素早さ極振りにした怖がり少年はネクロマンサーになるようです。 作:名無しという名の者
「まじかよ…」
なんとかシャインとあのよく分からない神殿をクリアした俺らは、疲れていたということもあり昨日は一旦ログアウトしたのだった。
そして、今日になってゲームにログインしようとしてみると、【メンテナンス中】と表示されてログインが出来なくなっていた。
メンテナンスが入るのか〜と思いながら気長にメンテナンス終了を待っていた俺は、メンテナンスが終わるとすぐにログインし、何が変わったのかを調べたのだった。
そして…その内容に愕然としたのだ。
メンテナンス内容は一部スキルの弱体化とフィールドモンスターのAI強化らしい。
対象となるスキルの名称はゲームの仕様上明かされてはいないため所持している者しか分からない。
そして防御力貫通攻撃スキルの実装と、それに伴い痛みの軽減。これはメイプルが暴れすぎたせい…なのかな?
俺がダメージを受けたのは他でもない、スキルの方だ。
まず、【不撓不屈の支配者】。
こいつは今までMPを供給し続ければ必ず壊れないというかなり、いや完全なぶっ壊れスキル。
さすがに運営もやりすぎたと思ったのか、一度に使える本数が最大10本となってしまったのだ!
そして【不撓不屈の支配者】状態になってから15秒が経つと強制的に【不撓不屈の支配者】状態が解除されるようになった。
さらにさらに、【不撓不屈の支配者】状態にできるのが一日十回までとされてしまったのだ。
これにより、安易に【不撓不屈の支配者】で拘束したり魔法を防いだりすることが出来なくなってしまったのだった。
続いて、【
こいつは今までお互いに恐怖を感じているとAGIが4倍になっていたのだが、それが3倍へと下方修正された。
やはり、何だかんだ単純な数値低下は正義なようで、今回の修正の中では1番の痛手かもしれない。
どんどん行きます、【
影は今までどれだけダメージを食らっても俺がMPさえ支払えば死なないというチートスキルだったのだが、今回のメンテナンスでは影達にそれぞれHPの概念ができ、HPが0になったらHPが0になった影が6時間使えなくなるようになった。
なので密かに考えていた不死の軍団が出来なくなってしまったのだ。…いや、実現出来ても俺の意識が飛んで指揮取れないだろうし別にいいか。
最後に、【
こいつには、このスキルを発動した瞬間、2秒の硬直と30秒のクールタイムが発生するようになった。
つまり、魔法を連発されると【
これも大きな痛手であり、安易に【
…とまぁ、こんな具合にボコボコに弱体化された俺は当然凹み、第一層の町の噴水の縁に座り、これからどうしようかと考えている最中なのだった。
ちなみに、さっきからMPを使用しまくるスキルが沢山あるため大丈夫なのか?と聞かれそうだが、第一回イベントで大量に人を【
それにこれから第二回イベントにて、さらにモンスターからMPを強奪できるので当分は安心だ。
「はぁ……」
『我が君よ、そう気を落とさず…』
『キュイキュイ』
「…いやなんで当然のようにあのキメラくんがいるのぉ!?」
【気配察知】と音…というか鳴き声でわかる。あのキメラくんがいるのが。バサバサと羽を羽ばたかせている。
やはり色はあの時とは変わっており、青を基調としたカラーリングになっているようだ。…こんなことまで分かるんだな【気配察知】。
『我が君よ…この前の神殿での戦いで私がこのグリフィンを倒した際、レベルが上がって新たに出来る影の兵士の数が増えたのです』
「あぁ…それでこのキメラが…」
『キュイィィ!』
『我が君よ、キメラではなくグリフィンだと申しております。あと名付けをして欲しいと…』
「んじゃグリフィンで…」
『キュイキュイ…』
『我が君よ、グリフィンではなく名前を…』
「あぁもう分かったよぉ!えーっと…」
俺はどんな名前にしようか悩む。鳥っぽいしバード…は安直すぎるし…グリフィンとバードで『グリード』でいいか!
