運使い対無貌の仮面……VSメシア教会   作:十八

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徐々に週刊のストック維持が厳しくなっていくアレ……。
最近は、虹色侍様のMUSASHIのおかげで、盛り上がらない時も無理に書き出せるようになったんですけどね。話の中身が引っ張られそうになるのだけはアレですが。
……体が慣れてしまうより前に、次のカンフル剤探さないとなぁ。


第1話-終 緑と行く先

 緑と黒。

 本来両立できない二つが、混じり合わず、斑にもならずに、一つの中に併存している。

 その不可解に脳が当てられ、中村翔意は少し俯き、その右手で額を抑えた。

 そんな仕草に、鳴無小鳥、事務のお仕着せにカチューシャを付けた女性が、叩かれなれた子供のようなしぐさ、少し悲しげな顔をして自分の頭に両手を乗せる。

 

「す、すいません。そこまで“見える”方は珍しいのですが」

 

 上目づかいの事務員によると、彼女は、ソフトな修業ですんなりと覚醒はできたものの、目覚めた異能――髪色もそうだ――の制御に難があり、能力傾向的にも

 

『出力の成長が、制御力を上回る可能性が高い』

 

との見立てで、神社に留まり事務をしながら、異能制御の修行を続けていると言う。

 また、この緑が常時見えるのは、極々一部の覚醒者のみだが、それ以外とも波長が合う事があるようで、時折だが覚醒者はおろか、一般人にも重なって見える事があるらしい。

 

「ええ、おかげ私は、見ていると脳がちかちかする事務員などと言われて、一部からは微妙に敬遠されてまして……」

 

 そう言って鳴無小鳥(おとなしことり)は、自分の頭を抑えたまま、困り果てた表情(かお)でこちらを見上げた。割と人には見せたくない類の表情だが、頭を下げると、必然、視界に入る髪が増え、嫌な顔をされる事が少なくないらしい。

 まぁ、そう言う事があると知っていながら、こうして声をかけているのだから、そう言われても自業自得な面も少なくはないのだが。

 

「その、最近は制御も安定してきて、見える事も少なくなったみたいなので、その……声掛けちゃってすいません。他の人を呼んで来ましょうか?」

 

「ああ、いや、いいですよ」

 

 翔意は、まず頭を視界に納めない様その視線を落とすと、次に気恥ずかしげな顔で横に逸らした。彼女の、日本人標準よりはかなり豊満な胸を、直視してしまったので……。

 

「い、いえ。別に事務員さんのせいではありませんし、どうしようか考えていたのもそうなので」

 

 誤魔化すように言い連ね、少年は、目元を隠し額の手を降ろす。

 

「その、まだ高校生で滞在期間が限られているので、明日からのレベル上げの行き先やレンタルできる使い魔、それから、最寄りの派出所なんかの情報が欲しいかなと……」

 

「ああ、そう言う事でしたらお役にたてると思います」

 

 そんな少年に、小鳥は少しばかり頬を綻ばせ、傍らから幾つかの資料を取り出した。

 

「ええと、ご実家はどちらですか?」

 

「栃木です」

 

「でしたら宇都宮に、比較的充実した派出所がありますね」

 

 帰ってきた答えに、少年はその顔に、意外そうな表情を浮かべる。

 

「……自分で言うのもなんですけど、かなり意外ですね」

 

「東京は、女神転生では色々と曰くの多い土地ですので、関東の県庁所在地には大きめの派出所がつくられています。いざという時の備えと言う事で……。

 それに、日光は東京結界にも関わる霊地。戦後のメシアからの攻撃も厳しかった上、そもそも根願寺の影響が強い土地柄でもあるので、地元組織が特に弱くてですね。

 今まではそれでもなんとか廻っていたようなのですが……」

 

