運使い対無貌の仮面……VSメシア教会   作:十八

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追田りんな@仮面ライダードライブをモチーフの転生者は今まで見た事が無かった気がしますが、どこかにいたら教えていただけると有り難いです。


第5話-4

 通された部屋の壁の三面の、小さな窓だけを残し大きな本棚が塞いでいた。

 そこには海洋生物を主とした専門書群や書類ファイルがみっちり詰められ、入口扉の隣、端末のある机の上には、深海生物らしい奇怪な魚の写真が掲げられている。

 

 ――東映特撮ファンクラブ

 

 そんな生松氏の形容とはまるで印象が異なるその部屋に、二人は足を踏み入れた。

 

「貴方が、“義腕ニキ”こと中村翔意くんね。私は越田凛名(こしだりんな)

 あのイカレポンチどもの頭がすっかり煮だってるので、代わりの交渉を任されたわ」

 

 すこしやつれた白衣の女はそう言って、部屋の中央を手で示す。

 本棚に圧迫されたスペースの中心に、役所か学校辺りにありそうな、折り畳み式の長テーブル。部屋の主は、その傍らに置かれた簡素なパイプ椅子を二人に勧めた。

 それから少し恥ずかしげに書類とファイルの山を纏め、横にずらして小さなスペースを作っる。

 

「部屋が汚くてごめんなさいね。

 ただでさえ製造班の仕事に本業が忙しくて、部屋の中まで構う暇がないのよ」

 

 据わった目でそう言って電気ケトルのスイッチを入れると、自分用らしき虫?甲殻類?がプリントされたマグと来客用の無地の二つに、インスタントコーヒーの粉を入れた。

 自分用に、明らかに適量の倍は粉を入れている越田に、二人は眉を顰める。

 

「いえ、こちらこそ急にすいません。その、貴方もその……」

 

「どうしてもサブカル連中が目立つけど、あそこにはそれ以外にも沢山居るのよ。

 自分達で集団(サークル)を作れないものには、ああいう互助組織は便利だから」

 

 まず謝ると、次に言葉濁し尋ねた少年に、彼女は答えて壁の写真を物憂げに眺めた。

 自己紹介によると、彼女は元々海洋生物学者志望で、主に海洋探査へのオカルト転用を目的に、製造班に籍を入れたようだ。

 

「海とその生き物たちには、まだまだ未知の面が多いの。

 ……それなのに、今この世界には下手すると大規模絶滅(ビッグファイブ)並みの環境変動を齎しかねない終末が、目と鼻の先にまで差し迫ってるのよ」

 

 だから何を削ってでも、“世界の現在の目録”を0.1mmでも厚くし続けないといけない。

 彼女は泣きそうな眼で呟くと、はっと首を振って溜息を吐いた。

 

「……関係ない自分語りをしてしまってすいません」

 

「いや、俺も越田さんの気持ちはわかるぜ」

 

 何せ、終末が起きれば、いや起きずとも、今のメシアン台頭の影響だけでも、既に自転車業界は大きな影響を受けている。

 そう生松が慰めると、湿っぽくなる部屋の空気に少年は小さく咳ばらいをした。

 彼にも気持ちは判る。判るが、こちらにも時間を無駄にはできない理由があるのだ。

 

「ですが、何故越田さんが彼らの代理人に?」

 

 その疲れ切った様子に翔意が疑問を述べると、彼女は物憂げに口を開いた。

 

「転生者にはよくあることだけど、私はライダーの登場人物に似ているらしくてね。

 だから彼らから見て、微妙な立ち位置にいるのよ。

 それに余り近すぎない事もあって、中立な仲介役を頼まれたの。

 彼らにも、それぞれ推しや派閥があるから」

 

 加えて、自分なら同情を買えるとの打算もあるだろうか? 凛名は口中そう呟く。

 軽く深呼吸、ぴしゃり頬を叩くと、丁度沸いたケトルから三つのカップに湯を注いだ。

 軽くスプーンで混ぜ、開けたスペースにカップを運ぶと、自分用の大王具足虫の中身を不味そうに呷る。

 

「まぁ、私も貰うべきものは貰っているから、余り気にしないでね。

 それで、彼らからの申し出なんだけそ……」

 

 そう言って彼女は、机の引き出しから一束の書類を取り出した

 女神転生関係のゲームには、伝奇小説や漫画、その他アニメ等からの引用した武器や技、或は、一線おいてモチーフにしたものが山ほどあるが、その中でも最も直球なものの一つが巨大昆虫ボスが使う特技、ホッパージャンプとホッパーキックだ。

