祖龍のヒーローアカデミア   作:暦月

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 前回のあらすじ:絶対に言うことを聞かない主人公 VS 絶対に言うことを聞かせたい教師陣 VS ダークライ ファイッ!



第八話 個性把握テスト

 

 

 雄英高校は最近だと珍しい週6日制の時間割を導入しており、完全な休養日は日曜のみとなっている。

 偏差値79の看板に嘘偽りはなく、国語や英語などの学習科目は勿論の事、近年増加しているインターネットを使った犯罪や詐欺の手口などを学ぶ情報専門学も必修科目としてある。

 また、これ等は全て午前中に組み込まれており、そこにヒーロー科と普通科で大きな違いはない。

 

「んじゃこの英文のうち間違っているものは? エヴィバディヘンズアップ、盛り上がれーー!!」

 

(普通だ)

(普通だ)

(普通過ぎて逆におもろい)

「Zzz…」

(――気のせいだろうか。また小気味の良い寝息が後ろから聞こえてくるのは)

(美羅、寝てる)

 

 では二つの科の違いは何かと聞かれたら、やはり午後にあるヒーロー科限定の必須科目、ヒーロー基礎学だろう。(土曜日は半日で、ヒーロー基礎学のみ)

 これは戦闘訓練の他に、災害時レスキューや救急看護を学ぶ授業となっており、ヒーローの下地を形成していく上で最も重要な時間でもある。

 

キーンコーン

 

「…!」

 

(あ、起きた)

 

 余談だが、このヒーロー基礎学は午後の単位全て使うため、必然的に一般教養のカリキュラムを圧縮する必要がある。従って普通科が一日七単位使って修学するところを四単位に収めないといけない訳で、仮に居眠りなんてしてたら授業に付いていけなくなるが……まぁ良いか。

 

「ぃよッし、それじゃあ授業終わるゾー」

 

 プレゼントマイクが教室から出ていき、美羅もそれに続こうとする。だが取っ手に手を掛けようとしたところで教室の前の扉が開き、そこからブラドキングが入ってきた。

 

「よし、皆居るな。昼休みに入る前に午後のヒーロー基礎学について軽く説明する。ほら、席に着くんだ」

 

「はあ、仕方ないですね」

 

 昼休みに施設の下見をするつもりでしたが、放課後に予定を変更しますか。自主練も大事ですけど現場で働くプロの意見っていうのも馬鹿になりませんからね。何より授業とはいえ実戦経験を積めるのは正直有難いです。マル〇

 

「授業はこの体操服を着て参加し、予鈴が鳴る前にはグラウンドに集合してもらう。今日行うのは体力テストだが、当然『個性』を禁止していた中学までとは計測内容が異なる。

 各々今自分が出来る最大限(・・・)のパフォーマンスを発揮してもらい、その披露した『個性』について気付いたこと、参考にできる部分など有れば自らの糧とするように」

 

「それって思いっきり個性を使っても良いってことノコ!?」

「ウオオ! 流っ石雄英だぜ! 来てよかったヒーロー科!」

「へえ、面白そう」

 

 あっ、ブラド先生の眉間に皺が寄った。もしかしなくても余計なこと言ったかな。

 

「静かに!!」

 

『ッ――、』

 

「盛り上がるのは大いに結構。だが少し気持ちが緩んでいるようだな。雄英に入ることがゴールではないぞ」

 

 そう言ってクラスの褌を締める姿は正しくヒーローそのものであり、昨日の醜態を感じさせないオーラが備わっていた。

 

「ヒーロー科を落ちた中には君らにリベンジしようと迫ってくる者も当然現れるだろう。そうした時に彼等の高い壁となる義務が諸君らにはある。それを努々忘れるな」

 

 実際、先生が発破を掛けたことでB組全体の雰囲気が引き締まった訳ですが、これからお昼休み休みを挟むことを皆さん忘れていませんかね。

 大丈夫? この雰囲気でご飯美味しく召し上がれます?