 ここ数年の終末傾向により、根願寺は東京結界にかかりきりになってしまっている。

 つまり、ただでさえ地元勢力の少ない栃木は、近年首都近傍でありながら、特に防衛力が低い土地になっている、と言う事だ。その為、外注仕事が回ってくる率も多い。

 頭を抱える翔意に、彼女は慰めるようにこう続ける。

 

「ですので、在住覚醒者に対するサポートは、手厚くなっています。終末案件の後背地になる可能性を考えると、出来るだけ綺麗にしておきたい土地でもありますので……」

 

『なるほど、妙に手厚いと思ったら、そう言う事情もあったのですか……』

 

 彼は内心溜息を吐くと、その表情を引き締めた。

 田舎だの山猿だの魅力最下位だの、氷点下の世界だの、餃子人間像wだのと色々言われる土地柄だが、生まれ変わってこの方ずっと住んでいる故郷だ。

 

「……マンパワーがそれだけ厳しい、と言う事ですか?」

 

「い、いえ、今後段階的にに悪化する可能性はありますが、まだそこまでは……」

 

 ……人に、物に、土地に、食べ物に。命を賭すとまでは言わない。だが、共に生き延びられると言うなら、手を尽くす程度の義理も愛着も持っていた。

 止まるな、進め、護れと、胸の奥で声がする。

 痛いのは苦手だ。だが、胸に故郷を見捨てたと、じくじくと膿んだ傷痕を抱え続けるより、前へ踏み出した方がきっと痛くない。

 少なくとも、今生の翔意(かれ)は、そうできていた。だから……。

 

「鍛錬に使う異界と、レンタル可能な使い魔についてなのですが」

 

 ……息を吐きだす。

 ポケットから手帳を取り出し、二枚のメモが挟まれたページを開いた。

 挟んだ一枚、詳細アナライズの紙を取り出し、事務員に差しだす。

 

「現在の僕の、レベルと耐性、特技です」

 

 そうして、左に巻いた腕輪(ミサンガ)を外した。

 目晦ましの呪法が外れ、鬼神(ぎわん)が赤黒の異形を晒け出す。

 

「武器はこの義腕。自分とは別の耐性を利用した、ほぼ盾としての運用ですが。

 後は、特技にはありませんが、同Lv帯の、探知や隠身の権能を持たない悪魔なら、ほぼ確実に先んじて発見し、ホッピング、移動の特技で先制できるそうです」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。レベルや特技は、そう簡単に人に教えちゃだ……」

 

「僕はまだLv3で、これから集中してレベルを上げ始める所ですよ?

 夏休みが終わる前には、もう全く意味の無い情報になっています」

 

 自分の逃げ道を断つ――そんな心算で翔意はそう告げ、左の腕輪を付け直す。

 

「レンタルの使い魔を連れていくことを前提に、現実的に行けそうな上限ラインの異界と、その為に借りるべき使い魔に付いて、レクチャーをお願いできますか?」

 

 そう彼が頭を下げると、小鳥は一瞬、困ったように目を伏せたが、直ぐにレンタルリストを取り出した。

 本当は覚醒者同士で組む事が推奨されるのですが――そう前置きして説明を始める。

 

「まず概略から説明すると、レンタル用の式神は、元々神主さんが転生者の標準装備にしようと開発した、量産型式神技術の再利用品になります。

 量産化の目途が付いたあたりで、人型の高級シキガミの情報が流れて、皆そちらに飛びついちゃったんですよね。

 それで宙に浮いたものを、連合所属の転生者なら簡易的に使役できるようにしたものがレンタル用で、所謂高級シキガミにはスペックで劣りますが、能力に個性があり、連れて戦えば成長もします。あと、余り例はありませんが、一応買取も出来ますね」

 

 そう言って、レベルと特技とが箇条書きになったリストを差し出した。

 

「その結果、人気の高い個体はレベルが高く、低ければその逆になっているわけです。

 もっとも、簡易に使役可能とは言え、一応使役可能(レベル)制限はありますし、中村さんは、人気の技能を自分で賄えるとのことですので、今回は中間層の個体から、自分の能力と探索先に合ったものを選んでレンタル、と言う事になると思います」

