2人の前にあるのはマンションが立ち並ぶ団地だ。
白い壁が日差しを反射し発光して見える。
住人は出かけているのか、あるいは夏の暑さにやられて部屋に篭っているのか。
人の影はどこにも見当たらず、ここに立っているのはあなただけだった。
ふとみれば、近くにある小さな公園には片付けられていないスコップやバケツが散乱していた。
諸星「人通りが無さすぎるなぁ…こんなもんだっけ?」
炎轟「んなわけあるか…それにしてもまるでここだけ人が消えたみたいに静かだ」
ガシャン
何かの音がした。
思わず音のした方を振り返ってみると視線の先で駐輪場の屋根がひしゃげているのが見えた。
何かが上から落ちてきたのだろうかとよくよくみてみると
だらりと人の腕のようなものが垂れている。
“人が落ちてきたのだ”と理解するのに時間は必要なかった。
炎轟「っ!おい上名!救急車呼べ!」
諸星「わかった!…そうだよ!ここ圏外じゃんか…よ?」
それに駆け寄る黒い影の存在に気づく。
落ちてきた人の様なモノに駆け寄る黒い影は、おおよその背丈は人と同じように見える。
蠢きながら、そしてふらふらと歩く姿はまるで人だが、2人には到底そうは思えなかった。
ふと、その影の動きが止まる。
呼吸をするように肩を上下するその影はゆっくりとこちらを振り向く。
顔なんてどこにもないはずなのに何故だかこちらを向いたと確信させられる。
こちらを見やり、そして足を伸ばす。
じりじりと影は建物の影をなぞるように、ぐるりと遠回りをしてゆっくりと距離を詰めようとしてくる。
炎轟「おいおい来てるぞ」
諸星「うぇぇ!まじかよ!」
そしてその影が一歩、また一歩と近づく度に2人の頭の中で警戒信号が鳴り響く。
ピンッ
その時、聞いた事のないような何か甲高い音が鳴った。
思わず音の元へと視線を向けるとそこには、作業服を着た人物がいた。
マンション点検の作業員だろうか?
炎天下だと言うのにもかかわらず、長袖の作業着をきっちりと上まで閉め、キャップを被った男がそこにいる。
エレベーターでも待っているのか? そんな間の抜けた思考が頭に浮かぶと同時に
どーん っという音が鳴る。
どーん どーん
とその音は大きくなっていく。
はっとした2人が視線を影のいた方へ戻す。
そこには影はいない。
男性の方へ視線を再度移す。
男性の近くにある階段の端に影が一瞬映り込む。
どーん どーん
と、音は次第に大きくなっていく。
エレベーターを待つ男性はこちらに気付いていない。
そして音は次第に大きくなっていき…その男性の姿は見えなくなった。
炎轟「消えた?」
次の瞬間2人の耳元で どーん と一際大きな音が響いた。
思わず振り向いてもやはりあの影はどこにもない。
あの作業着の男性の姿もなくなってしまった。
駐輪場の方を見ても先ほどまであった遺体さえそこには見当たらない。
白昼夢でも見たような感覚に陥る2人の前には依然そのまま存在している駐輪場のひしゃげた屋根が事の異常性を示している。
SAN値チェック
炎轟品森【SAN値】75→37 成功1減少 74
諸星上名【SAN値】65→2 成功1減少 64
諸星「あ~まじで意味不明だなここ」
炎轟「珍しく依頼が来たと思ったらこれかよ……嫌になるな」
幸運DICE
炎轟品森【幸運】80→68 成功
諸星上名【幸運】70→89 失敗
ふと、炎轟品森は道の端に風で飛ばされないように抑えられている真新しい地図を見つける。
炎轟「……なんだこれ」
諸星「どーした?なんかあったん?」
炎轟「あぁ、なんか地図があってな」
その地図はどうやらこの地区の地図のようで東にある森の中には星のマークが描かれている。
炎轟「数少ない手掛かり…になるかもな」
諸星「おー?この星の所いっちゃう?」
炎轟「あぁ、行こうかすぐそこに交番があるみたいだしここに何かあるのか聞こう」
2人は団地を背に歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーー
~交番~
諸星「よーしあれが交番だな!」
炎轟品森【???】80%→75成功
諸星上名【???】70%→52成功
2人が交番の前へ行くとブゥンと、扇風機の音がした。
中ではおまわりさんが椅子に座り新聞を片手に風に当たっていた。
こちらを見るとけだるげにこちらに手を振ってくる。