 

 ちなみに私は無理なので一人食堂へと足を運んだ。

 

 そこの料理長がランチッシュという方で、これだけの大人数を捌きながら一流の料理を安価で提供してくれる素晴らしいヒーローでした。

 脅威足り得る外敵が居ない私からすると、オールマイトよりヒーローらしいヒーローかもしれません。私的ビルボードチャート1位更新です。(2位兼最下位はオールマイト)

 

 でも周りの視線が五月蠅すぎて今後は偶にしか利用しないかも。

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「よし、全員集まったな」

 

 そんなこんなでお昼の時間も終わり、いよいよ待ちに待ったヒーロー基礎学の時間です。

 まあ、とは言っても体力テストなのでやれる範囲で頑張りますか。

 

「種目は全部で8つ。50m走、握力、立ち幅跳び、反復横跳び、持久走、上体起こし、長座体前屈そしてボール投げだ。記録はそれぞれ2回ずつ測るからな」

 

 内容自体は中学までと変わりないが、『個性』を解禁することで記録は大幅に伸びるだろう。本当に体力測定の延長って感じですね。面白そう。

 

「それじゃあ最初のデモンストレーションに……神藤、やってみるか。円から出なければ何をしても良い」

 

「はい、わかりました」

 

 先生からボールを受け取り、サークルの中で構える。それにしても、う~ん…何しても良いとは言われたけど、私の個性でより遠くに飛ばすにはどうしたら良いんでしょう。急に振られてもぱッとは思い付きませんね。

 

 

「おお! 入試一位が投げるぞ!」

「皆離れて。美羅は雷を使うから万が一巻き込まれたら大変よ」

「ん」

「うおっとそうだった」

「けッ! 俺は逃げも隠れもしねえから当てたかったら当てやがれノーコン野郎!」

「馬鹿言ってねえで離れろ鉄哲! 怪我で済まないかもしれないんだぞ!」

「まァでも今から麻痺に耐性つけとくのも有りじゃね」

「柔軟な思考かよ骨抜!! でもやっぱ怖ぇーよ!」

 

 

 どうしましょう。皆さん何か期待されてるみたいだけど普通に投げる以外の方法が思いつきません。でも何だかんだそれが一番良いかも。変に奇を衒って拍子抜けされるよりも、順当に結果を残した方が満足するでしょうし。

 何より拳藤さん含めて雷以外の部分にはあまり注目してないし、此処らで増強系(・・・)のお披露目と行きますか。

 

「…!」

 

「お、何だ普通に投げるみたいだ『メキメキメキッ、ズドッゴオ”ォーーーン』ぞ、

 

 

 ……………は?」

 

 

 脱力した姿勢から腕に芯を入れ、続いて体幹、脚へと波及していく。

 そうして大きめに一歩を踏み込み、地面に力が伝わった瞬間――衝撃に足場が耐え切れず、大地に(・・・)亀裂が(・・・)走った(・・・)

 

「あら、前より飛びましたね」

 

 特大の運動エネルギーを得たボールは大きな放物線を描き、やがて遠方に落下していくのが見える。自分でも感心するほどの飛距離を計測したが、それだけ身体が成熟してきたという事でしょう。

 前に他のシマの奴らが仕掛けてきた際には、これで飛行系の個性を撃ち落としていたのでコントロールと威力には自信があります。あと変化球も。

 

「先生、記録は?」

 

「あ……あぁ待っていろ、今出す」

 

 ふふ、どうやら相当驚いているみたい。でもそれも仕方ない話。何せ身体能力一つとっても並の増強系を遥かに凌駕していますからね。

 一応入試の時に簡単な『個性』の説明を記載していたのですが、この見た目と雷の個性のお陰で昔からそのイメージが定着しづらいんですよ。ありがたい話です。

 

   ピピッ

 

 先生の手にある端末が鳴り、画面には4374.2mと表示された。

 

「四千!? マジかよオールマイト並みじゃんか!」

「今のって電気発生してなかったわよね。じゃあ素の力でアレってこと? マジでヤバいね」

 

 概ね期待通りの盛り上がりを見せる中、唯一事情を知るブラド先生が話しかけて来た。

 

「成る程、本来の姿(・・・・)に近付くことで力を発揮するわけか。頭の“ソレ”もまだ完全ではないのだろう?」

 

 今現在、私の頭部には二本の角が露出しており、それと凄く分かりにくいが尻尾も生えてきている。

 

「別に角が無くてもパワーは出ますよ。ただ、龍の力を使えば能力が飛躍するのはその通りです」

 

 私の個性は『祖龍』 白く巨大な龍となり、紅き雷光をその身に纏う超常の力だ。訳あって真価を発揮できずにいるが、その弱点を克服するため雄英の門を叩いた私の高校生活が、今始まった。

