イナズマイレブンGO1・2・3!松風天馬伝説!(リメイク) 作:楠木東弥
リメイクにあたり要素を再構成した関係上、前回とは数々の差異があります。
俺は、日本の愛知県名古屋市、その地元で名を轟かすイナズマイレブンプレイヤーだった。
具体的には、ペンギン技使いとして。
地元で開かれる大会には必ず参加し、優勝こそ少ないもののペンギン技を駆使して勝ち上がってきた。
究極進化技である皇帝ペンギン1号をG5にするために佐久間の体を76回は壊したし、GOシリーズでも究極進化させてでもペンギン技を使ってきた。
そこまでは、間違いない。
間違いなく、俺の記憶だ。
では、今現在進行形で刻まれ続けているこの記憶は、なんだ?
「夢、じゃないよな……?」
そう、目の前の存在に問いかける。
返事はない。
パタパタと両手を動かし、時たま首を傾げるその愛くるしい生物は、ずっと俺を見つめていた。
紛うことなき、ペンギンだった。
「……」
一旦、置いておこう。
心なし増した頭痛に頭を抱えながら、周囲を見渡す。
だだっ広い真っ白な部屋に置かれた大きなベッド、そこに座る俺とペンギン。
窓からはオレンジの光が差し込んでおり、今が夕方なのだと理解する。
着用している服装もこれまた真っ白なパジャマ、俺の部屋とは似ても似つかないし、とすれば病院だろうか。
取り敢えずナースコールのためにペンギンを退かそうとして、気付く。
伸ばした腕が、俺のものではなかった。
「な、ぁ!?」
一瞬、えも言われぬ吐き気と混乱に襲われた。
腕が細くなっているだけじゃない。
手がゴツくない、足が短い、肌がありえないほど白い、筋肉が付いていない。
鏡がないため顔は確認できないが、少なくとも20歳の俺ではないだろう。
これは、一桁年齢の少年の体だ。
「なん……!?」
わからない、分からないことが多すぎて、思考が止まる。
手汗が滲み、脳が嫌に冷え、そんな俺を、ペンギンがじっと見ていた。
静かすぎる病室に、時計のチクタクという音だけが響く。
意を決して、ナースコールを押した。
説明を、説明が欲しい。
俺の体が退行した訳を、記憶を失った理由を、目の前のペンギンが、一体何なのかの説明を。
待つこと数分、一人の女性が少し息を乱しながら扉を開けた。
「東弥くん。目が覚めたのね」
ひどく、見覚えのある人物だった。
ラベンダー色のロングヘアを後ろで団子に纏め、白と水色を基調とした清潔感のあるナース服を着用し、特徴的な2本の触覚が耳にかかっている。
その女性の胸元に付けられたネームプレートには、久道冬花という名前があった。
「っ!?」
その名前を認識した瞬間、脳の奥に
いくつもの映像が、声が、所々ノイズがかかりながらも高速で脳裏をよぎっていく。
そして、俺はこの女性を思い出す。
久道冬花。それは、イナズマイレブンのキャラクターだ。
それを理解して、再度思考が止まった。
「身体に異常はない? 痛いところとかはある?」
そう言って彼女はこちらに歩を踏み出し始めた。
ゲームやアニメのキャラクターが、まるで実在する人物のように喋り動いている。
夢見た事がないわけではないが、それでも異様な光景に違いなかった。
「……こ、こは、病院、ですか……?」
なんとかその言葉を絞り出す。
久道冬花は多少眉を歪めて不思議がりながらも、
「えぇ、ここは稲妻総合病院よ。東弥くん、貴方はここでずっと眠っていたの」
眠っていた。
無視できない言葉が混じっているが、大事なのはそこではない。
稲妻総合病院、これもまた、イナズマイレブンに出てくる施設の名だ。
これはもう、疑いようがないだろう。
俺は、イナズマイレブンの世界へやって来たらしい。
◆◇◆◇
その後、豪炎寺医師という方に診てもらい、気付けば夜の帳が下りていた。
不思議と記憶喪失の事は問題視されず、俺の混乱を避けるため、事情説明や保護者とやらの面会は明日行うらしい。
何も、問題らしい問題はなかった。
まるで初めからこの世界に生まれ落ちていたかのように、異物であるはずの俺が、当たり前に受け入れられ、存在している。
