運使い対無貌の仮面……VSメシア教会   作:十八

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サブタイトル決めと投稿とをすっかり忘れてて、更新時間一時間前に気付いたアホがここに居ます。
なので、タイトルは保留中……。



第3話-5

 

 直枝校長との連絡はあっさりと着いた。

 と言うのも彼は、先日の自身の言葉通りに、こちらに併せてスケジュールが開けられるよう、仕事を前倒しで調整していてくれたらしい。

 

「いえいえ、ここの所身体が軽くて、仕事も早く終わるし暇していたのですよ」

 

 受話器の向こう、そう事も無げに笑った校長と店の入り口で待ち合わせ、受付で関係者専用カードを作ってもらうと、一階奥レンタルスペースの一角、提携企業用会議室から、その奥のラウンジへ。

 その施設に驚く彼を促し、四人が待つ小会議室へと案内する。

 

「こちらが、花子さんへの対応、直枝先生への装備支給で派遣された原川弾さんとその助手の方々です。

 助手の三人は人間ではありませんので、常識が通用しないことをお含みおきください」

 

 仕事中とはとても思えぬチャラついた姿の男と、アニメか何かから飛び出たかのような奇抜な衣装の娘三人。

 四人を前に礼儀正しく困惑を飲み下す老人に、翔意がそう説明すると、サングラスをかけたままの男が、一歩前に出て右手を差し出した。

 

「原川弾です。主に使い魔の制作や、異能を用いた装備の制作に従事しています。

 今回は、提供する装備と花子さんの再出現を抑える器具類の説明、そして、記憶を引き継いだ個体の、契約による解放と昇華を担当させていただきます。

 ……翔意がお世話になっているそうで、お噂は良くコイツから聞いてますよ」

 

「良い噂だといいのですが」

 

 そう言って差し出された手を取る老人に、原川は、ニヤリ、その口元を釣り上げた。

 

「そりゃもうべた惚れですよ。

 今の今まで冨和君と、先生の指導教員争奪じゃんけん大会が催されていた位で」

 

「そう言えば冨和さんは?」

 

 冗談と思ったか、くすり口元を緩める校長の問いに、素知らぬ顔で翔意が溜息を吐く。

 

「途中合流できるようにと、敗けが決まった時点で飛び出していきましたよ。

 今日これから、装備の説明後、悪魔の出現地点を弱い方から順に廻る予定ですが、その最後の場所には、僕らでも全力で対処する必要がある悪魔が出現する可能性があるので。

 なので、それに間に合うように、特急で回って来るそうです」

 

「失礼ですが、皆さんほどの力をお持ちでも、対処が難しい存在が現れるのですか?」

 

「僕たち程度の戦力、この業界では然程珍しい存在ではありませんから」

 

「まぁ、現代人としては大分珍しいけどな。

 悪魔達も含めれば、掃いて捨てるほどに居る程度の戦力さ。

 逆に言えば、今地上に顕れている妖怪変化は、まだまだその程度でしかないって事だ」

 

 少年の言葉に驚き、視線で確認を求める老人に、原川は頷きそう続けた。

 

「そして、今後はその箍が外れ、より強い悪魔が地上に顕れるようになる公算が高い。

 で、まぁそれが、僕らガイア連合の根幹の理由の一つです」

 

「人々を、救う為にと?」

 

「いえ、俺達ゃ俗物で、聞かれてもそんな御題目知らんって言う奴の集まりです。

 ただ、でもだから、この現代日本の生活は捨てがたいんですよね」

 

「夜中に小腹がすいた時、コンビニが開いていて惣菜が並んでいる日常を守る。

 ――締まらない話ですが、まぁそれが、ウチのスローガンです」

 

 流石に、ネットノリの言葉を、そのまま口にするのは憚られたか?