 

 ただ守らせるだけなら、レベル制限はないに等しいが、柔軟性が極度に低くなるらしい。それで、非覚醒者に出し抜かれるレベルで……。

 なお、素人が慣れぬ異界で戦いながら、長時間警戒し続けるのは消耗が激しい為、一番人気は、そう言った面を補う索敵、鑑定系能力を持つ個体だとのこと。

 

「その上で問題になるのが、中村さんのレベルなんです。

 こちらの修練場だと、Lv3は前段階の異界の奥地で踏破を目指している想定の様で、入口付近の悪魔が2~3の修練場は今のところありません。

 しかも、段階が進むごとにLvの刻みも異界の広さもが大きくなる傾向がありますので、短期のレベリングに向いた狩場、と言うものはそもそも存在しないんですよ」

 

 まぁレベルだけ高く、探索や立ち回りがヘタな短距離走者ばかりが増えても困るだろうし、方針としては間違っていないのだろう……が、現状を考えると余り嬉しくはない。

 

「ですので索敵能力をお持ちでしたら、まずは属性の合う遠隔、或は範囲攻撃を持つシキガミによる不意打ちで、レベルを4まで上げるのが一番ではないかと思います。

 幸い、中村様は広範囲デバフスキルをお持ちですので、それを撃って後はシキガミに任せるだけでも、それなりの修練になると思いますので」

 

 そうして彼女は、リストの中から、Lv7~8程度の、遠距離攻撃と回復の特技を持つシキガミを指差してみせる。確かに安全を考えるなら、式神頼りでレベルを底上げしてから、自力の探索に移るのが良いのかもしれない、だが……。

 

 ――人任せで本当にいいのか?

 

 そんな問いかけが、ふと翔意の頭の中をよぎった。

 目を落としたリストの一点、その意識が吸い込まれる。

 

「補助魔法持ちのシキガミを借り、準備してから奇襲、ではいけませんか?

 魔法型の悪魔なら、1~2Lvの差があっても、補助魔法で覆せそうですが。

 この、タルカジャ、ディア、勝利のチャクラ、チャクラウォークの使い魔とか……」

 

「傾向が力型で、HP消費特技をお持ちなら、そちらの方が効率は良いかもしれません。

 ですが中村さんは持っておられませんし、それに傾向も運速型ですので……」

 

「ああ、それでしたら」

 

 その答えになるほどと頷くと、彼は自分の左腕を叩いた。

 生身のそれに合わせてあるとはいえ、左のパワーは右より高い。それに……。

 

「僕にはありませんが、コイツのがあるので」

 

 スキルとホッピングの複合攻撃は、確かに特技に近い威力があるとの保証があった。

 

「それでしたら、まずは義手との相性で異界を選別し、それから相性の良いシキガミを選ぶのが宜しいかと思います」

 

 そう言って。より分け差し出した資料には、レベルの近い異界の名が記されてた。

 資料の表紙には、入り口付近に出現する悪魔達とそのレベルが記されているが、ざっと見た所1の次は4~5で、彼のレベルが中途半端と言うのは確かなようである。

 

「個人的には、こちらの1から順にLvを刻んだ敵が現れる異界がお勧めなのですが……」

 

 そう言って、彼女は低Lvの邪霊系悪魔が中心に現れる異界の資料を示すが、少年はすいませんと言うように軽く頭を下げて、一段上のレベル帯のに手を伸ばした。

 そうしてざっと確かめると、ゲームでは割と雑に混じっている事が多い悪魔達も、こちらでは異界毎に、現れやすい大種族や属性、地域、神話の偏りがあるようで、更に、異界との相性や存在する深度等で、同じ名前でもヴァージョン違いの悪魔が現れるらしい。

 

「それで、出現悪魔の組み合わせが良くないと、段階毎のLv差が大きくなるのですか」

 