何か思い当たったのか立ち上がりこちらに向かってきた。
「縺雁燕驕斐?謌代??r遏・縺」縺ヲ縺?k縺具シ」
上手く聞き取れなかったが何かを聞いてきたようだ。
諸星「…?」
なんて言ったかわかるか?と諸星上名が耳打ちしてくる。
俺もよく聞こえなかったと言った後
炎轟「いやすまない、よく分からないな」
なんとなく嫌な感じがした2人は首を横に振る。
おまわりさんは困ったようにこちらをみていた。
笑い声がした。
振り返るとそこには数人の人がいてこちらをみていた。
おまわりさんは前に出るとその人たちを怒鳴りつけているようだが笑い声がなりやむ様子は無い。
どんどん大きくなるその声とおまわりさんの怒鳴り声が重なって、そして…
は、と気がつく。
目の前にはガラス張りの交番があるだけだった。
先ほどまでの光景はどこにもなく、ただセミの声がこだましている。
SAN値チェック
炎轟品森【SAN値】74→73 1減少 73
諸星上名【SAN値】64→40 1減少 63
諸星「またかよー…幻覚にしてはやけにリアルだし気味がわりぃ」
炎轟「全くだな…」
改めて交番の中を覗いてみればそこには誰もいない。
無人の中でカラカラと音を立てながら扇風機が回っているのみだ。
巡回中という立て札があるが、はたしてここを留守にしてもいいのだろうか?と疑問が頭に浮かぶ。
目星DICE
炎轟品森65→65 成功
諸星上名80→4 クリティカル
炎轟品森は交番のカレンダーの日付が1ヶ月前のものであることに気づく。
炎轟「捲り忘れか? いや、交番なら誰か気づくだろうに」
一方で諸星上名は交番の中で週間雑誌を見つけていた。
諸星「品森~なんか面白そうなの見つけた」
炎轟「オカルト雑誌?」
それは比較的新しいもののようで
【究明!!〜裏樞区の真相〜】
○○県裏樞区と呼ばれる地域を知っているだろうか?
樞区にある山を越えた先にあり、”裏”というのは部落差別を含んだ言葉なのだそうだ。
現在では「新樞区」と呼ばれ、「裏樞区」と呼ぶ者は今では少ない。
しかし本記事ではあえて「裏樞区」と表記していく。
もしも樞区出身の読者がいたのであれば、あくまで差別的な意味ではないことを理解して欲しい。
さて、今回はそんな裏樞区についての噂を紹介していく。
裏樞区では行方不明事件が多発している、という噂がある。
なんでもそれは国家の人体実験場だとか、神隠しだとか、宇宙人の誘拐だという話なのだそうだが。実際にはそうではない。
何故なら行方不明になるのは裏樞区の住民ではないからだ。
行方不明になるのは樞区の、あるいは外部の人間が多い。それは何故か?
裏樞区の人々は人ではないからだ。
人々の体を欲し、そのガワを奪い、その人として生きているのだ。
現に行方不明の人々の目撃情報は裏樞区に向かうところで途切れている。
そうでないのだとしたら裏樞区に移り住んだとでもいうのだろうか?
真相はわからない。
もしも裏樞区に行くことがあるのであれば気をつけて欲しい。
あなたに話しかけてくる住民は誰かと入れ替わった別人かもしれない。
そしてあなたを、こちら側に引き入れようとしているかもしれないのだ。
という内容の記事が書かれており、信憑性は薄いがどこかデタラメとは言いきれない感覚が2人の頭の中で渦巻いた。
諸星「……あっなんかメモが挟まってる」
炎轟「よく気づいたな上名、流石だ」
そこには帰りは星を目指せと書かれていた。
炎轟「星?もしかして地図に書いてあるこれのことか?」
諸星「そうならこの地図の持ち主とこのメモ書いた人っておんなじ人ってことだよな?」
炎轟「やはりここの星に何かあるのか…?」
そうして思考をふかめるといつの間にかヒグラシの声が耳をかすめる。
諸星「もう17時30かぁ」
夏の日差しがゆっくりとその熱を落ち着かせていき、空がわずかに赤みを帯びてきた。
湿度をはらんだ生ぬるい風があなたの頬を撫でる。
町中に子供たちの帰宅を促すメロディーが、少し歪んだ音を出しながら響き渡る。
馴染みのない町の、馴染みのない音が耳にこだまする。
子供の頃に感じた、夕方の焦燥感を感じた。
炎轟「…………さて」
さて
俺たちははまだこの町のことを調べるべきか?
もしくは1度暗くなる前にとタクシー会社に連絡を入れるべきか?
思考を巡らせスマホを確認する
─その時―
けたたましくサイレンの音がなり始めた。