 微妙に暈した二人の答に、老人はほんの少しだけ目を見開いたようだった。

 そうして、不意に優しい目をすると、ほんの少しの笑みをこぼす。

 

「ガイアの皆さんは、全員そんなに奥ゆかしいのですか?」

 

「奥ゆかしい、ですかね?」

 

 例えば、熊より恐ろしい怪物が、突然そこかしこに顕れる世界になったとして、その可能性に対抗しようとしている組織の掲げるスローガンが、これ、なのだ。

 つまりそれは、この社会を守ると言う宣言だと、校長は思う。

 

「ええ、コンビニの扉は、誰にでも開いているものでしょう?」

 

 誰でも夜出歩けて、小腹が空けば空いてる店がある世界。

 今現在の地球でも、実現している国が希少な日常を、彼らは守ると言っていた。

 

「あー、まぁ、見方によってはそうなるかもしれませんね」

 

 その余りに善意な物の見方に、原川は頬を掻いて視線を逸らす。

 素直に言葉が言えない捻くれた転生者には、この老人の言葉は余りに正しすぎた。

 気恥ずかしくなにか反論したいが、確かに内容はその通りなので何も言えない。

 

「実はね、私はMAXコ-ヒーが好きなんですよ」

 

「え?」

 

 そして、そんな彼の困惑を知ってか知らずか、彼は素知らぬ顔でこう続けた。

 

「もう若くないのだからやめた方がとよく言われるのですがね、こう、家族の目を盗んであの甘ったるいのをクイッとやるのが、文字通り蜜の味と言うか、辞められませんで」

 

 そう言って、二人に向かって片目を閉じる。

 小柄な老人がそれをすると、妙な可愛らしさと言うか、茶目っ気があった。

 

「こんな爺さんが混じるのは迷惑かも知れませんが、その日になったら誘ってください。

 私も、甘いコーヒー飲料で、祝杯を上げたくなったので。

 ……実はね、こんな立場ですから少し憧れていたんですよ、深夜のコンビニに」

 

 そう言って口元を緩める校長に、翔意の胸に微かな痛みが走る。

 ずくずくと、嵐の夜に古い傷痕が軋んだような。

 

「そう、できたらいいですね、本当に、楽しそうだ」

 

 終末を乗り切ったその先に、そんな日が来ればいい。

 仲間達と勝利の祝杯を上げる日が。

 

「なら、きちんと装備を整え、乗り切れるよう強くならなきゃいけないな」

 

 そう思ってほうと息を吐きだすと、それをかき消すように原川が言った。

 続けて口を開いたサングラスの、奥に隠れた目が細い。

 

「例の花子さんも、きちんと契約して育て上げてね」

 

「そうですね、なにしろ私は歩みだしが遅いのだから、その分も気合を入れなければいけません。薄暗い、トイレの外の彼女を見るのも楽しみですしね」

 

 また一人、参加者が増えたその未来想像図は、何故か鼻の奥がツンとする程幸せそうで、少年も二人に少し遅れてその口元を歪めた。

 

「それで、先輩は一体何を持って来たんですか?」

 

 そう言うと、原川の口元が悪戯に笑う。

 

「いいものだぜ、とてもな」

 

 そう言って、部屋の隅、布が被さった小山の一つを差して示した。

 いつの間のやら、そちらに移動していた三人娘が、かかった布を剥ぎ取る。

 

「え?あの、これはもしや……?」

 

 そして下から現れたものに、校長の目が混じり気のない当惑の色を見せた。

 偽装を考えたか、防具を兼ねたジャージの上下に、アクセサリの類だろう、腕時計が一つ。そしてその傍らに、どこかで見たような背負い型のタンク?と、それに繋がるホース、その先の銃器に似た形のノズル?が見えた。

 

「これは、ウチで最近開発に成功した、ドールバスターと言う機械です。

 オルゴンエナジー、平たく行うと魔力の様なものですが、それを収束・放射し、デッドリーオルゴン、つまりは、悪魔を構成する指向性魔力を攻撃すると言う武器ですね」

 

「え?実在したんですか?オルゴンエナジー」

 

 ポカンとする少年に、先輩はああと、少し困ったように眉根を下げた。

 

「オルゴンエナジーって言うか、生体マグネタイトだったけどな。

 生体マグネタイトの抽出封じ込め技術だったわ、オルゴンボックス。

 多分、生体エナジー教会のアレの前身」

 

 生体エナジー協会、デビルサマナーシリーズにのみ登場する、マグネタイト売買機関。

 怪しい宗教機関と目されていると聞いたが、もしや、ウィルヘルム・ライヒの死後も一定数が残っていた信奉者たちの機関だったのだろうか?

 まぁ、狭い箱の中で体にいいマグネタイト浴び続ければ、覚醒の目も十分あると思うが、すると、この世界のウィルヘルム・ライヒの死因は、この世界では早い時期に組織化し動きだしているメシア教会によるものだったのやもしれない。

 

「俺も、あんな単純な構造で封じ込められるとは思わなかったから、正直困惑したよ。

 翔意は霊視さんから聞いたのか?」

 

「まぁ、そんな感じですよ。

 しかし、動くかもとは思ってたけど、実際に機能するんですね、コレ」

 

 そう二人で話していると、直枝先生が困ったような顔でこう尋ねた。

 

「ええと、これは何か問題のある機械なのですか?