 ボス専用の希少なスキルを欲しがるものは、互助会にも数多い。

 

「……とまぁ、要は君の未確認の蹴り技(ライダーキック)のデータを取りたい。

 そのスキルカードを作ってほしい、その教導を引き受けたい、の二つだね」

 

 それから一通りの説明を終え、反応を待つ彼女に、少年は困惑した表情を浮かべる。

 

「僕が覚えたスキルの情報が、どこから抽出したのかはさておいて」

 

 恐らくは、情報流出についての調査に使ったのだろうがと、そんな事を考え乍ら翔意は腕を組む。

 

「データ取りは構いません……が、そもそも現状のアレは合体技の様なもので、僕はまだその特技を修得したわけではありませんし、今後できるとも限りません。

 習い覚えた所で、カード化は不可能かもしれませんよ?」

 

 戦闘後、解析情報を確認し、以後何度かあの蹴りを試したが、その結論は、現状では左腕(モノガミ)の力を上乗せして初めて発動可能な、所謂合体技の類だと言うものだ。

 サイコクラッシュの修得過程を見れば、今後の研鑽で、あの蹴りを単独で扱えるように成長する可能性はあるが、今はまだ断言できる状況ではない。

 

「それに、前提スキルのホッピングですけど、僕のは念動力の応用ですから、所謂仮面ライダーの様な、ジャンプ力に優れたシキガミでは覚えられない可能性があります」

 

 多くの系列作品に、属性や技への適性や固有特技等が存在するように、シキガミにもコアとの相性で相性で覚えられない特技は存在する。例えば、腕の無い式神に銃撃スキルをセットしても無意味なように、前提が必要な特技は結構多いのだ。

 

「オリジナルは身体能力で跳んでいた風なので、念動が無くても修練で跳べる可能性は低くないと思いますが、僕がしているような他段ジャンプは難しいでしょう」

 

 無論、素養によっては、応用的に使用可能になるものもいる――と言うか、翔意のスキルの方が、そう言った派生形の一つだ――が、念動補助による大跳躍の情報(カード)が、脚力で大跳躍する特技を覚える役に立つか?と言えば、かなり微妙に思えた。

 なので、彼の特技を十全に使いこなせるライダーを作り出す為には、サイ系魔法の素養を持ち、格闘戦向き/スピード重視の能力で、ライダーの外装への拒絶反応を起こさないコアに加えて、モチーフにもサイ系魔法への違和感がないと言う前提が産まれる。

 

「推しライダーによっては撤退したい人も居るでしょうし、まだ僕の訓練スケジュールも不透明ですので、一旦持ち帰った上で検討した方が良いのではないかと」

 

 そんな生真面目な答えを返す少年に、今迄ほぼ傍観していた生松がこう口を開く。

 

「だな、ここは一旦お開きにして、次の機会にした方が良いと思うぜ」

 

 仲介者として同行し、交渉相手が理性的だった為に、ほぼ口をつぐんでいた生松だが、少年が中断を望み、その理由に妥当性があるなら後押しはした。

 そんな二人の言葉に、交渉相手もまた頷く。

 

「確かに、それでもかまわないという結論になるとは思いますが、それは私が勝手にできる判断ではありませんね。……今後の連絡はどうすればいいですか?」

 

「神社に来る時は、概ね転車部に顔を出すと思いますので、そちらに伝言していただくか、或は、製造班所属で栃木派出所預かりの原川弾さんを通じ連絡をいただければ」

 

「了解しました。そう伝えおきます、恐らく二・三日中にどちからを通し連絡が行くと思いますので」

 

 

 

.

.

.

.

 

 

 

 二人並んで製造班等を出て、翔意ははぁと重い息を吐きだした。

 

「……何か、色々な意味で凄い人でしたね」

 

 特撮には、比較的時間の空く若手モデルやグラビアアイドル等が多く採用され、役者への登竜門になっていると聞くが、彼女が宿す仮面の元型もその類だったのだろうか?