 その為、種族の組み合わせが悪いと、一段上の悪魔のLvが、入り口付近の2倍かそれ以上だったりする事もあるようだ。

 逆に、彼女が勧める、“邪霊を中心に、屍を啄む獣や虫、鳥が出現する異界”は、出現する悪魔のLvが小刻みで広く、段階的で、きわめて事故が起きにくい。

 尤もその代わり、異界自体も無駄に広くて狩場の移動に手間がかかり、出現する敵と異界の外観の組み合わせも最悪なようだが……。

 

『……ホッピングは、離脱・急襲はできても、長距離移動には向いてませんからね』

 

 やはり、入り口近くでレベルを上げて、段階的に異界を移るのが良いのだろうか?

 ただそうなると、似たような思惑の他の覚醒者と狩場が被ることが増え 下手をすれば、今日より会敵できる数が少ないなどと言う事になりかねない。

 

『うん?』

 

 そんな事を考え乍ら書類を捲っていると、彼はその中に一つ奇妙な情報を見つけた。

 それを手にとり、怪訝に眉を顰める。

 

「……エンジェルのレベルが4?ですか?天使なのに?」

 

 真・女神転生系の舞台には、“主神の座を奪ったYHVHが、古き神を貶めた世界”と言う前提があり、その設定を反映してか、天使系悪魔のレベルは優遇される傾向にあった。

 正直翔意も、ここまでLvが低い天使となると、東のミカド国――続編で急上昇した為ミカド国に限定する――とシュバルツバース内位にしか記憶はない。

 

「過激派メシア教徒を、天使と相性の悪い異界に引き込んだ結果、のようですね。

 何が起きたか、以降、天使と堕天使ばかりが出現する異界になったとありますが……」

 

 書類を捲る。

 天使と相性が悪いとの触れ込み通り、この異界に主に現れるのは、大きくレベルを落としたエンジェル。その次がLv6の堕天使(メルコム)で、こちらには天使程の影響はないらしい。

 メルコム自体は、より高Lvで出現する事もある悪魔だが、上位の天使(アークエンジェル)堕天使(ビフロンス)のLvを見るに、これは元々低いタイプだろうと翔意は考える。

 また、最下級の天使(エンジェル)堕天使(メルコム)も、共に魔法攻撃型で使う特技も、前者が破魔、後者が範囲火炎と、どちらも自身か鬼神の耐性で対応可能だ。

 これだけ見れば良さそうに思えるが、この異界の次の悪魔のLv帯が10近辺で、しかも上位天使(アークエンジェル)は、時折下位天使を従え、入り口付近まで顔を出すらしい。

 

『……アークエンジェルさえ現れなければな。

 いや、索敵さえ通れば、行けるのは行けるのか?』

 

 上級の一部を除き、天使は彼が修得した呪殺属性攻撃に弱く、下級二位の天使(アークエンジェル)もまた、その例には漏れない。

 その攻撃の手札も、無効化出来る破魔、左で軽減できる物理のみと、ホッピングの離脱能力と併せれば、充分選択肢の余地はあった。

 ふむと、少年は、シキガミの資料へ手を伸ばす。

 

「破魔と火炎に耐性のある、イイ感じのシキガミがいればいいんですが……」

 

「即死の耐性は、レンタルシキガミの標準装備になってますよ。

 引率や回収の為のシキガミが、先に倒れるような事があっては困りますので」

 

 ポツリと口から洩れた言葉を、鳴無(おとなしさん)が拾う。

 その言によれば、用途柄、万一のある即死の耐性は、レンタル用の基本仕様になっているらしい。また、創り主の属性関係で、シキガミは火炎属性への親和性が高く、本来弱点の火炎の耐性は常にノーマル以上、しかも、比較的耐性が目覚めやすいと言う。

 実際、先のシキガミリストの欄外には、即死耐性は標準装備との記載があり、幾度かの成長を経ている先の補助型式神には、火炎耐性が芽生えているようだった。

 となれば後の問題は……。

 

「……格上の悪魔に、僕の索敵がどこまで通用するか、ですね」

 

 ざっくりと説明すると、翔意の索敵とは、周囲の運気と方向性を把握する技術だ。

 では、そもそも運気とはなんなのか?