それがどうしてもむず痒く、気持ち悪く、落ち着かない。
故に、眠れるはずもなく。
俺は病院内を目的もなく歩いていた。
「はぁ……」
トイレの鏡には、俺ではない俺の顔が写っている。
目元や黒髪といった大まかなパーツは見覚えがあるが、肌の白さ、幼さのせいでどうしても別人に思える。
「結局、お前の正体もわからず終いだよ」
廊下に戻ると、最早見慣れてしまったペンギンが立っている。
こいつも十分異物のはずだが、今まで会った人は誰もこいつを気にする様子がなかった。
つまり、当然のものとして受け入れられてるのだ。俺と同じように。
「……寝るか」
気付けば二階まで来てしまっていた。
一階には受付があり、看護師といった従業員が少なからずいるだろう。
なるべく面倒ごとは起こしたくない。
そう考えて踵を返した俺とペンギンの前に、何かがキラリと反射した。
「ん」
思わず立ち止まって、僅かな灯りに照らされるのみの仄暗い廊下に目をやる。
すると、その正体が分かった。
花だ。ピンク色の、恐らく桜の花弁がひらひらと舞っている。
この距離からでも見惚れてしまうような、綺麗な花弁。
呆然と眺めていると、隣に立っているペンギンがテクテクと歩き出した。
「あっ、おい」
ずっと俺の後ろに付いてくるのみだったペンギンの行動に驚く間もなく、そいつは床に落ちた花弁の元で立ち止まり、俺の方に振り返った。
まるで、着いてこいと言わんばかりに。
反発する気力もなく、なんとなしに歩を進め出した。
そうして花弁を手に取ると、何の変哲のないはずのそれに、何故か哀愁の気持ちが湧いてくる。
これもまた、失った記憶のせいなのだろうか。
「……行くか」
俺より背の低いペンギンの方を向き、そう呟く。
行く、もっと先へ。
運命とでも言うべき何かに導かれるように、俺はどんどんと階段から離れていく。
やがて、ある扉の前で足を止めた。
どうやら院内とテラスを隔てている扉のようだ。
扉自体はガラス製なのだが、向こう側は暗くてよく見えない。
花弁はこの向こうから飛んできたのだろう。なら、行かない理由はない。
高揚感で跳ねる心拍数を自覚しながら、自動扉を作動させた。
ぶわり、風が吹いた。
思わず腕で顔を隠す。
大部分が塞がれた視界の先で、色鮮やかな世界が広がっていた。
花が、一面に咲き誇っている。
風で巻き上げられた花弁が宙を舞い、それが月光を反射させて仄かに輝く。
鼻腔をくすぐる甘い匂いが、目の前の花々が決して幻ではないと主張してくる。
腕を下ろし、ゆっくりとテラスを視界に収める。
改めて、神秘的だった。
過去何度か見た植物園よりもなお、別世界。
しばらく心を奪われていると、花の楽園にポツンと一人の少女が立っていることに気付く。
あまりにも自然体で、いっそ風景の一部とすら錯覚してしまいそうな。
小さな街灯に照らされた少女の水色の髪が、風に揺蕩う。
そして、静かにこちらを向いた。
視線が交差する。
驚きのあまり、直立のまま硬直する。少女も驚いたのがわかった。
ペンギンですら、少女に視線を固定して動かない。
走れ、一秒でも早く、彼女の元へ。
本能がそう叫んでいるのに、身体はこれっぽっちも踏み出してくれない。
そんな動けない俺とは対照的に、少女が水色の髪を揺らしながらこちらに駆け出した。
グラグラの体幹で、体力がないのだろう、息を切らしながら。それでも全力疾走で。
やがて、俺たちの距離は0になって。
「会いたかった。トーヤ……」
少女が勢いのまま、俺を力強く抱きしめた。
そのまま二人、まとめて花畑に体を
衝撃で花弁が舞う。痛みはない。
未だ強い力で俺を抱きしめる少女を抱きしめ返して、自然と口が言葉を紡いだ。
「俺も、会いたかったよ。フラン」
俺たちの再会を、花畑が祝福しているような気がした。
1話はやりたい展開だけを書き殴ったので詳細な説明は2話からです。
まだ大学の授業が始まってないのにストレスと疲労が凄いですよ!?