祖龍のヒーローアカデミア   作:暦月

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 お久しぶりです。ハイラルの大地を探索したり、別作品の執筆を行っていたので実質初投稿です。


第十一話 戦闘訓練①

 

「うんうん、皆似合ってるな。恰好から入るってのも案外大切な事だぜ。そして自覚するのだ! 今日から自分は…ヒーローなんだと!!」

 

 そう言われたって私の家、(ヴィラン)予備軍なんですけど。反社会側なんですけど。私個人にしても、到底ヒーローを名乗れるような精神性も、必要性だって感じない。

 周囲が期待に満ちている中並んで歩くのを少し窮屈だと感じ始めていた時、本日の舞台であるグラウンドβに到着した。

 

「さあ始めようか有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ!」

 

 へえ…校庭(グラウンド)って聞いたから体力テストを行った所と大差無いと思ってましたが、まさかの市街地とは。

 勿論私達以外に人は居ませんし、全く同じなら場所を移す意味も無いのである種予想通りと言えば予想通りなのですが。

 

「オールマイト先生! ここって入試の演習場ですよね。また市街地を想定した実技戦闘を行うってことですか?」

 

 あぁ、何か見覚えあるって思ったら確かにここ、私と拳藤さん、それから小大さんが入学試験を行った会場に似てますね。地上からの景色は少ししか見てないのですっかり忘れてました。

 

「嗚呼。この雰囲気、入試の時を思い出すわ~」

 

「ん」

 

「うおッ!? 拳藤が遠い目をして笑ってるぞ! 神藤お前お前本当になにしたんだよ!」

 

 ねえ、そこで私に振らないでくれるかしら。あの時の蹂躙…もとい入学試験は当の私もどうかと思う立ち回りでしたが、それもちゃんと意味があっての行動なんですから。ただ暴れたいだけのヴィランとはその辺違うんですよ。

 

「まあまあ、今更神藤少女を責めたって仕方あるまい。彼女がしたことは決して褒められるものではないが、だからと言って禍根を引き摺るのも正しい選択とは言えないな」

 

「なッ!それじゃあオールマイト、俺の友達(ダチ)の無念はどうやって晴らせばいいんスか!」

 

 オールマイトの言葉に如何にも熱血そうな男子生徒が悲痛な声を上げる。

 

 あれは確か……入学式の時に突っ掛かってきた男子生徒でしたっけ。いい加減割り切ればいいのに面倒だなぁ。

 

「HAHAHA!そんなの一つしかないじゃないか。鉄哲少年、君が神藤少女を超えればいい。他者を害して無念を晴らした気になるようでは、ヒーローとして大成できないぞ。何故ならそんなのはただの自己満足に過ぎんのだからね」

 

「お、俺が神藤を…?」

 

「皆は神藤少女の行いがイケない事だと分かっているのだろう? なら君たちが彼女を正しく導いてあげればいい。彼女から人を傷つけるという選択肢を無くせるとすればそれは、私ではなくこれから三年間を共に歩む君たちを於いて他に居ない」

 

「ッ、それは…」

 

 オールマイトの台詞に感化されたように、クラスメートたちの視線が私に注がれる。

 

 あー、もうウザイ。どうしてヒーローってこう自分勝手なんでしょう。不良生徒の更生なんてのはドラマだけの話なのを理解してないのかしら。

 私が貴方達(ヒーロー)に求めているのはこの国の治安、ひいては文化を守る舞台装置の役割であって、こういう小っちゃな事には首を突っ込まなくて良いんですよ。

 

「それで、話は終わりました? 下らないヒーロー思想を垂れ流す暇があるなら、さっさと授業を始めて欲しいですね、先生」

 

「…聞き捨てなりませんね。美羅さん、下らないとはどういう――」

 

「HAHAHA! どうやら相当嫌われてしまったようだ。それに時間が迫っているのも事実。この話はここまでにして、戦闘訓練の内容について説明するから皆しっかり聞くんだぞ!」

 

「えっ、この空気で進めるの!?」

 

 いけない、つい本音が。クラスの雰囲気が悪くなるのは平穏な高校生活を送る上で障害になるから控えて欲しいのに。

 思えば初めに合格通知を受け取った時からそうだ。オールマイトの言葉に妙に心揺さぶられて、普段の平静を装えなくなる。

 

