転生して氷の王女と田舎でスローライフをおくりたい   作:桐ヶ谷 雅輝

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レイラ王女がいるのに舞踏会にしちゃったの明らかにミスった…


氷の王女と含み笑い

 人が10人以上横並びでも通れそうなデカイ扉が開いた先には王族らしい格好をした人が3人と護衛らしき人が複数見えた。また、予想していた通りメイドさんに車椅子を押されながら登場した人がいた。去年の今頃、王都の上空で姿を見かけた王族の輝かしい金髪にシルフォード領で見た海のように綺麗な碧の目をした少女だ。会場に入る際、第三王女と思わしき方が軽く周りを見渡した。その際一瞬だけ目が合ってこっちに向かって微笑んだような気がしたが、きっと滅多に出ないパーティだから近くにいた貴族の顔を思い出そうとしてでもしたのだろう。

 

以前バトエンを作った時に見かけたおじさんを先頭に王族御一行はそのまま奥に用意されてる豪華な椅子のある場所まで歩いていく。通り道の貴族が逸れて略礼を示し、王様もパーティ中の為手を挙げて軽く答える。

にしても王冠も被ってるし王様と分かるが、どうしても以前見た少し疲れてるサラリーマンのようなおじさんのイメージがどうしても先行してしまう。もう自分の中ではおじさんと呼んでしまおう、口に出さなきゃ大丈夫でしょ。

 

おじさん達の進路は俺の所からは少し距離があったので今のうちに父さんと合流しておこう。各々の席の前に着くと王様らしき王冠を被ったおじさんがホールの中心に向かって一歩前へ出た。それに合わせて演奏されていた音楽がやみ、小さな話し声が残響した。

 

「皆の者!今宵は突然の招集にもかかわらず集まってくれて誠に感謝する!会場は舞踏会がメインだか暖かいものも用意している、最近の寒さに負けぬよう身体も交友も温めてほしい!それでは、楽しんでいってくれ」

 

そう言い終えると、近くの控えていたウェイトレスがワイン瓶を護衛の騎士に渡し、騎士が毒味をして王様へ新たに注いだ物を渡した。ホールにも動きがあり各自がドリンクを受け取っている。

「すみません、私にもワインを」

「どうぞ、ぶどうジュースでございます」

「アル、毎回言ってるけどまだ君には早いよ」

「…もういいと思うんですけどね」

「流石に2桁にも行ってないのにお酒はダメだよ」

「はーい」

 

まぁ実際そんなに呑みたい訳では無いが、子供でも飲めるなら早めに飲んで自分の身体の耐性を調べておきたいんだよな。

「そろそろ全員に回っただろうか?それでは、王国の繁栄に!乾杯」

「「「「乾杯!」」」」

王様の掛け声で乾杯し音楽がさっきとはまた違って明るくゴージャスな曲調に変わる。王様を中心に何組かはさっそく踊り始め、また談笑が辺りをつつみ始める。

 

「アル、王様方が1曲踊り終えたら頃合いを見て挨拶に行くよ」

「…やっぱりどうしても行かないとダメ?」

「ダメに決まってるでしょ。名指しで招待されて挨拶に行かないなんて失礼にも程があるんだから」

「エルナ母さんに言われなくても流石に分かってるよ」

「分かってるなら何度も聞かないの。次はあっちに挨拶に行くわよ」

 

そうして連れられて王都のエリノラ姉さんがお世話になってる騎士団のお偉いさんとかお爺ちゃんの商会がお世話になってる人とか魔法学校関連の人とかに挨拶して、いよいよ王様達に挨拶する番になった。

前のパーティの時は見つけた途端父さんに近づいてきたクーデリア第二王女も主催側だから大人しく貴族たちの挨拶回りを受けているようだ。1歩下がった所で第三王女らしき人も存在を主張しない程度に話を聞いている。エルナ母さんによるとどうやら今は北の国境付近の貴族と話しているらしい

 

「お話中失礼致します、国王陛下。私達もご一緒してよろしいでしょうか?」

「おお、これはこれはスロウレット子爵。貴殿も王都に来られていたのだな」

「久しいなスロウレット卿、今宵は招待に応じて貰い感謝する。」

王様と話していた人はハムハット侯爵と言うらしいが声が大きいな…子供の耳には少し辛いぞ。王様の方は思ったより声が高くて若く聞こえるけど、ストレスで老けてるだけで思ったより若いのかな?

 

「ハムハット侯爵も失礼しました、お久しぶりでございます。こちらこそお招き頂きありがとうございます、陛下」

「気にするな、今回はこちらも急な開催ですまないな。さて、もしかすると後ろの少年が噂の彼かな?」

「噂、と言われますと存じておりませんが。次男のアルフリートでございます。アル、ご挨拶を」

「アルフリート・スロウレットと申します。以後、お見知り置きを」

 

自己紹介と共に礼儀作法の勉強として教わった最敬礼をすると、以前のパーティのようなざわめきこそなかったものの近くの貴族からやはり視線を感じる。自分以外が綺麗すぎるだけなんだが。

「陛下、それでは私はこの辺で失礼致します。スロウレット殿も失礼する」

「うむ、今後も国のためによろしく頼む」

ここでトップハム侯爵が離れてスロウレット家と王族一行だけになった。

 

「して、アルフリートよ」

「如何しましたか、陛下」

「そなたは今いくつになる?」

「四月で8歳になります」

「年齢の割に礼が堂に入ってるな…」

「母上の教育のおかげでございます」

「ふむ、そうか」

突然声をかけられて少し焦ったが失礼があった訳では無いようだ。このまま玩具王関連に触れずになんとか離れられたいんだが…

 

