そんなドン底状態で止めとばかりにな○う転移まで発生。船は世界から消えてしまったのだった……
しかし、そんな彼の前に突如現れたな○う御用達、正直すまんかったの神様。いつものチートあげるから許して?である。
そんなこんなで、煌君(キアラくん)はチート能力的なモノを貰って異世界に旅っていきました。
現在気温マイナス38.1℃。吹雪吹き荒れる中にキアラくんは放り出されていた。
「な、なんだよ……こ、この気温は……。寒すぎだろ!あ、あのクソ神めぇ……」
あまりの寒さに悪態をつくがそれも仕方ない事だろう。何故なら辺り一面氷の塊しかないのだから。
「いや、マジで寒いんだけど!?何だよコレ。俺、動物がたくさんいる世界ってお願いしたよね?どういう事!?」
神様に頼んだお願い。それは、かわいい動物がたくさんいて、わーいたーのしー、すっごーい!を擬人化動物とする為であった。
しかし、到着場所は猛烈なブリザードの中。周りには雪だるまとかではなく、本当にただの氷山だらけの世界。神様から貰ったチート装備『ジャパリジャケット』が無ければ、凍死していただろう……
「くそっ……取り敢えずどこか休める場所を探すぞ……」
キアラくんは近くに何かないか探すと、少し離れた所に小屋の様なものを見つけた。
「よし、取り敢えずあそこに避難しよう」
キアラくんは吹雪の中を慎重に、しかし急いで小屋へと向かった。
目で見える距離であったにもかかわらず、小屋へたどり着いたのは30分もした後であった。キアラくんは扉を調べてみると、鍵等はなかった。
中へ入り扉を閉めると、キアラくんは座り一息つく。
「ふぅ、やっと落ち着ける……それにしても、ここは一体どこなんだ?」
キアラくんは神様から貰ったバックパック(神様製探検キット)を開き中からスマホを取り出した。
「電池気にしない用にしてもらっておいて、良かった。さて、現在地はどこだ?」
スマホアプリの異世界地図を開き、キアラくんは現在地を確認すると、そこには南極大陸と表示されていた。
「ん?見間違いか?」
一度アプリを終了して再起動させたが、地図には南極大陸と表示されていた。
「……まさかここは南極なのか!?という事は、今いる所は異世界ですら無い!?嘘だろ……」
愕然とするキアラくんであったが、すぐに気を取り直してスマホを操作していく。
「まずは、現地の人に連絡を取るべきか……?でも電波届かないよなぁ……」
そう、電池が減らない用にしてもらって異世界語や地形がわかる用になるだけで、性能は地球産スマホそのままである。電波が無ければただの箱である。
「とりあえず、バックパックに他の物がないか確認しよう」
そう言ってキアラくんはバックパックの中身を確認した。
・ホイッスル 自分の場所を知らせる事ができるぞ
・双眼鏡 遠くを確認できるぞ
・方位磁針 方位がわかるぞ
・懐中電灯 明かりを灯せるぞ
・虫取網 虫等が取れるぞ
・ファーストエイドキット 応急処置に必要な物が入ってるぞ。後、毒抜きもできるぞ
・携帯コンロ 火が起こせるぞ
・鍋 携帯コンロとセットで使おう
・携帯食 美味しい
・水 圧縮してたくさん入ってるぞ。賞味期限も無いぞ
「これは、どう使えばいいんだ……」
思わず頭を抱えるキアラくん。確かに、これで南極旅行をしろと言われたら絶望しか感じないだろう。
「食料はあるけど、これじゃ足りないな……。とにかく、人が住んでいるところまで移動しないと」
そう言いながらキアラくんは移動しようとした時、バックパックから何かが落ちてきた。
「アレ?まだ、何かあったのか。いったい何だろう?」
・紙飛行機 時速 300キロ、航続距離 巡航速度で1000キロ、耐久性 紙。紙でできた戦闘機。武器を何も装備していないため、何もしない
「……いや、何コレ?」
意味不明な物が出てきた事に困惑しながらも、一緒に付属された封筒を開いてみる。中には手紙が入っており、開いてみると神様からのメッセージが入っていた。
異世界は楽しんでる?。もし、君が困難にあった時、一回だけ打開策を用意しておいたよ。大切に使ってね。ちなみに、出てくる物はその世界にある物だから安心してね。
神様より
「……何でこんなもん入れたんだよ。っていうか、コレはもう使えないんじゃ……」
その時、キアラくんの頭に名案が浮かんできた。
「そうだ!この紙飛行機を使えば助けを呼べるんじゃないか?よしっ!」
早速、紙飛行機を持つと、扉から紙飛行機を飛ばすキアラくん。
「行け!」
すると、紙飛行機は紙とは思えない速度で吹雪にも負けず空に向かって飛翔していった。
「頼む、誰か来てくれ……」
紙飛行機を飛ばしてしばらくの時間がたった。いきなり、スマホが鳴り出した。
キアラくんは何事か確認すると、誰かから着信がきていた。相手はわからないが、キアラくんはとりあえず出る事にした。
「はい、もしもし?」
電話に出ると、若い女性の声が聞こえて来た。
『こちら南極国家アンタークティカ所属艦。そこの紙ヒコーキ、あなたは領空侵犯をしてます。大人しく止まりなさい』
「えっと、南極国家ってなんですか?あと、その前に助けて欲しいんですが……」
とりあえず、キアラくんは女性に自分の事情を話し、紙飛行機で助けを呼んだ事を説明した。
『なるほどわかった。それじゃあ、あなたのいる場所を教えて。すぐ迎えに行くよ』
どうやら助かるようだ。その時はそう思い、キアラくんは安堵した。
******
現在気温マイナス53.1°C。
南極の海をキアラくん達は進んでいた。段ボールで。
訳がわからないと思うが、少し時を戻す。
紙飛行機で助けを呼んだのは良いが、紙飛行機が連れて来たのは約2.4mくらいの豹柄のブチねこだった。
「た、食べないでくださーい!!」
「食べないよ!それより、あなたが助けを呼んでたキアラくん?私がモカだよ。もう安心してね」
そう、スマホ越しに話ていたのは若い女性ではなく、巨大ねこだったのだ!
