運使い対無貌の仮面……VSメシア教会   作:十八

26 / 32
二話続けて説明会、次回も修行回?予定
本当は今回で修行と言うか、山梨での出来事まで書きたかったのですが……


第5話-2

 

『……それは彼らが、替えの効く使い捨てと言う意味ですか?』

 

 冷えた声が出た自覚があった。

 そう、中村翔意は、その時のことを思い出す。

 

『あー、すまん、言い方が悪かったようだ。

 わしらは彼らを兵士と呼んでおるが、それは、兵役(・・)に因んでの事だ。

 少しばかり役務と退役の過程こそイレギュラーになったがね、中村君も、今の瀬川嬢の状態は知っているのだろう?』

 

 ガイア連合山梨支部星霊神社。

 その建屋の規模を思えば、或はここは布団部屋辺りを改装したものかもしれない。

 いつもの狭い密談部屋の中、彼の話に見慣れた面々が難しい顔で腕組みをした。

 

「終末対策と、その後の為の覚醒/戦闘訓練としての兵役。

 神秘/異界との接触、疑似ヴィジョンクエストとしてのその技能や能力の体感……。

 なるほど、1-2段、段階を飛ばして覚醒するに充分な経験ではあるね」

 

「加え、異界法則との接触による覚醒で、この世界の人間達の霊能を抑圧する効果も、ある程度緩和されるそうです」

 

 向うが開示した情報の一部を、そう総括した神主に、少年は頷きそう捕捉する。

 

「そうして、疑似俺らを創るってわけか」

 

「そこまで都合の良いものではなさそうでしたが。

 ある程度の“才能の芽”を外から植えつけられ、軽く霊能を封印されたLv1覚醒者を生み出せる、生み出していると彼らは主張していますね」

 

 封印を施しているのは、現段階で覚醒者が増える事は、それに対するメシアの反応も含め、混乱の元でしかないと判断した為。今は眠っているその力は、終末傾向が高まるにつれ自然に解けて行く――それが大使の言である。

 

「……元兵士達が仮面の影響を受けるなら、当然敵である糞メシアどもへの忌避や警戒も引き継ぐはずだ。

 内側からの封印で力が抑え込まれている事を、接触無しで見抜ける奴はそう言った権能を持つ天使でもない限り少ない。

 全体として、メシアどもに取り込まれる心配の少ない、潜在的戦力が増える訳だ」

 

「当然彼らは、元兵士の所在を把握していますし、訓練担当の仮面がいる時点で、自勢力に取り込むのも比較的容易……ケチが付け辛く歯止めをかけ辛いのが厄介ですね」

 

 翔意の言葉に、疵顔と事務職がそれぞれ見解を述べると、そこで再び一同は沈黙した。

 

「きちんと交渉して足並みを揃えられるなら、停戦と協力には賛成――と言うのが正直なところだね。“俺ら”だけで引き篭もるならまだしも、こうして組織が外に開けていくと、何をするにもマンパワーが足りなくなる」

 

「だがやはり、向う側の世界の目的が一番の難点だな、確認や制御の手段がない」

 

「……上昇する内圧の排気、ですか。理屈としては納得がいくものですが」

 

「封印された認知の爆発的漏出――神や悪魔が封じられ、認知の矛先が存在しない世界で、ペルソナのようにその力が人類に向く事すら抑圧された結果の、世界崩壊、ね」

 

 女神転生から派生したゲームに、ペルソナと呼ばれるシリーズ作品が存在する。

 セカイ系と言えばよいのか?大雑把に説明すると、神魔が現れない、或は、その力が極端に弱い世界において、人類の抑圧だとか集合無意識だとかが現実世界を侵食する事件に立ち向かう少年少女たちの物語だ。

 

「“俺ら”転生者が前世で生きていた世界は、認知汚染を受け狂ったYHVHにより、神魔も、認知の力すら封印され、神秘が現れなくなった世界」

 

 だが、それら事件はある意味、心の海(にんち)の力の逃げ道であるとも言える。

 そして少なくとも、ナンバリングタイトルに登場したYHVHや、アバタールチューナー世界のブラフマン等、真女神転生5において明かされた至高神の座に座す神々たちは、そう言った世界の枠組みを理解し、行動していたように見えた。

 

「だが、それは消え去ったわけではなく、人が繁栄すればするほど、行き場を失った力は増殖し、やがて封印を突き破ったそれは破滅的な形で噴出する」

 

 ――もし宇宙意志が自分を必要とすれば、また生まれ出でる事もあるだろう。

 

 真ⅣFでのその言葉が、なによりそれを表しているだろう。

 少なくともあの世界のYHVHは、あの世界群の枠組みを作った存在や、他の世界の存在などを理解していたように見える。

 仮にもそう言った存在が、自分だけの短絡的な勝利を希求するだろうか?

