それと、一応ここにも書いていおきますが掲示板部分の誤字誤変換は、余程ひどいもの以外は敢えて残したもので、訂正の予定はありません。
何故かと言うと、掲示板なので……。
ガチャン、軽い音を立て事務所の扉が開かれる。
「ただ今戻りました」
「お帰りなさ……」
顔を覗かせる少年にそう言いかけて、事務所で仕事を続けていた鳴無小鳥は、その目を丸く見開いた。
「ちょ、大丈夫ですか、翔意くん!?」
ふらふらとよろぼい歩き、青い顔で椅子を引く彼にそう尋ねると、少年は、なんでもないと言う風にその首を横に振る。
「や、体の方なんともないので大丈夫です。
どっちかと言うと気疲れですね。先生の勧誘にも失敗してしまったようですし」
花子さんの言葉と、容赦なくそれを消した翔意。
ショックを受けた直枝校長に、どう言い繕うと、気遣おうと、その表情は暗さ険しさを増すばかり、最後はいたたまれずに逃げ去って、今彼はここにいる。
「それより、これからショタおじの所に報告と質問を上げるので、いない時に返事が来たらその対応をお願いします」
「本当に、何があったんですか?」
まだ気遣わしげな顔の彼女に、少年が苦笑を漏らす。
「結界の不具合なのか、なんなのか。
今迄の個体の記憶を一部継承しているらしい、高Lvな花子さんが現れたんですよ。
強さ自体は大したことなかったんですが、その言葉を聞いた校長がショックを受けてしまいまして、殺した僕が何言っても硬化させるばかりなので、這う這うの体で逃げ帰ってきたってわけです」
「それは……翔意くんは大丈夫なんですか?」
「や、使い古された『アクマを殺して平気なの?』ですよ。なにを今更です。
ただ、このまま成長されると任せられる人が減るのと、敗北の記憶に大分心折れていて交渉できそうだったので、今回の件の報告と、封印或は、契約して使役魔にする許可は出るか、同じ事が起きないように対処する方はないか、その為の講習や必要予算はどの程度になるのか、その辺りを質問しようかとね。
寧ろラッキーと言うか、巧く行けば、足りない戦力を補填できますよ」
そう言いながらキーを叩く少年に、小鳥ははぁとため息を吐いた。
「翔意くん、緊張したり疲れたりすると口数が増えて早口になりますよね。
報告と申請は私に任せて、そこのラウンジで暫く寝ててください。
……これが終わったら、家まで車で送りますから」
「や、ですが……」
「なんなら子守唄も歌って差し上げましょうか?」
「……わかりました、少し休ませてもらいます」
彼女の被る、音無小鳥、引退した歌い手の背景を持つ仮面の影響なのかどうなのか、彼女は声に特化した力を持つ転生者である。その上力が、非常に不安定と聞いてた。
その感情や歌に込めた情感に応じ、彼女の声技は対象が不特定に変化したり、想定外の効果が乗ることがあるのだ。
肉体的には兎も角、精神的には彼はかなりクタクダだ。
こんな状態で歌われたらかなわんと、だから少年は両手を上げた。
「よろしい。じゃあさっさと出てってください」
その声に一つ頷き、片手で頬杖、もう片方を扉に風でも送る様にひらひらさせた彼女に、翔意は机に手を突き無言立ち上がる。
疲れている事自体は間違いではない。
それに報告自体緊急の案件でもなし、どうせ今からでは、今日の受付には間に合わない。
早朝にでも詳細を書き送るかと、翔意は明日の予定を数えた。
「なにか連絡があったら」
「ちゃんとこっちで対応できますから、安心して寝てなさい」
そうして最後に断ると、それが終わらぬうちにピシャリ、彼女の声がそれを遮った。
「……はい」
それほどまでに、自分は疲れているように見えるのか?