「あらためて、自己紹介するね。私は、南極国家アンタークティカ所属のモカ。南極に来たのは初めて?ここは寒いよね~」
「あの、モカさんでいいんですよね?人はどこですか?あと、何でそんな平然としてられるんですか?それに、何で段ボール?」
「たくさん質問があるね!でも、大丈夫。ちゃんと答えるよ」
そう言うと、巨大ねこもといモカはキアラくんの質問に答えていく。
「私がモカであってるよ!人はアンタークティカの基地とかに居るんだ。私は、自慢の毛皮があるから寒いのはへっちゃらだよ!段ボールは、ワールドウォー?っていう、何か凄い戦いがあって、そこで開発された軍艦だよ。アップデートも重ねてるから、すっごい丈夫なんだ!」
キアラくんは、あまりの衝撃的な事実の連続に、ついていけなくなっていた。
「なにがなんだか、わかんないや……」
「大丈夫?」
「とりあえず、俺は助かるでいいんですよね?」
「そうだよ!その為に私が来たんだから」
「……ありがとうございます」
そういう訳で、南極の海をキアラくん達は進んでいたのだった。
向かう先は、南極国家アンタークティカの所有する基地。そこに行けばなんとかしてくれるだろう。そうキアラくんは思った。
「ところで、モカさんの後ろに乗ってる子たちは何です?人にしては、なんか変な感じするんだけど」
そこには、身長約数十cmくらい、二頭身ほどのデフォルメされた人達が世話しなく段ボール内を動いていた。ある者はレーダーを観察し、ある者は段ボールを動かす為に自転車で機関を動かし、ある者は舵取りをしていた。
「妖精さん達だよ。この艦の乗組員なんだ。みんな可愛いでしょ」
妖精さん。妖精ではなく、妖精さんである。この小さな人達にわかっている事は少ないが、人動かす物の近くに集まり作業を手伝ったりする。
ただ、妖精さんであるので、何もせず寝ていたり遊んでいたりする事もあるが、共に戦ってくれる仲間でもある。
「ほら、キアラくんも挨拶して」
「えっと、こんにちは。キアラといいます。よろしくお願いします?」
キアラが挨拶すると、妖精さん達は一斉に敬礼をした。
「俺、妖精さん見るの初めてです」
「そうなんだ。ここに居るのは、私の自慢の乗組員達だよ。全員可愛くて強いんだから!」
「そ、そうですか。それはすごいですね……」
キアラくんは、こんな小さい人たちが強い事に驚いたが、それ以上にモカのテンションの高さにも驚いていた。
(この人もしかして、かわいいもの好き?)
そう思っているうちに、南極大陸奥にある基地が見えてきた。
「これが南極基地だよ。ここなら安心だからね」
「本当に助かりました。ありがとうございます!」
「うん!それじゃあ、降りようか。接岸させるから気をつけてね」
「わかりました」
モカが段ボールを接岸させると、妖精さん達がしっかりと固定し、タラップを降ろしてくれた。キアラくんはモカと共に段ボールを出ると、妖精さん達にお礼を言い、基地の中に入っていった。
「あぁ~、やっと外に出れたよ」
「ふぅ、外はやっぱり気持ち良いね。それにしても、キアラくんよくここまで来られたね。南極なんて普通来れないよ?」
「それが、実は……」
キアラくんは信じてもらえるかはわからないが、自分は異世界から迷いこんだ事を説明した。
「なーんだ。異世界転移者だったんだね」
「あまり、驚かないんですね。信じると思ってませんでした」
「まぁね。うちの国にも異世界から来た人沢山いるし。それに、南極に来れる時点で異世界から来たって思ってたよ。だって、普通の人間は南極には来られないもん」
「そうなんですか!?」
「そうだよ。はい、南極海路の地図」
そう言ってモカは南極海周辺の地図をキアラくんに見せた。
そこには、大きなイカやデフォルメされたカタツムリの絵が描いてあり、さらにはドクロマークやボスマークがついていた。
「……あの、これは?」
「危険ななまもの兵器とか深海棲艦とかセイレーンが居る場所だよ。とくにイカは南極海周辺を縄張りにしてるから、普通の艦だとすぐ沈んじゃうよ」
「えぇ……」
予想よりもハードな世界にキアラくんは引いた。
(艦これとアズレンを足して、さらによくわからない物も追加とか火葬戦記の世界かナニか?)
かわいい動物要素は何処にいった?こんな世界に転移させた神様を恨みながらも、疑問が生まれた。
「あれ?じゃあモカさん達、アンタークティカの人達は、なんで無事なんですか?」
「それはね、この基地が[超兵器]っていう何か凄い艦と戦う為に作られた場所で、私はここで偉い人に飼われてたみぃちゃんの子孫で、なまもの兵器なんだよ!」
すぐ側に居たよ、なまもの兵器。そして、キアラくんはなんとなく察した。このなまもの兵器と呼ばれる存在が、かわいい動物要素なのだと。
「それじゃあ、基地の司令さんの所に連れてくね」
「アッハイ」
そう返事をすると、キアラくんはモカの後に続いた。
******
モカの案内で基地の司令室に入ると、そこには2m以上はあるだろう、大きな人がいた。
普通の人に安堵したキアラくんに、基地の偉い人が話しかけてきた。
「久しぶりですね、モカちゃん。それと、君が新しい転移者かな?」
「は、はい!?キアラと言います!」
「そうか、私はアンタークティカ基地の司令官だ。よろしく頼むぞ」
そう言うと、基地の偉い人は手を差し出してきた。キアラくんはその手を握り返しながら、挨拶をする。
「よろしくお願いします!」
「はっはっは!そんなにかしこまらんでも良い!さて、早速だがキアラ君はどうしたい?帰りたいか?それとも、このままアンタークティカに住み着くか?元の世界に戻る方法を探すなら協力しよう」
「えっと、少し考えさせてください」
いきなり聞かれても、キアラくんは困った。確かに元の世界に戻れば、普通の生活できるかもしれないが、それでは神様に頼んで転移した意味が無い。しかし、この世界に住む事は、家族や友達との別れを意味する。
キアラくんが悩んでいると、モカが声をかけてきた。
「ねぇ、キアラくん。もし、良かったら、南極国家アンタークティカで暮らさない?」
「え?でも、迷惑じゃないですか?」
「全然大丈夫だよ」
「……本当にいいんですか?」
「もちろんだよ!」
そういうと、モカは自分の胸を叩いた。
「ここは、南極国家アンタークティカ。困っている人を見捨てたりしない。だから安心して暮らしてね!」
「……ありがとうございます。モカさん!」
こうして、キアラくんは南極国家アンタークティカに住む事になった。
この出会いが、キアラくんの運命を大きく変える事になるとは、この時は誰も知らなかった。
キアラくんが基地で暮らすようになって数日が経った。
この数日間、キアラくんはモカと一緒に訓練をしたり、基地を見学したりして過ごしていた。
「おーい。キアラくーん!今日は私の仲間を紹介するね」
「仲間って妖精さん達ですか?」
「違うよ。私と一緒に艦隊行動する仲間の方。みんなもキアラくんの事、気になってたみたいだからね」
「そうなんだ」
そう返事をすると、キアラくんはモカの後に続いて基地の港湾施設に向かって歩いていく。
「みんな、良い子達だよ。さぁ!紹介するね」
「え?えぇ……」
モカが紹介した先には、3人の女の子となまもの達が居た。
「ハッハッハッよく聞け!このわたしこそ高貴で幸運で無敵の雪風様なのよ!」
「島風よ、スピードなら誰にも負けないわ」
「天津風よ。あなたが新しく来た転移者さんね。よろしく」
「我輩が、捨てねこ航空機部隊隊長のみぃちゃんである」
「あひる艦隊所属、あひるであります!」
「同じくあひる艦隊所属レーザーあひるだ。よろしくな」
「まがもだ。57mm全方位機関砲で、対空防御を担当している。対空に関しての話なら、任せてほしい」
「ギャオオオオン!!」
あひるやかも達もキアラくんが知ってる数十倍以上の大きさだったが、今度のはそれとは比べ物にもならない巨大生物が出てきた。
それは、体よりも長い首を持ち、体長20m以上はあるかと思わせる白亜紀から抜け出した恐竜がそこに居た。
「この子は、ねっしぃ。UMA型なまもの兵器なんだよ」
「ねっしぃって言います。宜しくお願い致します!」
(あっ、普通に話せるんだ)
そんな事を思いながら、キアラくんはみんなに挨拶した。
「こちらこそ、よろしく」
自己紹介を終えると、みんなは普段何をしているのかを教えてくれた。
「島風達は、基地周辺の警備をやってるんだよ」
「うん。最近は深海棲艦が活発になっているからね」
「そうなの?」
「そう。深海棲艦は危険なのが多いから、見張らないと大変な事になるのよね」
「まがもとあひるも、基地周辺を交代で警備しているであります!」
「我輩達捨てねこ航空機部隊は、空母『おおたか』に配属されている。今は、作戦後の休暇中だ」
「みぃちゃん達はこの前、大きなハエ*1を退治してきたんだよ」
どうやら、この世界のハエは超巨大らしい。
(何かヤダな……遭遇したくない)
そんな風に考えながら、ねっしぃは何をしているのかモカに聞くと、答えてくれた。
「ねっしぃはまだ子供たがら、訓練中なんだ」
「えっ!この大きさで、まだ子供なの!?」
驚きながらキアラくんはねっしぃを見た。
ねっしぃはキアラくんの言葉に反応するように鳴くと、キアラくんの頭に噛み付いた。
「キューン」
「いててて!?」
「ごめんなさい!その子、甘えん坊だから!」
「噛むのはちょっと加減してよ……」
「ごめんね……気をつけるよ」
ねっしぃに謝られながら、キアラくんは思った。
(あれ?意外に可愛い?)