 彼の感覚を言語に直すなら、それは存在の影響力?と言うか運命を引き寄せる力の強さ?一言に纏めるなら、器量?が、近いだろうか?

 目覚めた力の影響か、 翔意は、本来認知できないその力の、肌触りとでもいうべき感触を偶さか覚え、それを頼りに、拙いながらも能動的に操る術を得た。

 周囲に働く影響力の手と、その鬩ぎ合いで生じる流れを観測し、そこ手を伸ばす術。

 ゲームに例えるなら、通常は判定に対する補正として働く運を、能動的に用いた判定が可能になった――と言った所か?

 

『天使は言わずもがな、堕天使の方にも、とりあえず隠密の権能持ちはいない』

 

 それは、高低差の概念が存在しない世界で、俯瞰視点を持つようなものだ。

 同じ視点やオカルト的な隠蔽、或は運気の外的環境による障害等が絡まない事案であれば、敵対者や捜索対象を、ほぼ看破発見できるのではないかと少年は考えている。

 ただしそれは、あくまでも相手が人間なら、だ。

 

「実地で相手にしたのは、まだスライムだけですから」

 

 運命神、幸運神は言うに及ばず、人に運命や呪いを課した神々は、こちらの上位互換である可能性が低くないし、そうでない彼らにしても、同じ感覚を持っていない保証はない。

 何しろ、相手にした経験のある悪魔は、自我意識も定かではない“顕現に失敗した悪魔(スライム)”のみなのだ。自己とその種族を確立した悪魔と、事故でそれを失ったスライムとの間にどれほどの差があるのか? それすらまだ分かっていない。

 

「一応、そう言った能力や習性を持っているとされる悪魔以外が、身を隠して待ち伏せていた、等と言う報告は、今の所無いようですが……」

 

 無論、一度負けて逃げ出したり、封印されたりと言った過去があるなら話は別だが、そう言った経験の無い悪魔が、人間相手に警戒して当たるのは珍しいそうだ。

 寧ろ、自分を誇示して恐怖や崇敬を呼び起こし、より強い感情や縁(つながり)を紡いで、そこからより多くのマグネタイトを奪おうとするのが通例らしい。

 

「所謂、半端な霊能持ちが一番危険理論ですか」

 

 また、それ程の影響はないらしい堕天使達は兎も角、不本意な環境にいる天使は、人間と契約を結び、異界の外に出ようと試みる可能性が考えられる。

 或は、上位の天使が入り口近くまで巡回すると言うのも、その関係なのやも。

 とは言うものの……。

 

「……まぁ修行ですし、推論を積み重ねて危険を冒すのも余り良くはないですからね」

 

 翔意は苦笑、そう言って書類を置きかけ――

 

「――!?」

 

 びくりと、背後を振り返る。

 何か、巨大な存在感が自分の背中に触れた様な、そんな感覚。

 慌て振り返るとそこは、受付入り口の自動ドアが開き、スーツの巨漢が受付に入って来るところだ。視線がその巨躯に吸い込まれる。

 オーダーだろうスーツに、みっちりと詰込まれた分厚い筋骨。

 その上乗っているものは、七三に分け撫で付けた髪と、その下の眼鏡をかけた柔和な表情。ただしその顔には、大きな古傷が幾重にも通っていた。

 どこかで見た事があるような、しかし、初めて見る様な?