「はい、今日からお前の名前はグリード」
『キュウゥゥ!!』
『とてもいい名前だ!と喜んでおります、我が君よ』
「気が済んだのならどっか行ってぇぇ!!」
『では失礼します、我が君よ』
『キュイッ』
ムーンとグリードはそう告げると、影の中へと入っていき、目の前から消えていったのだった。
「…ほんと化け物だね…」
「おっ、シャイン…シャイン!?!?」
影達が消えて顔を上げた俺は、聞きなれたシャインの声を聞いて声が聞こえてきた方を向く。
そこには金と白を基調とした真ん中の空いたローブを着てフードをかぶり、ライム色にギザギザの模様が入ったスカーフを付け、鉤爪のような形の杖を持った少年…シャインがいた。
とりあえず、シャインの現在のステータスと前回の神殿にて手に入れた装備の説明をしてもらった。
まず、これが今のシャインのステータスだ。
シャイン
Lv17
HP 32/32
MP 80/80〈+95〉
【STR 0】
【VIT 0】
【AGI 40〈+10〉】
【DEX 10〈+5〉】
【INT 70〈+35〉】
装備
頭 【聖なるスカーフ】
体 【聖なるローブ】
右手 【響く杖:音増強】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【爆裂靴:小爆発】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
『聖なるスカーフ』
【AGI+10】【MP+10】
『聖なるローブ』
【INT+20】【MP+15】
『響く杖』
【INT+5】【MP+10】
スキル【音増強】
『爆裂靴』
【INT+10】【MP+10】
【DEX+5】
スキル【小爆発】
スキル【音増強】
このスキルを発動した後に放つ魔法の音を大きくし、妨害効果を付与する。魔法の音の大きさによって効果が変化する。
スキル【小爆発】
発動した装備から小爆発を起こす。
これだけでも結構ヤバいんだが…
さらにスキルがヤバい。
スキル
【火魔法Ⅲ】【水魔法Ⅱ】【風魔法Ⅰ】
【土魔法Ⅰ】【闇魔法Ⅰ】【光魔法Ⅱ】
【音魔法Ⅴ】【爆裂魔法Ⅵ】
【ファイアボール】【ウォーターボール】
【ウィンドカッター】【サンドカッター】
【ダークボール】【ヒール】
【ノイズ】【咆哮】【サウンドソナー】
【激化の音】【癒しの音】
【超振動】【音破壊】
【音吸収】【音記憶】
【エクスプロージョン】
【爆発】
【爆裂閃光】
【MP強化大】【MPカット小】
【MP回復速度強化小】【魔法の心得Ⅳ】
【爆裂の心得Ⅱ】
「…そんで?すっごい盛り沢山だけど説明できそうか?」
「あぁ、大雑把に説明する。
まずは【ノイズ】。嫌な音を出して一瞬ひるませて、隙を作るのが主な使い道かな。
続いて【咆哮】。STR、INT、AGIを15秒間半減できるデバフ。同じようなバフなら【激化の音】と【癒しの音】。それぞれダメージを50%upとHP回復ができる。
【サウンドソナー】は…」
「あああ!情報量多すぎぃ!」
「まあさすがにこの量の全てを理解するのは大変かもね…」
それなら、と口にするシャイン。
「第二層に行くの手伝ってよ。そこで俺のスキルを見せてあげる」
「やだやだやだぁ!あの化け物の鹿と戦いたくないよぉ!」
「ダーメ!さあ行くよ!レッツゴー!」
ということで、俺はまたしてもあのマップの最北端にある石造りのダンジョン…第二層へと行く権利を獲得できるダンジョンへと来ていた。
とりあえず中に入った俺達の前に立ちはだかるのは、少し大きめのイノシシ3匹だった。
「ひっ!」
「任せて…【超振動】!」
シャインがそういうと、イノシシ達がダメージエフェクトを出しながら吹っ飛んでいく。(【気配察知】使用中)
なぜ吹っ飛んだのか分かっていなさそうなイノシシ達だったが、気を取り直してもう一度イノシシ達はこちらへと突っ込んでくる。
「もういっちょ!【音増強】【超振動】!」
もう一度シャインがそう唱えると、またしてもイノシシ達はダメージエフェクトを出しながら吹っ飛んでいき、そして光の粒子となって消えていった。
俺は思わず感動してしまう。
「お、おおぉ…!!どういう原理なんだ?」
「えっと、音っていうのは『空気の振動』を耳の鼓膜が捉えたものだろ?この技は『空気の振動』を大きくして、【衝撃波】を作り出して攻撃する技…と説明に書いてあった」
それめっちゃ強いな!と驚く俺。しかし、そんな俺達にはお構い無しに続々と奥から出てきては突進してくるイノシシたち。
「それじゃ次は…【音増強】【ノイズ】!【音破壊】!」
そう唱えると、杖からキーンという高い音が流れ、突進をやめて立ち止まってしまうイノシシ達。
そして、次の瞬間杖からとてつもない轟音が。
すると、通路の上にあった天井が崩れ落ちてきて、下敷きになってしまうイノシシ達。もれなく全員岩の重さに耐えきれず光の粒子となって消えてしまったのだった。
先に進もうとするシャインだが、天井から落ちてきた岩が邪魔で進めない。
「…これどうやってどかすつもりだ?」
「ごめん、ついやりすぎちゃった…」
【
「おっ、大扉」
「早く帰ろう…モンスター見すぎて既に意識飛びそう」
「おっけー…さあ入ろう!」
突然出てくるせいで思いのほかモンスターを見てしまった俺は、めちゃくちゃ疲弊していた。
大扉を開けた先には、真ん中から日光の差し込んでいる自然感溢れる部屋が広がっており、真ん中には大きな大樹がある。それが動き出すことを俺は知っている。
バタン!!