そんなこんなで、日々は過ぎていった。
******
ある日、キアラくんは基地の食堂で朝食を食べていた。
今日のメニューは鮭定食。南極でも鮭捕れるんだ、と思いながら食べていると、モカが鮭を咥えて走って来た。
モカは席につくと、キアラくんに今日の予定を話す。
「キアラくーん。食べ終わったらブリーフィングするよ~」
「はーい」
「さぁ、今日も張り切って行こう!」
「おー!!」
モカの掛け声と共に、今日も一日が始まった。
朝食を終え、ブリーフィングルームへ行くと、既にメンバーは揃っていた。キアラくんとモカが座ると、アンタークティカ基地の司令官から話が始まった。
「最近、近海で不穏な動きがある。その調査のため、君達に出撃してもらう」
「分かりました」
「了解です!」
「では、準備が出来次第、出発してくれ」
こうして、キアラくんの初めての任務が始まった。
基地の港湾施設へ向かうと、多くの人や妖精さん達になまものが出撃準備をしていた。
「キアラくん、こっちこっち!」
モカの声が聞こえたのでそちらへ行くと、初めて会った時の段ボールへ乗り込むモカがいた。
「キアラくんは、私と一緒の艦だよ」
「わかった。よろしくね!」
「うん。よろしく!それじゃ、早速出発するね!」
「気をつけてね」
そう言うと、モカは段ボールを発進させた。
「みゃー!出力微速前進。港湾を出たら、巡航速度を維持して」
モカの指示に従い、妖精さん達が機関出力の調整を行う。そして、モカ達は目的地へ向けて出発した。
氷山の間をしばらく進むと、オペレーターから声がかかる。
「まもなく、捜索範囲内になります。各員、配置についてください」
どこかふわっとしていた妖精さん達も、それを聞くと表情を引き締め、持ち場についた。
捜索海域に到着すると、モカ艦隊は一時的に別れ、周辺の調査を始めた。
「この辺は、何もなさそうですね……」
キアラくんがそう呟くと、彼の通信機に連絡が入った。
「はい。こちらモカ艦隊旗艦、段ボールです」
『雪風様だ!目標と思われる物をみつけたのだ。座標を送るからこっちに来て』
「さすが幸運艦だね。本艦はこれより目標座標へ向かう。キアラくん、各艦にも通達して」
「はい!」
モカの指示を実行し、しばらく進むと水平線の向こうに巨大な影が見えた。
「モカさん!あそこ!」
「うわぁぁぁ!でかい!何かな?」
段ボールを近づけてそれを確認すると、それはシロナガスクジラの残骸だった。
「なんでこんなところに……」
「わからないけど、回収しないとね」
「はい」
「キアラくん、妖精さん。曳航の準備をお願いできる?」
「わかりました」
キアラくんと妖精さん達は、牽引用のロープを準備すると、シロナガスクジラの残骸にくくりつけた。
「準備できたよ」
「OK。それじゃ、雪風ちゃんの所に行こっか」
「はい」
モカ達は、雪風がいる場所へ向かった。
到着すると、そこには雪風が自慢げに待っていた。
「遅かったわね。わたしの運なら、楽勝よ」
「流石、雪風ちゃんだね」
「当然なのだ!」
雪風が見つけたのは、深海棲艦達の部品の破片や壊れた物資輸送コンテナだった。
見た限りだと、何者かに襲撃されたように思えるが、その正体を特定できそうな物は無さそうであった。
「これも基地に運ぼう。何かわかるかもしれないからね」
「よし!雪風様に任せるが良い!」
「さすがだね。よろしくお願いね」
モカが褒めると、雪風は嬉しそうにうなずいた。
「雪風様の輸送する姿を存分に見るのだ!」
キアラくんは、その様子を見て思った。
(なんか、かわいいかも……)
その後、他のメンバーも何かしらの残骸や破片を見つけたようで、それらを回収し、基地に帰投した。
「これが今回の戦果か……」
キアラくんとモカは、執務室で調査結果を確認していた。
「どう思います?司令官」
「そうだね……調査班の報告によると、巨大な生物による補食行為であることがわかった。残っていた痕から、大きさは最低でも200m以上ある事がわかっている」
「そんな……」
「確実にボスクラスのなまものの仕業だ」
ボスなまもの。野生のなまもの兵器を束ねるリーダー的存在で、非常に大きく、強さも他のなまもの兵器以上の、まさにボスに相応しい存在だ。
「君達には、引き続き調査を頼む」
「了解しました」
******
モカ艦隊は数日にわたって調査を進めたが、謎のボスなまもの兵器率いるグループはなかなか賢く、その尻尾を捕まえる事ができないでいた。
「ふん、この雪風様を相手にここまで逃げるとは中々やるではないか!」
「このままじゃキリがないね……」
モカも、新しく見つけたシロナガスクジラの残骸を眺めながら呟いた。
「駆けっこで、私が追いつけないなんて……絶対、見つけてやるんだから!」
島風も相手が気になるのだろう。調査に積極的に参加し、残骸や漂流物を回収してくれた。
雪風と島風、2人のお陰でそれなりの事もわかってきていた。
25mちかい大きさのシロナガスクジラを食い尽くすほどの食欲を持ち、艦隊に気づき、すぐに逃げてしまう程の脚力。
そして、おそらく、南極海にもともと生息しているなまものであることが予想される。
これらの情報から、モカはこのボスの正体を突き止めた。
「多分、イカだと思う」
イカ。分類では潜水艦となっているなまもの兵器で、ミサイルや魚雷で武装したなまもの兵器。
過去には300m以上もする[恐怖の大王]と呼ばれた個体も出現していた。
「まさか、恐怖の大王が復活したの?」
心配するキアラくんにモカは頭を横に振る。
「まだわかんないけど、可能性は否定できないと思う」
「もしそうなら……」
「うん。私達だけで対処するのは厳しいかもしれないね……」
「モカさん……」
不安そうなキアラくんを見て、モカは笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。何かあったとしても、みんなと一緒ならきっと勝てるよ!」
「誰にも負けまないスピードで、やっつけちゃうよ!」
「次世代型駆逐艦であるあたし、天津風の出番ね。いい風を呼ぶわよ」
「ハッハッハッ!何を怖じ気づいてる。無敵の雪風様が居るのだ。負ける訳が無い!」
モカ艦隊の皆からの励ましに、キアラくんは勇気づけられた。
「皆さん……ありがとうございます」
「よし、そうと決まれば作戦会議だね。各員、ブリーフィングルームに集合!」
「了解!」