 何だろう、不快感とも違う…この言い知れぬ違和感みたいなのは。

 私は組の皆みたいにオールマイト嫌いではないけれど、これがNo.1ヒーローの持つ威光によるものだとしたら、私まで彼のアンチになってしまいそうだ。

 

 

「それで訓練の内容だが、円場少年が先程質問してくれた内容の、もう一歩二歩先に踏み込むぞ!」

 

 そう言って手に掲げたプレートには、真ん中に大きく対人戦闘と書かれていた。

 

「今日やるのは屋内での対人戦闘訓練(・・・・・・)さ! (ヴィラン)退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵の出現率は高いんだ。何故だかわかるかな」

 

「外で暴れるのは衝動に駆られた雑魚か、自己顕示欲が強いだけの莫迦どっちかです。真に賢しい敵は屋内(やみ)に潜みますよ」

 

「…! 今のフレーズ、いいな」

 

 私の言葉に、全身黒色の男子生徒が興味を示します。どうでも良いが彼の声を聞いたのはこれが初めてです。見た目によらず引っ込み思案な性格なのでしょうか。

 

「ゲフンッ、少々口が悪いがその通りだ。故に、君らにはこれから“敵組”と“ヒーロー組”に分かれてもらい、2対2の屋内戦を行ってもらう!

 

『!?』

 

「えっと、いきなり実践形式ノコ? こういうのって最初は基礎訓練を挟んでからじゃ…」

 

「その基礎を試すための実践さ! しかも今回はブッ壊せばオッケーなロボじゃなく、考える人間相手ってのがミソだ!」

 

 成る程、目的は分かりました。要するに如何に被害を出さず穏便に解決できる力…個性もそうだが、それを扱う使用者の資質を測るためのテストといったところですか。でも少し情報を小出しに出し過ぎじゃないですかね。

 

「しつも~ん! 勝敗はどうやって決めるんですか」

「チーム分けってどういう分け方になるんですか?」

「時間的にヒーローかヴィラン、どちらか一方のみですかね」

「もし怪我とかさせちゃったら失格になりますか!?」

 

「んんん~~! またまた聖徳太子ィィ!!」

 

 意味の分からない聖徳太子(フレーズ)を呟いたかと思えば、懐から紙切れを取り出し、記されている内容に眼を滑らせる。あ、アレってもしかして……

 

「いいかい!? 状況設定は(ヴィラン)がアジトに「核兵器」を隠していて、“ヒーロー”はそれを処理しようとしている場面だ」

 

『設定がアメリカンだ!!』

 

(カンペ読み…平和の象徴も所詮は新米教師という訳ですか)

 

 美羅が拍子抜けしている間にも説明は続く。

 

 要約すると、ヒーロー側の勝利条件は制限時間内に“敵を捕まえる”か、もしくは“核兵器を回収する”こと。

 逆にヴィラン側は、制限時間を過ぎるまで“核兵器を守る”か“ヒーローを捕まえる”こと。これだけである。

 

「ちなみにコンビ及び対戦相手は……くじ引きだ!」

 

「そこ適当なの!?」

 

「恐らく現場での対応力を見るってことじゃないかな。プロは現場で他事務所ののヒーローと急にチームアップすることも多いって聞くし…」

 

「成る程な!」

 

 へえ…家では基本(ヴィラン)目線の話しか聞かないし、こういう異なった視点から現場の状況を知れるのって面白いかも。ヒーローもヒーローで苦労してるんですね。

 

「さあ皆くじは引いたかな!? じゃあAチームから順に発表していくぞ!」

 

 

Aチーム、回原旋・取蔭切奈

Bチーム、拳藤一佳・柳レイ子

Cチーム、塩崎茨・骨抜柔造

Dチーム、黒色支配・ 円場硬成

Eチーム、凡戸固次郎・鱗飛竜

Fチーム、泡瀬洋雪・角取ポニー

Gチーム、小大唯・物間寧人

Hチーム、庄田二連撃・吹出漫我

Iチーム、小森希乃子・宍田獣郎太

Jチーム、神藤美羅・鉄哲轍鐵

 

 

「あ…」

「ぐアァー!! くそおッ、一緒のチームじゃ戦えねえじゃねえかー!」

 

「HAHAHA! OKオーケー、盛り上がるのは良いが注目だ少年少女たち! 続いて対戦相手の発表をするぞ!」

 