 隔靴掻痒、喉から出そうで出ない名前に、眉を顰める。

 

「ああ、あの方でしたら霊視ニキさんですね」

 

 メシア教会に身体を弄られて覚醒、以降メシア教絶対潰すマンを続けていると言う掲示板の有名人、ガイア連合の中心的人物の一人だ。

 

「こちらに来るのは比較的珍しいのですけど、何かあったのですかね?」

 

 奥から人を呼ぶかと、事務所への扉を見やった彼女に、いやと首を横に振る。

 運命が背中に触れた、そんな肌触り。どう言う訳かはわからない。けれど、あの巨漢の運命は自分のそれと絡み合った、そんな確信があった。

 

「?? こちらで待ち合わせか何かをされていたのですか?」

 

 キョトンとして尋ねる彼女に、翔意はいやと再び首を横に振る。

 彼が眺める視線の先で、巨漢の眼鏡の奥が一瞬ぼうと青い光を宿しかに見えた。

 部屋を見渡すその視点が少年の左に集まると、ふむと、その顔に薄い笑みを受けべてこちらへと歩み出す。

 

「よう、アンタが義腕ニキかい?」

 

 そう尋ね掛ける男の顔は、笑うと言うより、攻撃直前の鮫か何かのように見えた。

 本人にそのつもりはないのだろう――だが、生物としての格が違う存在が、攻撃に使える部位を示すその行為には、自然、それだけの迫力と威圧とが宿っている。

 

「その呼び名は初耳ですが、多分間違いないと思います。

 まだ、シキガミ義腕の移植者は俺だけらしいので」

 

 これがレベル差と言うものか?

 神主には感じなかったそれをむき出しにした巨獣の気配に、翔意はまず僅かに息を吸い込むと、直ぐにそう言って、左腕のお守り(ミサンガ)を外した。

 露わになった赤と黒の鬼腕を持ち上げ、握って開く。

 

「まぁ、あれだ。心配性の神主のお節介でな。

 暴走しそうな危ういのがいるから、似た者同士少し見てやってくれとな」

 

 すると、霊視ニキは彼の左に一つ頷き、こう口を開いた。

 

「で、お前さんはどこの天使を殴りに行くつもりなんだ?」

 

 

.

.

.

.

 

 

 

★ガイア連合山梨支部雑談スレ その46

 

235:名無しの転生者

 合間時間に受付の端末借りてたら、なんかごつい左手の学生?が入ってきた件。

 悪魔生体移植?なんかの噂は聞いとったけど、あんなんもあったんやな。

 その内、ブラソ・イスキエルダ・デル・ディアブロごっことか出来るようになるんやろか?

 

237:名無しの転生者

 義腕ニキかな?

 覚醒率を上げる為にわざわざ左腕を切り落とし、義腕に付け替えたって言う……。

 

241:名無しの転生者

 チャドの霊圧が…消えた…?

 シフターとかだと全体万遍なく変化するから、籠手とかの装備?

 

244:名無しの転生者

>>237

 義腕?移植じゃないのか?

 

247:名無しの転生者

 覚醒の為に態々腕落としたってマジか……。

 ワイらなら、ヨガ教室真面目に受けてるだけでもそこそこ覚醒できるやろ?

 

249:名無しの転生者

>>247

 俺達、シキガミパーツ移植希望者の、夢を叩き潰したキ○ガイ野郎だぞ。

 アイツがしゃしゃり出たせいで、色々厳しくなったんだ。

 

253:名無しの転生者

>>244

 ユキジョロウニキがTS転生したのと同じ生体式神移植ではあるんだが、腕斬り落として覚醒した関連と、悪魔移植時の侵食を抑える研究で、義腕扱いになってるらしい。

 ワイは左腕を捧げるぞジョジョーッ!って覚醒したから、生の左腕生やすと誓約違反で呪いが返る危険性があるとかで、わざわざ色とか形とか異質にしてあるんだと。

 だから、義腕ニキ。

 

254:名無しの転生者

 うわぁ、チョイ調べたら、コイツ態々借金作ってまで治験に参加しとるんやな。

 どう考えても普通に覚醒して普通のシキガミ勝った方が強そうやけど、その時間を待てんてなにそれ? 悪魔かメシア辺りに親でも殺されたん?