ブリーフィングルームにキアラくん達が到着すると、壮大なBGM*2が流れていた。
席に座ると、司会の人が進行を始める。
「司令官より、お言葉です」
「今回はイカについて話し合う。数日前にモカ艦隊が発見した残骸の調査を進めた結果、イカの仕業であることが推測された。よって、これより、その対策を練る」
「司令官!質問よろしいでしょうか」
「どうぞ、キアラ君」
「そのイカは、どのくらいの大きさなのですか?」
「そうだな……大体、全長250m前後だと思われる。ちなみに、現在発見されているいるなまもの兵器の中では、最大級となる」
「に……250!?」
「うむ。しかも、まだ成長途中らしい」
「それは、恐ろしいですね……」
「うむ。そこで、まずは相手の戦力分析を行う」
司令官が調査班へ視線を向けると、モニターに情報が出され、調査班から報告される。
「装甲が融解している事から、光学兵器を装備している可能性が高いです。また、深海棲艦の艤装のブラックボックスの解析により、襲撃の始まりは超遠距離からの攻撃であることも判明しています。さらに、コンテナ等からは、何かが吸着した痕が発見されました」
調査班へ礼を言うと、司令官は話の続きをする。
「ありがとう。この通り、従来のイカより武装が充実している。つまり、かなり危険な相手だという事がわかる」
「なるほど……」
「しかし、これはあくまで現時点での情報だ。これからの行動次第では、状況が変化する可能性もある。そこで、モカ艦隊の諸君らに、意見を聞きたい」
司令官の言葉を受け、キアラくんが挙手した。
「はい。エギングして、直接確認するのが良いと思います」
「ふむ……」
エギングとは、餌木(エギ)と呼ばれるルアーを用いた、一般的なサイズのイカを釣る一種の方法である
「司令官、イカがですか?」
「いささか危険ではあるが、現状ではそれしか方法は無いか……」
「司令官、それなら私に任せてよ!」
モカは自信満々に前足を挙げた。
「モカ艦長、君に出来るかね?」
「うん!私なら絶対できるよ!」
「わかった。君に一任しよう」
「ありがとう!私達で、絶対に捕まえようね!」
こうして、モカ艦隊によるボスなまもの兵器、ボスイカを釣り上げる作戦がスタートした。
******
巨大な餌木を曳航しながら、段ボールは南極基地を出撃し、南極海に来ていた。
「モカさん、本当に大丈夫なんですか?」
キアラくんは、モカを心配して聞くと、大丈夫だといった。
「大丈夫だよ。こう見えても、私は大物を沢山倒してきたんだから!」
「でも、釣り上げたのがボスイカだったら……」
「その時は、私の運が無かっただけだよ。それに、艦隊のメンバーを信じているから」
「モカさん……」
「キアラくんも、一緒に信じてあげて」
「わかりました。俺も、皆さんの事を信じています」
「その意気だよ。それじゃあ、そろそろ始めるね」
「頑張ってください!」
「ありがとー」
そう言うと、モカは妖精さん達と協力して、巨大餌木を水中へ投げ入れた。
「よし、これで後は待つだけだね」
そういうとモカは席を離れると、食堂へ向かった。
「モカさん、どこ行ってたんですか?」
「ちょっと、ご飯食べない?」
「良いんですか?」
「よく言うでしょ、腹がへっては戦はできぬ、って」
「はぁ……」
「というわけで、何か作ろう!」
「モカさん、料理作れるんですね」
「まあね!これでも、女の子*3だからね!」
「あの、俺は男なんだけど……」
「大丈夫!今は料理男子も居るから!一緒に頑張ろう!ほら、エプロン着て!材料はこれを使っていいから!」
こうして、2人は仲良く料理を始めた。
料理を開始して約1時間。食堂にはスパイスの効いた良い匂いがしていた。
「いい感じ!カレーの完成だね!」
「はい!」
匂いに釣られて来た妖精さん達にも振る舞いながら、2人は協力して作ったカレーを食べる。
「う~ん……美味しい!海を見ながらカレー食べると生き返るよね!元気元気!」
キアラくんもカレーを口にすると、その美味しさに感動した。
「凄くおいしいです!モカさんの作るカレー最高です!」
「えへへ……ありがとう!でも、キアラくんが協力してくれたからだよ」
カレーを食べきると、モカはある事をキアラくんに聞く。
「そうだ、キアラくんは好きな食べ物とかある?」
「俺の好きな食べ物は、その……魚肉ハンバーグです」
「そうなんだ。じゃあ、今度のメニューは魚肉ハンバーグだね!」
モカの言葉に、食堂に居た妖精さん達も大喜びした。
「やったー!」
「楽しみにしてるよ!」
「わーいわーい」
その様子を見たキアラくんは笑顔になると、モカにお礼を言った。
「ありがとうございます」
「どう致しまして!さてと、片付け終わったし、そろそろ戻ろうか」
モカ達がブリッジに戻ると、ソナー観測手から声がかかる。
「モカ館長*4……じゃ、なかった。モカ艦長、ソナーに反応です。影から見てイカと思われます」
その言葉を聞き、モカは表情を引き締めて席に座ると指示を出す。
「これより、イカ釣りを始めます!総員、配置についてください」
モカの指示に従い、妖精さん達は行動を開始した。
「ソナー手より報告。イカが餌木に反応しました。近づいて来ます」
「わかった。引き続き監視をお願いね」
「了解しました」
「艦長、各艦より入電です。『我、配置到着』です」
「わかった。みんな、準備はいいみたいだね」
モカが見つめるモニターには、各艦の姿があった。
「キアラくん、準備は良い?」
「はい。いつでも行けます」
「それじゃあ、イカ釣り作戦を開始します。餌木を動かして」
モカの指示に従い、妖精さんが巨大餌木のワイヤーを操作してあたかも生きているようにみせかける。
イカも巨大餌木を獲物と認識したのだろう。速度を上げて追いかけてきた。
「よし、そのまま……」
モカがそう呟いた時、段ボールに衝撃が走った。予想通り、イカは巨大餌木を獲物と思い、吸着したのだ。
「このまま釣り上げて!」
機械が唸りをあげ、ワイヤーを巻き上げていく。イカも獲物が逃げていると勘違いしているようで、作戦は順調に進んでいる。
そして、ついにイカはその姿を海面に現した!
全長約30m程の巨大イカを釣り上げた。ボスイカではなかったが、こいつを尋問すれば、何かわかるかもしれない。
「これはボスイカじゃないけど。でも、貴重な資料になるね」
「なーにー、俺様のボスに用だと?そんな事は許さん!」
釣り上げられたイカは、触腕を振り回しながら誘導魚雷を吐き出す!
