運使い対無貌の仮面……VSメシア教会   作:十八

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一応、次回、次々回で1話とキャラ紹介編が終わり、その次から本筋に入っていく予定。
最低でも今月中は、週刊更新が可能な筈……。


第1話‐2 運と技能と

 砂利の上、まだ少年、と言った柔和な顔立ちの、大柄な青年の体が、二度、三度とぶれた。

 作務衣に似た胴衣の、袖が振られて大きく揺れる。

 連撃。黄色人種の肌を持つ右と、赤と黒に染め上げられた左。高回転の二つが、下半身の動きに併せ、連続して撃ちだされる。

 断続、躙られる砂礫が立てる微かな音を、空を斬り裂く乱舞がかき消していた。

 無酸素運動、廻せる限界まで廻した、と言った苦しげな表情。

 やがて少年は腕を止め、ぜぇはぁと荒く息を吐きだし、吸い込む。

 そうして息を整え、再び連撃。だがそれは、先のそれとは少しばかり毛色が違った。

 

 ――翔意(ショーイ)/(/)鬼神(モノガミ)腕術技能(ボックステック)発動(テイク)無酸素(アンエアロビクス)連撃(コンビネーション)成功(ヒット)

 

 先とよく似た連撃、しかし少しだけ振り回されるようで、力強い、それ。

 連なるそれを、最初の半分も持たせられずに、青年、中村・翔意は構えを解いた。

 ビクともしない左と違い、同じく振り回した右だけが、じんと痺れる。

 だが、手ごたえはあった。これならいけると、翔意はそう信じる。

 ……ふむん、鼻を鳴らして頷いた。やはり、と言葉を紡ぐ。

 

「理想を言うなら、常時発動(パッシブ)で動きを研鑽、実戦では手動(コマンド)入力、ですかね?」

 

 尤もそれは、スキルカードの正規の使い方ではなく、効率と負担を考えれば、馬鹿の所業でしかないのだろうが。

 常時発動(パッシブ)型と手動(コマンド)入力型。

 “シキガミ義腕の侵食について調べる”名目で搭載された、今の所彼の左腕(モノガミ)()のみ搭載された(ワンオフ)仕様は、結局お蔵入りになる方向らしい。

 まぁ、無駄すぎるシステムだからなと、そうニヒルに笑っ(カッコつけ)た原川を思い出し、苦笑。

 少年は、手の甲で額の汗を払うと、天を仰いだ。見上げる空は、抜けるように青い。

 

「……遅いなぁ、原川先輩たち」

 

 手術が終わって、はや三日。

 覚醒の効果か? 腕への適応を早くに終えた彼は、これから“原作の誼で知り合った”先輩転生者(ダン・原川)等と共に、悪魔達の巣“異界”へとレベル上げに潜るところだ。

 尤も、これが初の異界行となる翔意とレベルが10以上も上の原川では、全く強さも経験も合わない。つまるところこれは、義腕移植の売り込みで不特定の転生者に恨まれた節のある少年を、先達が気遣い、サポート役を引き受けたと言う事だった。

 それ自体はありがたく、世話になっている先輩にも、多少以上の恩義は感じている。

 だが……。

 

『先輩とは違って、僕はここに常駐できるわけじゃないんですけどね』

 

 そう口の中で呟いて、広場の奥に聳え立つ大きな石碑に目を向けた。

 ここは彼の地元ではなく、幾ら夏休みとは言え、滞在を続けられるのは二週が限度だ。

 翔意は既に、その半分強を、義腕関係のあれこれで消費している。

 郷里から離れた富士の御山の、地脈の沸きだし口に設けられた古より伝わる秘社“星霊神社”。

 彼ら転生者達の本拠とも言えるその大社の、ここは周囲に設えられた、訓練用異界の一つ。その入り口前の広場で、彼は人待ちの無聊を、体を動かし紛らわせていた。

 だがもうそれも必要ないらしい。

 何処か自分の体の外で、誰か、いや友人が、自分に触れたような、そんな気配。

 