腕を組み、考えながら机を離れると、少年は奥の扉に手を掛けた。
一度振り向き、ジト目で眺める事務の視線に、扉を押し開く。
そうして扉をくぐると、奥の長椅子へと歩を進めた。
ぱたり、彼の手を離れた扉が自然に閉じる。
それを確かめ重い溜息、小鳥は机に突っ伏すと、クレイドルに立てた携帯を手に取る。
「鳴無です。今帰ってきましたけど、割と重症みたいです」
「……先生からの連絡通りか。
まぁ、ただでさえやり辛い相手に、あんなこと言われたらやりきれないよな」
電話の向こう、若い男の声がそう溜息を吐いた。
冨和頼三、直枝校長と親交を持ち、少年がその元を去ってすぐ、彼からの連絡を受けた栃木派出所の武闘派転生者だ。
いつもと同じはずの依頼と、その慣れた戦いの場で、
――そう、貴方はまた、あたしを殺すのね。
常とは異なり、自分を閉じ込める清潔な
何時も現れる“トイレの花子さん”とはまるで同じで全く違う、そんな彼女の言葉を耳にしてからこっち、少年の態度は常とは違うものとなっていた。
――いつも通り切り替えただけ。
自身ではそう思っていたのかもしれない。
けれど、けれども、少なくとも、長く思春期の生徒を相手にしてきた彼の同行者、城西中学校長の直枝には、いつものそれとは違う風に見えた。
だからこそ、彼自身あれほどまでのショックを受けたのだ。
人間ではない、そんな割り切りが産まれかけていた怪異の有様にではなく、その変化を目の当たりにした少年の姿に。
「直枝さんの事ばかりで、そっちは余り、気にしてない風でしたけど」
「無視してるだけで、気にしてないわけないさ。
まぁあれだ。衛宮士郎みたいなもん、つってわかるかな」
電話の向こう、物語の主人公を引き合いに出した青年に、小鳥は目を瞑って口元に指を置く。彼女は前世も今生もオタク分野にはあまり縁がない。
転生者の外見や、シキガミ、装備。
そう言ったモノに関わりがあるため、多少は知識を持っているが、それだけだ。
「……トラウマ、ですか?」
それでもやっと、答えをひねり出した彼女の耳に、受話器の向うから溜息が聞こえた。
彼女が前世を生きた世界、女神転生と言うゲームが存在した日本の2010年代は、
「俺達は災害組だから、そりゃあ、それなりにあるさ。
見捨てて逃げて、結局死んだりとかな」
その前に死んだ彼女には覚えはないが、転生者の中には、その災害の中息絶えたものも少なくはない。
そして、その中で自分の無力を噛み締めた者達も、また。
トラウマと、代償行為。
もう二度と、次は必ず。
魂に刻みつけられたその断末魔は強力で、積極的に終末に立ち向かう転生者の中には、それを原動力とする者も少なくはない。
「……」
「まぁ俺達転生者は変に強靭だし、案外明日になればケロッとしてるかもしれないし、それに、今の内にドロップアウトするなら、そっちの方が楽かもしれない」
「そうでしょうか」
「ま、どうしても今気に病むなら、少し子守唄でも歌ってやるんだな。
深く眠って変に反芻しないで済むように――小鳥ちゃんならできるだろ?」
「……、それは、多分」
沈黙、そして奇妙に言葉を濁すと、彼女はふうと息を吐きだした。
「取り敢えず、考えるのは先に仕事を済ませてからにします」
「そうだな、こっちも今日はこれからが本番だ。
……問題がありそうなら、仕事用の携帯に連絡を頼む」
そして切断音。彼女はスタンドに携帯を置くと、少年が消えた扉を眺めた。
.
.
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夢を見た。ずっと昔の夢だ。
あの頃俺は、親父や兄弟、俺たち家族を慕う者達と幸せに暮らしていた。
それは決して楽な日々ではなかった。
人々は今と比べて血腥く、獣そのものと言った風だったし、今のような便利な道具も、味の良い穀物も、多彩な娯楽もない。
人は晴雨に一喜一憂し、獣を恐れ、魔を懼れ、人同士僅かな実りを奪い合いう事も珍しくはなかった。
けれども、民の生活は少しづつ進歩し、実りを増して、それを手助けできることが俺は嬉しかった。
そうして敵と戦い退けながら、守るべき者達が地を耕し、広がって行くのを見守っていたのだ。
そう、奴らがこの……ガツ!。
.
.
.
.
.