「イカが喋った!?」
驚くキアラくんの横で、モカは冷静に回避する。
「キアラくん!各艦に入電。こいつを捕まえるよ!」
「わかりました!」
キアラくんは素早く通信機を操作して各艦に入電する。
そのすぐ後に、疾走する艦影が現れた。
「速きこと、島風の如し!イカなんて、あっという間に捕まえちゃうんだから!」
「島風ちゃん!」
「モカさん、遅れてごめんなさい。でも、私が来たからにはもう大丈夫だよ!」
「頼もしいね!それじゃあ、一緒に戦おう」
「オゥッ!」
島風はその速さで戦場を駆け抜け、イカの吐き出した誘導魚雷を機銃で破壊していく。
「魚雷、おっそーい!」
「何を!これなら、どうだ!!」
次にイカが吐き出したのは、ミサイルだった。いくら島風が速かろうと、高速で飛翔してくるミサイルを避けることはできないはずだ。
だが……
「甘いね!連装砲ちゃん!」
島風の声と共に、彼女の足元から2体のロボットが現れ、ミサイルに砲撃する。
「連装砲パンチ!」
「な、なんだと!」
「まだまだぁ!」
さらに、もう一体現れると、三体でイカに砲撃した。
「タービン出力上昇。いっくよー、島風クアドプラー!!」
連装砲ちゃん達と島風の四連攻撃には、さすがのイカも怯んだ。そこへ、モカの乗艦である段ボールの攻撃が刺さる。
「くらえー、にゃんこビーム!」
段ボールから発射された二本のビームは、蛇行しながらイカに命中すると、その巨体は水上に倒れていった。
「ふぅ……何とか勝てたかな?」
「モカさん、やりましたね!」
「キアラくんのおかげだよ。ありがとう」
「いえ、俺は何もしてませんよ」
「ううん、キアラくんが通信機で呼んでくれたから、早く倒せたんだよ」
「あはは……照れますね」
「あー!私も頑張ったのにー」
「うん、島風ちゃんもありがとう!」
「にひひっ」
3人が勝利の余韻に浸っている時、元気な声が響いた。
「ハッハッハッ、雪風様到着!敵はどこだー!」
「雪風ちゃん、おっそーい。モカさんと島風で、とっくに倒したんだから」
「ナニー!?せっかく活躍できると思ったのだが……」
「まあまあ、それよりもこのイカを運ばないと」
4人はイカを拘束すると、基地まで連行した。
連行されたイカは大人しく情報を提供した。なんでも、「ボスイカの威を借りて威張れば、食事にありつけたので……なんでも話ます。ゲソ焼きだけは、勘弁してください」との事。イカの話をまとめるとこうなる。
・数ヶ月前に海底から超巨大なイカが出てきた。
・そのイカは[恐怖の大王]の後継者を名乗り、周辺のイカ達をまとまてボスになった。
・中には反抗したイカも居たが、その巨体と力によってねじ伏せられた。
・しかし、その巨体故、非常に大食漢であり、他のイカがちゃんと食事できない事ある。
「これが、イカからの情報だ」
司令官の言葉に集まったメンバー達はざわつく。
「これは、ボスイカの仕業に違いない。すぐに討伐隊を編成しよう」
「待ってください!確かに連行したイカの言う通り、ボスイカが関係しているかもしれませんが、まだ情報が足りません」
「そうだぜ。それに、イカの言ってる事が本当だとは限らないだろ?」
「そうですね。ここは、まずは情報収集が先決です。イカの言っている事が嘘の可能性も考慮して、周辺海域の調査をお願いします」
他の艦長達からの提案に、司令官は首を横に振る。
「いや、それでは遅すぎる。数時間前に、我が国の輸送船がイカ達から襲撃を受けた。これ以上国民に犠牲出す訳にはいかない。今すぐ、討伐隊の編成を……」
「お待ち下さい!その件についてですが……」
その時、1人の男が入ってきた。男は胸に手を当てながら敬礼する。
「私は、南極国家アンタークティカ所属、潜水艦ブルードルフィン艦長ラピスと言います。我々が調査した結果、ボスイカはこの近海には存在しませんでした」
「何だと!?」
「そんなはずないよ!だって、さっき私達が倒したもん!」
モカが反論するが、ラピスは首を振る。
「いえ、あのイカは、この辺りに生息しているのです。恐らく、あなた方の餌木に誘き寄せたのでしょう」
「じゃあ、さっきのイカはなんだったのよ!」
「恐らく、最近ボスイカの勢力下に入ったイカなのでしょう。ボスイカはもっと遠くにいると思われます」
「そんな……じゃあ、私達のしたことは無駄なの?」
「いいえ、そんな事はありません」
「どういうことだ?」
「あなた方の行動により、我々は調査する事ができ、ボスイカの居る場所を突き止める事ができました」
ラピスの言葉に集まったメンバーがうなずいた。
「なるほど」
「そういう事か……」
「読めてたぜ……完全に!!」
「あーそういうことね完全に理解した」
つまり、そういう事である。
「モカ艦隊はブルードルフィン艦長のラピスと共に出撃せよ!ボスイカを討伐するのだ!他の艦長達も準備に入れ!」
「「了解!」」
司令官の命令に、南極基地は慌ただしく出撃準備を進めていく。
「モカ、段ボール発進!」
「行くぞ!雪風様、出撃!」
「タービン出力上昇!いっくよー!」
「目標、ボスイカ。天津風、行くわよ!」
「あひる艦隊、出撃であります!」
「まがもだ。突撃する!!」
「ギャーアアス!!」
こうして、モカ艦隊の出撃が決まり、潜水艦ブルードルフィンと共にボスイカの縄張りへ向かって行った。
「全員、無事に帰ってきてくれ」
出撃していくモカ達に、司令官は静かに祈った。
******
『さて、ここがボスイカのいる海域だ』
ラピスの案内の元、モカ艦隊はボスイカの縄張りに来ていた。そこには氷塊は無く、広大な海原が広がっている。
「こんな広い所にいたら、見つけるの大変じゃない?」
『大丈夫。私の艦は特殊だからね』
そういうと、ラピスはブルードルフィンで部下に指示を出す。
何をしているのかはわからないが、ボスイカを探す行動だろう。そうキアラくんが考えていると、コーンコーンという音が聞こえてきた。
「あれ?なんだろう、この音……」
「どうかしたか?」
隣の妖精さんが不思議に聞いてきたので、キアラくんはその理由を話す。
「いえ、ヘッドホンからコーン、コーンって音がするんです」
「たぶん、それはアクティブソナーの音だな。自分から音を出して、艦船から跳ね返ってくる音を受信するんだ。でも、誰がアクティブソナーなんか出してるんだ?」
キアラくんと妖精さんの疑問に答えるよりも早く、ラピスから通信がきた。
『ボスイカの居場所がわかった。座標を送るから、そこに向かおう』
ブルードルフィンから送られてきた座標に行こうとした時、突如レーダーが反応する。
「レーダーに反応、対空警戒!繰り返す。対空警戒!」
「対空兵器起動、目標捕捉しだい撃って!」
モカの指示に火器管制官の妖精さんが素早く動き、段ボールの対空兵装が攻撃態勢を整える。
そして、数秒後、レーダーに映っていた影が姿を現した。
「来た!敵ミサイルだ!」
「迎撃開始!撃ち落として!」
「対空機銃掃射!撃てぇ!」
超遠距離から撃たれた敵ミサイルは、各艦の対空砲火によって迎撃された。
それが終わるのと同時に艦隊にたいして強制通信が発生した。
『待っていたぞ、人間共とそれに従うなまもの達よ』
「あなたは誰!?」
モカの言葉に謎の声が答える。
『私は、[恐怖の大王]の正当なる血族にして、その後継者。南極海は偉大なる我が一族の海。お前達はただの食料である』
「なにを言ってんの!?そんな事させないもんね!みんな、いくよ~!」
「「「おー!!!」」」
モカの号令に全員が応える!!
