拙的に2000年頃に起こして欲しい草子   作:うすうす

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更新は多分ゆっくりなので、都度その折、偶にお付き合い下さい。


近うて遠きもの

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 なんだかんだで晴明(おじいちゃん)とは頻繁に遊んでいる、と言うか稽古をつけて貰っている。というのも暇してる私を見兼ねて構いに来た折、「お前さんはこちらの方が好みであろ」とか言われて組手が始まったのだ。寝て過ごしていたいのも山々ではあるが、実の所とても有難い。格闘(ゴリラ)力なんて呪術(この)世界、付けば付くだけ嬉しいですからね。

 

 組手、より具体的に言えば身体操作と格闘戦術の組み立ての手習い。なんか知らんけどよく動けるので身体操作には困らないのだが、比して戦術、これが難しい。相手が()()()と言うのは勿論、小1程度の発育で大の大人を相手取ると言うのもまた奇怪な話で。筋力や瞬発力の差は呪力強化で埋められるにしても、如何(どう)にもリーチ差だけは仕様が無い。

 

 という訳で取り出したるはやはり不変。呪力をこう、体表(てのひら)からにゅっと伸ばして空気を不変に。対呪霊時には(やいば)としたが、ここでは円柱状の棍に成形する事で殺傷力を抑えて取り回しも良く。そうして ()() と言う顔をしたジジイ相手に振り回した所ひょいと躱され手を叩かれて取り落とす。そのまま往なされ投げられ受け身の練習。ごろごろ転がりつつ直ぐに判明した問題点を反芻する。棍の扱い分からん、重量が無くて感覚不安定、それともう一つ。手から離れた棍はその直後、再度拾う間も無く不変が解かれて立ち消えていた。

 

やはり両手で丁寧に組み上げた空間(くうき)不変とは違って、呪力強化用に込めた呪力の流用で粗製した不変は身から離れると持続しない。術式を自覚した当初よりかは、不変の運用に関して余程安定して来たかと思ったんだけど。

 

 とか悩んでると「お主()()上手い()。無駄に」とジジイが言うのである。……どれ? と聞けば最初の、呪力を伸ばす手順についての言及だった。

 

曰く、総量過多で溢れた訳でも呪力放出の形でも無い呪力の伸長(かさまし)と言うのは通常、呪力性質が特殊でもない限りは直ぐに霧散するらしい。

さらに言えばその様な中、空間に凡ゆる形で見出した区切りを基に(まじな)いの概念の内にて対象を捉えることで、該当空間に対しての呪力の運用を可能にする技術。それこそが結界術である、と。

 

 成程不変を掛ける前段階、空間を捉えているつもりであった0手目の時点で、不安定で不充分だったと言う訳だ。本来行うべきは伸長(しんちょう)でなく延長(えんちょう)。結界術による空間補足。そう捉えてみれば成程、シン陰の朧月とかも結界術ってワケね*1。……あと扇さんのアレも、いや、あれはどんなだ……?*2

 

となると空間(くうき)不変による武具成形は、結界の基礎となる "区切り" が無いことには安定しない為実質不可能……。いや、両手を用いれば伸長のみで十分に安定した空間(くうき)不変は成立する。なれば手順を 呪力伸長→結界定義→結界不変 として結界を張る1工程を挿せば、呪力伸長はラフ画(アタリ)、結界を線画(本書き)の粒度として、果ては手を用いずとも行けそうかしら。

 

 ともあれぶっつけ本番で出来るでも無し、一旦は失敗と相成った。お爺ちゃんに結界だけ貼ってもらうなどして試してみたかったのだけれど、そんな呪力に呪力載せるみたいな変な結界運用キモいし、そもそも伸長なんてしないから練習できない(試せない)って。そこまで言わなくても。後は刀など持つのはどうかとも言われたが、持ち歩くのも不自然だし身長的にも有り物の武器は振りづらいなとなって提案は直ぐに立ち消えた。

 

あっ。ぶっちゃけダサいと思ってんねん、術師が獲物持ち歩くの。とか流石に言えなかったのが心残りだったのでここに書けて満足。

 

 

 

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 陰陽師(じゅつし)を名乗ることで入場可能な資料庫があり、京の陰陽寮の所蔵する文献の一片が閲覧できた。時代柄、公文書は漢文であるので保管されている文献もそれが多い。と言うか、仮名の用いられたものも偶には見るが避けた方がいいかもしれない。あまりに不穏で個人的な内容の仮名書きを見つけてなんだこれと確認を取ったら、実際あった呪殺事件の証拠且つ用いられた凶器を押収したものであると判明してビビるなどした。普通に呪詛とか喰らいそうで怖いって。

 