 これも日頃の行い故か、私のパートナーはやたら突っ掛かってくる鉄男子こと鉄哲になってしまいました。

 その他の組は歓声こそ上がるものの、ネガティブな反応がない事から外れくじを引いたのは私達だけのようです。

 いえ入学間もない時期にここまで関係悪化している――主に一方的な因縁のせいで――私達の方が特殊なのか。

 

「最初の対戦カードは……こいつらだ!!」

 

 

 ヒーロー、Bチーム  (ヴィラン)、Gチーム

 

 

「おォ!? ということはつまり…」

 

 

 全員の目がチーム表を辿り、それから件の人物たちに視線が集中する。

 

 

「あっちゃー、ものの見事に最初引いちゃったか~。少し様子見したかったけどしょうがないね、こればっかりは」

「あの二人が相手とか、考えること多そうじゃんね。特に物間」

 

「良いねえ。こういうのを期待してたんだよ。さァ、始めようか!!」

「ん」

 

 

 拳藤一佳&柳レイ子 VS 小大唯・物間寧人 

 

 

「うんうん、四人とも良い目をしている。それじゃあ(ヴィラン)チームは先に入ってセッティングを! 5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」

 

 

 その言葉に促され、抽選から漏れた残りの面々がその場を「離れる前にこっちの用事を済ませようか」……後にしようとしたところで物間が一度呼び止めると、美羅を除く全員に接触を図った。

 

「ムウウ! 希乃子はアイドルヒーロー志望だからね! 普通はお触り厳禁ノコ!」

 

「ハハハ、それは悪かったね。でもお陰で準備は整ったよ」

 

 満足げにそう告げると、唯を連れて今度こそ建物の中へと入っていった。

 

 

「…今のってそういう(・・・・)事だよね」

 

「まあコピー個性で立ち回るってなったら考える事は一つじゃん。選択肢が多いから今のもあんま参考になんないけどさ」

 

 肩を竦め、お手上げを視覚的に見える形で表現する。

 

「5分という短い時間で“出来る事”を挙げていってもキリがない。なら“してくる”可能性を考えた上で、それにどう対応していくかが重要になるよね」

 

 

 

 

 

――それから5分後

 

「さあ両チームとも準備は良いかな? それでは屋内対人戦闘訓練、開始ィーー!!」

 

 同ビル、その地下モニタールームにて

 

 

「にしてもどっちが勝つかね。皆はどう思う」

 

「有利なのはやはり敵チームではないだろうか。地の利を得ていることに加え、物間くんの『コピー』も非常に応用性が高い」

「ミーもそう思いマ~ス! 彼、キャラクターは変ですけど実力は本物(トゥルー)ですカラ」

「そういう事なら拳藤氏や柳氏、それに小大氏も同じですぞ。個性の性能だけで勝敗は決まらないですからな」

「私共はヒーローです。訓練とは言え、ヴィランに負けるなど言語両断」

 

 

 問いの投げ掛けから始まり、各々意見を交わしながら見解を広げていく。話の内訳としてはヒーロー側と敵側で半々ぐらい、ややヴィランチームの方が優勢といったところか。

 

「ふむ、中々良い所を突いてるね。神藤少女、君はこの戦いをどう見るかな」

 

 そんな中、まだ自身の見解を示していない私にオールマイトから声が掛かる。

 何でもいいがそのお節介焼きは止めてくれないかしら。ただでさえ本音が出やすいのに、貴方の方から突っ掛かって来たんじゃ避けられようが無いじゃない。

 

 それに世の中には静かに観戦したい派だっているのだし、そこら辺の配慮というものが無いのかしら、この筋肉達磨は。

 

 

「さあ…今は何とも。長期戦になれば拳藤さん達が有利だと思いますが、それまでは苦戦を強いられるでしょうね」

 

「ほう…その心は」

 

「個性ストックの限界、或いは上限が有るからだろ」

 

 

 私とオールマイトの会話に顔を黒いヘルメットで覆った男子が加わってきた。

……誰でしたっけあの人。仮面の下の歯並びが印象的な、確か骨なんとかさん。え~と、ほね…骨身――

 

「個性ストックの上限…、どういう事だ骨抜」

 

 あぁ、確かそんな名前です。

 

 

「物間の個性が『コピー』なのは分かった。じゃあ次に考えないといけないのは、①個性の使用に制限時間があるのか、②解除した個性は再使用が可能か。主にこの二つだ」

 