 やつれた顔立ちと肉感的なスタイルに、鬼気迫る表情と覚醒者特有のオーラが重なり、今の彼女の姿には一種凄艶なものがある。

 そんな姿を思いだし――メシア滅ぶべし慈悲はない――翔意は自然、そう考えた。

 サブカル系開発班たちが、こちらの性格や交流を持つ仲介者等をリサーチした上で、彼女を交渉人に充ててきたのなら大したものだと、口元を歪める。

 

現在(いま)の世界の目録――か。

 確かにああいうのを見ると、背筋が引き締まる思いだな。

 かと言って、俺らに何かが出来るってわけじゃねぇんだが」

 

 そう答え天を仰いだ初老に向かい、口元を少し緩める。

 

「取り敢えず僕は、レベリングを前倒しできないか聴きに行く積りです。

 グループに割って入るのは無理なので、お供の使い魔の類を付けてくれるそうですから、今すぐからでも行けるかもしれませんし。

 ……無理なら、騎乗して使えそうな武器を見繕って、WildHuntと浅瀬で悪魔狩り(レベリング)でもしますかね」

 

「それなら役に立てると思うぜ? 銀輪騎兵での悪魔狩りは、ウチでもやってるからな。

 浅域で使えるお古の武器も、多分探せば見つかると思う」

 

「……いいんですか?」

 

 尋ねる翔意に、生松は薄く笑って片目を閉じた。

 

「なんだか今、無性に人の役に立ちたい気分なんでな」

 

 そう言って二人、事務棟に向かい歩くと、受付に座る見知らぬ事務員に尋ねかける。

 すると、前から打診があった通り、その準備は既に概ね整っていたらしい。

 

「……中村、翔意さんですね。確かに承っています」

 

 そう言って彼女は頭を下げると、バックヤードから一つの缶を取り出した。

 元は菓子折りらしきブリキ箱に、呪符だろうか? 和紙の短冊が貼り付けられている。

 

「どうぞ」

 

 差し出されたそれに手を触れると、貼られた短冊は燃え尽きたように灰と崩れ落ちた。

 それを見て頷いたのを見るに、どうやら特定の人が触れると解ける封印の類であるらしい。星霊神社と周辺施設にはほぼ転生者しかいないとうのにこれは、間違えで開いたら問題でもあるのか、それとも、なんらかの悪戯の類か。

 そう思いながら受け取ると、以上ですと、受付の女は頭を下げた。

 どうやら預っているのは本当にそれだけで、伝言の類もないらしい。

 

「……中に手紙でも入ってるんですかね?」

 

 そのまま二人で受付を辞し、端末のブースに移動する。

 そうして箱を開けると、中には付箋の付いた荒い人型の(シキガミらしき)木札と、一番上に無記名の契約書が乗った書類の束が入っていた。

 

「ふむ、こりゃ今日はお開きかな?」

 

 書類の束を見る生松氏にどうでしょうと首を傾げて、翔意はその契約書を手にとった。

 書面を見ると、契約書類はクダ――使い魔にされたという妖怪――の譲渡契約書で、その下には誰が作ったものか? 珍獣クダお世話マニュアルなる簡素なコピー誌があった。

 細長いイタチの様な動物が記されたマニュアルの扉には、契約を希望する場合、書類に記名した上で講習を受けに行く様にと、薄い鉛筆書きが記されている。

 

「戦力の拡充に、管狐との契約を斡旋するよってことみたいですね。

 こっちは今夜熟読すとして、今日は相棒とコイツを連れてレベリングですかね?」

 

 そう言いながら人形に着いた付箋を見ると、こちらは以前青木ヶ原にレベリングに言った際に借りたモノに似た、補助/回復型の簡易シキガミだった。

 魔法寄りの能力に、カジャ四種と申し訳程度の回復魔法(ディアとパトラ)、チャクラウォーク、唯一の攻撃手段?と言っていいのか?吸魔がセットされている。

 Lvもカジャ系を使い廻すのに最低限と言った風で、耐性こそレベルに比して優れているようだが、到底戦いの矢面に立たせられる使い魔ではなかった。だが……。

 

「いいな、この子」

 

「そんなに良いシキガミなのか?」

 

 呟く翔意に生松が訪ねると、彼は首を横に振った。

 

「いえ、能力的には凡庸だと思いますよ、Lvも高くはありませんし。

 ただこう言ってはなんですが、支給品のシキガミを僕らの速さについてこれる戦闘型にするのは難しいでしょうし、下手に戦って逸れるより、胸ポケット辺りで補助魔法を使ってくれる方がやり易いと思います」

 

 勿論、あの折鶴はとてもそんなものでは無かったが、アレはそもそも簡易ではなく、ショタおじその人のシキガミだろうから例外である。

 

「まぁ、Lv30近い速特化異能者が、自転車を駆ればそうもなるか」

 

「特に僕の場合、感知力があるので遠間からの奇襲を多用しますしね」

 

 そう続け、困ったように空を見上げた。

 彼の能力は比較的極端な特化型で、特技も単独戦闘に特化していると言っていい。

 今迄彼は、人手不足やレベル差等で意識する事が無かったが、今後は違う。

 現在育成段階にある蝉川や花子さんが成長し、連携する事になったらどうする?