「よう、遅れて悪かったな」

 

 髪を伸ばした一人の女性と、短髪の一人の少女。

 よく似た顔立ちの二人の金髪を引き連れ、伸び放題の黒髪を襟元で括った黒丸眼鏡(サングラス)の青年が、砂利音を立てる。

 

「おはようございます、お三人方。

 まぁ、気にする程ですけど、気にしないでください。

 こっちのことに付き合ってもらってるわけですし……」

 

 それにそう応え、翔意はペコリ、頭を下げた。

 

「おはようございます、ショーイくん」

 

「おはようございます、ショーイさん」

 

 苦笑を浮かべる男の左右、良く似た優しげな顔が二つ、笑顔で頭を下げ返す。

 ヘイゼル・ミリルドルフと、ヒオ・サンダーソン。一見、人間の姉妹にしか見えない彼女らは、ガイア連合――彼らの所属する転生者達の互助組織――の特殊技術で作られた一種の使い魔(シキガミ)だ。

ダン・原川に付き従う二つは、大きい方のヘイゼルが家庭より、小さい方のヒオが技術寄りの構築で、共に戦闘能力を持っていた。

 性能自体は、まだ技術班がシキガミを創れなかった頃の品であるヒオの方が、ある程度技術を確立した後、原川が出来る限り自分の手を入れたヘイゼルよりもずっと高く、製造時期の差から、レベル差も似たようなものとなっている。

 今、原川が計画してる、完全手製のレーラァは、恐らくそれより低性能になるだろう……と、まぁ、それは余談なのだが、それはそれとして。

 

「あー、原川先輩、幾らシキガミったって、その服装はあんまりじゃないですか?」

 

 そう言って翔意は、目の前の一番小さいのを視界から外した。

 原川はまぁいい。何やら変なアーマーの付いた黒いコートに、槍の様なものを肩に担いでいる。コスプレじみた服装だが、体格が良いせいか妙に似合って見えた。

 ヘイゼルも、まぁ許容範囲内だろう。

 立体裁断の黒いボディスーツ?に、パーツを強調する乳袋装甲や膨らんだ袖等のパーツを付け、前開きのワンピース?のスカートのみを着て、上は腰から下げた様な、良く判らない、奇妙で動き辛そうな服を着ているが、露出は少なく、生地も厚い。奇異の目以上では見られないだろう。

 だが、残るヒオ、最も幼い外見をした彼女の装備は……。

 

「……いや、その点については俺も反省してる」

 

 あからさまな軽蔑が籠る後輩の視線に、原川は視線を逸らすと、顔を隠すようにして眼鏡のブリッジを中指で押し上げた。

 一番近い衣服を上げるなら、バニースーツだろうか?

 黒タイツの上に、襟元がセーラー服の様になった青と白のレオタードを着ており、しかもその各部には、スタイルを強調する形で、金属のプレートが取り付けられていた。

 明らかに、コスプレの上に、エロが付く格好だ。

 白昼堂々街中を歩けば、職務質問――いや、補導か――を受けるのはまず間違いない。

 

「一応、言い訳をしておくと、その服は本来、金具に装甲パーツなんかが付くものでな」

 

「ああ、もしかするとこれも、原作再現の装備ですか?」

 

 先輩の話によると、これはインナースーツの上に、戦技やポジションに応じた追加装備や装甲パーツを付けるタイプの戦闘服らしい。

 ところがヒオは、モデルがパイロットと言うか、非戦闘員と言うか、そう言った風なので、その装備は基礎部分のみで、オプションや装甲は着いていないそうだ。

 せっかくだからと、原川はオリジナルデザインに添ったスーツを作り、実際に着せてみた所で、そのヤバさに気付いたのだと言う。

 

「じゃあ、なんでその装甲パーツを創らないんですか?」

 

「お高い素材が偶然手に入ってな。そのテンションで作ったんだよ。

 だから、その薄着で戦いに出せるんだが、おかげで普通に手に入る素材だと、な」

 