 そもそも、腕落としたからって確実に覚醒できるわけやないやろ?

 

258:名無しの転生者

 なんか脳チカネキの胸をガン見しながら話してると思ったら、そこに霊視ニキが合流した件。

 やっぱメシアブッコロマンなのかね?

 

260:名無しの転生者

>>258

 脳チカネキって誰?

 

263:名無しの転生者

 胸wガwンw見wってw性少年だなw

 まぁ実際は、見えてるだけだけだと思うが。

 

265:名無しの転生者

>>260

 山梨支部で事務員やってるネキだよ。

 アイマスのピヨちゃんの見た目した転生者なんだけど、何故か黒髪に、ピヨちゃんの緑髪が重複して見える事があって、見てると時々、脳がバグったようにチカチカするから、脳チカネキ。本人は嫌がってるから、直接は言うなよ?

 

267:名無しの転生者

 優しさから話を切り上げられないでいたのか、

 それとも一周廻って、それを口実にガン見してる性少年なのかw

 それが問題だw

 

269:名無しの転生者

 そういや時々、アニメキャラっぽい見た目の人がおるけど、あれも良く判らんよな?

 キャラモチーフのシキガミとか見りゃわかる通り、幾ら似せたって二次元と三次元。

 普通、髪型とか服装を合せないと、そのキャラにはならんものなのに、ああいう人らの場合、服装や髪形が違っても『あ、○○だ』って直感するもんなぁ。

 

276:名無しの転生者

>>269

 脳チカネキの髪の色もそうだけど、アレは呪術とか認知科学が関わってるらしい。

 呪的シミュラクラ効果とかで、知っている人は、それnに認識が引っ張られる。

 例えば、脳チカネキなら、音無小鳥って呪が掛かってる為に似た姿に成長したし、音無小鳥と言うキャラを知る人には、実物の印象以上にそう認知される。

 また、金髪や赤、ピンクとかの実際にいる髪色なら親とは関係なくふつーにその色に育つから、その関係で浮気を疑われて両親が破局した転生者もいるってよ。

 髪色チカチカってのは、今のところネキの他にいないけど、青とか紫とか、普通はない髪色のキャラに似た転生者は、そう言う事案が起こる可能性はあるらしい。

 逆に、キャラに似た外見の転生者でも、そう言った表象に影響されないほど強い自己?レベル?を持ってると、似てはいてもそう認知されなくなるとかなんとか。

 

279:名無しの転生者

>>276

 をい、誰が俺達にそんな呪い掛けたってんだよ?

 

284:名無しの転生者

>>279

 今の所は一切不明。俺達が、この世界に強い霊的素養を持って転生した件に関わってると目して探ってる奴もいるらしいんだが……。

 

 

 





・豊満なバスト
 遠くからだとそう見えるだけで、ガン見はしてません。チラ見です(をい)。
 なお、当然年上のお姉さんには気付かれてますが、それまでのやりとりによる補正と、外見年齢、リアクションに照れが先立ってる事等から、比較的お姉さん的余裕を持ってみられているので、それほど好感度は下がってません。

・Lv5鳴無小鳥(おとなし・ことり)
 能力傾向:魔型 特技:バイス・ゴスペル、昂ぶりの歌、声ギガプレロマ

 星霊神社で、事務及び受付業務をこなす傍ら、異能制御訓練を続けている女性。
 アイドルマスターに登場する事務員、音無小鳥の容姿を持っているが、何がどうなったのか、黒髪が人間には存在しない緑髪の印象を帯びている為、波長があったか、高度な霊的感覚を持つ存在の目には、緑色と黒色が併存する有り得ない髪色に見える。
 その為、一部転生者から敬遠されており、脳チカネキと呼ばれる事がある。
 また、歌に関わる特技、声を媒体にする効果を大きく増強する自動効果特技を所持するが、どれもレベル不相応な為か巧く制御できず、敵全体、或は味方全体の効果が、ランダムで敵味方全体に変化する上、効果が安定せず、普通は届かない距離の敵にも到達し、増援を誘発する等、あらゆる意味で自身の霊能を制御できていない。