 より高位の存在や、コドクノマレビト事件に登場したような、外世界からの来訪者と思しき存在等に枠の外から殴られた時に、すべてがご破算になる可能性を無視して、破滅の時まで怠惰に安楽に過ごすという選択を。

 

「それを防ぐ為、向うのフィレモンやニャルラトホテプ、その他心の海に住まう者達は、召喚儀式に乗じ、呼び集められる魂に向うの心の海へのパスを繋いだ」

 

 自分一強に近い状況が認知の力の集合に繋がり、歪み狂ったYHVHの行いの結果が、あの物質文明世界であると言うのが、向うの世界のフィレモン、ニャルラトホテプらの結論で、抑圧された天まま膨れ上がる心の海の崩壊を防ぐ為、あちらの世界の魂をこちらの世界に大量召喚する力の働きに乗じた。

 心の海で繋がっている人の魂への干渉を、その住民達は逸早く知る事が出来たのだ。

 

「それが<大使>の言う、向う側の心の海の干渉理由です。

 そして、そのメッセージを受け取った者達が、心の海の受け皿を減らさぬように、この世界が出来る限り安寧に続くようにと作った組織が彼ら“黄昏の鋼鉄”だと」

 

 ギリシャ神話を編纂したヘシオドスの掲げた五つの時代区分において、最後にあたる今現在の歴史を鉄の時代と言うらしい。そして彼らは、終末、つまり鉄の終わりに立ち向かう組織と言う意味で、黄昏の鋼鉄(スチールオブドーン)”を名乗っているようだ。

 

「尤も、“俺ら”と同じで“彼ら”も力を持った個人の互助組織らしく、意識してそう名乗っているのは、組織の運営側に廻った一部だけだそうですが」

 

 実際、翔意にそう話した<大使>自身の顔も気配も、あまり好ましくはない風だった。

 自分はもう少し簡潔な方が好みなのだと。

 

「向う側の目的は、言わば安全弁の確保――どうにもやり辛い話だな」

 

「こちらにも、向うに未練を残している者がいない訳ではありませんしね。

 心情的には手助けしたいと言う人間も、間違いなくいるでしょう」

 

「しかも、こちらに隔意のある“彼ら”は少なくない。個人の集団で統制も効き辛い。

 そう宣言した上で、組織の利害は一致するので仲良くしましょう、ですからね」

 

 だがもし、開示された条件が正しいなら、ガイアにとっても、相手が固まっている方が都合は良い。

 今の組織が無くなったとて、こちらが強く大きくなるほど“彼ら”は増えるのだ。

 低くない確率で“俺ら”に思う所がある“彼ら”が、てんでバラバラに動きだしでもしたら、それこそこちらの対処能力が飽和する。

 

「こっちが握り返すしかないと判ってて、全部ぶちまけて来た、って事だろうな。

 ボーナスタイムは終わり、普通に付き合いわなきゃいけない相手が出てきたって訳だ」

 

 一方的な知識差による、有利に立ち回れた時間(ボーナスタイム)は終わった。

 今後は同じ領域で競り合う相手を想定し、考え動かなければならない。

 それまで腕を組んで黙考していた議員の“俺ら”がそう纏め、神主を見た。

 

「ま、時間を稼げば、後はどうにでもできるような鬼札でもない限り、隠し事はあっても、話の大半は本当だろうよ。

 ……さっき言ってた通り、現状は、手を握って探り合うって方針でいいんだな?」

 

「別にこっちは、権力が欲しいわけじゃないしね。

 ちゃんと会話出来て、面倒を分かち合ってくれる分には大歓迎だよ」

 

 そもそも立脚点が全く掠りもせず、言葉が通じない上に、通じる人を洗脳しようとする現代社会における存在悪“メシア教”と比べれば、構成員の主がこちらの一般人と言う時点で、普通に交渉できる競合他社でしかない組織が“黄昏の鋼鉄”である。

 

「それに、やりにくいのはこちらばかりではないさ。

 向うにしてみれば、常に頭を抑えられているようなものだろうしね」

 

 またあの組織は、性質上常にこちらの後追いで、構成員の能力もほぼ下位互換だ。

 潜在的数で言えば向うが遥かに多く、戦闘以外の才、或は、霊的なものを除く戦闘の才でこちらを上回る者もいるやもしれないが、圧倒的な個が集を駆逐できる世界観でこちらを無意味に締め付けられるほどとはとても思えない。

 今回の方針転換も、寧ろ向うが、暗躍でどうにかするのは無理だと悟った為だろう。

 

「向うのネガティブマインド(ニャルラトホテプ)やらが、こちらに余計なチョッカイを出さないかの警戒は必要だろうけど、現状は少し手ごわい競合他社が現れました、と言うだけの話だね。あと問題なのは、性質上メシア教内にも表れるだろう“彼ら”から、転生者や彼ら自身の情報が漏れないか、かな?」

 

 尤も、今現在の動きを見れば、その辺りは巧くやっているようだが、今後わざとメシアに情報をリークし、こちらにぶつけるなんてことも考えられる。

 そんな危惧を挙げる盟主に、政治家は笑った。

 

「手を取りながら足を踏みつける。まぁ、普通の外交だわな……。

 問題は、ウチでそう言う交渉ができる奴は、みんな既に社会的地位があって軽々しくは出向けねぇって話だが。

 後は仮面の元を探る為、向う側の作品のwikiを作った方が良いかなってくらいか?」

 