「デッドウェイトにしかならないと」

 

 俎上の少女が頬を赤らめ、もじもじと身をよじる中、男二人は顔を見合わせ、はぁと溜息を吐きだした。

 

「しかし、幾ら好きな作品ったって、良く服飾まで細かく覚えてましたね?」

 

「人によって差があるけどな、概ね霊感が強い方が細かいところまで覚えてるらしいぞ。

 だから、所謂サイコメトリ的に、魂の過去を読み取ってるって説もある。

 むしろ、サイキッカー的能力持ちの君の方が、覚えがあるんじゃないか?」

 

「そう言えば学校の勉強とか、割と端っこの方のデータなんかも覚えてますね。

 前世じゃ、そんなに記憶力に自信がある方じゃなかったんですが」

 

 少女を見ないようそんな話を一頻り、なんとなく二人同時に、異界の入り口を見た。

 

「そろそろ行くか」

 

「そうですね」

 

 二人肩を並べて、砂利の広場の奥、目指す異界の入り口へ。

 雲がかかった月と太陽、そして三面六臂の像が刻まれた大きな石碑の前に立つ。

 

「……青面金剛、随分デカいですけど、道祖神、岐の神ですかね。

 これだと、異界の悪魔を遮ってるようには見えないですけど」

 

「遮ってるのは両方(・・)らしい」

 

 そう言って原川は、石碑の台に昇って、浮き彫りに手を掛けた。

 そのまま強く押しやると、腕、肘、肩から体と、男の姿が石碑に飲み込まれていく。

 ちょいちょいと、残った左でこちらを手招き、そのまま消えた彼を翔意が追うと、少しばかり滑った感覚、エアカーテンに似た抵抗を突き抜け、その向う側に躍り出た

 付きすぎた勢いに、多々良を踏んで足を止め、行く手を警戒する原川に片手を上げる。

 そうして振り替えると、彼らが出てきたのは石造りの通路の行き止まり。

 余り広くはない通路の終端の壁には、石碑と同じ青面金剛の浮彫が見えた。

 続き突き出た少女の手に、慌て石壁の正面を避ける。

 慣れているのか、ヒオはすぐ飛び出して原川へと駆け寄り、直後に最後の手も続く。

 何とはなしに後続を待つと、突き出すそれが二の腕を過ぎたあたりで、にゅっと姿を表す乳房の胸当て。翔意はぎょっと、二歩後ずさり、原川達を振り返った。

 気恥ずかしさに、無言、壁を背にする二人に寄ると、待っていた男の手が、お先に、と言う様に掌を示した。そうして口を開く。

 

「見ての通り、ここは二人三人と並んで戦うには狭く、廻り込みも考えなくていい。

 部屋や分岐は幾つかあるが、悪魔の総数が少ないから、不意打ちなんかも滅多にない。

 歩いて戦うのに慣れる為に調整された、初心者用の異界だよ。

 ……その分、広さのわりに敵も少ないし、Lvも最低で実入りはほとんどないがな」

 

 何しろ本当に、駆け出しが試しに一回、行くか行かないかと言った場所で、余りに不人気なので、確認と間引きの依頼が小遣い銭程度で常設されているらしい。

 特技を持たない覚醒者が通いつめたりする事もあるようだが、そんな事をするくらいなら、シキガミを借りるなり、先輩覚醒者に頭を下げるなりした方が効率は良かった。

 

「戦力的には足を運ぶ必要はないんだが、君もその腕も、まだ実戦経験がないからな。

 データ取りの都合もあって、今回はこの異界を探索してもらう事になった」

 

 原川がそう言うと、追いついてきたヘイゼルが、どこからかヒオが取り出した大きな複合センサーを手に取り、担ぎ上げる。

 

「精神的な問題や、腕の設計ミスでもない限り必要はないとは思うが、何かあった時のフォローはする。大船に乗ったつもりで好きに試してみてくれ」

 