・バイス・ゴスペル/デビルサマナー(魔人シド)
 オリジナルのそれは、敵全体にランダムな状態異常を与える罪の聖歌。
 小鳥のそれは、歌の内容や込めた情感等により、ある程度効果の制御が可能……だがその反面、効果を連想し難かい状態異常等は起こしにくくなっている。
 と言うかそもそも、爆弾化とかカード化とか、一体何をどう歌えばいいと言うのか?
 その上、シドのものと違いMP消費が大きく、歌の出来により効果が増減する上、使い手が歌で傷つける行為に忌避を感じている為、効果が下がりがちな難儀な特技。

・昂ぶりの歌/デビルサマナー(神獣ウカノミタマ、など)
 味方を鼓舞する歌。タルカジャ、マカカジャの効果を同時に付与する事が出来る。
 ただ応援すればいい為、バイス・ゴスペルと比べればまだ歌いやすいが、やはり効果が安定せず、時々対象に、魅了や幸福、高揚などの副次効果が付く事がある。
 なお、この件について当人は、『……心を込めて歌わないとダメなんだから、しょうがないじゃない』と証言している。

・声ギガプレロマ/なし
 声を介して効果を発揮する特技を大きく増強する……が、そもそもただの歌好きの女性が歌の異能に熟達している筈もなく、ただでさえ安定しない効果が増幅された結果、小鳥を自爆型音響兵器に変えてしまった。
 効果内容的に歌だけではなく、悪魔の歯ぎしりや、挑発、雄叫びと言った効果も増強できる可能性があるが、小鳥以外の所持者がいないので、詳細は不明。

・霊視ニキの目
 青い目をした見鬼は、鬼神と同じものを見ると言う伝承がある。
 本編では、ただ見えるだけの肉体派と言う設定のようですが、霊視と言うラベルをあんだけの上位霊能者に認知されている人間が、普通に見えるだけは無いでしょうと言う事で、この話では見鬼(自覚無し)です。霊視と言う呪いが、上からペタペタ貼りまくられてる状態ですからね。
 なお、この場合の鬼神と言うのは、黄帝陛下の朝廷で、役職を貰って土地神とかになった鬼(ゆうれい)の事で、頭から角生やしてたりするのとは全く関係ありません。

・日光東照宮と東京結界
 参考文献、近所の図書館に合った大江戸魔方陣、東京魔法陣(古い!)。
 まぁ、江戸の町をホームタウンとして鎮護するなら、祖霊を崇める神社は絡めたいだろうし、家康の死後最初に作られた、言わば東照宮筆頭が日光東照宮なので、全く関係しないって事はないんじゃないかなーとおもわれる。
 三大東照宮の一つ、上野東照宮の祭神には天海僧正もいるらしいし、メガテン的に英傑テンカイは、必殺の霊的国防兵器で徳川曼荼羅にも関わってたしねー。

・餃子像
 JR宇都宮駅ペデストリアンデッキに飾られている、関係者の正気を疑う女神像。
 TV東京のバラエティ番組とのタイアップPR企画で、現代芸術家西松綱二氏がデザイン、地元大谷石の加工業者が製作したもので、東日本大震災で転倒、破壊されるも、修復されて今現在も宇都宮の街を見守り続けている。
 餃子の皮に包まれたビーナスと言う何考えてんだ馬鹿!と言いたくなるデザインの像で、その明らかなアレさで撮影スポットとして親しまれている……のだが、西松氏を検索すると、この写真が複数検索される事を、御本人はどう思っていらっしゃるのだろうか?
 1992~93年に放映された番組の企画なので、この時期のカオ転世界にも存在する、多分……。

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