素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
「うん…?ここは…?」
俺はひんやりとした地面に横たわっているのに気がつく。どうやら寝てしまっていたようだ。
はっ!?そうだ、俺はあの花畑で眠りの状態異常になって…!
俺は辺りを見回す。ここはあの花畑ではなく、神殿のようだ。
王の謁見室のような場所でかなり広く、天井が異様に高い。部屋の両端に柱と大きな窓が交互に設置されており、窓から陽が差し込み、真ん中の深紅のカーペットを照らしている。深紅のカーペットの先には数段の階段、そして大きな椅子があり、そこに誰かが座っている。
『お待ちしておりました、人の子よ。私はあなたを歓迎します』
「…誰だお前?これがイベントか?」
『正確には、これはイベントではありません。私が貴方を呼び出したのです』
「お前が俺を…?」
椅子に座っているのは、ギリシャ神話にいるような羽の生えた、ブロンドの髪の…ハープを持つ女神だった。
神々しい光を放っており、その姿に圧倒される。
そしてとても優しそうな細い目で俺に話す。
『呼び出した理由はほかでもありません。貴方に力を授けようと思ったのです』
「どうしてだ?」
『見てしまったのです…貴方のモンスターを倒す時の姿を。思わず見惚れてしまいました!』
「いやぁ…そう言われると悪い気はしないなぁ」
『ですので、貴方にはもっと頑張ってもらいたいのです!その活躍を、もっと世間に広めて欲しいのです』
「それで、力を俺にくれると、そういう訳か?」
『ええ。しかし私も立場上、貴方に力を授けるのに少し試練を課さなければなりません。受けていただけますか?』
…少しおかしい。何故俺だけに力を授けてくれるのだろうか?別にモンスターを倒すだけなら俺じゃなくても他に多くの人がいるはずだ。
なのに、俺だけを選んだのか?いや…俺以外にも様々な人に力を授けている可能性もあるのか。
だがまぁ、とりあえずこれはゲームだし…試練をクリアして何か特別なスキルが手に入るなら万々歳だ。簡単に強くなれる。
俺は自信満々で、そして笑顔で大きな通った声で返答をする。
「はい!受けて立ちます!!」
『それでは…行きなさい、グリフィンよ』
女神がそう口にすると、目の前の階段に円形の光のワープホールのようなものが現れ、そこからライオンの胴体に鷲の上半身を持つ空想上の伝説の生物…グリフィンが現れる。
「ぐおぉ!!」
「【ウィンドカッター】!【ダークボール】!」
鉤爪で切りさこうとこちらへ向かってくるグリフィンにまずは二発魔法を放つ。
しかしそれでも怯まずにグリフィンはこちらへ向かってくる。
「【ファイアボール】!」
俺は自分の持っている中で1番ダメージの高い魔法を使う。
流石に効いたのか、1度体制を整えるために再び空中へと戻るグリフィン。
すると、唐突にグリフィンが雄叫びをあげる。
「うるさっ…!って、INTが半減!?」
どうやらあの咆哮にはAGIやINTを半減させる能力があるようだ。俺も欲しい!!
俺が勝手に感動していると、いつの間にかグリフィンのくちばしには何やらボール状のエネルギーが溜まっており、キュイーンという音を出しながら空気中からエネルギーを集め、段々と大きくなっていく。
なんかヤバそう…!?と思い、俺は咄嗟に柱の裏へと隠れる。
そしてキュイーンという音が止んだかと思うと…
バーーーーーン!!!
光が部屋中に満ちたかと思ったのもつかの間、とてつもない轟音が響く。鼓膜が破れそうになるほど大きい音だ。
グリフィンは俺の隠れた柱に向かってこの魔法を放ったらしく、グリフィンと俺の間にあった10本ほどの柱全てが粉々に砕け散り、黒い煙を出していた。
また、俺の後ろの床には大きな穴が空いており、あの魔法の威力の高さを物語っていた。
「いやヤバすぎだろ!?」
俺が驚いている間にも、グリフィンはまたあのとてつもない魔法を放つべく、エネルギーを集めている。さっきの感じを見るに、一回につき10秒ほどのエネルギーのチャージが必要なようだ。
「…【ファイアボール】【ファイアボール】【ファイアボール】!」
とにかく魔法を放つ。1度でも食らったら1発KOだ。魔法を撃てる間に撃っておかないと!