 

 

 

 

 

 個性把握テスト  第一種目、50m走

 

 美羅の出席番号は10番で、ちょうど前半半分の最後に当たる。私より前を走った中で目立ったのは、8番の男子生徒。見るからに異形型で、走ると同時に身体が肥大化し毛量も増えたたため、恐らく犬もしくは獣を冠する個性だろう。

 

「ガハハハハ! 神藤氏ほどではありませんが私も身体能力には自信がありますぞォォ!!」

 

 あと何故か個性発動中はテンションが高くなるらしい。私はその辺大丈夫だから安心して力を発揮できる。出来れば後でモフらせて欲しい。

 

 No.8 宍田獣郎太 個性『ビースト』

 全身が獣化し、筋力、五感、その他身体能力が大幅アップするぞ! ただし獣化中はとってもハイになる。

 

 そんなこんなで次は私の番。背中から翼を生やしてもいいんだけど、この距離なら蹴った方が速いかな。それに隣で一人並走するし邪魔になるかも。

 

「よーい、ドン」

 

「ふッ――」

 

 開始の合図とともに今度は脚に力を入れ、また凄まじい音を上げたと思えばその時既にゴールラインを割っていた。

 

「…記録、0.87秒」

 

(速度もそうだが、あそこから此処までたったの二歩(・・)で踏襲してくるか。末恐ろしいな)

 

 美羅が踏み締めた後の地面が捲り上がっており、如何に強い衝撃が加わったのかを如実に表していた。

 

「ふう、こんなものですか」

 

 特に疲れてないが息を整え、ついでとばかりに置いていった並走相手の様子を窺う。

 

「何ですかね、アレ。何処となく走り方に違和感が…」

 

 No.9 庄田二連撃 個性『ツインインパクト』

 打撃を与えた箇所に任意のタイミングでもう一度打撃を発生させられるぞ! ちなみに二度目の打撃は数倍の威力になる!

 

 美羅が不審に感じたのは蹴り出す際に生じる謎の推進力で、足に個性を集中し、貯めた分のエネルギーをタイミングよく放出することで加速を続けていた。

 

 

 その後全員がこの種目を終え、結局美羅の記録を超える者は現れず一位となった。

 

 後半組で速かったのは美羅のすぐ後を走った……浮んでた? 少女と、意外にも顔が漫画のような(恐らく)男子生徒が「バビューン」という効果音を自身に張り付けて全体二位を記録していた。

 

 

 No.11 角取ポニー 個性『角砲(ホーンホウ)

 角を飛ばし操作できマース! 現在の練度だと2本が限界デース! 角質のケアも欠かさない。

 

 No.15 吹出漫我 個性『コミック』

 擬音(オノマトペ)を具現化できるぞ! サポートとしてはかなり応用が利く。

 

 

 それと余談ですが、胡散臭い笑顔を張り付けた男子が握手を求めにきたので、接触時に電気を流して撃退してやりました。

 古今東西ヒーローの「捕まえない」とヴィランの「危害を加えない」は信用しちゃ駄目だと教わっているので、物理的に()まえようとしてきたあの輩は入念に対処した。

 競技が終わった後で私の個性が〝スカ〟だとか抜かしやがった事から、恐らくコピー系だと思われる。痺れながら走る様が少しだけ面白かったので、追加の制裁は無しにしてあげた。私って優しい♪

 

 No.18 物間寧人 個性『コピー』

 触れた者の個性を5分間使えるようになるぞ! ただし同時に二つの使用は不可能で、コピーできない個性も中にはある。

 

 

 

 第二種目、握力

 

 これは拳藤さんが真価を発揮し、大きな手で取っ手どころか握力計そのものを握り潰した。記録は私と同じ1tで、計測不能だった。(機器の測定限界)

 

 No.4 拳藤一佳 個性『大拳』

 拳がでっかくなる! パワーもその分大きくなるのだ!!