 入れ替わりでヒオが殿に、121と列に並ぶと、翔意は一つ深呼吸。

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

 緊張の面持で、一人と二体にそう告げた。そうして歩きだす。

 カツカツと、閉鎖空間に反響する湿った石畳を打つ靴底と、僅かな機材の稼働音(ハムノイズ)

 それからしばらくは、会話の一つもない、息詰まるような沈黙が続いた。

 人肉を覚えた野獣が練り歩く、逃げ場の無い空間――概ねそんな認識の場所を、駆除を目的に歩いているのだから、挑む彼の緊迫も当然と言った所か?

 ある程度場慣れすれば、気の抜き方も覚えるだろうが、そもそも翔意にとって、これは初めての異界攻略(ダンジョンダイヴ)。自称通りに、痛がりの面を持つ彼にしてみれば、警戒が足りない可能性は考えても、し過ぎると言うのは考慮の外なのだろう。

 そうして歩く事如何程か?

 

『――流石に一息入れさせるべきか?』

 

 原川がその判断を下す直前、ふと先頭を行く少年はその足を止めた。

 異界の特性によるものか?真直ぐ続く見晴らしの良い筈の空間は、遠くが霞ぼやけて、残る三人の目には、まだ何も見えない。

 しかし、翔意は壁に身をよせじりじりと、徐々に徐々にと、先へと進み行く。

 そして、薄暗い道の行く手に小さな影が覗くや否や、その体は低く沈み込んだ。

 

 ――翔意(ショーイ)体術技能(ジムナテック)/ホッピング・重複発動・跳躍射出(ロケットスタート)成功(ヒット)

 

 ヘイゼルの担ぐ機材に電子音。鬼神(ぎわん)のカバーに空いた渕穴(ブチあな)に、差し込まれた無線センサーから、発信さ(おくら)れたデータを着信し(うけとっ)たのだ。

 そして射出――放出された念の推進力に、文字通りに跳ね飛んだ大柄な体が、地面スレスレを跳び駆ける。

 あたかも、世界有数の短距離選手の如くのストライドに、それをも勝る速さ。進む少年の姿には、大きなレベル差を持つ原川をして、早いと感じさせるものがあった。

 

「バッカ、あのやろ!」

 

 金持ち喧嘩せず、ではないが、世の中、真に強い者程鷹揚で、弱い草食動物程苛烈、とは聞く話だが、或はこれは、彼の痛がりがその影響を最大限に発揮した過剰反応か?

 護衛達の視界の中で、護衛対象の姿が瞬く間に小さくなっていく。

 同時に電子音。

 一瞬の意識の空隙、極々僅かを置いて走り出した三人の傍で、再び機材に着信があった。

 

 ――翔意(ショーイ)体術(ジムナ)/(/)格闘(サバット)技能(テック)・重複発動・突撃(チャージ)成功(ヒット)

 

 背を追う3人を尻目、翔意は寧ろその足を速めつつ、左の義腕へそう念ずる。

 そして、一足一刀――もはや目の前で、粘液塊の中の、荒く人の形を残した肉と骨とが蠢く。

 その段になってようやく、悍ましい姿をした悪魔は、接近する豪速に気付いたようだったが、それは既に手遅れだ。

 

『――奇襲成功(トラトラトラッ)!』

 

