嘆きの亡霊は引退したい』だけでもわかると思ったのでカットします。
原作の部分の、〜〜←の間のサブタイみたいなやつ (正直少し見ずらい気もするんですが、正式なタイトルなので一応入れてるんです。でも無くても分かるからカットした方が見栄えも良いのではと思ったので聞いてみようと思います)
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いる
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無くてもいい