「それに補足するなら“個性の同時使用は可能か”も含まれますが、これは十中八九無理とみて良いでしょう。出来るなら体力テストの時点で行っている筈ですし、仮に戦闘訓練(これ)を見越していたとして秘匿するメリットも薄い」

 

「成る程。それで①②に戻るとして、あんた等の予想はどっちなのよ」

 

 

 ふむ。私の予想ですか。あくまで推測の域を出ないですが、これまでの情報、彼のコスチュームから推察するに――

 

 

「「 恐らく時間制限は有るし、再使用も不可能だ/です 」」

 

 

……! へえ、私と同じ結論。ついこの間まで勉強しかしてこなかった優等生が、私と同様の考えに至れるのは少し意外でした。多少なり驚いたとも云えるでしょう。

 彼方も気配を驚かせ、しかし冷静に一連の流れを受け入れています。流石は雄英、色んなタイプが居ますね。

 

 

「①と②は合わせて考えると分かりやすいが、先ず何の制限も無いなら態々触り直したりなんかしない。体力テストの時点で全員分のストックは溜まってるだろうし、変に警戒を強めることにもなり兼ねないからな」

 

「次に時間制限ですが、仮に制限が無かったとした場合。これは感覚的な話になりますけど、一つの個性を長く継続して使うかなと思うんです。例えばこれも体力テストを想定したとして、漫画顔くん…えっと、「吹出」そう吹出さんか犬太郎「宍田獣郎太ですぞ!」宍田さんの個性を使ってれば高得点は出せる訳ですし」

 

「…そういえば物間の奴、種目の前に1回一回個性の補充に来てたな。あの時は状況に応じて個性を変えてるんだと思ったけど、よくよく思い返してみれば反復横跳びから持久走に移るタイミングも連続で宍田の所に来てたよな」

 

 

 皆さんからの呆れの視線は華麗にスルーするとして、中国人ネームの彼が仰るように物間は種目が変わるたびに誰かしら接触を図っていた。

 

 

「その時の時間からして、個性を使用できるのは一個につき大体3~5分程度だろう。途中で変更できるかは知らないけど、一度得た個性を永久保存して何度も使うっ…てのは見た限り無理だろうな」

 

「因みに。それが限界なのか意図的に抑えてるかはこの際置いとくとして、腰の横に付けてあるタイマーの数的に保持している個性は3つまでと考えて良いでしょう。つまり全員触ったのはカモフラージュの為であって、本命は彼以外…それこそパートナーの小大さんですら知り得るかといった所です」

 

「そう、だから『長期戦になればヒーロー側が有利』なのさ。物間のストックが切れ、直接戦闘が苦手そうな小大と、仮に彼女の『サイズ』を物間がコピーしたところで拳藤に真正面から制圧されるのがオチだろうしな」

 

「…と、此処まで説明しましたが実はこれでも不十分なんですよね。何せ不確定要素が多すぎてこの通りに戦闘が進むかどうかも判りませんし。一つ前提が崩れただけで簡単に盤面はひっくり返っちゃうんです」

 

 そう、例えば――

 

 

「「 これまで得た情報が全てブラフだった場合、とか 」」

 

 

(うおォ! 流石、推薦合格と主席合格! 発想が柔軟とか最早そういう次元じゃない気がする!)

(なんか私ヤバくない? 推薦組に懸かるハードルが急激に上がってる感じするんだけど)

 

「くう…! (また、言いたい事全部言われた!!)」

 

 

 

 

 

 

「それって、『個性(コピー)』に時間制限も、回数制限どころか所持上限も無かったらってこと?」

 

「まあそれも含めてかな。ほら、物間って美羅の個性は真似できずに〝スカ〟って言ってたじゃん。あれも嘘だとしたらヤバいよねって話」

 

「……まさか、取得条件も制限無いとかそんな感じ? いやいや有り得ないでしょ常識的に考えて」

 

 

 その理論で言うと美羅含めクラスメイト全員…いやあの場にはブラドキングにオールマイトまで居たから、それら全員との戦闘を考慮しなければならない。

 いや無理でしょ常識的に考えて。私たち二人がどう頑張っても勝ち目が無い。

 というかオールマイトが敵に回るってどんなシチュエーションよ。それは最早怖い(うらめしい)を通り越して悪夢だ。

 

 