『なんと愚かな……私に逆らう事が、イカに無駄であるか。その身をもって知るがいい』
その言葉とともに、水底に蠢くイカ達が浮上してモカ艦隊に襲いかかってきた。
「来るよ!全砲門、ファイヤー。みゃぁぉーーーー!!」
モカの掛け声と共に、にゃんこビームが発射され、砲撃戦が始まると同時に、モカ艦隊は回避運動を始めた。
しかし、イカ達は誘導魚雷やミサイルを次々と発射し、モカ艦隊へ圧力をかける。
「弾幕薄いよ!何やってんの!?」
『まがもだ。敵の攻撃が激しい。だが、艦隊を守りきる』
『あひる艦隊のあひるであります。我が艦は現在、弾薬再装填中。対空砲火に参加は無理であります』
『同じく、あひる艦隊のレーザーあひるだ。砲身の冷却が追いつかない、焼けそうだ』
各艦からあがる苦戦の声にどうすればいいか悩んでいると、ラピスから提案が入る。
『このままではやられる。一旦解散し、各々で座標に向かうのはどうだろうか?』
「えっ、解散ですか?」
『そうだ。ボスイカを倒せば、この海域のイカ達も逃げ出すだろう。その為にも誰かがボスイカにたどり着く必要がある』
ラピスの提案に、モカは考える。
(確かに、このままじゃジリ貧だ。ここはラピスさんの言う通りにした方がいいかもしれない)
そう考えたモカは決断する。
「わかった。みんな、ボスイカの元で会おう!」
『ふん、ここで倒れる姿は忍びんなのだ……今は見逃してやるのだ!ボスイカの所で待っておるぞ!』
『なら、競争だね!島風、負けませんよ?』
『どんなピンチも頑張って乗り越えるんだから!』
『あひる艦隊は、一時モカ艦隊を離脱するであります。全員そろって、ボスイカ前での再会を願います』
「よーし、みんなを送り出すよ!」
そういうと、モカは段ボールの甲板に登り、巨大化した。
「私の力、見せてあげる!にゃんこビームスーパーチャージ!はっしゃーー!!」
=͟͟=͟͟͞͞ε:>〉左舷に被弾!
ーーゃぎくコ:彡
./\.
</-―-ヘ>
( ̄ー ̄) 甲板に被弾!
艦橋大破!
ᔦ ˃̥̥̥ ˂̥̥̥ ᔨ
右舷大破!ᔦ ˃̥̥̥ ˂̥̥̥| |˃̥̥̥ ˂̥̥̥ ᔨ左舷大破!
甘美に被弾!<|:3 艦尾大破!
左下 くっ:彡 左下
モカの両目が光ると、肉球型のビームが発射され、次々と海面に出てきていたイカ達に命中した。
『よし、今だ!』
ラピスのブルードルフィンが急速潜航するのと同時に艦隊メンバーは解散して、各々でボスイカの居る座標を目指したのだった……
ボスイカの縄張りにある氷山。
その氷山を玉座のようにして座る、1人の少女が居た。そう、彼女こそ[恐怖の大王]の残した子孫であり、この騒動を引き起こした首魁である。
少女は氷山の玉座に座りながら、過去を思い出す。
[あの戦争]が終結した頃。その戦いに参加していたアンタークティカも大いに疲弊した時期を狙い、火星からやって来た初代[恐怖の大王]は、仲間達を引き連れ南極海を我が物にせんとした。
しかし、その野望はウィルキアなる国から釣りに来た親子と愉快な仲間達よって、打ち砕かれてしまった……
その後は大変だった。まだ幼かった少女は、他の兄弟や姉妹、その他のなまもの兵器との生存をかけたサバイバルを強いられ、少女が大きくなった時にはアンタークティカも国力を取り戻しており、南極を巡視する艦船から逃れるように海深く潜ったのも触腕で数えきれない程だ。
「だが、もうその時は終わった。私は、父[恐怖の大王]とほぼ同じ力を手にした!奴等等に負ける筈がなーい!!ゲソゲソゲソ」
威厳ある姿は何処へやら……見た目相応の少女がそこに居た。背伸びしたいお年頃なのだ。許してほしい。
「おい、地の文!私の説明に余計なモノをつけるな!」
すいませんでした。
「わかればよろしいゲソ。南極国家を滅ぼした後は、ウィルキアを滅ぼしてくれよう。ゲーーッソゲソゲソゲソ」
少女が笑っていると、そこに1隻の潜水艦が現れた。そう、ブルードルフィンだ。
「……言われた通りにしたぞ」
「今までの諜報活動、ご苦労であったぞ人間」
気づいていた読者も居ただろう。潜水艦ブルードルフィンの艦長、ラピスは南極国家を裏切り、[恐怖の大王]の配下となっていたのだ!
あの時、キアラくんのヘッドホンから聞こえた音、ラピスが[恐怖の大王]に知らせる為に発したアクティブソナーの音だったのだ!!
それを聞いた[恐怖の大王]は、超遠距離ミサイルを挨拶として発射し、更に部下をけしかけたのだ。イカとは思えない、なんという謀略。
そして、読者はラピスを攻めないでほしい。彼にも理由があるのだ……
「なあ、言われた通りにしたんだ。家族を、息子を解放してくれ!」
なんという卑怯![恐怖の大王]はラピスの息子を人質にしていたのだ。賢明なる読者はすでに察しているだろう。襲われたアンタークティカの輸送船とは、ラピスの息子が乗っていたのだ。
「わかっているとも。今すぐ息子に会わせてあげる」
「ほ、本当か!?」
「ああ」
そういうと、少女は氷山の玉座を飛び降り、真の姿*8を解放した!