 抑圧からの開放、体を満たす昂揚感。

 柄にもない思考が頭の中を駆け抜け、翔意の口元が、知らずニヤリと吊り上がった。

 踏み切り、最後の跳躍、威力の集約された足が、いっそ優美な弧を描く。

 命中、バシャンと、大凡肉と肉とがかち合ったとは、とても思えぬ音がした。

 粘液塊が、中の骨肉ごと弾け跳び散る。

 そして同時に、みしりと、振り抜いた蹴足の真芯に、鈍い痛みが走った。

 スライム――非物質(アツィルト)界からの顕現時に器の形成に失敗、融け崩れた肉体で出現した悪魔。

 それが今、彼が文字通り蹴散らした敵の名だ。

 攻撃魔法に代表される属性攻撃。それらの干渉に非常に弱く、力も、原型と比べて遥かに弱い彼らだが、その半形成の肉体故か、物理的な攻撃には比較的弱くはない。

 むしろ、逆に強い事すらあった。

 Lvにしても、覚醒したばかりの翔意と比べ、最低でも互角かそれ以上と、相対評価であれば、決して弱い存在ではない。

 それを、技能補正があるとはいえ、一撃で消し飛ばしたのだ。

 そんな負荷のかかった足が、全く傷まない筈はなかった。

 

「ウシ!」

 

 突撃の、奇しくも同名特技を放ったかのようなその威力と反動とに、翔意はその顔を確かに綻ばせる。尤もそれは、足からの疼痛に大分歪んではいたが……。

 

「馬鹿っ!ヨシじゃねぇ! ヘイゼル!コイツの足にディアだ!」

 

 まず追いついた主の言葉に、最後に着いた大きな妹(ヘイゼル)が、先行する小さな姉(ヒオ)に担いだ機材を投げるように手渡した。その勢いで、馬鹿の足元にしゃがみ込む。

 

「ディア!」

 

 間髪いれない祈願文(コマンドワード)。彼女の手元で弾け、足湯の如くに患部に沁み込むその光の温かさ。

 大馬鹿者がほうと一息入れると、和らいだその頭を先輩の手が軽く叩いた。

 

「ほう、じゃねぇよ。なんでこんな危険なことしやがった!」

 

「や、位階(Lv)は同じか向うが上ですし、普通にやる方が危険じゃないかと。

 多少HPが減っても、先制で噛ました方が、危険は少ないと思ったので……」

 

 呑気な様子で答える少年の、その言い分に、原川の顔が酢を呑んだようになった。

 

「それに、せっかく先輩達が着いててくれるんですから、元気な内に色々試した方がお得でしょう? 破れかぶれで試すのは危険ですし」

 

 確かに、その理屈は合っている。

 

「……しかし、実際に試してみると、いやぁ、流石にこれはHPも減るってもんですね。

 HP消費型特技って、こういう感じなんでしょうか?」

 

「……ッ!」

 

 しかし、致命的に割り切りが良すぎるその言葉に、男の舌がチッと音を立てた。

 

『……そういやコイツ、痛い思いは避けたいって理由で自分の腕落とす馬鹿だった!』

 

 付き合いが増えるにつれ忘れていたが、危うい面があることは最初から分かっていて、だから過保護なショタおじ(・・・・・)は、この異界を最初の探索先に指定したのだ。

 

「そう言うのは、まず鬼神で試せ。何のための物理耐性だよ!

 ……あんまやり過ぎるなら、スキルカード切り替えを凍結するぞ?」

 

「出来ればそうしたかったんですが、ほら、スライムって……」

 

 翔意は困った顔でそう答えつつ、腰元の中空を掌で撫でた。

 先に駆除したスライムもそうだが、極端に位階が低い悪魔は、概ね体が小さい。

 環境的な問題で大きな器を構成するのが難しい様で、逆に終末に差し掛かれば、ほとんど普通の生き物と変わらぬような、最下位の獣系悪魔が大量に現れる可能性もあるそうだが、現状の世界でそう言ったモノが現れようとしたら、元からあった器を利用するか、或は今倒したようなスライムになる他ないらしい。

 

「あ、そうか、そのサイズだと武器無しは、蹴るかカウンターしか有効打がないか」

 

 某・レジェンドレスラー対レジェンドボクサーの異種格闘試合ではないが、純粋なリーチの問題で、スライム相手に獲物が素手や短剣では、腰が引けたような攻撃にしかできない。

 

「初期武器のヒーローとかって、どうやって玩具みたいなナイフで悪魔を切り刻んでるんですかね?」

 