「ま、流石に私もそれは無いと思うけどさ。でも今回の対人戦はまだ互いを良く知らない状態でヒーローとヴィランに分かれてる訳だし、碌に根拠もない状態で相手方の戦力を予想して下手に動いたりでもしたら、想像が足りないって減点食らうかもよ」

 

 

 何だそれは。もう一回言う。何だそれは。

 これが実践だと想定するなら、つまりは美羅やオールマイト級のヴィランを相手に完璧な立ち回りを演じないと駄目ってことでしょ。そんなの誰がやっても無理に決まってる。

 

 

「ほんと参っちゃうよね。これが一か月後とかなら個性の詳細もハッキリするってのにさ。まぁ先生方もそれを見越して情報が不透明なこの時期にカリキュラムを組んだんだろうけど」

 

「そういう割には落ち着いてるね。もしかして何か勝算でもあるの?」

 

 

 それなのに目の前の少女には諦めの感情が宿ってない。その表情は此処に来る前と同じく、やる気と使命感に溢れた顔をしていた。

 

「うん…? アハハ、そんなんじゃないって。私はただ皆より早く心構えが出来てるってだけだから」

 

 そう、本当にそれだけの違いでしかない。

 だって私はあの日知ったのだから。オールマイトのように圧倒的な力を持つ者が、必ずしもオールマイトのような正しいヒーローになるとは限らないのだと。

 

 

「ヒーローになるのって当然だけど簡単じゃない訳でしょ? むしろ為ってからが大変だって言うし。今まではそれを理解した“つもり”でいた。けど、自分一人の力じゃどうしようもない時もあって、それを乗り越えてこそ真の意味でヒーローを名乗れるだって気付いたわけ」

 

 

 個性の優劣でヒーローの価値は決まらない。仮にそうだとしたら、雄英含め教育機関など不要なのである。

 ヴィランの脅威度も個性のみで騙られ、それを宿す人格が幾ら優れていようと社会不適合者のレッテルを貼られ心無きそしりを受けたであろう。

 

 勿論そんな社会など一佳は認めないし、それがイケない事だと分かっているから世間は今もこうして少しの淀みも無く歯車を回し続けていられるわけだが。

 

 

「なら『ヒーローを目指す者』として、ここで引き下がるわけには行かないでしょ。喩え勝てなくても情報を持ち帰るぐらいの気概で行かなきゃ真の意味でのヒーローには為れるないしね」

 

 

 それに…と続けて言葉を紡ぐ一佳の顔には、まるで何か確信を得たような笑みが浮かべられていた。

 

 

「どうやらその心配も杞憂だったみたい。このヒーローとヴィランを模した対戦ルール、合理的な判断が求められるのは何も私達だけじゃない。今こうして無事でいられる事こそ私達有利な証明だよ」

 

「…??」

 

 

 

 

「ちぇっ、残念〝スカ〟だ。オールマイトの個性があれば5分で決着を付けられる算段だったけど、そう上手くはいかないか」

 

「ん」

 

「向こうには拳藤さんもいる。最初に何も仕掛けられなかった時点で、このまま行くと個性の無制限使用は無理だと見破られるだろうね」

 

 

 可能ならオールマイトの個性をコピーし、抵抗も小細工すら通じない圧倒的な膂力で二人を抑え込むのが理想だった。

 しかし現実は非情で、物間の身に個性で複製したはずの『個性』は宿らなかった。

 このまま無意味に時間を浪費すれば、

 

 おまけにストック枠を一つ無駄にしたから、残る個性はあと2つ。

 傍から見たら此方側(敵チーム)が有利なんだろうけど、実際はハッタリで何とか均衡を保っている状態だ。正直言って分が悪い

 

 

「……フフフ、アーハッハッハ! そう、これだよこの感じィ! こういう逆境に打ち勝ってこそ成長を実感できるってもんさ!」

 

「ん」

 

 

 当初の予定であり、勝利に大きく近づく最善手を失いながらも物間は笑った。

 

 それで良い。簡単に勝ててしまうようでは雄英に来た意味がない。この『個性(コピー)』を授かった時点で、オールマイトのような王道を歩めないのは分かっていた。

 自身の性質(からだ)が何処ぞの主人公のように真正面から敵を制圧するよりも、策を弄し、敵を欺く脇役の類と知った上で、その主人公が放つ輝きすら喰らうためにこの学校を志望したのだ。

 