 

 

 

 第三種目、立ち幅跳び

 

 これもまた私の独壇場だ。何せ翼が有るのだから。体力が尽きない限りは地面に着くことも無い。その体力切れに関しても、長期休みに太平洋を横断してアメリカ旅行した経験がある位だから期待するだけ無駄だ。

 ブラド先生にその事を伝えると、記録は無限()となり当然の如くクラス一位を叩き出す。パスポート? ふふっ、何の事かしら。

 

 

 

 第四種目、反復横跳び

 

(う~ん、これに関しては全力は出さないでおきますか。地面が崩れて計測どころでは済まなそうですし)

 

 この辺は私の課題ですかね。突発的だったり、一瞬だけなら周囲への被害もある程度抑えられるけど、継続的な力の解放は地形そのものを変えかねない。

 50m走と同じ感覚で脚に力を込めたら、多分10回もしない内にグラウンドが割れて校舎が半壊しそう。そうなったら私の平穏な学生生活は終わりを告げる。まだ入学して間もない内にそれは厭ですね。

 なので全力の2割ぐらいで計測を終え、それでも100の大台に乗り今のところ全種目一位をキープしている。ここまで来たら完全記録達成を目指しますか。

 

 

 

 第五種目、ボール投げ

 

「神藤は先程の記録を参考にするからこの競技に関しては免除でも良いぞ」

 

「いえ、やらせてください。さっき面白い方法を思いついたのでついでに試したいですし」

 

 目標に掲げた以上、妥協して一位を譲るなど或ってはならない。特にあの漫画顔君と犬太郎は応用が利くから、油断してると足元を掬われかねない。念には念を押し、記録更新を目指して再びサークルの内側へと入る。

 

「お、神藤がまたボール投げるみたいだぜ」

「過去の記録に満足せず、己を高めるその向上心、是非見習わねばなりません」

 

 おや、何やらクラスメイトも私の記録更新に期待を掛けてくれているみたいですね。或いは敵情視察か。

 ふふ…その心意気自体は感心しますが、今からやるのは私以外の電気系個性でも難しい荒業ですから参考にはなりませんよ。こっちだってまあまあ本気ですからね。

 

 バチバチッ!!

 

「おわっ! 今度は雷か。間近で見るとやっぱり恐ろしいな」

「でもあれで何をするんすかね。さっきみたく普通に投げた方が飛びそうなのに」

 

 存分に盛り上がってください。私もギャラリーが居てくれた方が何かと都合が良いので。

 暴力団(ヤクザ)の組の者という事で後ろ指をさされていた今までと比べると、この環境は慣れてはいないが気分が乗りやすいと感じる。

 これは確かにヒーローを目指す若者が後を絶たないのも納得です。まあそれでもヒーローには為りませんけど。それと、普通に投げた方が飛びそうですって?

 

「だったら、見せてあげるわよ」

 

 そう言って周囲に小さな雷群を発生させ、続いて身体に電気を纏い、それ等を右腕に集中させる。

 

 昔、アニメで私と同じような電撃系能力を有する女主人公が、大技を繰り出して悪の科学者を撃退するシーンを見たことがある。

 いつか真似してみたいと思って見てたが、そんな派手な『個性』の使用は間違いなく法に引っ掛かる。それは私の家が敵予備軍の扱いを受けていなくても、だ。

 故に泣く泣く諦めていたが、よく考えればこの状況、再現するのにうってつけなのでは?と思い至った。

 

 投げて落下してから飛距離が表示されるこのボールは最先端の技術が使用されている。つまりは機械、電気を良く通す。なら再現自体は可能。あとは私の操作技術に懸かっている。

 

「これが私のっ」

 

「こ、これはまさか――!」

 

「あ、ちょっと待っ」

 

 右に集約した雷を腕ごと振りかぶり、ボール目掛けて……思い切りぶん殴るッ!!

 

 

「全力ッ、だァーーー!!」

 

 

「なァにイィーー!?」

 

「あァーー! ボールがぁーー!!」

 

 あ、凄いスッキリ。長年の夢が叶った時ってこんな感じなんだ。

 漫画顔君も分かってノッてくれたし、思えば隣の席だし、ていうかまだ入学したばかりでこの盛り上がり様だしで、これからの学校生活がより楽しみになってきました。

 

 ちなみに飛んでいったボールは摩擦で溶けたか宇宙まで飛んでいったと思うから、記録は∞で良いですよ先生。

……聞いてます、ブラド先生? 可愛い教え子からの提案です。白くなってる場合じゃないですよ〜。

 





友好度パラメーター

美羅→B組 12 →20% 理由、クラスの反応が良かったから。

B組→美羅 30 →48% 凄い記録を連発してたから。
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