「……まぁ、ゲームだからな」

 

 身も蓋もない結論を出し、顔を見合わせ溜息を吐く。

 

「まぁ、あれだ。試しも済んだなら、後は普通のやり方で戦ってみろ。

 左手で受ければ、大概の攻撃は軽減できるんだ。

 後、2~3体も倒せばレベルも上がるだろ。次に試すのはその後にしとけ」

 

「了解しました、先輩。

 ……ここ、思ったより広いみたいですし、後はちゃちゃっと進みますか」

 

「いや、調子にはのるなよ。慎重過ぎるのも不味いが、不意に一発くらって思考が止まったりしたら、それこそ死ぬぞ?」

 

「あー、今のスライムで、なんとなく感覚がわかったんで、多分この位のレベルの悪魔なら、次はそんな集中しなくとも判ると思います。

 いや、幸運による不意打ち補正とか、クリティカルって、こんな感じなんですね」

 

 未だスキルとして現れていない、超感覚系のナニカでも働いているのだろうか?

 意味不明な、天才染みた戯言を吐く翔意に、原川は重い息を一つ。

 

「……それがわかるのは、多分、現状じゃ、お前位しかいない。

 だから、今後から、組む相手や、護衛役には、ちゃんと、説明、しろ」

 

 そして噛んで含める様に、一節一節強調しながら、そんな言葉を吐きだしたのだ。

 





・中村翔意の装備
 神社の下働きの人なんかが着てる作業着。修行で覚醒した転生者の、修行着とか最初の装備ってなんじゃろなと考えたら、神社の来歴的にこれかなとなった。
 丈夫だし、一応最低限の霊的なアレはある。

・原川弾の装備
 川上稔氏の小説、機甲都市伯林の登場人物、ダウゲ・ベルガーのコスプレ装備、自作。
 弾は、転生後の自分の姿が、転生させた何者かの干渉なのではとの危惧から、氏の小説の設定を利用して、自己を“原川の遺伝詞を接ぐ人物である”と定義。外見を、原川系列最新の人物であるベルガーに寄せる事で対抗呪詛とし、効果をずらす試みを行っている。

・ニヤリ状態
 真女神転生Ⅳ系列に採用された状態変化。士気が上がって奮い立っている状態。
 ニヤリ中は、回避上昇、被クリティカル無効、必中&確定クリティカル、一部特技の追加効果発動の効果があり、攻撃を行うか、ランダムで数回手番が回る迄、その状態は維持される。
 ホッピング+キックで同Lvのスライムを一撃必殺できたのは、緊張に縮み上がっていた精神が、奇襲成功で“抑圧からの開放(テッペン入って)体を満たす昂揚感(アチョー)”した結果の、ニヤリ化によるもの。
 なお、翔意は余りニヤリと相性が良くないので、テンパったりして変性精神状態に陥るか、ニヤリ化バフを受けるかしないとまず変化する事はなく、維持率も非常に低い。
 尤も、ニヤリはレアな状態変化な(採用作品が少ない)ので、適性があるだけで割と勝ち組ではあるが。

鬼神(モノガミ)
 中村・翔意が、誓約として切り落とした左腕を元に構築された、シキガミ義腕。
 都市シリーズに登場する義腕を模したものだが、名の読みは異なっている。
 能力傾向は、物理型のバランス寄り。使用者の要望もあり、全体的な性能は控えめ。
 その分のキャパシティで、核の元となった妖鬼の耐性を引き継いでおり、弱点の上書きや製作者の趣味による耐性追加もあって、盾としての適性は高い。
 また、技能カードの人体への影響を量る為、格闘、体術のスキルカードが、その機能をある程度選択して行使できる形で組み込まれている――と言う事になっているが、実際は、作り手の趣味による原作再現機構であった。
 なお、同じ理由で要求仕様が一部無視され、服だけでは誤魔化すのが難しい色とデザインに仕上がっている為、義腕を隠す認識阻害のお守りがセットで渡されている。
 
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