 いやそれ以前に、冨和や原川、鳴無と言った同僚との連携を考えるべきではないか?

 

「どうした?」

 

「いえ、今迄は自分が強くなることに集中してましたけど、今後は周囲と合せる事も考えなきゃいけないなと思いまして」

 

 良くも悪くも時計の針は進み続けているのだから――そんな事を言う少年に、生松は顎をさすってこう言った。

 

「じゃあ良い機会だな。

 実はウチのみんなも、お前さんとWildHuntには興味津々でね。

 今日の狩りは、来れそうな皆に声かけて、異界をツーリングと行こうぜ」

 

 




体調は大体戻りましたが、咳が治りません。
……ハウスダストアレルギーとかじゃないよね?


越田凛名(こしだりんな)
 製造班所属の転生者、海洋学者の卵――だった女性。少しやつれた感じの美女。
 仮面ライダードライブに登場した女科学者、沢神(或は追田(おった))りんな/演者・吉井怜に似た姿と能力を持つが、性格は似ておらず悲観的。走り続けないと不安になるタイプ。

 やりたい事とやらねばならない事が一致せず、それを自覚する聡明さを持っていた女性。
 やらねばならない事でやりたい事に貢献できる分だけ幸せだとも言う。

 海の生き物、特に深海生物が大好きで海洋学者を目指していたが、仮面の影響か、内在する悪魔故か、主に設計開発製造方面に偏った才を持っており、その自覚もあった。
 在学中も、調査機材を工夫する時など、その能力を十二分に発揮していたので……。

 その為彼女は終末を知った時、自分が調査するより、役立つドローンなどを研究者達に提供した方が遥かに役に立つと割り切った。割り切ってしまった。
 彼女がガイア製造班にいるのはその延長である。

 また、調査機材の開発以外にも、援助した研究者からもらったデータや発表された論文等をまとめた学術データベースを自主的に構築、編纂して提供。研究やフィールドワーク等に貢献しており、その見た目もあって、一部界隈では女神同然に崇められている。

 抱え込む性格もあって、常に転生者の能力があって尚ギリギリのハードワークを廻しており、低性能な作業用使い魔を何体も併用しいるが、常に寝不足気味。
 時折疲れて足を止めると、悲観的になりめそめそしている。

 深海生物が大好きで、僅かな休息時間にはグソクムシやカブトガニなど、数少ない商品化された深海生物グッズを探し買い集めている。
 また、将来は深海生物シキガミを作って海洋調査し愛でようと考えているが、性格的に彼女が足を止められるのは……。

 二次や三次に余りいないタイプの転生者を多く出そうと考えキャラを設定しているのだが、そのせいで大体御労しくなるのがちょっとアレな今日この頃……。



・モチーフ
 悪魔絵師のデザインは好きだが、ワイはどうしても、ナタタイシがジェッターマルスだった時の衝撃が忘れられない。



・銀輪騎兵
 近年のEバイクの軍事利用への試みや、身体能力に勝る覚醒者、兵站の途切れた終末環境等を考えると、銀輪部隊の復活は大いにありなのではないかと思う今日この頃。
 なんとウクライナでは、電動自転車で戦車を撃破した例があるらしいですよ。
 ハンドルを掴んでいないと直進を保てない、足を挟んで体を安定を取るのが難しいという白兵武器を持っての騎兵戦闘時の難点も、使い魔関係で概ね克服できるしね。



・簡易シキガミ

 Lv12 魔>速型 火炎、状態異常に強い

 タルカジャ、スクカジャ、ラクカジャ、マカカジャ、
 ディア、パトラ、チャクラウォーク、吸魔

 新しい仕事に合せて支給された簡易シキガミ。木板を粗く人型に削った形で、平城宮で大量発掘された大祓の厄移し人形?を想像すれば大体あってる。
 チャクラウォークで回復しながら補助魔法を使い廻す想定で、Lvは最低限度のMPが確保できる程度で能力もやや極端な魔速型。耐性面はかなり優秀だが、これは、護衛対象の治療を行っている時にシキガミが狂わされたら困るという理由によるものである。
 なお、以前貸与された折鶴は彼を主するものではなく、任務終了に伴い返納されたが。こちらは翔意に譲渡されている。

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