「そうですね、相手の作品名やその能力を見れば、対策もある程度見当が付くでしょう」

 

「ん、向うへの過剰な接触は藪蛇になりかねないから、とりあえず現状維持で。

 関係者は開示された情報を念頭に、交渉しつつ内偵を進める、で良さそうだね。

 ああ、向うの作品のwikiだけは作っておこうか」

 

「では、その雛形は事務班で作っておきます。公表は……」

 

「僕がするよ、薄れ始める向うの知識を連合員誰でも閲覧できる形で纏めた“向うのwiki”を創るって言えば、参加する人もいるだろう」

 

 

 

 






・密談部屋
 最初から神社全体を覆う結界を構築したり、既に霊的な処置が施されているだろう建物を全部回想するのは無理だろうと言う判断から、小さな空間に使い魔などを用いて簡易的な密談部屋にしている……と言う設定。



・覚醒と抑圧
 メガテン的には、覚醒その他はソウルの強さや魂が宿した悪魔のアレとかが重点です。

 その魂は輪廻していて、クズノハもスカウトや孤児を拾っての教育等で召喚師を増やしてますし、血統による技能や契約/能力の継承、技術の相性/素養等はあれど、基本神秘と遭遇、試練を打破し魂が磨かれればLvは上がる(※経験値的なLv限界は除く)世界観。

 特に才能とか特別な設定が無い人間が、結社のイニシエーションを受けたり悪魔との接触で覚醒して成長したりと言った話もあるし、主人公勢全員特別に才能あった面子だけで構成されてたんだよなんてのは不自然なメガテン作品はかなり多い。

 なので、もしかしたら最新のTRPGにはそんな設定があるのかもですが、

「メシアに血統を狩られたせいで低Lv環境になってるよ」

「現地人の多くは死ぬ目にあって打破してもレベルは全然上がらないよ」

 と言うのは個人的には不自然に思えますので、この話だと現代に近づくにつれLv上昇を抑圧する環境になっており、外世界の魂にはその縛りがないという解釈にしてます。
 終末進行でその縛りが緩み壊れるんで、徐々に弱まって行きますが。



・徴兵と予備役兵
 取り敢えず、悪魔に対する抵抗力を持つ、潜在的なメシアの敵を増やそうぜって話。
 問題はあるが、状況が状況、敵が敵なので非難し難い。



・YHVHの変質と暴走
 個人的なイメージではありますが、カオ転世界のYHVHはメガテンでの発言や行動とかなりずれているように感じられます。
 外世界、上位概念を認知する存在が、ああいった引き篭もりの選択を取るのかなとか。

 なので、この話のおけるYHVHの行動は、メガテン世界と比べ天秤が傾き過ぎた結果、認知の力が集中し過ぎて平衡を失った結果の暴走と解釈しています。

 また、カオ転世界自体も、神秘完全封印環境の1~2歩手前で分岐した世界なので、終末進行に伴い箍が緩むまでの間は、基本霊的なアレコレは抑圧された環境を想定。

 よりメタ的に言うと、やる夫系二次創作版YHVHと言う意味でもある(をい)。



・安全弁と世界崩壊
 ↑の項もそうですけど、

 蓋されたまま人口≒内圧が高まり続ける世界って、その内心の海が爆発しない?
 そうでなくても、YHVHのみが受け手だと分裂しそうだ……。

 と考えたのがこの話の大元です。
 ニュクスとかアメノサギリとか、ペルソナナンバリングで分割して出てきたのが、封印の枷で抑えきれなくなったところで一気にドカン!するか、ギリギリまで溜まった反動が個々の人間に跳ね返ってきて、人類社会がゾンビアポカリプスみたいになる想定。

 その前にYHVHが多重神格化し分裂したり、物質社会が極まった否定概念に押しつぶされるかして、結局多神教世界に舞い戻るかもですが。



・黄昏の鋼鉄
 “現地民”の“彼ら”による“裏ガイア連合”的サムシング。
 有利な状況から一方的に殴りつける話は好きじゃないので、こっちもメタ知識で殴りつけて来る系の組織を考えた。
 ガイアと比べると、質で劣るが潜在量で上回る組織。



・メシア教
 設定が増えるほどにクソ度が跳ねあがる組織。
 マトモな人もいて真面な活動もしてるって事実でもクソ度が上がる糞オブ糞。
 彼らは別のルールで生きているわけで、それって構成員全員がミリガン先輩(@七つの魔剣が支配する)って言ってるみたいなもんですからね。まずプロトコルが違う。
 ロシア対ウクライナとか、イスラエルのアレとか、川崎のクルド人発言とか見る度に、メシアは殲滅だーって感情が強まる今日この頃です。いやだわ、早く磨り潰さないと。



・向うのwiki
 こう言うのが作られても良いと思うのですが、作品に固執する人がいたり、やたら再現シキガミとか作られているのに、こう言うデータベースは見た事が無い気がする。
 本家や三次にあったら教えてください。確認して設定反映するんで。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。