って、魔法が外れた…?
なんでだ!?魔法の心得のレベルは高いし、止まっているから狙いも外れないはずなのに…。
とにかくまた柱に隠れないとヤバい…っ!
バーーーーーン!!!
なんとかギリギリ柱の裏に隠れた俺へと向けて放たれたあの魔法は、轟音を響かせながら柱を全て破壊する。
よし、今だ…っ!
柱から飛び出した俺はよろけて倒れ込んでしまう。
どうして…?
『フハハハ!かかったなバカめ!!このグリフィンが扱う魔法【音魔法】と【爆裂魔法】はプレイヤーの脳に直接ダメージを与えて正常な判断ができなくなったり、脳が神経への正常な伝達ができなくなるんだよ!!』
グリフィンの羽ばたく音に、女神の高らかな笑い声が重なる。
椅子の方を見てみると、さっきの神聖な雰囲気の女神から一転、とても穢らわしい顔をしてニコニコしている女がいた。手を口に当てて笑っている。
「あんた、やっぱり俺をハメたんだな!!」
『お前が承認をした時点でここはダンジョン、プレイヤーに対して何をしてもいい!
ここでお前の力を奪ったりしてもな!』
「お前、本当にゲームのAIか…?」
『答えたくないな!グリフィン、最後の1発だ!!』
女の声に答えるようにグリフィンはキュイーンという音を出しながらエネルギーを集める。
逃げなければ…!と思っていても体が動かない。これが…【音魔法】…?
チャージにかかる時間、10秒。さっきまでは攻撃出来るチャンスだったが、今となっては死へのカウントダウン。
刻々と迫ってくる時間に、何も出来ない俺。
さっき女は力を奪うと言っていた。本当かどうかは分からないが、奪われるのだとすると再取得するのには時間がかかるだろう。どこかで聞いたが、奪われるのは【破棄】するのと同じ扱いになるらしい。
と、キュイーンというチャージ音が消えたようだ。どうやら、俺はここまでのようだな…。
次の瞬間、俺は光に包まれて……
「【影の交換】【
いなかった。辺りが急に暗くなり、夜のようになる。
そして、聞きなれた声…ゼロの声が聞こえたのだった。
「ゼロ…か……?」
「お前にアイツらを付けておいて正解だった。なんとか間に合ったみたいだな。【影の交換】で助けに来たぜ!!」
「よく…分かったな…」
「そっ、そそそそれよりさぁ!あのキメラは何!?!?俺もう既に吐きそうなんだけど!?」
「待て待て!俺がいるから吐かないでくれ!」
「とっ、とりあえず…立てるか?」
「あっ、ああ」
ゼロから差し伸べられた手を取って立ち上がる俺。そして、あの女の声も俺の耳に届く。
『何をしたかは分からないが、もう1発だ!消えろ!!』
「【
グリフィンから放たれた魔法は地面に着地することなくゼロの魔法に吸収される。轟音もだ。
『どうなっている!?』
「お前は人間っぽいから大丈夫だが…あのキメラは無理ぃ!ムーンお願いぃ!!」
『お呼びですか我が君よ』
「ア゙ア゙ア゙!急に出てこないでぇ!!…あのキメラしばきをよろしく頼んだよムーンぅ!!」
『承知しました、我が君よ』
『貴様は…!』
『どこかでお会いしましたかな?申し訳ないが…貴殿の配下、倒させていただきます』
大剣を持つ剣士…ムーンはそう告げたかと思うと、視界から突然に消えた。急いで空中を見るが、早すぎてグリフィンとグリフィンが斬られているダメージエフェクトしか見えない。
気がつけば、グリフィンは光の粒子となって消えてしまっていたのだった。
『くそっ…!それなら更に召喚を…』
「むっむむむムーン!」
『分かっております、我が君よ』