「そなたの噂は王宮にも少し届いてるぞ、『玩具王』の発明はそなたも一緒に色々作ってくれてるらしいな」

「…私は魔法が得意なので、試作の手伝いをしているだけでございます」

「そう謙遜するな、領民と協力することは良い事だ。『玩具王』の作品のおかげで王都にも活気が増した。新作を楽しみにしていると是非伝えてくれ」

「かしこまりました」

 

これは明らかにバレてる気がする、父さん達もちょっと冷や汗をかいているが公に発表しなければ公共の場では言えないだろう。言えないであってくれ。

 

「お久しぶりです、ノルド様。私たちもご挨拶宜しいでしょうか?」

「ご無沙汰しておりますクーデリア王女、レイラ王女もお元気なようで」

「ご挨拶が遅れましたスロウレット卿、エルナ様もお久しぶりです」

「お元気そうでなによりです、レイラ様、クーデリア殿下もお久しぶりです」

 

話が一区切りついたところで王女達が話に混ざってきた。クーデリア王女は以前の様子を思うと目の前にいるのによく我慢してたなと思ってしまうが。と一歩横で聞いていたら第三王女様は父さん達への挨拶もそこそこに明らかにこちらへ面と向かっている。

 

()()()()()()()、と言うべきですかね?レイラ・ミスフィリト第三王女です」

「アルフリート・スロウレットでございます。失礼ながら、お会いしたのは初めてかと」

「ふふ。そうですね、こうして()()()するのは初めてですね」

 

明らかに隣から強いを感じるが今はどうでもいい。いや良くないし明らかに2人分以上の視線を感じるがそれどころでは無い。空の上での話をされたらたまったものでは無いからどうにかしないと!

 

「ご冗談を。王都に来たのも私は今回で2度目ですので、他人の空似かと」

 

とりあえず父さんたちにも聞こえるように否定しておかないと。王女様側は去年の話をしたいようだが今その話をされるのはこちらが困る!

 

「ごめんなさい、ホールに入った際目が合いましたので少しふざけてみました」

「ああ先程の。もしやご不快でしたか?」

「いえ、そういうことでは。初めての方はなかなか()()()()()()()ので珍しく感じまして」

「それは…失礼な話ですね」

 

彼女がそう言いながら自分の脚を撫でるように右手を動かすとと隣からの圧が少し和らいだ。理由が少し無理筋だが()のことを出されると触れにくい。

 

「まぁ慣れました。それよりもアルフリート様の噂は私も伺ってますよ」

「噂、ですか?領地から出ない引きこもりなので噂になるようなことはしてないつもりなのですが」

 

なんで実績もないただの次男坊にこんな噂がついてるんだ、可笑しいだろ。

 

「先程ご自身で仰っていたように魔法がお得意だとか?その歳で氷魔法が使えるとお聞きしましたが」

 

これ絶対トリエラ商会とかから漏れてるだろ、氷魔法なんて村人の前以外ではカグラに行く時の護衛の『銀の風』とダグラスたちカイオウ海賊団の船員と収穫祭の時のラーちゃんと…思ったより使ってるな?まぁ既にバレてる以上は仕方ないか。

 

「母上の教育が良かったおかげです。見た目はともかく魔法の才能は受け継いでいたようで感謝しています」

「才能だけではその歳で氷魔法は扱えませんよ、自身の努力を誇っていいと思いますよ。」

「ありがとうございます、レイラ王女殿下にそう言われると自信がつきます」

「良ければ今度魔法に関するお話を聞かせてください、私と近い歳で氷魔法が使える方は王都にもいませんので」

「かしこまりました。あまり王都に居ませんが、それでも良ろしければ」

 

そう答えると、彼女は目的を達成したかのような満足気な含み笑いを浮かべた。恐らくは魔法の話よりは空を歩いてた時の話がしたいのだろうが、そんなに興味がそそられるのだろうか?

 とりあえず無難に話し終わってノルド父さんたちもひと段落ついたようで撤退。あとは時間までぶらぶらしてれば終わりだし疲れたから今のうちにバルコニーの方にでも

「待ちなさいアル、さっきのはどういうことか説明してもらうわよ」

「待って下さい母上、頭が割れるぅぅぅぅ!?」

「いつもいつも気配消して逃げようとするからでしょ、それよりさっきの話は何?」

「そうだよアル、レイラ王女殿下とお会いしたことがあるのかい?あんな理由じゃ誤魔化しきれないよ」

 

「えーと、去年王都を散歩してる時に城を眺めてたら城にいる第三王女様とたまたま目が合って?」

「…そんな嘘で騙せると思ってるのかい?」

「いやほんと!ほんとに散歩中に目が合って手を振ったら反応があっただけなの!」

 

王都の(空を)散歩中に目が合ったので嘘は言っていない。

 

「…とりあえず信じるけど今後は他の貴族と縁が出来たら報告してね」

「顔しか見えてない状況で貴族か判断なんてつかないから今回は無理だよ」

「とりあえずもう挨拶回りは終わったから後は自由にしていいよ」

「分かった」

 

めんどい挨拶回り解放されたので後は適当に過ごすとしよう。とりあえず疲れたからバルコニーで外の風を浴びよう…




ハムハット卿の元ネタはシルクハットの似合う機関車の人です
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