 何やら映画で見た事があるようなデザインですが」

 

「ああ、すいません。

 このドールバスターは、現在では否定された学説に基き製作された機械で、先生もご存じの映画に登場した武器のネタ元ですね。

 一部で実用されていたと言う情報があったので、検証したところ、実際に機能する事が判った為に、それをベースに我々の技術で改良を施したものです」

 

「……オカルト的なものなので、科学的ではないとされた、と言う理解で良いですか?」

 

「ええ、概ねは。

 性能面ではまだ改良が必要ですが、現時点でも実用に足ること、幾つか初心者に向く特性があることなどから、実戦テストも兼ね今回支給される事になりました」

 

「クラウドバスターに、そんな特性あったんですね?」

 

「ああ、チャージ時間は要るが基本弾切れは無いし、人への影響が少ないので、誤射の心配がない、集束を弄ることで攻撃範囲を切りかえれるから、敵に当てやすい。

 カバーしてくれる人間の前衛がいるなら、これほど扱いやすい武器もないだろ?

 性質上、幽霊やスライムには特によく効くしな」

 

「なるほど」

 

 元よりオルゴンボックスは、内部に居る人間をオルゴンエナジーで健康にすると言う趣旨の機械で、クラウドバスターも、悪いオルゴンを打ち消すものとされている。

 誤射の心配が無く、広範囲を制圧できる射撃兵装は、間違いなく初心者向きだ。

 

「取り敢えず、これを背負って構えてみて貰っていいですか?」

 

 そして原川の言葉に、ヒオとヘイゼルが機械を持ち上げ、先生の背後に廻った。

 タンクを背負わせノズルを持たせると、老爺の周りでてきぱきと、ベルト等を調整し、そのまま軽く動いてもらう。

 

「……意外と軽いのですね?」

 

「覚醒直後や、見えるだけの未覚醒者の使用を考慮し、重量には気を使っています。

 その分、敵の攻撃を受けたりには使えませんので、気を付けてください」

 

 そう言って、スプレーガンをごつくしたようなノズルに視線を落とした直枝に、原川は、この銃器の機能を簡単に説明していった。

 ノズルのトリガーを引く事で、オルゴンエナジーが放射される事、トリガー側面上の摘みで、安全、単射、連続の三つのモードを切り替えられる事、ノズルを掴んで捻ることで、噴射エネルギーの収束を変化させられる事……。

 

「……ア・タ・レのレバーを除けば、概ね庭の散水ノズルと変わり在りませんね」

 

「それと、タンク容量確認のメーターですね。

 最初は、範囲最大の連射モードでとにかく確実に当てる事を念頭に置いて、慣れてからは、敵の早さや強さに併せて、いろいろ試してみるのが良いと思います。

 人間相手に使う場合は、連射モードで収束を一番細くしてください。

 その状態であれば、相手を押しとどめるくらいはできる筈です」

 

 そうしてさらりと、対人の用法を口にする黒眼鏡に、老人はわずかに眉を顰めた

 

「人間、相手、ですか?」

 

 そこに、黙って説明を聞いていた翔意がこう口を差し挟む。

 

「悲しい話ですが、世の中にはこの世界を敢えて崩壊させることで、頂点に立とうと言う馬鹿どもが少なからず存在します。

 中でも最も警戒すべきその最右翼が、世界に終末を齎す事で逆説的に救世主の降臨を促そうと言う過激派テロ宗教、メシア教です」

 

「メシア教、ですか?本当に?」

 

 キリスト教の一派として、戦前から勢力を伸ばし続けていると言うメシア教。

 今やメジャーな宗派となっているその名に、校長の口から疑念が漏れた。

 

「彼らの表向きの教義は、もうすぐ黙示録が訪れるから、その際に降臨する救世主に帰依しようと言うものですが、それは表向きのもので深層はその逆です」

 

 そこに続けられた普段とは、明らかに熱量の違う言葉に、直枝は思わず一歩後退る。

 