倒したと音で気がついたのか、ムーンにあの女を倒すよう指示を出すゼロ。
一瞬にして女のところにたどり着いたムーンは大剣をひと振りし、トドメを刺す…と思ったが、急にムーンが消えてしまう。夜で暗かったのが光によって明るくなったのだ。
『お前らの弱点はよく知っている!夜じゃなければ動けないのをな!』
ゼロを見てみると、ムーンがやられると思っていなかったのか、目を見開いて驚いていた。
「ゼロ…どうするんだ?」
「…俺らがやるしかないだろ。幸い相手は人間っぽいからあんまり恐怖は…いや、やっぱり羽生えてるから無理ぃ!」
「ゼロだけが頼りなんだ!お願い!!」
「…やるしか無いかぁ!!行くぞ!」
『フハハハ!【しょうか…】』
「【
--零士視点--
ゲームにログインした俺は、シャインに付いていた兵士の助けを聞いて、急いでスキル【影の交換】によってシャインにワープし、ムーンにシャインを襲っていたキメラを倒してもらった。
そこまではよかったのだが、あの堕女神?にトドメを刺そうとしたムーンが、謎の力によって天候が晴れさせられたことにより、【常闇】も使えなくなってしまいムーンが消えてしまうトラブルが起こってしまう。
スキル【影の交換】
位置を交換することが出来る。
30分後再使用可能。
取得条件
影達と仲良くなり、認められること。
仕方なくあの堕女神を倒すことにした俺は、恐怖を感じながらもとりあえず【
しかし、【常闇】によって夜にできない以上、【
堕女神は糸を壊そうとするが、当然壊れることは無い。
『身動きが取れないし、壊せない…!』
「シャイン!お願いぃーー!」
「任されたっ!【ファイアボール】【ファイアボール】!」
『くそっ!!もういい!!』
怒った堕女神はそう口にすると、手にしていたハープが空中に浮き、ハープに光のエネルギーの塊が現れ、そこにエネルギーを溜め始める。
『くらえ!【ゴッド・レイ】!!』
「張り巡らせろ!【不撓不屈の支配者】!」
くらえ、と口にした堕女神の指示に答えるかのように、ハープから光のエネルギーが放出される。
間一髪。シャインへと放たれたハープの光のレーザーは、俺の【不撓不屈の支配者】の約糸4万本の極太の糸が消し飛ぶ代わりに消えたのだった。
いや、【不撓不屈の支配者】が壊れるなんて…どんだけ威力高いんだ…。
というか、そもそも壊れるものなんだなあれ…。説明に壊れないって書いてあったから壊れないのかと思ってた。
てかなんで【
『私の…【ゴッド・レイ】が…効かない…?』
堕女神も自分の渾身の技が守られたのに驚いたのか、狼狽えていた。
『くそっ!くそっくそっ!!仕方ない!今回はお前たちの勝ちだ!!しかし次は負けない!覚えているんだなぁ!』
そう言った堕女神は、天井の壁を破壊して飛んで逃げていく。
「あっ、汚ぇぞ!!」
そう貶す俺だったが、堕女神は戻ってこない。
堕女神は高らかに笑いながら逃げていったのだった。
「勝った…のかな?」
「…なんかよく分からない敵だったな。ムーン、面識あるのか?」
『いえ…相手は知っていたようですが私は…』
「そっ、そっかぁ」
「まぁ、なんかスキルも貰えたし…いっか!」
こうして、よく分からないまま、報酬の宝箱をシャインが開け、町に戻る転移魔法陣に乗って帰る俺たちなのだった。
さてと…そろそろ第二回イベントか…
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やる気にも繋がりますんでよろしくお願いしますぅ!!