幕間の物語 深淵楽土の日常   作:ラットマンΣ

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イタズラもほどほどに

 ———真麻久留市(まさくるし) 丘の上の教会の一室

 

 その日、シスター・クレアは心の底から神に祈った。

 信じもしない神、いるわけもない神に本気で心から祈った。

 どうかこの地獄から救ってほしい、と。

 古来より人はどうしようもない時には手を合わせて祈ることしかできなかった。

 それが人の摂理だ。

 眼前の存在はあまりにも強大で、クレアは太刀打ちできない。

 ならばもう、祈るしかない———

 

「酒つげや! くれあぁ! ッヒック!」

 

 そう叫ぶのはもう一人のシスター、神手(かみて)静葉(しずは)だった。

 

「いやぁ……シズハの姐さん……お酒はまだ早いかと……」

 

 いつも粗暴な言動のクレアが丁寧な言葉で静葉をなだめる、が。

 

「あんだとぉ! あたしはおしゃけ飲めましゅ! つげ! そそげぇ!!!」

 

 静葉は荒ぶる。

 これではいつもと真逆だ。

 何故こうなったのか。

 経緯は簡単だ。

 クレアが静葉の飲み物にこの前の()()()をごく少量混ぜたのだ。

 クレアとしてはちょっとしたイタズラ兼、静葉の醜態を見て笑い話にしようとでも思っていたのだが、静葉は想像以上に酒に弱かった。

 その上、酔うと人格が変わるタイプだったのだ。

 

「いやぁ……その……ほら! 未成年飲酒良くないから! な?」

 

 クレアはとにかく静葉を鎮める為に手を尽くすが。

 

「うるひゃい! おしゃけよこせ! ……くれないなら」

 

 静葉の空気が変わる。

 殺気に近い空気を纏いながらゆらゆらとクレアに近づく。

 クレアは部屋から逃げようとするが既にその先に静葉は移動していた。

 伊達に忍者を名乗っているわけじゃない。

 正にジャパニーズニンジャ、身体能力だけならクレアを遥かに凌駕しているのだ。

 故にクレアに逃げ場は無い。

 静葉はクレアを壁際に追い込み、その顔に優しく触れる。

 

「おしゃけくれないなら、クレアが体で代わりになってください」

 

「は⁈」

 

 クレアは驚愕するがもう遅い、既に逃げることはできない。

 クレアはこう見えて()()()()()初心(うぶ)だ。

 クレアは今にも爆発しそうなくらいに顔を真っ赤にする。

 静葉の身体がよりクレアに密着する。

 クレアの思考は限界を迎え、この状況に少し体が震える。

 そうして———

 

「ッッッ‼︎」

 

「……」

 

「…………」

 

「……………………?」

 

 何も起こらない。

 しかし、静葉はクレアね身体に身を預けている。

 静かに寝息をたてながら。

 

「……‼︎こんにゃろ!!! ……まぁ、今回はアタシが悪いか」

 

 そう言ってクレアは静葉を教会2階の寝室に運び、ベッドに寝かす。

 そして、クレアは心から誓った。

 もう二度と静葉にはイタズラ、特にアルコール系のイタズラはしない、と。

 

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