「預言により、終末に救世主が降臨するのは神との契約で約束されています。

 ならば逆に、終末を起こせば救世主が降臨し、天国への扉が開かれる。

 今の世の人間は腐っているのだから、時計の針を早回しにして地上に救世主を降臨させよう――そう言った思想を持つ悪魔が中核……」

 

「……はい、ストップ」

 

 そう捲し立てる彼の前に、原川が遮る様に掌を差し込む。

 意識を確かめるようにひらひらと、手を動かす先輩に、翔意がハッと気づいてその口を閉じた。

 

「悪いね、校長先生。

 コイツの師匠や、周りの人間達が、メシアに滅茶苦茶やられてるんで」

 

 そして、時系列を弄った“事実だが本当ではない嘘”を口にする。

 現状、メシアスレイヤーとして師匠ポジにある霊視が、奴らに浚われて無茶苦茶やられたのは事実だが、二人が出会う前の話だし、周りの人間達、つまり栃木の霊的組織が滅茶苦茶にされたのもそうだが、そもそも翔意は彼らと一面識もない。

 

「それにぶっちゃけ、メシア教が今の忙しさの元凶ですからね」

 

 まぁ、今のデスマの原因のかなりの部分がそれなので、無関係と言う訳でもないが。

 憤懣やる方ない、そんな表情で告げる翔意に、困った校長が原川に視線を向けると、彼は肩をすくめてこう言った。

 

「……何も知らない一般信者は否定するでしょうが、メシア中枢が無茶苦茶なのは事実で、所謂第三世界の現地側ニュースを探せば、その所業は簡単に確認できますよ」

 

 そして絶句する彼に、翔意はこう言った。

 

「信じろとも、共に戦ってくれとも言いません。

 ですが、逃げる事、その為に武器を使う事をためらわないでくださいね。

 僕は、メシアに洗脳改造された先生を介錯するなんて、絶対にしたくないですから」

 

 

 

 




・例のファミチキ
 未来のネットミームを知らないものが聞いたら、どう考えても、今の人類社会を守ると言う奥ゆかしい宣言である。
 何しろ日本の社会と、そのサプライチェーンを維持できないと達成不可能なので。


・MAXコーヒー
 一部で知名度の高い超甘いコーヒー飲料。栃木は最初の販売拡大地域なので、地味に知名度が向上する以前から販売されていた。
 最初は、キャライメージ的に瓶の冷やし飴にしようと思ったが、当時の栃木県内だと割と買うのが難しい上、隠れてクイッが出来ないので、自販機で買えるマッ缶になった。


・ドールバスター/オリジナル?
 ウィルヘルム・ライヒが発明したと言う怪しい機械を、更に怪しいオカルトで改造した武器。見た目はゴーストバスターズのアレである。
 どこぞの小説の銃を思わせるが、ドールと言うのは元々ウィルヘルムライヒが提唱した概念で、元々クラウドバスターの事をドールバスターと呼ぶことはあったらしい。
 デビサマに登場するクラウドバスターは、買える中では上から二番目の弾数無限の特殊銃だが、こちらでは現実のアレが反映されているので、現時点のドールバスターは、対象のアライメントがN/Nから遠いほど効果が高く、肉体を持つ相手への威力が激減する低威力万能攻撃銃。


・オルゴンボックスと生体エナジー協会
 ウィルヘルム・ライヒが、細胞内の特定部位に着色してどうこう言う話があったのと、生体エナジー教会がオルゴンゴーストやクラウドバスターが存在するデビサマ世界限定の存在なので、オルゴンエナジー=生体マグネタイト。エナジー教会のあの柱=オルゴンボックス発展技術としています。


・メシア教会の出現時期
 真メガテン内のメシア教は、オ○ムの親類で、戦後の閉塞とオカルトブームに乗じ台頭した新々興宗教の一種。なので、戦前は活動してないどころか、そもそも存在しない。
 やる夫系のメガテンスレだと、過去から存在するような話が多いが、これはTRPG系列の設定なのだろうか?
 そもそもガイア教も、本来はメシアの非道に対抗すべく集まった現地土着宗教や、パイを踏みつぶされた犯罪組織なんかの寄り合い所帯だし。


・第三世界の新聞
 日本や欧米諸国のテレビ新聞は報道しない自由を行使しているだろうけれど、掲示板の話を見る限り、アジア、アフリカやアラブ連邦諸国では、新聞に載るレベルで無茶苦茶やってるだろうなと言う想像。多分、国会図書館辺りに行けば記事は見つかると思われる。

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