砂漠で孤立した1人の狙撃兵の話


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デザート

皮膚を擦る様な不快感を伴う風が一帯を流れ、汗は乾いた砂の大地へと流れ、ゆっくり染み込む

ライフルスコープ越しの向こうの景色は霞んだ空気に阻まれ、遠くは見えずらい

空気は澱み続け

ただ焼き付ける様な太陽とそれに付随するだけの空が延々と上空を覆う

眼前に広がる砂で覆われ死んだ大地の何処かに必ず敵とされるものがいる。

いるとされる証拠は5メートル横に倒れて最早二度と動かない、かつてのスポッターの亡骸のみ

壊れた無線機は残りのその命がこと切れるまで、最後の抵抗の様に雑音を鳴らし続ける

現状の自らの立ち位置を表す様だ

 

 

もう退いたか?

もしくは不運の流れ弾に当たっただけか?

それともまだ同じ様に、この太陽の照りつけるクソッタレな暑さの中未だに獲物を狙っているのか

 

状況を整理しよう

 

コイツがやられたのは銃声が鳴る前だった

僅か一秒程度だったが僅かに間があった

 

砂粒が顔のいたるところに張り付き不快感が全身に覆い被さる

気を紛らわしながら頭にあるだけの情報を巡らせる

だがやがて喉は乾き続思考も掠れてくる

腰にある水筒の中身はとうの前に空となり

汗として体外に放出されるのみ

幸い脱水症状はないもののいつ発現するかは予想も出来ない

タイムリミットに追い立てられる様に標的を探す手と心臓だけが次第に早くなる

緊張は手から汗を滲ませ

手汗は指先からトリガーを伝い地面に垂れる

乾いた風は地面に落ちた汗を拭う

 

 

 

一秒

300メートルは離れてるのか

400

いや450か

いずれにしてもそんな馬鹿げた距離を正確に頭に一発

厄介だ

 

 

 

もう随分経った

日はようやくその顔を傾かせながら背後から夕闇を引き摺らせる

 

死体の周りに早速死臭に寄せられた蝿達が集り始める

この死の大地で、小さな命がかつて自らより大きな命を持った者の骸を貪る

だが

草木もまともに生えない

まばらに岩が転がるだけ

生を受け付けないこの不毛の大地で一方の人間は互いに命をすり減らし続ける

一方は生を受容し、一方は死を狙う

半径5メートルで生命の対比が出来上がっていた

 

 

動いた

 

ノイズのような薄暗く黄色い空気の中でもハッキリと

 

この生を賭けた我慢比べは根を上げれば即ち死

最早極限までに高めた生への執着による集中力は

大脳皮質すらも通りこし

眼球から入った情報をそのまま引き金に掛かった指に伝わった

 

刹那

静寂を貫いた耳をつん裂く銃声は

そのまま7.62mm弾を鉾として砂漠の空気を秒速900メートルで突き破った

 

コンマ何秒もなかった

 

瞬きをし、再びスコープを覗くと

そこには既に人はいず

黒い骸が転がっていた

 


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