――♪
歌声が聞こえる。意識が浮かび上がって行く。
「シュ……、…レバ………ナカノ…ゾズサ………ゲン」
薄目を開けると、少年の目に傍らに座る女性の姿が見えた。
気持ちよさそうに彼女が歌うその歌は、子守唄……ではない。
「金比羅石段、桜の真盛りチララララ……」
「なんで金比羅船船? なんで?」
そうパッと身を起こすと、傍らの彼女はあっと口元を抑えた。
「あー、おはようございます。調子はどうですか?」
「いや、なんで?」
寝起きの為か妙なテンションで問いかける翔意に、小鳥は困ったように両手の指先を合せた。
「その、子守唄でも歌おうかと思ったんですが、なんだか丁度いい歌を思いつかなくて。
なんでこの歌になったのかは自分でもよく判りません。
それより、体は大丈夫ですか!?子守唄としては効かなかったみたいですけど?」
その言葉に、少年ははっとして体を確かめる。
「いや、こっちは大丈夫みたいです。一寝入りしたせいか、だいぶ楽になりました」
完全に目覚めたか、彼は常の口調でそう答える。
不調は感じない。むしろ、妙に頭がすっきりしているくらいだ。
だが……。
「お世話になっておいて言う事じゃありませんが、未だそのパルプンテ、治ってなかったんですか?」
そして、ほっと胸をなでおろす小鳥に、溜息を吐く。
「もう概ねは狙い通りの効果は出るようになってます!まだ多少のブレはありますけど。
……ただ、その、味方に回復目的で状態異常をかけるのは初めてだから、結局睡眠の効果も出てないみたいなので、変な補助効果が出ていたりしないかなぁと」
確かに、女神転生の“睡眠”は行動阻害の状態異常で、作品によっては微弱な回復効果が在る場合もあるが、基本味方に掛けるものではない。
当然、味方に睡眠を付与する特技はなく、睡眠時専用パッシブを活用する為、反射耐性を利用する事はあるが、そんなものは一部裏ボス戦限定の極めてレアなケースだ。
勿論、彼らにとっての現実であるこの世界なら、自身に睡眠を掛ける事も可能で、睡眠時戦闘のパッシブの開発も不可能ではない気もするが……。
「取り敢えず、頭がすっきりしていることを除けば、特段変化はありませんが……。
一体、何を願って歌ったんですか?」
「んー、安らかな眠りの中、嫌な事を忘れ、明日また歩きだせますように、かなぁ?
歌い始めて直ぐ、目を覚ましちゃったみたいなんですけど」
そんな彼女の言葉に、再び少年は、自分の内側へと向き直る。
その心は奇妙に澄み
「うわぁ……」
口元を奇妙に歪めて、思わずそ口からそんな感情を漏らす。
泣き腫らした目尻も、頬を伝う涙の痕も、諦観に塗り込められた瞳も、感情の抜け落ちた声音も、あの花子さんの事はきちんと覚えている。思い出せる。
しかし、それで鬱向いていた彼の気持ちは、今やすっかり持ち直していた。
「……心配してくれてありがとうございます。
でもこれは、きちんと検証するまでは使わない方が良いと思います」
「そう、ですね」
元が常態異常特技と考えれば前者、込めた意思を思えば後者。
どちらともつかぬ効果にそんな感想を述べると、彼女はそう神妙な顔で頷く。
そうして帰路に就いた二人と、その頃外で戦っていた一人のの元に、山梨支部から今回の件についての返答が届いたのは、それから三日が過ぎた土曜日の午後だった。
巧く切れなかったので、今回は短めです
・東日本大震災と、2010年代の災害
幸運にも直接的な被害は受けませんでしたが、バイト先が停電区域のすぐ外だったので、材料が枯渇するまでの間、夕食難民を必死に捌くことになりました(をい)。
不謹慎な話かもしれないが、2011で命を失った転生者は少なくないだろう。
冨和もその一人で、2011で命を失い、そのトラウマもあって終末と戦っている。
もう沢山だ、二度とあんな思いはしたくない――これが彼の戦いの根源である。
翔意は東日本大震災で被災しなかったが、同じく2010年代の災害で命を失っている。
・金比羅船船
エノケンが歌って流行ったらしく、昔の人には割と有名な香川民謡。
金刀比羅宮に参る客が、お座敷歌で歌ったとされる歌。
エノケンが繰り返し歌っている冒頭部、
金比羅船船 追
廻れば 四国は 讃州 那珂の郡
象頭山 金比羅大権現
までは概ね共通だが、その先には様々なバージョンがあり、小鳥が歌っていたものはその一つ。このバージョンは民謡として採取されたもののようで、JASRACに登録されている久保井信夫の歌詞とは違うが、共通部分があり、難癖付けられるのは嫌なので、一応久保井信夫版の、楽曲コードを入れておく。
取り敢えず、久保井信夫版以外には、歌詞登録されている金比羅船々は見当たらず、この版の歌詞を歌っているものは、皆香川民謡表記になっていたのだが。
何故金比羅船船を歌ったのかと言うと、正直自分でもよく判らん。
原作知らん設定なのでアイマスの歌は除外限定で子守唄っぽい歌をと考えたのだがどうにも浮かばず、いっそ民謡とかガチ子守歌で…となった所でふと頭に浮かんだだけ。
まぁ合いの手入れずにゆっくり目で歌えば、少なくとも斉太郎節やじょんがら節、茶碗蒸しの歌や会津磐梯山辺りよりは子守唄適性は高いし、内容も話の流れに有ってはいる。
なお、別に小鳥の前々世が金刀比羅宮に所以がある悪魔と言った伏線ではない。
・
捕捉すると、障害の解除及び異能制御力の上昇により敵味方識別が可能になり、敵に補助効果が掛かったりと言うことも無くなっている。