「では、息子に会わせてやろう」
触腕を素早く伸ばし、ブルードルフィンを掴むと、その船体を締め上げる。
「は、話が違うぞ!!」
「ゲーーソゲソゲソ。何を言っている。ちゃんと会えるだろう?……私の腹の中という、あの世でな!!」
そういうと、少女はブルードルフィンを口元に運び、そのまま飲み込んでしまった。
「これで邪魔者は居なくなった。では、始めるとするか……」
そう言うと、少女は南極全土に命令を下した。
『南極国民諸君、よーく聞くが良い。私は[恐怖の大王]の正当なる後継者、キョウフノダイオウイカ。この南極海の支配権は私が握る」
「そんな事させないもんね!」
「誰だ!!」
「人呼んでモカ!あなたの野望を打ち砕く、艦隊の艦長だよ!!」
それは、地球をイカの世界にしようする邪悪ななまもの兵器、キョウフノダイオウイカと戦う為に立ち上がった豹柄のブチねこだった。
「人間の支配に下った愚かななまもの兵器に何ができるゲソ」
「それはどうかな?」
そういうと、モカは段ボールの甲板からにゃんこビームを発射。蛇行する二本のビームは、見事キョウフノダイオウイカに命中する。
「ふふん、どうだ参ったか!」
「き、貴様……よくも私のイカボディに。許さんぞ!!」
そういうと、キョウフノダイオウイカはその巨体を活かした体当たりをモカに仕掛ける。
「わっ!ちょ、ちょっと待って!」
間一髪で回避するも、氷山の一角が崩れてしまう。
「こらぁーー!危ないでしょ」
「そんなもの危険には入らないゲソ」
そういうと、キョウフノダイオウイカは大きく息を吸うと、全身に力を溜める。
高まるエネルギーに、観測手の妖精さんが伝える。
「キョウフノダイオウイカに高エネルギー反応!回避してください!」
「危険とはこういう事を言うのだ!」
キョウフノダイオウイカは漏斗*9から、全てを破壊するどす黒い光線を吐き出した。
モカの乗る段ボールは寸前の所で回避する事ができたが、その先にあった氷山は蒸発する間も無く一瞬で消滅した。
「これが上位なまもの兵器だけが持つ、イカ墨波動砲だ!次は外さないゲソ」
「ひえぇ、あんなのに当たったら、一溜りもないよぉ」
モカは操舵手に之字運動するよう命令するが、キョウフノダイオウイカはそれを笑って見ていた。
「ゲソゲソゲソ。無駄な事を」
海中から触腕を出すと、超怪力線の照射を始めた。
「これも追加してあげる。さあ、逃げまどうがいい」
放たれたのは、非常に低速のリング状のレーザーだった。それはイカリングレーザーと呼ばれる特殊な光線で、普通のレーザーのように即着弾はない代わりに、光線を長い時間残す物だ。
低速と高速の光の弾幕を電磁防壁や回避運動でやり過ごす段ボールであったが、それ故にキョウフノダイオウイカへの攻撃が低下していた。
「このままじゃやられる。どうにかしないと」
キアラくんは現状を打破しようと考えるが、 良い案は浮かばなかった。
「あーもう!何であの時、一回だけの打開策を使っちゃうんだよ!……ん?一回だけの打開策。そうか、これだ!」
キアラくんはバックパックの中をあさり、この世界へ来た時に使ってしまった一回だけの打開策を取り出した。
「あった!」
スマホアプリと連動して動く、不思議な紙飛行機*10。これのお陰で、モカや基地の人達に会えた物。
「モカさん、今助けるからね!」
キアラくんは紙飛行機を投げると、スマホでそれをコントロールし、わざとキョウフノダイオウイカの前を飛行させる。
「ええい!鬱陶しいわ!!」
「よし、今のうちに!」
「わかった!」
モカは段ボールを急速旋回させ、イカリングレーザーを避けて、にゃんこビームで攻撃する。しかしそれは、触腕によって防がれてしまったが、相手の手数は確かに減った。
「まだ、こんな手を隠し持っていたのか。ならばこれでどうだ」
キョウフノダイオウイカは1発のビームを発射するが、それは段ボールにも紙飛行機にも当たらない場所であった。しかし、次の瞬間には複数のビームに拡散し、紙飛行機と段ボールに襲いかかる。
「うわっ!?」
「みゃみゃ、ランダム回避運動!」
「拡散荷電粒子砲だ。私にはまだまだ武装はあるのだぞ。抵抗は諦めよ」
「いやだね!」
「そうだよ!」
「「俺達はまだ負けていないんだ!」」
そういうと、二人はそれぞれの持ち場に戻り、段ボールを操艦してイカリングレーザーや超怪力線に拡散荷電粒子砲をかわしていく。
「何度やっても同じ事ゲソ」
キョウフノダイオウイカは、触腕を振り上げて、叩きつけようとしたその時、触腕が砲撃によってずらされた。
「速いのに遅れてごめんね。でも、速さで挽回するよ!」
「島風ちゃん!」
「何を怖じ気づいてる。無敵の雪風様、今度は遅刻せずに参上なのだ。ハッハッハッ!」
「雪風ちゃんも来てくれたんだね!」
「モカ、遅れちゃったけど、一緒に戦うのだ!」
「うん!」
「おのれ小娘共め。まとめて地獄に送ってやるゲソ!」
そういうと、キョウフノダイオウイカはイカ墨波動砲の発射準備を始まる。
ただならぬ雰囲気に、全員が緊張する。
「モカ、敵がチャージし始めたよ!」
「わかった!」
「雪風ちゃん、ここはモカさんを援護するよ」
「任せよ。幸運艦の力、見せてあげようではないか」
島風と雪風は艤装からエネルギー伝達パイプを取り出すと、段ボールに接続する。
「ハイパーにゃんこビーム発射準備開始!」
しかし、ハイパーにゃんこビームよりも先に、イカ墨波動砲の準備が整ってしまった
「ゲソゲソゲソ。遅い!イカ墨波動砲発射!!」
「そんな事させるもんかー!!」
イカ墨波動砲が発射される直前、ねっしぃがキョウフノダイオウイカに体当たりして、その射線をずらした。
「UMA型が、イカ様に逆らうのか!」
キョウフノダイオウイカは触腕でねっしぃを掴み投げ飛ばすと、光輝く玉を出した。玉は弧を描きならが飛ぶと、海面に接触。その瞬間に巨大な爆発が起こり、衝撃波がねっしぃを襲った。
「ウワーーーッ!」
「ねっしぃくん!?」
ねっしぃを襲ったのは、光子榴弾砲。対消滅反応を利用した反物質の榴弾砲だ。
「これだけ痛めつけてやれば、すぐには動けないゲソ。次はお前達だ」
キョウフノダイオウイカは再びイカ墨波動砲の発射にかかろとしたが、その前を風のように駆け抜ける少女が居た。
「あたしを忘れてないかしら?酸素魚雷一斉射、撃て!!」
天津風から放たれた酸素魚雷は真っ直ぐに進み、息を吸いこんでいるキョウフノダイオウイカの口の中に入っていった。
「モゴッ!?コパァァーッ!?!?」
口の中で大爆発した酸素魚雷に、キョウフノダイオウイカもイカ墨波動砲発射を中止せざる得なかった。
「な、なんて事をしてくれたんだゲソ!これじゃあ、もうイカ墨波動砲を使えないじゃないか!」
「あら?あなた、イカなのに墨吐けないの?それじゃあ、ただの魚じゃない」
「なんだとぉ?」
「だって、英語でイカは、cuttlefishって言うでしょ。墨吐けないなら、fish。つまり、魚*11じゃない」
「言わせておけば!もう、イカったもんね!!こうなったら、全員まとめて始末してやる!覚悟するゲソ!」
触腕を振り回して天津風を叩き潰そうとしたが、そこへ紙飛行機が突撃する。
「させるか!」
キアラくんの操作する紙飛行機だ。それは寸分違わず、キョウフノダイオウイカの目玉に体当たりした。
「ぐわあああーーっ!!目玉ダイーン!!」
「モカ、雪風、島風!今よ!」
「了解!」
「うむ!」
「わかった!」
天津風とキアラくんが作った隙にあわせて、モカ達は一斉に攻撃を開始した。
「エネルギー充填率100%!何時でも撃てるよ」
「雪風様に、倒されるがいい!」
「よーし、いっくよー!」
「「「ハイパーにゃんこビーム、発射!!」」」
二人と一匹から放たれたのは、極太のにゃんこ顔のビームだった!
