ある日のこと蒼葉邸にて———
「あー」
一人の少女、アキルは書斎にて頭を抱えて疲れ切っていた。
昨今の地球の危機やら爪垢魔皇やらで疲れに疲れ、その上で人類絶滅の危機をギリギリ回避し続ける日々、常人ならストレスで倒れてもおかしくないところを彼女は踏みとどまっていた。
しかし、彼女にも限界が来ていた。
いつ終わるかもわからない世界、スナック菓子感覚で起きる厄災、気軽にやってくる邪神etc……それらから奇跡的に生き残ってるがいつ死んでもおかしくないならば……
「と言うことで、クリス。私はあなたを愛してるわ。結構昔……初めて会ったくらいの頃からね。ライクじゃなくてラブよ? わかってる?」
その言葉を聞いてクリスと呼ばれた執事服の少年は十数秒間フリーズする。
後、言葉を発する。
「今ですか⁈」
至極当然の反応をクリスはする。
「今がその時よ。まぁ、お互いいつ死ぬかわからない様な生活してるから未練は残したくないのよね。あ、嫌ならキッパリ断っていいわよ。無理強いしたいわけじゃないし、あくまで私の気持ちを伝えたかっただけだから」
アキルは淡々と語る。
「いや、冷静すぎませんかお嬢様⁈これって……あの、俗に言う……」
「告白ってやつね」
「ですよね⁈え、世間ではこんな感じなんですか⁈」
クリスは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「さぁ? 私は私のやり方をしただけよ」
アキルの返答に対してクリスはしばしの沈黙の後、言葉を紡ぐ。
「お嬢様……いえ、アキル。私、いや、俺はちゃんとその気持ちに応えたい。だから、今だけは『クリス・フォスター』じゃなく、ただの『クリス』として答えるよ。俺は……その、十年前初めて会った時からアキルに一目惚れしてた! 最初はよくわからなかったけど、ずっと一緒に居るうちにこれはただの好意じゃないって、気づいた! けど、伝えるのが怖かった、今の関係が壊れるんじゃないかってずっと逃げてた! けど、アキルが伝えたんだ! なら、俺も俺の気持ちをちゃんと伝える! アキル、俺は貴方の事が好きだ……だから、俺と付き合ってください!」
クリスは顔を真っ赤にしながらも言い切った。
それを聞いてアキルは頬を赤らめて微笑む。
「ふふ、じゃあ両想いだ! これからも……いや、改めてこれからよろしくね! クリス!」
そう言ってアキルはクリスに近づき手を握る。
「は、はい!」
真っ赤な顔でクリスは答える。
「まぁ、とりあえずお互い長生きするのが当分の目標かなぁ……」
「まぁ、それは……はい」
途端に先ほどまでの熱が冷める。
彼女達が生きる世界はいつ終わってもおかしくない絶妙なバランスで維持されている。
恋人同士になれたからといってもそれは変わらない。
「なら、終わっちゃう前に沢山思い出を作りましょう! ね! クリス!」
アキルは笑顔でそう告げる。
「ええ! けど、簡単に世界を終わらせたりなんてさせませんからね!」
クリスはそう答える。
いつか来る終わりを前にどうか素敵な思い出を、そして世界を脅かす存在と戦う覚悟を新たに二人は新しい道を歩み始めた。