 王道に憧れなかったわけじゃない。でもそこが自分の居場所でないなら、無理に縋り付いたって後で辛くなるだけだ。

 

 

(だから僕の性質的に個性が発動しない(こうなる)であろう事も予想が付いてた筈なんだけどな~。圧倒的な主人公感を持つオールマイトと、それに匹敵する逸材を目の当たりにして目が眩んだのは言い訳出来ないか)

 

 

 人知れず後悔の念を募らせるが、それをおくびにも出さず着々と次の一手を打ち始める。 

 

 

「ま、こうなった以上は仕方無い。僕らは僕らの(・・・)やり方で勝負を仕掛けようじゃないか」

 

「ん」

 

 

 予めこうなることも想定し、第二プランへと移行する。

 次に物間が選択したのは、先の個性把握テストでも大活躍だった宍田獣郎太の個性『ビースト』である。

 純粋なフィジカルが美羅の次に優れていることに加え、五感による感知能力の高さも今回採用する決め手となった。

 

 

「スンスン…どうやら二人とも一階に身を潜めているようだ。万が一を警戒してやり過ごす算段だったのかな」

 

 

 一度『ビースト』をコピーした時にクラス全員の匂いを記憶していた。

 その情報を頼りに二人の居場所を割り出す…が、致し方無いとはいえ女子の匂いを嗅ぐ様はどう取り繕おうともヒーローがやる絵面ではない。

 見た目が個性に引っ張られている宍戸なら違和感も働かないが、姿形が人間に寄っている物間がやると犯罪臭が凄い。

 

「……ん」

 

 それを見てどうという事ではないが、今度から入念に身体を洗おうと決める唯であった。

 

 

「フフ、そうだよね君らはそうするしか無いよねェ。何せ仮想オールマイトが相手だ。無理はせず隠れて機を窺うのが正しい選択ってやつさ」

 

「なら一佳達が動けない今、一気に奇襲を仕掛ければいい」

 

「やっと喋ってくれたね小大さん。そうさ、自由に動けて相手の位置まで把握している分こっちが有利だ。なら逃さず叩くよね、今!」

 

 

 強化された身体能力を頼りにその場を飛び出した。

 

 犬のような嗅覚を頼りに、まるで熊を思わせる迅さでターゲットへと迫る。猫科の如き隠密性から猿の立体機動まで、元は他人のだと思えぬほど個性の幅を活かした動きにはモニター越しの美羅でさえ目を見張った。

 

「さあもう少しだ」

 

 そうして得た身体能力を最大限発揮し、ものの十数秒で二人が隠れる地点まで近付くことが出来た。彼方はまだこっちの接近に気付いていない。ならどうするか。

 

「畳みかけるよね、此処で」

 

『ん』

 

 インカム越しに届けられた声は準備完了を示すモノ。物間の合図に合わせて何時でも個性を解放できるよう、唯も集中力を高める。

 

「さァ、始めようか!」

 

 作戦開始を告げる宣言を発し、その声に一佳とレイ子が振り返った。

 物間は懐に忍ばせておいたミニチュアの様なものを辺り一帯にばら撒くと、持ち主の手から離れたソレは徐々に巨大化――いや、本来の大きさへと戻り、さながら土石流が如く二人に迫った。

 

「はっーはっはっ! 勿論これで終わりなわけ無いよねえ!?」

 

 それに加えて(ビースト)の力を宿した物間からの強襲もある。壁に四肢をめり込ませ、三次元的な動きを可能にした(ヴィラン)は予測不可能な軌道から攻撃を仕掛けてくる。

 ヒーローチームも柳の『ポルターガイスト』で動線を塞ぎ、或いは直接攻撃して物間を狙うが、その抵抗も空しく一撃で破壊されていく。

 

 だがコピーの制限時間が差し迫っている事態に憂慮した物間が、先に柳を仕留めようと意識を向けた瞬間だった。

 

「はい、(つ~か)まえ~た、と」

 

 砕いた瓦礫の隙間から現れた一佳の大きな手に、全身を拘束されたのだ。

 

 





  友好度パラメーター

美羅→B組 20 →23% 思っていたよりも皆優秀だったから。

B組→美羅 48 →55% 解説が丁寧で頼りがいありそうだったから。


オールマイト →美羅 本当に言いたいこと全部言われて若干凹み中。確かにこれは悪い意味で相澤君と相性良すぎるな〜と理解。
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