しかし、キョウフノダイオウイカは回避したくても、目玉に受けた地味なダメージで動けなかった。
「そ、そんなモノ、電磁防壁で防いでやるゲソ!」
キョウフノダイオウイカは電磁防壁にエネルギーを送るが、痛みが走り、起動できなかった。
「バ、バカな!?電磁防壁発生器には攻撃なんか食らってない……まさか!?」
そう、そのまさかである!ねっしぃの体当たりは無駄ではなかったのだ!!
「オ・ノーレェェェェェェッ!!」
最後の抵抗とばかりに、キョウフノダイオウイカは拡散荷電粒子砲やイカリングレーザーに超怪力線を乱射してくる。
「「「いっけぇぇえええええええええ!!」」」
しかし、ハイパーにゃんこビームはキョウフノダイオウイカの攻撃を全て押し退け、真っ直ぐに進んだ!
「なにぃい!この私が、こんな小娘共に負けるというのかぁああ!!」
極太のにゃんこ顔ビームは、キョウフノダイオウイカに命中し、そのままビームと共に、空の彼方へと消えていった。
「やったーー!」
「みゃーん♪」
モカと島風はハイタッチをして喜び、天津風と雪風はがっちりと握手した。
「やりましたね」
「流石は雪風様なのだ」
そして、キアラくんは、他の仲間達からの通信を受け取っていた。
『こちら、あひる艦隊のあひるであります。手下のイカ達が、逃げていくのを確認しました。』
『まがもだ。こっちも、イカ共が逃げてくぞ!』
「ありがとうございます。こちらも、キョウフノダイオウイカを撃破。これより帰還します。」
こうして、キアラくんの初めての任務は終わった。
しかし、基地に帰るまでが任務だ。キアラくんは負傷したねっしぃの介抱をしながら、あることに気がついた。
「そういえば、ラピス艦長はどこだろう?」
そう、ブルードルフィンの艦長、ラピスだけがこの場に居ないのだ。
「確かに、探さないと」
モカ達は、ラピスとその乗艦のブルードルフィンを探すが、結果は悲しい物であった。
「……これを見るのだ」
それを見つけたのは、雪風だった。そこには、吸盤の痕が残るブルードルフィンの残骸だけが残されていた……
「こんな暗い風いらないわ……」
「嘘でしょ……」
「酷い」
おそらく、キョウフノダイオウイカの潜む場所に移動している途中で手下のイカに襲われたのだろう。
3人と一匹は、それぞれ悲しむが。しかし、キアラくんだけは違っていた。
「……ラピス艦長は必ず探すよ。だから……今は帰ろう」
それは優しさからの言葉だったのだが、他の者はその真意に気づかなかった……
******
南極基地にブルードルフィンの残骸を持ち帰って数日。艦長のラピス以下乗組員の捜索が行われたが、見つかる事はなかった。
今日は、彼らの葬儀の日である。
「皆さま。ご多忙の中、集まって頂きまして誠に有難う御座います。ただいまより、南極国家アンタークティカ海軍、殉職者の葬儀を執り行なわせていただきます」
「勇敢に戦ったブルードルフィンの乗組員に黙祷」
キョウフノダイオウイカ討伐には成功したが、少なくない犠牲があった。
その事実を、キアラくんは悔やんだ。
(もう少し早く任務を達成出来ていれば、ラピス艦長は助かったかもしれない……)
「それでは、黙祷終わります」
葬儀が終わり外に出ると、小さな虹が架かっていた。まるでそれは、ラピスの最後を天が慰めているようであった。そこへ、声にかける者がいた。
「やあ、キアラ君」
それは、南極基地の司令官だった。
「少し、話か」
そう言って、2人は歩き出した。
「始めての任務だったのに、大変だったね」
「いえ、任務は成功しました」
「そうだね。君は見事だったよ」
「……ですが、ラピス艦長達を助けることは出来なかった」
暗い顔をするキアラくんの肩に、司令官は優しく手を乗せた。
「命ある者はいずれ死ぬ運命にある。それが早いか遅いかは分からないが、今回の彼等の死は決して無駄なことではないと思うよ」
「……そうでしょうかね?」
「そう思うからこそ、君は葬儀で悲しんでいるんだろう?」
「そうかもしれません」
2人が歩いていると、いつの間にか目的地についていた。そこは、南極基地の中庭だった。
「ここは、世界大戦や任務中に亡くなった者達の慰霊碑があるんだよ」
「そんな場所があったなんて、知らなかったです」
キアラくんが慰霊碑の前に立ち、手を合わせる。
そんなキアラくんに、司令官は話す。
「ここで、生活を続けるという事は、これからもこういう場面に遭遇するだろう。それでも君は、南極国家アンタークティカに残るかい?」
司令官の問いに、キアラくんは立ち上がって答えた。
「残ります。少しでも、被害者を減らす為に」
その意志の籠もった言葉に、司令官は満足そうに微笑んだ。
「そうか。ならば、頑張りたまえ」
3日後、南極基地に新しい艦長が就任した。それはキアラくんだ。就任を祝い、宴会が行われた。
「「「「キアラくん、就任おめでとう!!」」」」
モカ達に歓迎され、キアラくんは少し照れていた。
「ありがとう。でも、まだ艦長になったばかりなんだし、あまり大袈裟にしないでよ」
「あーはっはっは!謙虚なのも美徳だが、少しは自慢したらどうだ?この雪風様のように」
「雪風ちゃんは、もうちょっと自重した方が良いと思うよ?」
島風があきれた様子で雪風を諭す。しかし、そんな事に構う事無く雪風は高笑いするのだった。
「しかし、キアラ君が残ってくれて、本当に良かった」
安堵する司令官に、キアラくん気になって理由を聞いた。
「どうしてですか?」
「実はね、なまもの兵器達とコミュニケーションできる人は、とても貴重なんだ」
なまもの兵器は本来、武装したちょっと攻撃的な生物だ。その見た目通り、なまもの達は鳴き声でお互いにミュニケーションしている為、人間で彼らと意思の疎通が取れる者はとても少ないのである。
しっかりとなまものと会話できたのは、南極国家の記録よれば、[あの戦争]で活動した第零遊撃部隊の艦長くらいだけだったらしい。
「だから、君が残ってくれて本当に嬉しいよ」
「そうだったんですか……」
「私は、キアラ君が少し羨ましいよ。モカちゃんの言っている事は雰囲気でわかるけど、何を言っているかまではわからないから」
「えっ、なになに。私の話?」
司令官の言葉に、モカがやって来た。司令官は手をふると、席をずらしモカが座れるようにした。
「司令官から、モカさんの話を聞いてたんだ。モカさんは、どんな話をしているのか」
「私、そんなに凄いこと話てますか?」
「そうだね……例えば『お腹空いた』とか『今日は晴れるかなぁ?』とかそういう内容が多いかな……」
司令官が普段感じているモカの気持ちに、キアラくんは思わず苦笑した。
「南極は大変な所だからね。でも、みんなが居るから、私は頑張れるよ!」
「モカさんは、強いね」
キアラくんがそう言うと、モカは照れ臭そうに笑った。その姿を見て、雪風が話に参加する。
「確かにモカは強いな!この雪風様も見習わなくては!」
「島風も負けないよう、もっと速くならないと」
「いい風ね」
そんなやり取りにキアラくんは笑うと、それにつられてモカも笑った。
「これからもどうかよろしいね、キアラくん」
「はい、勿論です!」
おしまい
テーレーレーンデンデンデンテーレーレーンデンデンデン、テーレーレーンデンデンデンテーレーレーンデンデンデン、ウィーンウォーオーン