 外出に際しては結局顔隠さなくていいんかなとか思いつつ、偶に出歩いたところで何を言われるでも無し。何も知らせず勝手に出てるから言われるも何も無いんだけど。唯、陰陽師を名乗る度に奇異の視線を集めるのは確かである。資料庫の入退場受付の人も最初面食らっていたが、晴明部隊所属であると示すと遠い目をして納得だけ示した。晴明(あの方)周りは突拍子も無いことばかりなので考えるのを止めるようにしている、らしい。皆さま苦労していますね。

 

 さて、目星を付けつつ幾日か漁ったことで、文献に私についての記述のあるのを見つけた。

結論から言えばこの身、呪具らしい。

 

 ……諸々の疑問を隅に置けば、一先ず腑に落ちる。体表を起点に立ち昇っていた呪力は、呪具の自己補完による生産呪力であったという事であろう。

呪具、ね。呪骸とはされないのは時代柄———今、晴明が卓越した式神使いとして傀儡(かいらい)呪術学、或いはその前身となる技術の時代感を大いに進めている所らしい———だろうか。或いは製法が故か。敢えて道具とするのは用法・用途が有るためとも取れる。

 

止留(とどまり)は代々、所謂(いわゆる)マッドサイエンティスト的な家系であったらしい。研究方面で力を持っていたが、時代の趨勢、陰陽寮の拡大と一般化に伴って非人道的な姿勢に対して風当たりが強くなっていき、遂には凋落した(干された)と。で、(わたくし)が遺作ってわけ。

 

 羂索って関わってるのかなぁこれ。創るだけ創って放置と言うのは羂索らしいとも言えるが。でも羂索のことだし、赤ん坊を浴に浸す程度とっくに試していそうにも思える。羂索の年齢は分からないが、まだ暗躍し始めとかもあり得るだろうか?

 

 

 

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 皆んなでお祭りを観覧した。皆 "お祭り" としか言わないので知らなかったが、後で調べたところ正式には賀茂祭と言うらしい。聞き覚えのある家名であるが、神事担当とは。賀茂一族って結構大事な役目やってる感じなのね。

 

この日集った面々は大方いつもの奴ら。来訪した晴明爺(じじ)いに、他は安倍家居候の面々。双子兄妹の笙舞(しょうぶ)亜也芽(あやめ)、六眼の杢蓮(もくれん)さんに、天元(てんげん)氏。

 

 そう、天元。暫く出ていたらしい()()が帰って来ていた。同じ安倍家に寝泊まりしているこの天元は、双子が話題を出していた天元と同一であり且つ、ご存知あの天元である。ほえー、晴明さん()って色んな方が居ますね。何?

 

見た目はどんなだと身構えていたが、単行本(コミックス)の話末に描いてあった白い長髪の、あの様な見目*3であった。平安の今が偶々この姿なのか、或いは同化に際して若返るような形なのだろうか。

 

 同化。盤星教の、それも星の子の家の役員の言?*4 を鵜呑みにするのであれば、500歳に迫り1度同化済み。何なら、仏教と共に海外から渡来していて元々あっちでも結構長いこと生きてる、みたいな可能性もあるが……。

 

 さて、祭と言っても平安の世に屋台だ花火だというのは無い。更には見物の場所取りをするでも無しに我々は、祭りの日だね〜 と談笑しつついつもの安倍家の庭で過ごすだけに留まっていた。そんな所で暫くして急に、晴明爺(じじ)いが「そろそろ時間か」と呟き立ち上がったかと思えば、何処にあったのか、庭から軒上までよいしょと梯子をかけて、それを上り始めたのである。

 

それアリ? と唖然とするのと なるほどね と感心するのどっちが妥当なんだろうと暫し悩んでいると、深刻な溜め息を吐く六眼の杢蓮さんと、それに応じて遮視結界を張る天元といった様子を続け様に目の当たりにして、ああやっぱナシなんだな、と納得することとなった。

 

 登ってみれば確かに向こう、平安の京を練り歩く行列が見え、それを皆で屋根上から見物する。やはり軒並み一階建ての街並みの中、物見(やぐら)でもなくこう見渡せるのは物珍しいものであり。やれやれとしていた杢蓮も、双子の笙舞と亜也芽も、何処か浮き足立って見物している様なのもまた確かで微笑(ほほえ)ましい。

 

私もまた、多少晴れやかな気持ちになって物見に勤しむのであったが、同時。何か、何処か私にはこの景色こそが、常にも増して馴染みのある様に思えてならないのであった。

 

 

 

 

*1
28巻 p.188 折れた刀の刀身を創る運用。ここでは「途絶えた(もとあったはずの)刀身 を捉えての結界運用」と解釈

*2
17巻 p.124 こちらも折れた刀を補う、炎のように揺らめく輪郭(シルエット)な呪力の刀身。術式解放前の行使であり、朧月の様に手を添えてもおらず、どころか剣戟の最中に瞬時に成立させている

*3
20巻 p.188

*4
9巻 p.71「盤星教は 奈良時代 天元様が日本仏教の 広がりと共に———」

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