「ひぇっ!!」
「いやなんで既に一回来たことあるやつが驚いてるんだよ…」
メキメキ…
扉が閉まった音がしたかと思うと、大樹がメキメキと音を立てて変形し、巨大な鹿になってゆく。
出たよ、あのバケモン!
ムーンに意地悪されてめちゃくちゃ追いかけ回されたアイツだぁ!
俺はいつも通り目を閉じて【気配察知】を発動させる。
鹿は俺たちを見下ろすと、鹿は地面を踏み鳴らして魔法陣を展開させる。
「いまだっ!【音吸収】!【音記憶・解放】!」
シャインがそう唱えると、鹿の地面を踏み鳴らす音が消え、鹿の足元にあった魔法陣も姿を消す。
驚いた俺はおもわず目を開けてシャインの方を向く。すると、さっきまで鹿の足元にあった緑色の魔法陣がシャインの足元にあった。
「さあ行け!蔓たちよ!!」
シャインが地面を踏み鳴らすと魔法陣が輝き、巨大な蔓が次々に地面を突き破り現れ、ボスの鹿へと襲いかかる。
「【音吸収】はスキル名通り音を吸収できる。詠唱中の魔法とかを中断できるんだ!
そして【音記憶】は吸収した音を記憶できる。詠唱中の魔法を吸収したら自分の魔法に出来る!」
シャインはそう説明すると、また魔法を唱える。
「【音増強】!ゼロ、離れてて…すうっ…」
指示された通りに俺は部屋の端っこの岩陰に隠れる。
ボスの鹿が蔓に気を取られている間に、魔法を詠唱するようだ。
「漆黒に覆われし光よ…光を失いし希望よ…
我が最強の魔法で闇を切り裂かん。
轟音が世界に轟く時、世界は全てを取り戻す。
その光を。その希望を。
今終わりに終止符を打ち…
新たな始まりを閃光が告げる。
さあ響け!さあ輝け!究極の破壊魔法…」
最後の一言を言い切った瞬間、部屋中が閃光に包まれ何も見えなくなる。
そして遅れて響く…いや轟く最大級の轟音。
俺はパーティメンバーだからか何も問題はなかったが…敵だったら恐らく耳が一定期間聞こえなくなるぐらいの障害は起こっていただろう。そして閃光が強くて何も見えなくもなったいただろう。
しかしそれは副産物であり、メインでは無い。
圧倒的な爆発。全てを破壊し尽くし、全てを無に帰す最強の威力。熱風や衝撃波が俺にも来る。
シャインが魔法を唱えて15秒。ようやく爆発は終わり、黒や白の煙が部屋中を包んだのだった。
爆発ををもろに食らった鹿が生きている訳もなく…。
木っ端微塵に、見るも無惨に粉々に焼けこげたボスの鹿は光の粒子になりながら消えていったのだった。
シャインを見てみると、力尽きて崩れ落ちている。シャインは顔だけを上げてこちらを見て説明してくる。
「これが【エクスプロージョン】…。
一日一回しか使えないし、MPも全部もっていかれる上に詠唱にも時間がかかるから普段は【爆発】の方を使うんだけど…今日はかっこいいところを見せるために使ってみたんだ。
けど…こんなに威力があるとはね…」
シャイン曰く、【音増強】を【エクスプロージョン】に付与すると、衝撃波や熱風を大きくできてかつ、爆発音を至近距離で聞いた者の聴覚を一定時間奪うというぶっ壊れ機能付きなのだとか。
しかも、閃光も発生するので人によっては視覚も奪えるらしい。
「つまり…戦闘に重要な聴覚、視覚を封じれるってことか?」
「そういうこと!どう、強いだろ?」
「…お前も人のこと言えないぐらいエグい戦い方するなぁ…」
「まあそこはお互い様ということで」
こうして、第二層へと向かう俺たちなのだった。
ボコボコに弱体化された零士くんのスキル…
どうだ?勇輝の新スキルはやれるのか…?